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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百四十二話 パラディンのいいところ

 エマが緊張していなくなってしまったので、なぜか俺が壇上に上がることになった。

 とりあえず合格おめでとうと言っておいた。


「実はみなさんより先にパラディン隊に入隊した者たちがいるんです」


 エマが来るまでこの場を繋がないとな。


「では早速ご紹介しましょう。あちらの転移魔法陣にご注目ください」


 ジェマに頼んだからもう向こうで準備もできてるだろう。


「パラディン隊の……リスです!」


「「「「おおっ!?」」」」


「「「「可愛い!」」」」


「リスってあんな大きいんだっけ?」


「なぜリス?」


「あの子だけ帽子ズレてない? 可愛いけど」


「マスコット的なやつか?」


 概ね好評のようだ。

 マドの帽子だけサッと直しておいた。


「これは俺の仲間の魔物たちです」


「「「「魔物!?」」」」


「そうです。ダンジョンに出現する魔物ではありません。もちろん俺とも会話できますし、冒険者ランクで言うとFランク~Eランクの強さに相当します」


「「「「おおっ!?」」」」


 見た目的にはHランクと思われてもおかしくないからな。

 でももし俺の仲間になってなかったらどこまで成長したんだろうと思うことはある。


「四匹とも魔法が使えます。服の色で誰かを判別してやってください。赤色は火魔法のマカ、緑色は風魔法のメル、黄色は雷魔法のエク、茶色は土魔法のマド、このようにそれぞれ得意な魔法も違うんです」


「「「「おお~~」」」」


「もう一匹、白色のタルがいますが、回復魔法が得意なので今は別の魔物たちとパーティを組ませてダンジョンで修行させてます」


「凄いな」


「可愛い」


「こんなリスちゃんといっしょに戦いたい」


「羨ましい」


 ふふっ、いいだろ?

 可愛いだけじゃなくてそこそこ強いリスなんてある意味最強だからな。


「この子たちはパラディン隊として、みなさんといっしょに仕事をします。封印結界の外にも率先して出ていって戦闘したりもするでしょうが、みなさんはあまり無茶はしないでくださいね」


 リスたちの紹介はこのくらいでいいか。

 もしかしたらリスの可愛さに惹かれて入隊を決意してくれたりする人もいたりしてな。


 それよりエマは……あ、来たか。


「次の説明のお時間のようです。では最後にリスたちから挨拶を」


「「「「ピィ! (よろしくお願いします!)」」」」


「「「「可愛い……」」」」


 そして俺は元の席に戻り、リスたちは俺の前の床に四匹並んで座った。

 ……みんなの視線がリスに集まってる。


「お待たせいたしました。では大樹のダンジョンパートの説明に入らさせていただきます」


 エマが登壇し、話し始めた。

 どうやらもう緊張も解けたようだ。


「さきほどのジェマさんの説明にもありました通り、パラディンの任務の一つとして週に一度、大樹のダンジョンでの修行があります。これは戦闘能力の向上および維持を目的としています。ダンジョンの中では四人パーティを組んで修行してもらう予定です。勤務体系の構成上、みなさんには最低でも15グループに分かれてもらうことになりますので、パーティを組む仲間もその同じグループ内の人になります」


 勤務が1サイクル15日だからな。


「そしてここでの修行はあくまで任務の一環なので、毎回なにかしらの達成ノルマが課されることになります。一例をあげますと、地下一階からスタートして地下二階最奥まで到達せよ。であったり、ブルースライムを300匹倒せ。などといったものを想定しております」


 難易度はそんなに上げるつもりはないが、パーティのレベルに合ったノルマにする予定だ。

 できれば午前中のうちに達成できるようにしてあげたいし。


「ノルマと言いますと義務的なものに感じてしまってやる気が起きないかもしれませんが、これもみなさんのことを考えてのことなんです。週に一度のことですし、ここでの修行を苦痛と感じるようならパラディン隊を辞められることをお勧めします。パラディン隊はただの町の見回り隊ではないのですから」


 お?

