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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第三章 集いし仲間たち
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第四十五話 新商品検討会

「まず、現状の商品を確認しておきましょう」


 ララから、今取り扱っている各商品の月曜~金曜までの売り上げが発表された。


 それによると、以下のような売り上げらしい。


 ポーション:989本=19780G

 解毒ポーション:343本=10290G

 エーテル:276本=11040G

 大樹サイダー:477本=4770G



 ……おかしくない!?

 明らかに桁一つ間違ってるよね!?

 ポーションの989本てなに!?

 もうすぐ千本じゃん!

 というかこれ昨日までのだから、今日で確実に超えてるじゃん!

 大樹サイダーが何気に売れてるのが少し嬉しい。


 昨日までの来場客数が三百八十五人だから、その売り上げが19250G。

 この売り上げだけでも余裕で過去最高なのに、それの倍以上を稼いでるサイドメニューは偉大なんだな。


 というか錬金術師様様だよね。


「想定してた以上に売れ行きが好調なようです。ここでお兄に相談ですが、カトレア姉にお給料をお支払いしたほうがよいと思うのですがどうでしょうか?」


「俺もそれは考えてた。なんなら商品売り上げを全部持っていってもらってもいいけど?」


「……ロイス君、さすがにそれは問題ですよ。この売り上げはダンジョンあってのものですし。それに私は住居と食事の代わりに提供してるだけですから」


 カトレアは本当に給料がいらないと言っているようにも思える。

 だけどそれでは俺とララの気がすまないからな。

 でもいくら渡したらいいのか相場がわからない。


「ララ、どうしたらいいと思う?」


「そうですね。素材そのものはダンジョン産ですし、技術料ということで商品売り上げの二割でどうでしょうか?」


「まぁ妥当なところだろうな。それでどうだカトレア? 俺とララも一割ずつ貰うからさ」


「……本当にいいんですか? ……でしたら私もお二人と同じ額がいいです」


「じゃあララ、俺たち三人とも商品売り上げの一割をもらうってことでいいんじゃないか? 残りは運営資金に回そう。カトレアもなにか入用だったら遠慮なく言ってくれ」


「カトレア姉がそれでいいんならいいんだけどさ、もっと貰っても罰は当たらないと思うよ?」


「……いいんですよララちゃん、私は今が凄く楽しいですから。毎日美味しいもの食べれますしね。もうあんなパンだらけの……」


 最後のほう小声で聞き取れないぞ。

 夕飯はララといっしょに作ってることも多いし、楽しいってのは本当のことかもしれないな。

 やはり食事が楽しみじゃないと人生の半分は損してると思う。


「ララ、先に進めよう」


「そうだね! ……じゃなくてそうですね。では新商品についての意見を伺いたいと思います」


「そもそも新商品出す必要があるのか? この四つも今週出たばかりの新商品だぞ?」


「お兄は甘いわね! 飽きられる前にどんどん新商品を出すのよ! 新しいジュースを開発して大樹サイダーと一週間ごとに入れ替えでもいいわ!」


「大樹サイダーは外せないぞ! てかララ、口調はもういいのか?」


「面倒だからもうやめよ! ジュースの商品を増やすのも手だけど、ポーション類はどうなのかな? カトレア姉はどんなのが作れるの?」


「……ハイポーションとかハイエーテルなら作れますが。初級者のみなさんにはまだ早いかもしれませんね」


「そっかー、まだポーションの回復量で十分ってことね。ならミカンジュースとリンゴジュースしかないんじゃないかな?」


 採集できるミカンとリンゴのジュースってのもなんか芸がないよなぁ。

 ならやはりここで満を持して食べ物をやってみるべきじゃないか?


