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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百四十一話 手厚い待遇

 映像はさっきまでの駅の様子とは一転、ダンジョン地下四階が映し出された。

 海中で戦ってる冒険者たちの姿を見て驚いてる人がほとんどだ。


「この世界各地に冒険者はたくさんいると思います」


 ジェマの話よりも映像が気になって仕方ないようだな。

 リアムさんたちもさすがに映像に目を奪われているようだ。


「現在、この大樹のダンジョンで修行してる冒険者の数は千人を超えています」


「「「「えっ!?」」」」


 やはり千人という人数のインパクトは強い。


「今映像に映っている冒険者たちは大樹のダンジョンではEランクに認定されています。世間で言うところの中級冒険者ですね。この下のランクにはF、G、Hという初級者ランクが存在しています。今日の受験者の方で一番お強い方は……せいぜいFランクといったところでしょうか。多くの方はGランクだと思います」


「「「「え……」」」」


 ほとんどがGランクと言われてショックか?

 Aグループだった人たちは誰もEランクの実力がないと言われてどう感じた?


「でもそのことは全く気にする必要はありません。なぜならみなさんの多くはまだ大樹のダンジョンで修行してないのですから。もちろん大樹のダンジョンで修行した方も今日の合格者の中にはたくさんおられます。そのみなさんならわかるでしょう。この大樹のダンジョンがいかに冒険者を成長させるために創られているかということを。成長というのはただの戦闘技術のことだけではありません。心の成長もです」


 うんうん、心が大事だよな。


「ちなみに、現在大樹のダンジョンにいるEランクとFランク冒険者の方々は今日の試験を一人も受けていません。人数の関係等ありまして、受けるなら二日目にしてほしいと運営側からお願いしたからです。しかし、明日の試験には百人近い方が受験すると予想されます。それでもEランクとFランクの全体の人数からしたらほんの一部なんですけどね」


「「「「……」」」」


 それを言っちゃうのは逆効果じゃないか?

 誰だって自分が一番強くありたいんだからさ……。


「それだけ強い冒険者がこんなに身近にたくさんいることは凄く心強いことだと思いませんか? しかもみなさんの同僚になるかもしれないんですよ? 強い人が身近にいればみなさんもきっと強くなれます。なんせ環境は抜群なんですから。それにEランク冒険者の方々も最初はみんなHランクからスタートしたんですよ?」


 まぁそう言われると自分も強くなれるかもという期待が生まれるよな。


「でも冒険者とパラディン隊では役割が異なります。冒険者の多くの方々は魔王を倒すために日々修行に励んでいますが、パラディン隊は魔王から町や人々を守ることを最優先任務とします。リーヌや王都と大きく違う四点目であるパラディン隊、その任務内容は封印結界を守ることです。封印結界さえ維持できれば誰も死なせることはないんですから」


 その守るっていうことが難しいんだけど。


「もしかすると王国騎士隊も今後はパラディン隊と同じような任務が増えるかもしれません。ですがこのパラディン隊が王国騎士隊と決定的に違う点、それはもちろん大樹のダンジョンが運営を主導するということです。具体的な内容としましては……その説明は次のエマ様にお任せしますね」


 ジェマはさっきからエマの仕事まで取っちゃいそうな勢いで話してるからな……。


「大樹のダンジョン、魔道ダンジョン、冒険者、パラディン隊、この四つの繋がり、そして役割はご理解いただけましたでしょうか? 我々のプロジェクトにはみなさんのお力が必要なんです。パラディン隊なくしては冒険者の方々も安心して修行に打ち込めません。そうなると魔王に対抗する希望がなくなってしまいます。魔王を倒さない限りこの戦いに終わりはないんですから」


「「「「……」」」」


 自分たちがやろうとしてる仕事の重さに気付いてくれたかな?


「では気分を少し変えまして、お給料の話に参りましょう」


 ん?

 もっと目を輝かせてくれるかと思ったらそうでもないな。

 そんな責任が重い話のあとに給料の話なんかしてていいのだろうかとでも思ったか?

