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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第三章 集いし仲間たち
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第四十六話 従業員募集中?

 ララとカトレアに町でいいアイデアを考えてこいと言われた翌日、俺はシルバとメタリンとともにマルセールの町へ来ていた。


「あいつら覚えとけよ」


 つい独り言を呟いてしまう。


 今朝も出かける際、「じゃあしっかり考えてきてねー」なんて言われてお見送りされたんだ。

 俺はここ最近帰りの荷物が重いのが嫌だったから、どちらか一人についてきてくれるよう頼んだのに、「……メタリンが町へ行きたいみたいです」って言ったんだぞ!?

 魔物使いじゃないのに言葉がわかるのか!?

 って言いたかったけどそんなこと言えるわけなくメタリンとシルバを連れて家を出てきたわけだ。


 絶対あいつら二度寝してるな。

 一週間に一度の休みだから仕方ないとはいえ、しかも先週は地下三階のオープン準備で休みなしだったとはいえ……


 うん、全然おかしくないな。

 むしろ俺が訴えられてもおかしくないくらいだ。

 働かせすぎてごめんなさい。


 そんな考えが頭の中で何度もループしながら多少モヤモヤしつつ、とりあえず道具屋に来た。


「おう、坊主! なんか浮かない顔してんなぁ!」


 やはり俺は顔に出やすいのか?


「おはようございます。ここのところ少し忙しかったもので」


「大盛況みたいだな! たいしたもんだ!」


「えぇ、おかげ様で。ポーション類の売り上げも好調です。店長さんのところは大丈夫でしょうか?」


「なにも問題ないぞ! 薬草の買取が増えたから逆に儲かってるよ! がははっ!」


 昨日ララから売り上げ報告を聞いたとき、もしかしたら道具屋はこの売り上げを失ったのではないかとも思っていただけに内心ホッとした。


「それは良かったです。じゃあ今日はこのへんで」


「おい、少しお茶でも飲んで休んでけよ! そんな顔してると辛気臭いったらありゃしない」


「そうですかね、じゃあお言葉に甘えて」


「おう遠慮すんな! 日曜の午前中は客が少ないから暇なんだ! 奥で話そうぜ!」


 暇つぶしの相手にされたってことか。

 そして、最近のダンジョン事情を大雑把に話し、今元気のない理由が新しい店についての悩みであることをポロっと言ってしまった。


 これがいけなかったんだ。

 なぜかここから話がトントン拍子に進みはじめた。


 店長さんはその話を聞き終えるとなにか考え込み、店の二階へある人物を呼びに行き、この場へ連れてきた。


「紹介するぜ! ウチのせがれのヤックだ! 年は十四歳になったばかりだから坊主と同じ……いや一つ下だな!」


「初めましてロイスさん。ヤックです。いつもウチの店をご贔屓にしてもらってありがとうございます」


「初めまして、ロイスと申します。こちらこそいつもお世話になっております」


 こういう改まった紹介はなんか苦手だ。

 でもとても穏やかな印象の少年だな。

 こう言ってはなんだが店長さんとは正反対というか。


「お父さんから聞いていた通りの人だね。年下の僕に対しても丁寧だ」


「そうだろ!? お前も見習えよ!? がははっ」


 親子関係は良好みたいだな。

 俺はとりあえず愛想笑いをしておく。


「で、どうしてヤックさんを俺に紹介してくれたんですか?」


「あぁ、そうだった。まだヤックにも話してなかったからちょいと説明させてくれ!」


 先ほど俺が店長さんにした話の最後の部分だけをヤックさんに説明してるようだ。


「ふむふむ、なるほど。それは面白そうかも。調理の仕事以外の時間はダンジョンにも入れるんだ」


「だろ? ついでに薬草の買取もまとめてできるんだぞ?」


「それはお父さんやお母さんの手間が省けていいかもね!」


 なんだろう、この子とてもいい子だ。

 優しい子って言ったほうがいいんだろうか。

 でも話が勝手に進んでいってるような……


「えっと……」


「あぁ、すまん! 坊主の意見を聞いてなかったな! さっきの話なんだがこいつでどうかな?」


「ロイスさんお願いします! 調理とかしたことないですけど、一生懸命覚えますから!」


「坊主頼むよ! まだ子供だから店の手伝い程度しかさせてなかったが、いい経験になると思うんだよ! それに正直なところ大樹のダンジョンへ行きたいって言って困ってたんだ」


 どうしようか。

 ララたちには商品のアイデアを考えてこいとは言われたけど、人を見つけてこいとは言われてないしな。

 そもそも俺は飲食店は却下することにしたんだった。


「先ほどもお話した通り、まず商品アイデアを先に考えることになったんですよ。だから従業員募集はその後にってことになってまして」


「そうなんですか……」


 見るからにがっかりした様子のヤックさん。

 俺は悪くないはずなのになぜか申し訳ない気分になる。


「もし従業員が必要なところまで話が進んだらまた声かけさせてもらいますから」


「本当ですか!? 絶対ですよ!?」


「坊主! 頼むぞ!」


 ウチはそんなに思ってるほどいい労働環境じゃないよ?

