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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百四十話 合格者説明会

「……以上だ。ぜひ王国騎士隊に君たちの力を貸してほしい」


 終わったか。

 三十分いっぱいいっぱい使ったな。


「リアム王子様、ゴンザレス騎士隊長様、ありがとうございました。ではこれにて王国騎士隊の合格者説明会は終了といたします。ご参加いただきありがとうございました。五分の休憩時間のあと、パラディン隊の合格者説明会を行いたいと思います。対象者の方はお残りください」


 さすがにセバスさんの顔にも疲れが見えてるな。


 トイレに行く人や、王国騎士隊のみに合格した受験者たちが説明会場から出ていく。

 次は少なくとも今の人数から五十人は減るわけだからな。

 でも申し訳ないと思ったらいけないってララから散々言われてる。

 受験者たちも遊びで来てるわけじゃないし、こっちも仕事だから割り切らないと。


 リアムさんや騎士隊長は最後方の席で聞いていくようだ。

 お腹減ってるだろうから食事に行けばいいのに。

 と思ったらなにか食べ始めた。

 あれは自動販売魔道具で買ってきた軽食か。

 そこまでしてウチの説明会を聞きたいのか。

 普通のことしか言わないのにな。


「ロイス君もお話しますか?」


「いや、なにか特殊な質問をされない限りはジェマとエマに任せるよ」


「はい、任されました。エマちゃん、頑張りましょう」


「はい! ここまでくるとなんだか楽しくなってきました!」


 実に頼もしいじゃないか。

 やっぱり色んなことを経験するのは大事だな。


「ふふっ、エマちゃん目当ての男性がたくさん入隊してくれるかもしれませんね」


「えっ!? それはどう捉えたらいいんですか……みんなの前に立つのが恥ずかしくなってきそうです……」


「今日のエマちゃんはいつも以上に輝いてますから自信持って笑顔で対応してください」

「はい……」


 カトレアのエマ大好き病にも困ったものだ。


「映像は大丈夫なんだよな?」


「もちろんです。お二人に恥をかかせるわけにはいきませんし、王国騎士隊になんか一人も取られてたまるものですか」


 今日のカトレアは少しおかしい……。

 明後日からはしばらく休ませたほうがいいかもしれない。

 でもサハやボワールの魔道化の件があるからそうも言ってられないんだよなぁ。


「じゃあ行くか」


 そして俺とジェマとエマは説明会場に転移した。

 カトレアは審査室で仕事だ。


「「「「おおっ!?」」」」


 なんだその驚きは?

 エマを見て天使が来たとでも思ってるのか?

 それともジェマか?


「みなさんお揃いでしょうか? では続きまして、パラディン隊の合格者説明会に入らせていただきます。最初に説明担当の者をご紹介させていただきますね。まずダンジョン管理人のロイス様でございます。おやおや、今日一日みなさまの審査をずっとしておられましので大変疲れてらっしゃるようですね。普段は気さくな方でございますので冒険者のみなさんからの信頼も非常にお厚いんですよ。なによりパラディン隊の発案者でもありますし、今後みなさんとの関りも深くなりますからどうぞお見知りおきを」


 軽く頭を下げておく。

 というかそんな紹介は別にいらないんだが……。


「「「「パチパチパチパチ」」」」


 拍手してくれるのか。

 みんな心に余裕ができてきたようだな。


「続きまして、私と同じくマルセールの町役場で働いておりますジェマでございます。現マルセール町長であるシャルロット王女様の秘書のような立場であり、今後パラディン隊とマルセールの町と大樹のダンジョンの三つを繋ぐ立ち位置に入ることも決定しています。今回はマルセールの町の代表としてこのジェマがお話させていただくことになりますのでよろしくお願いいたします」


「「「「パチパチパチパチ」」」」


 む?

 俺のときより拍手が大きく感じるのは気のせいか?


 でもセバスさんは娘だとは言わないんだな。


「最後に、今日一日みなさんのお目にかかることも多かったことでしょう。大樹のダンジョンの従業員であり、封印魔法の使い手でもあるエマ様でございます」


「「「「おおっ!?」」」」


「「「「パチパチパチパチ!」」」」


 歓声があがった……。

 拍手も俺のときとは比べものにならない……。


 まぁみんなエマがまさか封印魔法を使えるとは思ってなかっただろうしな。

 パラディンを目指すからには封印魔法のことも少しは知ってるだろうし。


「実はこのエマ様、元々大樹のダンジョンで冒険者として修行していた身でもございます。ですが大樹のダンジョンの総支配人であるララ様がエマ様の潜在能力を見いだし、封印魔法の使い手としてスカウトをしたわけでございます。そしてなんと現在は大樹のダンジョンにおける封印魔法部門のリーダーとしてご活躍されています。直近でございますとつい二週間ほど前、パルド王国の南東部にありますリーヌの町にて、町全体を封印結界で覆って町や人々を魔瘴から救ったのがほかでもないこのエマ様なんでございます!」


「「「「おおっ!?」」」」


「「エマ様ー!」」


 なんだこれは……。

 さすがにドン引きだぞ……。


 ってエマはなぜ笑顔なんだ?

 さっきカトレアに言われたからか?