 でもお金は凄く大事だぞ。


「さっそくですが、パラディン隊の最低賃金は……」


「「「「……」」」」


 お?

 やはり気になるだろ?


「月給で……」


「「「「……」」」」


 なんでウチのみんなはこうやって長いタメを作るようになるんだろう……。


「2万Gになります」


「「「「えっ!?」」」」


 それなりにいいだろ?

 危険な仕事になった分、町役場の給料よりは高くしたんだぞ?


「2万Gというのはあくまで最低の賃金額になりますので誤解のないようにお願いします」


 みんなは目を真ん丸にして頷いている。

 でも中には首を横に振っている人もいる。

 おそらくどちらも意味は同じだろう。


「パラディン隊における最低賃金とは、十五歳以下の方に初めて支給するお給料の額のことを言います。その額からの上積み額として、年齢、役職、パラディンランクを加味させていただきます」


「「「「パラディンランク!?」」」」


 だからその反応はウチの冒険者と同じなんだって……。


「年齢による上積み額は200Gとさせていただきます。つまり、二十五歳の方ですと2千Gが上積みされて毎月のお給料は2万2千G、五十五歳の方ですと2万8千Gになりますね」


 これはまぁ普通のことらしい。

 それよりパラディンランクのことが気になって仕方ないか?


「役職はみなさんがご想像されるような普通のものとお考えください。そしてパラディンランクですが、こちらはパラディンとしての貢献度の高さを表すものとなります」


 まぁこれも案外普通なんだけどな。


「例えば普段の任務中の仕事ぶりであったり、大樹のダンジョンでの修行の成果と言えばわかりやすいでしょうか。このランクが高いほど、パラディンとして信頼されている証でもあります。戦闘面の強さだけではランクは上がりません。かと言っていかに任務態度が真面目でも弱ければ永遠に下位ランクのままです。ちなみに最初は全員Hランクからスタートすることになります。大樹のダンジョンの冒険者ランクと同じですね。ただし、パラディンランクは毎月一日に更新されますが、その際ランクが降格することもございますのでご注意を。このランクによる上積み額は……現在検討中です」


 このパラディンランク制度も少しでも普段の仕事にやる気を出してもらおうと思って考えたことだ。

 もちろん上手くいくかなんてことはわからない。

 成果が出なければなくせばいいだけだしな。


「給料の話は以上ですが、これとは別にボーナスチャンスがあります」


「「「「ボーナスチャンス!?」」」」


 ふふっ。

 いい響きだろ?


「詳しくは後ほどエマ様からご説明いただきます」


 ということは大樹のダンジョンでのことだな?

 って思ってくれただろう。


 ドロップ品を入手できるだけだが、それだけでもかなりの副収入になるからな。


「なお、パラディン隊に入隊される方は普段の任務中に得た魔石や素材は全てパラディン隊の物となりますのでご注意を。その魔石や素材が封印結界を維持するための魔力に変わるんですから本望と思ってください。もしこの決まりを少しでも破られた方は、パラディン隊から即刻除籍。さらに魔道ダンジョン内にも二度と入れなくなりますのでご了承願います。魔道ダンジョンに入れないということは、魔道列車を使えないということです。不安がある方は絶対に入隊しないでください」


「「「「……」」」」


 それくらいはルールとして当然だと思う。

 そういうのを放置してたら王都の魔道士ギルド長みたいになっちゃうからな。


 このあとエマの説明でボーナスチャンスだけは例外と言ってくれるだろう。


「続きまして勤務体系の説明に参ります。基本的には日勤と夜勤の二交代制になります。1サイクル15日周期で、日勤5日間、大樹のダンジョン、休み、夜勤5日間、夜勤明けの休み、大樹のダンジョン、休みといったものを想定しております。大樹のダンジョンは日曜日が定休日ですので、多少前後したりする場合もございますが」