 十歳の子が週六で朝から晩まで働かされてるんだよ?

 と、言いたくなったがやめておいた。


「そもそもなんでウチで働く必要があるんですか? ダンジョンへ行きたいならいつでも来て下さって構わないですよ? それにそっちのほうが稼げると思いますよ?」


「それはそうなんだが、まだ十四歳になったばかりだからな。冒険者ってのは十六歳や十八歳になる年から始めるやつがほとんどだろ? 年齢が若いってこともあるが、親としては冒険者になるのは心配なんだよ。でも坊主んところに仕事で行くってなると話は違うんだ。将来的にはこの店を継いでほしいし、そのために色々なことを経験できそうなのが今の話だからな!」


「僕は今すぐにでもダンジョンへ行ってみたいんですが、周りが許してくれなくて」


 その後、今はまだ募集できる段階ではないとどうにか説得して、店を出た。



 ……なんかドッと疲れた。

 シルバとメタリンも外で待たされてうんざりしたのかもう帰りたそうにしている。

 ちなみにメタリンはシルバの頭の上に乗って寝ている。

 誰だよメタリンが町へ行きたそうにしてるって言ったやつは。


 そしてすぐ隣の八百屋へ入る。

 また、二匹は外でお留守番だ。


「おはようございます」


「おう兄ちゃん! おはよう! あのリンゴとミカンは最高だぜ! 飛ぶように売れてるよ!」


「そうですか。それは良かった」


 こちらから聞く前にもう用事がすんでしまった。

 買うもの買って早く次へ行こう。


「それはそうと兄ちゃん! 聞いたぜ! 飲食店始めるんだって!? そんで従業員探してるんだってな!?」


「いや……それは……」


「メロ! ちょっと来い!」


 なんか前もこういうことあった気がする。

 お隣さんだからって情報が早すぎるんだよ。

 こないだは肉屋と八百屋だっけ?

 しかもまた誰か呼んだよね?


「なんだよオヤジ!?」


「ほら! こちら大樹のダンジョンの管理人をやっているロイス君だ!」


「おぉ!? お前が管理人か!? 話には聞いてるぜ!」


「こらっ! 初対面のお客さんに向かってなんて口の聞き方だ! このバカ者!」


「イテッ! 殴るこたぁねぇだろこのクソオヤジ!」


 なんだこの人は……。

 そういえばチラッとおじさんが話してたような気もする。

 さっきのヤックさんとは大違いだな。


「今ダンジョンで従業員募集してるらしいんだよ! 隣のヤックも行くらしいからお前もいっしょに行ってこい!」


「はっ!? なんで俺が!? 嫌だよ面倒くせぇ!」


「店の手伝いは手が足りてるし、お前には社会経験が足りなすぎるんだ! このロイス君を少しは見習え!」


「だからそれがなんでダンジョンへ行くことになるんだよ!? そもそもダンジョンの従業員てなにするんだ!?」


「あっ、そうか言ってなかったな!」


 そこでまた説明が始まった。

 なんでこの短時間でそこまで詳しく知ってるの?

 絶対スパイがいるよね。


「そういうことか。なるほどな。まぁ料理は嫌いじゃねぇし、ダンジョンてのも少し興味があったし、あのリンゴとミカンの買取もそこでできるんなら悪い条件じゃねぇな! 給料はちゃんともらえるんだろうな?」


「悪くない話だろ!? 給料の話はほら……これからだ」


 いやいや、待ってくださいよ。

 スパイさんどうせなら最後まできちんと伝えてくださいね?

 今はまだ無理ですから!

 というかなんでメロさんは乗り気になってるの!?

 さっきまであんなに嫌がってたのに、興味ありありじゃん!?


 その後、今はまだ募集できる段階ではないとどうにか説得して、店を出た。


 スパイさん、次は頼みますよ?


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