 みんなが頷いてる。

 それくらいで辞めるなら今すぐ辞めてしまえとでも言いたげだな。

 さすが一次試験だけじゃなく面接も通過してきた人たちだ。


「さらに、このダンジョンでは冒険者たちは魔物を倒して得た魔石や素材を収入としていますが、パラディン隊になられるみなさんはその収入を得ることができません。これも先ほどのジェマさんの説明にありましたね」


 いよいよあの話か?


「ですがここではパラディン隊と冒険者は同じ空間で修行をすることになります。目の前で冒険者たちが魔物を倒し収入を得てるのを見て、虚しくなることもあるでしょう。いくら安定したお給料を貰ってるからと言いましても、自分より稼いでいる冒険者たちの姿を見てしまったらやる気が削がれることもあるかもしれません」


 みんな表情を変えないな。

 今もまだ試されてると思ってるのかもしれない。

 そんなことで揺らぐような決心じゃないと自分に言い聞かせてるのかもな。


「……さて、先ほどのジェマさんの説明の中に、あとで私が説明することになっていた事柄を覚えていますか?」


 もう忘れたか?

 って忘れるわけないか。

 みんなの表情がここで来たかって感じで急に生き生きしだした。


「そうです、ボーナスチャンスです!」


「「「「おおっ!?」」」」


 予想以上に凄い反響だな。

 みんな嬉しそうにエマを見て……え?


 …………なんだこの映像は。


 ララが凄い速さで走りながら魔物を剣で斬りまくり火魔法や雷魔法で派手に攻撃しまくっている映像が流れ始めた。

 みんなはこの映像を見て声をあげたのか。


 そして映像の中ではドロップ品がかなりの高確率で落ちまくっている。

 もしかしなくてもこの説明のためにこの映像を作ったんだろうな……。

 敵を襲って来ない設定にし、おそらくドロップ率も70%くらいに設定してるんじゃないか?


「ダンジョンの中では魔石や素材を入手できると言いましたが、ご覧のようにダンジョン内で魔物を倒すと魔物の姿はその場から一瞬で消えてしまいます。その際、魔石はレア袋に自動的に収納される仕組みなんです。そして魔物が倒された場所になにか落ちてるのがわかりますよね? 実はこれが素材であり、ドロップ品と呼ばれる物なんです。このドロップ品にはそれぞれ確率が設定されており、魔物を倒した瞬間に抽選が行われ、見事当選するとドロップ品が出現するというものなんです」


 みんなの目が輝いてるな……。

 既にドロップ品のことを知っている人たちはどこか自慢げのようにも見える。


 というかこの映像を新規冒険者への説明のときにも使おうか。

 むしろ全部映像化してしまえば……ってついそういうことばかり考えてしまう。

 そこまですると俺の仕事がなくなるからダメだ。

 ララからなにか別の面倒な仕事を言いつけられるのも嫌だし。


「さて、みなさんお待ちかねのボーナスチャンスについてご説明させていただきます」


「「「「……」」」」


 期待度が最高潮になってるな。


「大樹のダンジョンでの修行時に、その日のノルマを達成したあとに入手したドロップ品については、みなさんの自由にしていただいて構いません」


「「「「おおーっ!?」」」」


 ふふっ、いい反応だ。


「これがボーナスチャンスです。と言いましてもドロップ確率が上昇するわけではありませんので勘違いしないでくださいね。それと、みなさんはパラディン隊という立場なことをお忘れなく。あくまでこのボーナスチャンスは日頃町や人々のために身を粉にして働いてくれてるみなさんへのお小遣いみたいなものです。お金に目が眩んだ人にはきっとドロップの神様から天罰が下ります」


「「「「……」」」」


 おい……。

 やる気がなくなったらどうするんだよ……。

 その前にまだ入隊もしてないのにさ。


「というのは半分冗談で、ドロップ品目当てにがむしゃらに戦闘してみるのもいい気分転換になりますのでどんどん狙っていってください。冒険者のみなさんなんて凄いんですよ? 例えドロップ品欲しさの戦闘でも、戦えば戦うほど強くなれますから一石二鳥です」


 冗談かよ……。

 みんな安心してるな。


 最初から一度落としておいて上げる作戦だったのか?