「食べ物系はどうなんだ?」


「それは私もずっと考えてるのよねー。みんな昼間に食べてるご飯も味気ないものばかりだしさ。帰りなんかお腹ペコペコだよみんな。それなのにここから一時間もかかるから大変だよね。BBQエリアができたから大丈夫かと思ってたけど、みんな使わないしね」


「なら迷わなくてもいいんじゃないか?」


「単純に人が私とカトレア姉しかいないってことが問題なの。私たちが作るとなるとそれ以外になにもできなくなっちゃうかもしれないでしょ?」


「一度に大量に作っておいて状態保存の魔法をかけとけばいいんじゃないのか?」


「はぁ~、お兄はさ、今日の夕飯にその料理が出てきたら美味しいと思えるの? 出来立て同然だし温かいけど、まとめて作っておいた手抜き料理だなとか思ったりしない?」


「そんなことは思ったりしないよ。ララが毎日頑張ってるのは知ってるし、たまには手間がかからない料理でもいいと思うし……って言いたいことはそんなことじゃないよな。確かに目の前で作ってくれた出来立てのほうが気分的にも美味いに決まってる」


「そうでしょ? それにその状態保存の料理と冒険者が持ってきてる料理の違いって温かいかどうかだけじゃない。そんなのをウチの名物にしたくないの」


「そうだな。悪かったよ。ごめん」


 ダメだ、これ以上なにを言ってもララを怒らせるだけだ。

 料理人としてのプライドが作り置きは許さないらしい。

 状態保存かかってるんだから味さえよけりゃ冒険者もそこまでは気にしないと思うんだけどな。

 なんてことは死んでも口にはできないぞ。

 冒険者たちが食料を持ってくる手間が省けるくらいに考えてた俺の考えは間違いだったようだ。


 ……カトレアまで俺を蔑んだ目で見てるような気がする。

 食べ物への執着が凄いようだ。

 さすがパン、パン、パスタの……

 これ以上はやめとこう。


「なら人を雇うのはどうだ? さすがに給料くらい払えるんじゃないか?」


「やっぱりそれしかないよね。でもみんなが食べるのって昼と夜だけでしょ? そうすると間の三時間くらいやることなくない?」


「う~ん、その間はダンジョンへ潜っててもいいことにするのは?」


「……それはありかもしれない」


「……いいと思います。採集などの稼ぎもできるとなれば希望者はそこそこ見つかりそうなものですけど」


 え? 本当にそんな人いるの?

 十一時~十三時半、十七時~十八時半は働くのに、間の三時間はダンジョンへ潜ろうなんて人が?

 ただでさえここまでの往復に二時間かかるんだよ?


「……人員のことは後で考えるとして、まず店の作りや場所を考えないか?」


「そうね。場所は家の前の空き地に新しく作るか、小屋の一部を改造して中に作るのかのどちらかね」


「……小屋の中がいいんじゃないでしょうか」


「そうだな、左奥がシャワー室、右奥がトイレだから、じゃあ小屋の正面入り口を入って右手前の壁際でどうだ? さっき言ってた荷物お預け箱はシャワー室前の通路への入り口横の壁際でいいんじゃないか?」


「そうね。無難だけどそれがいいかもね!」


 無難って悪いことじゃないよな?

 なぜか普通でごめんなさいって気持ちになる。


「雇うのは一人か二人か? その前にメニューをどうするかを決めるべきか」


「先に軸となるメニューを決めましょっ! 食べるのにそんなに手間がかからないものがいいわね! 男性の意見のほうが重要だと思うからお兄何個かあげてみて!」


「ええ~。ぱっと思いつくの適当にあげるだけだからな。カレーとか焼きそばとか? あとはラーメン、うどん、そば、パス……それくらいかな」


 危ない危ない、パスタって言いそうになった瞬間にカトレアの目が鋭くなった気がしたから慌てて引っ込めたよ。

 というかナポリタン以外は大丈夫なんじゃないの?

 それにナポリタンっていっても味が同じとは限らないじゃないか。


「お兄、普通過ぎるよ」


「……ロイス君、ララちゃんの作る料理は世界一なんですよ? 例えばこう、ネーミングセンスから考え直してください」


 なんなのこの二人は!?

 ララの作る料理が世界一だって!?

 それはカトレアが……殺気を感じたからこれ以上は考えるのやめよう。


「もっとさぁ、オリジナリティが欲しいんだよねぇ~。お兄は明日町へ行ったときにいい案ないか色々見て考えてきてね」


「……そうですよロイス君。明日買い物しながらしっかり考えてくださいね」


 こ、こいつら!?

 明日の買い出しを完全に俺一人に任せる気だ!

 三人分になったから以前よりもずいぶんと重いんだぞ!?

 しかもなにか考えてこいだと?


 はぁ~、やっぱり料理の案は却下だ。

 面倒なことが多すぎる。


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