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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百六十一話 ヴィックへの期待

 ようやく二人目の面接者だ。

 ララのほうはどれくらい進んでるのだろうか。


「お兄ちゃん、さっきのあの人の発言を本気にしちゃダメだからね?」


「してないって……」


「ララちゃんには報告しとくから。ボネちゃんもお兄ちゃんのガードよろしくね」


「ミャ~(さっきの子が襲ってくるかもしれないの? あんな可愛い顔してこわいわね)」


 こいつずっと寝てたな……。


「ロイス君、今の子パラディンのほうがいいんじゃないかな? 騎士経験者だし」


「やっぱりそうですかね? 冒険者としても見てみたいところなんですけど」


「最初は経験者が一人でも多いほうがいいと思ってさ。冒険者になるにしても、パラディン隊の規律が隊員にある程度浸透するまではいてもらったらどうだい?」


「そうですね。じゃあその方向でララに話してみます」


「うん。それに男性が多い職場だから女性は一人でも多いほうがいいに決まってる。女性からしても男性が多いほうが嬉しいだろ? マリンちゃん」


「え……私は別に……じゃあ二人目呼ぶからね」


 バーゼルさんがマリンのイライラを少し緩和してくれたようだ。

 さすが大人の男性。


 さて、次は誰が来るのかな。


 ……お?


「255番! ヴィックです! 十九歳、サウスモナ出身です」


「そちらにおかけください」


 ヴィックさんか。


 ってあれ?

 全体でもかなり早いタイムだったのにまだ面接してなかったのか?