 あ、映像も更新されてたのか。

 みんなの顔ばかり見てて気付かなかった。

 でもちゃんとこんな勤務体系表も作ってたんだな。


「勤務体系に関するご相談などありましたらいつでもお尋ねください。例えばお子さんのご都合で日勤しか無理といった場合や、勤務時間の短縮をご希望される場合などもおありと思いますので」


 ウチはパラディン隊と言えども従業員第一で考えてるからな。

 決してブラックではない、たぶん。


「勤務体系の話は以上です。続きまして、パラディン隊が管理する住居環境についてご説明させていただきます」


 住むところは大事だからな。


「現在、マルセール西側の土地にパラディン隊本部となる建物を建築しています」


 この場所がまた凄くいい立地条件なんだよな。


「この建物と同じ位置に存在する魔道ダンジョン、そこにパラディン隊専用の住居を構築中です」


「「「「おおっ!?」」」」


 画面には部屋が映っている。

 Eランク冒険者と同じ部屋だけどな。


「こちらは単身の方向けのお部屋となっております。ほかにも家族で住めるお部屋などもご用意しております。ですが残念ながら無料ではございません」


「「「「え……」」」」


 ガッカリしたようだな。

 さすがにそこまで甘くない。


「単身の方向けのお部屋は月額1000Gから、家族で住まれる方向けのお部屋は月額2000Gからになります」


「「「「え?」」」」


 安いだろ?

 格安というか激安だろ?

 でも『から』って言葉には注意しろよ。


「これにいくつかオプションを付けることもできます。例えばお掃除ウサギや、部屋を少し拡張といったオプションですね。詳しくは入隊後にご確認ください。普通に住むだけなら基本の家賃だけで大丈夫です。ですのでお一人でもご家族ででも安心してお引越ししてきてください。来週の日曜には構築も完了してる予定です」


 ウチの冒険者だった人は知ってると思うが、知らない人からしたらお掃除ウサギがなんなのか気になって仕方ないと思う。


「食事の環境に関してはパラディン隊食堂というものをご用意させていただきます。そこでは大樹のダンジョンのバイキング会場で出してる料理などもご提供させていただく予定です。ただし、こちらも無料ではございません。そこまで高くないとだけお伝えさせていただきます」


 そんなこと言ってもどうせ安いんだろと思われてそうだけど。


「では最後になりますが、パラディン隊の始動時期についてご説明させていただきます」


 さすがに明後日からってわけにはいかないからな。


「正式には2月1日に設立、始動となります。それに伴い、みなさんがお持ちの合格通知書の効力は始動一週間前の1月25日までとさせていただきますのでご了承願います。もしどうしても2月1日に入隊できないご事情がおありの方はそれまでにご相談ください。入隊、合格辞退等、既に決心を固めておられる方は今日明日にでもお伝えいただければ幸いです。また、後日辞退する場合でもこちらに連絡する必要はございません。期日をもちまして辞退と判断させていただきます。入隊される方で期日までにこちらに来られない方は、あとでお渡しする封書をお送りいただけるようお願いいたします」


 ほとんどの人は一旦家に帰って考えるんだろう。

 親や兄弟や友達に相談したりもするんだろうか。

 故郷がこの近くの人はいいが、遠くから引っ越してくることになる人なんてもしかしたらもう一生家族と会えなくなるかもしれないんだよな。


「また、入隊を決められた方で今すぐにでもこちらへ引っ越しを希望される方がいらっしゃいましたら遠慮なくご相談ください。単身の方は大樹のダンジョンの宿屋に宿泊されることをお勧めしますが、家族がいる方はそうはいかないでしょうから」


 家族のことも配慮するのは当然だからな。


「では私からの説明は以上となります。みなさん、ぜひパラディン隊への入隊をご考慮くださいますようお願いいたします。ありがとうございました」


「「「「パチパチパチパチ!」」」」


 うん、第一部は好評のようだ。

 次のエマもまぁ心配ないだろう。


「……なんだかお腹痛くなってきました。トイレ行ってきますから場を繋いでてもらえますか……」


 エマはいなくなった……。

 この大盛況ぶりを見てプレッシャーに感じたのか……。


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