 ドロップの神様とか言い出したときにはどうなるかと思ったぞ。


「ではボーナスチャンスの話は以上です。もっと詳しいことは入隊してくれた方にだけお話しますね」


 ここまで真剣に聞いてくれてるんだからもう入隊してくれるんじゃないか?

 王国騎士隊の説明会は最後のほうしか聞いてなかったが、なにか良さそうな話はあったんだろうか?


「最後に、パラディン隊の任務中に身につける装備品を紹介したいと思います」


「「「「おおっ!?」」」」


 驚き方がワンパターンなんだよなぁ。


「主に戦士の方用の装備、身軽な服装をお好みの方用の装備、魔道士の方用の装備の3種類に、それぞれ男女用がありまして計6種類の装備品をご用意しました」


「「「「凄い!」」」」


「王国騎士隊なんて一種類だけなのに!」


「しかもそんなにカッコ良くない!」


「きっとこれをマネして今度はたくさん作るんだぜ!?」


「大樹のダンジョンの製品ってことだよな!?」


「もう期待しかない!」


 うんうん、装備品って凄く大事だもんな。

 でもそこは任せてくれ。

 強度もデザインも最高の物を準備したつもりだ。

 俺はほぼノータッチだけど。


「では実際に装備品を身につけた方々に登場してもらいましょう! まずは最初のお二方どうぞ!」


 なんだと?

 そんな話聞いてないぞ?

 映像で紹介するだけって話だっただろ?


 というかいったい誰が出てくるんだ?


 ……え?


「「「「おおーっ!?」」」」


「「「「カッコいい!」」」」


「「「「可愛い!」」」」


 オーウェンさんとアイリスが出てきた……。

 二人になにさせてるんだよ……。


「こちらの鎧はミスリルを使用しています!」


「「「「すげぇーーーー!」」」」


「剣もミスリルですよ!?」


「「「「うぉーーーー!」」」」


「もちろん剣以外の武器もミスリル製を提供します! 大樹のダンジョンで販売してる製品とはデザインも違いますし、パラディン隊のロゴも刻印されてます!」


「「「「最高!」」」」


 もう喜び方も適当になってるだろ……。


 でも二人とも背が高いし鎧が似合ってるな。

 それになんだか凄く強そうに見える。


 一応画面にも鎧をアップにした映像が流れてるが、みんなの目は二人に釘付けだ。

 ミスリルの鎧がカッコいいということもあるだろうが、二人が着てると余計に絵になるからな。

 二人は目立ちたくないタイプだからかなり恥ずかしそうにしてるが。


「では次のお二人お願いします!」


 今度は誰が出てくるんだ?


「「「「おお~~~~」」」」


 ミーノとメロさんか。


 鎧と違って目立たない服だからか歓声は少なめのようだ。

 でもこの服もかなり作り込まれてるし、素材もいい物を使ってるんだけどな。

 こう見ると少し白色成分が強すぎたか?

 パラディンってなんとなく白のイメージがするんだよな。

 鎧は光ってるから白でカッコいいんだが、この服だと少し淡すぎるか。


「では最後のお二人! どうぞ!」


 魔道士役は誰なんだろう。


「「「「緑だ!」」」」


「大樹カラーってやつか!?」


「あれって杖!?」


「高そうなローブ!」


 これは意外。

 受験者の反応ではなく、出てきた人物がホルンとユウトさんだとは。


 でもホルンは眼鏡をかけてるからかなんだか頭のいい魔道士っぽいな。

 ユウトさんは元々魔道士だからか普通だ。


 それよりこの緑のローブは好評のようじゃないか。

 白のローブにしようと思ったんだが、それだと回復魔道士みたいだからな。

 前に俺が着てた大樹カラーのコートが好評だったからそれをローブに仕立てたっぽい。


 あ、さっきの服は間を取って白と緑で構成しようか。


「みなさん! この杖に注目してください! 実はこの杖、なんと! ……やっぱり入隊してくれた人だけにお話しますね」


「「「「えぇ~っ!?」」」」


 エマもわかってきたじゃないか。

 これで魔道士たちは杖のことが気になって入隊してくれるだろう。


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