「ララたちのほうの進み具合はどうなってる?」


「えっと……たぶん今十人目かな」


「順調か。ヴィックさん、もしかしてこっちでの面接を希望しました?」


「あぁ、管理人さんのほうになるようにエマちゃんにお願いしたんだ」


「そうでしたか」


 直接俺と話したいってことか。

 でももう話は聞いてるしな。


「昨日の夜聞いたときには驚きましたよ。ヒューゴさんたちはなんて言ってるんですか?」


「……パーティを抜けることを許してはくれたが、納得はしてないだろうな」


「幼馴染ですから複雑ですよね。グラシアさんなんかめちゃくちゃ怒りそうですけど」


「そうなんだよ……でもグラシアのやつ、好きにすればとしか言わなくてさ……」


「ははっ、しっかり怒ってますね」


「笑い事じゃないって……。でもどうせなら一発くらい殴ってくれたほうが俺もスッキリするんだけどな」


「今頃ベンジーさんが説得してくれてるんじゃないですか? あ、今日の試験の一部始終はダンジョン酒場で流してたんですよ。みんなお酒飲みながら盛り上がってましたよ」


「マジかよ……。でも俺、まぁまぁ上手くやれてたよな?」


「一番難易度が高いグループで二位通過ですから上出来じゃないですか?」


「だよな。あの黒い鎧のやつに負けたのは悔しいけど」


「あの人は身体強化系の補助魔法が使えますから気にしなくていいです」


「あ、やっぱりか。でもソロだと完全に負けだよなぁ~」


 悔しそうだな。

 ウチでも常にトップを走ってきたんだからそのプライドもあって当然か。


「じゃあここでもっと修行されたらどうですか?」


「いや、悪いが俺の心はもう決まってるんだ」


「でも合否を決めるのは俺たちですよ?」


「え……そうだけどさ……」


「冗談ですよ」


「え……こっちは本気なんだから今冗談言うのはやめてくれよ……。不合格になるならちゃんとした理由を教えてくれ」


 そうだよな。

 面白くない冗談だったようだ。


「一応お聞きしますけど、マルセール配属はどうですか?」


「……できればサウスモナ配属が。でも転勤がないとは言ってないもんな……」


「今度南マルセール駅付近にサウスモナに本店があるお店の支店ができるんですけど、何人か転勤してくるそうですよ」


「そうだよな……わがままばかり言ってられないよな……」


「だから冗談ですって。ウチは隊員の希望はある程度聞きますし、今言ったお店の人も別に嫌で転勤してくるわけじゃないそうですから。むしろ新しい町を楽しみにしてるとか」


「……」


 少しからかいすぎたか。


「サウスモナとボワールは重要拠点になりますので、ウチから離れてるからこそ信頼できる人にいてほしいんです」


「……俺で大丈夫かな?」


「どうでしょう。これからは修行より仕事の意味合いが強くなりますから。ただ戦闘がしたいだけならパラディン隊には入らないでください」


「それは理解してるつもりだ。これ以上自分が強くなれないとしても、町の平和のためになにかできればそれでいい。給料も貰えるんだから生活の心配をせずに仕事に没頭できると思うんだ」


「そうですか。マリン、今の聞いてどう思う?」


「う~ん、少し残念」


「え……」


「だよな。バーゼルさんはどうですか?」


「ここでトップクラスの冒険者とは思えない発言だね。もう牙が抜け落ちたみたいだ」


「……」


「ですよね。騎士さんは?」


「え? 自分ですか? ……我々と同じで保守的になってるような雰囲気を感じます」


「……」


「なるほど。騎士隊のみなさんもこれからはもっと強くならないといけないんですからしっかり修行してくださいね」


「はい。自分も死にたくはないですし、誰も死なせたくはないですから」


「いい答えです。その心意気があればきっと強くなれます」


「頑張ります!」


 うん、王都が滅びないように頼むぞ。


「……ダメなのか?」


 ん?

 誰もダメとは言ってないよな?

 ただ残念だってだけで。


「いえ、合格にさせてもらいますからご安心を」


「言ってくれよ。なにが足りないんだ?」


「普通なだけですからそんなに気にしなくていいですよ。ほかの受験者のみなさんも大体そんな感じですので」


「……そういうことか。確かに今の俺は管理人さんが期待してるような人材ではないのかもしれない。冒険者をやめた自分がどう変わっていくのかという不安もある。それに家族ができることへの楽しみと同時に、養っていかなきゃならないという不安もある。でも今の俺の気持ちが冒険者よりパラディン隊に向いてることだけは間違いない。きっとパラディン隊のために役に立てる。いや、役に立ってみせるから」


「う~ん、色々葛藤がおありのようですが、難しく考えるのはやめてください」


「……どういうことだ?」


「シンプルに、もっと強くなってください」


「え? 強く? ……戦闘面でってことか?」


「それは自分で考えてくださいよ~。まずはお仲間さんに自分の気持ちを全て伝えることから始めたらいかがでしょうか。とにかく、先ほども言いましたように試験は合格です。サウスモナ配属という希望もお受けいたしましょう」


「……わかった。ありがとう。これからもよろしくな」


「こちらこそ。期待してますから」


「今なに言われてもプレッシャーにしか感じないけどな……」


 ヴィックさんは肩を落とした様子のまま転移していった。


「そんなに急いで結婚なんかしなくてもいいのにね~」


「結婚は悪いことではないよ。でも彼の場合、守りたいものがありすぎるんだろうね」


「奥さんになる人以外にってことですか? 町とか町の人?」


「それはもちろんだけど、少し心が揺れ動きすぎてるよね。それに今はまだパーティメンバーに対しての罪悪感が凄いんだと思う。たぶん奥さんや家族以上に長い時間を共にしてきてるだろ?」


「パーティメンバーのほうが大事ってことですか?」


「少なくとも今はね。これから比重が変わっていくだろうけど、今の彼に色々求めるのは酷な気がするよ」


「なるほど~。だってさ、お兄ちゃん」


 あの調子じゃ設立当初からみんなのまとめ役を期待するのは無理そうだもんな。

 自分のことでいっぱいいっぱいって感じだ。


「ミャ~(ああいう脳筋タイプはストレートに言ってあげないと伝わらないわよ)」


「それじゃヴィックさんのためにならないだろ」


「ミャ~(一度に複数のことを考えられないのよ。よく言えば真っ直ぐで一途、悪い言い方だと脳筋単細胞。筋トレのしすぎじゃないかしら)」


 酷い……。


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