「大樹のダンジョンからは代表してこのエマ様にお話をしていただきます。では各人のご紹介はこのくらいにして、まずマルセール町役場のジェマから、パラディン隊の任務内容、給与、居住環境等について説明させていただきます」


 やっと始まるのか。

 セバスさんに話をさせると長くなって仕方ない。

 ジェマもこの雰囲気の中で少しやりにくそうだが、ジェマのことだから無難にこなしてくれるだろう。


 そしてジェマが登壇した。

 俺たち三人は端に行き、ジェマと受験者たちを見渡せる位置に座る。


「みなさん、一次試験を思い出してください」


 そう来たか。


 ジェマの後ろの壁には一次試験の様子が映し出された。


「あの場所に最初敵が侵入してこなかったのは封印結界によって守られていたからです。その封印結界の強度は術者が使う封印魔法の熟練度に依存し、維持するには魔力が必要になります」


 もしかしたらもうこのくらいのことは知ってる人も多いかもしれない。


「しかし、封印魔法は絶対的なものではありません。多くの魔物が襲ってきたり、あるいは強烈な一撃を受けた場合、あのように結界の一部、または全てが一瞬にして破壊されてしまうおそれがあるんです」


 ただの試験場の演出でああやってると思ってた人もいるだろう。


「つまりあれは今後のマルセールや近隣の村、町そのものです。今すぐああなってもなにもおかしくはありません。現にマーロイ帝国は僅か一週間で大陸全体が魔瘴に覆われました。そして先ほど話があったように、つい先日リーヌの町も同じように魔瘴に覆われ始め、今頃町の周辺は魔物で溢れていることでしょう」


 こわくなったか?

 今日の受験者にリーヌの出身者はいても、この試験のためにリーヌから来たという人はいなかった。

 まだ町の外へ出る勇気がないのかもしれない。

 もしくはパラディン隊になるよりもリーヌの町を守ることを優先したのかもしれない。

 きっと町の人全員で今後のことを考えているはずだ。


 ……もしかしてもう滅んでたりして……なんてことはさすがにないか。

 そんなことがあったらウチの封印結界の信用にも関わるしな。


「マルセールも近い将来必ず同じように魔瘴に覆われることになります。ただ、マルセールがリーヌや王都とは大きく異なる点が一点、いや二点……いや、少なくとも四点は違いますね。しかも大きく違う点です。今から言うこと重要ですよ?」


 そんなに?


 って思うだろ?


 まずマルセールの町の規模は驚くほど小さい。

 ってそれは入ってないか。


「まず大樹のダンジョンの存在、そして魔道ダンジョンの存在、次に冒険者の存在、最後に……パラディン隊の存在です。では一つずついきますからね?」


 たぶん魔道ダンジョンって言われてもピンときてないよな。


「なにより一番大きな点は、大樹のダンジョンがあるということです。ここでは毎日大量の魔力が生み出されています。どうやって生み出されているかは企業秘密です。でもその魔力のおかげで大樹のダンジョンの経営は成り立っています。あ、私はつい最近まで大樹のダンジョンの従業員を兼務しておりましたので色々と詳しいんですよ?」


 お?

 みんなのジェマを見る目が少し変わった気がする。

 今まではただのお役所のお堅い人と思ってたんだろう。


「では次に魔道ダンジョンを簡単にご説明させていただきます。みなさんはここに来るときに魔道列車をご利用されましたよね? あの魔道列車が走ってる場所が魔道ダンジョンになります。マーロイ帝国やジャポングから避難してきた人が一時的に住んでおられるのも魔道ダンジョン内です」


 映像では南マルセール駅の様子が映し出されている。


「この魔道ダンジョンの役割はそれだけではありません。大樹のダンジョンで生み出された魔力を供給する役割も担ってるんです。ということは当然魔道列車の動力となっている魔力もここから供給されていることになります。今まさにみなさんがいるこのダンジョンからです」


 受験者たちの表情が少し緊張したものに変わった。

 今ジェマが言ったことの重要さを理解してくれたんだろう。


「勘の良い方はお気付きでしょう。そうです。封印結界維持のための魔力もここから供給されています。マルセール近隣の三つの村、そしてサウスモナの町を守っている封印結界の魔力もです。そして近い将来、ボワールの町にも供給が開始されます。つまり、遅くとも3月末までにはボワール駅が誕生することになります」


「「「「おおっ!?」」」」


 ん?

 驚くところなのか?

 勤務地としてボワールがあるんだから、それを見たら誰もが気付くと思ってたんだが。


 あ、でもリーヌのような封印結界パターンってことも考えられるか。

 ボワールはまだマルセールに近いほうだから町独自のパラディン隊ができるのかもと思ったのかもしれない。


「魔道ダンジョンの重要性を少しは理解していただけましたでしょうか? では次に、先ほど言った重要要素の3点目、冒険者についてお話します。あ、パラディン隊の話はこのあとですので、決して話が長いとか思わないでくださいね?」


 誰もそんなこと思ってないと思うが。

 むしろ興味津々でもっと色んな話を聞きたいって感じに見えるぞ?


 あ、リアムさんや騎士隊長は少し険しい顔してるかも……。


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