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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第三章 集いし仲間たち
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第四十四話 第一回ダンジョン会議

「これより第一回ダンジョン会議を始めます」


「「パチパチパチパチ」」


 司会進行はララである。

 リビングのテーブルの真ん中には水晶玉、そのすぐ傍にはドラシーが自分用サイズのソファに座りお茶を飲んでいる。

 俺の横にはカトレアが座り、ララは向かいのソファに座っている。


 今までも会議は何度もしてきたのだが、なぜか今回はきちんとした形でやってみたいと言い出したのだ。

 もちろんララが。

 発言とかも大人っぽくしてみたい年頃なのであろう。


 時刻は土曜日の十三時。

 今日は地下三階オープン週としての営業が終わる日でもあり、この一週間を通しての課題整理などをするにあたり適している日でもあった。

 明日の日曜は完全休養の予定にしている。

 十歳の少女を毎日働かせてるのはいくら妹だからといえども少なからず罪悪感はあるんだよ?


 水晶玉には地下三階の様子が複数画面に分かれて映っていた。

 いくつも同時に見れたほうが便利だということで、マルチ画面とやらを導入したらしい。


 しかも今までは水晶玉の中を見てる感じだったのに、画面が水晶玉から浮き出ていて凄く見やすい!

 画面も大きいし、三百六十度どの角度から見ても同じに見えるらしい!

 もちろんドラシーとカトレアの成果物だ。


 マジで俺いらなくない?

 今まで何度も感じた疑問を再び感じずにはいられない。

 それでも、俺は魔物使いだから!

 と、むりやり自分を納得させる。


「まず地下三階の様子について私なりの考察結果を発表したいと思います」


 どうやら地下三階の攻略状況を説明してくれるようだ。


「初日には誰も到達者のいなかった第一休憩エリアにも、昨日の段階では三十人程度到達することができるようになってきました。これはいい傾向ですね。順調にレベルアップしていると思います。ただ、その全てが左ルートからです。右ルートにも行ってもらわないと鳥さんたちが暇で可哀想だと思います」


 冒険者たちが左ルートばかり通るようになっていたのは右ルートに比べて魔物が討伐しやすいからであろう。

 それに鹿肉や猪肉がドロップ素材として知れ渡ってきたことも関係しているかもしれない。


 右ルートは山肌になっているので視界はいいが、どうやら出てくる魔物が問題らしい。

 空から急降下してくるコンドルン、岩のような体で防御力が非常に高いロック鳥、それに空は飛べないが単純に強く非常に好戦的なシャモ鳥。

 複数体で出現するとソロでは難しいことも不人気の原因かもしれない。

 なので右ルートのドロップ品は未だに誰もゲットすることができていない。

 俺としては早く丸鳥をドロップして驚いてもらいたいものなんだけど。


「次にBBQエリアですが……こちらは人が訪れることはあるものの、設備を見るだけですぐ休憩エリアに戻ってしまい、実際に使用された回数は……ゼロです」


 BBQエリアは完全な不人気エリアと化していたのだ。

 これにも原因がいくつかある。


 まず肉をドロップ素材としてゲットできる冒険者がまだそう多くはいない。

 休憩エリアには辿り着けるものの、簡単に魔物を倒せるようになったわけではないので、ドロップ率5%の肉を入手できる者は限られているからだ。

 それに運よく肉をゲットでき休憩エリアに辿り着いても、肉は売るために持ち帰る者ばかりだったのだ。

 さらに、BBQエリアは休憩エリアと違って体力を吸収され続けるといったこともわずかではあるが原因として存在しているのかもしれない。


「そして山頂エリアについてですが、こちらに関しては到達者はまだゼロですがそれは仕方ないものと考えましょう。時間が解決してくれるものだと思います」


 休憩エリアからしばらく進むと山頂エリアに到着する。

 しかし、山頂までの道には左ルートと右ルートの全ての敵が出現するので、右ルートの敵が倒せない冒険者たちはまだ先には進めないのであろう。


「以上のことより、地下三階については当分はこのまま様子見でいこうと思いますがいかがでしょうか?」


「……それでいいと思います。ただ、BBQエリアでの体力の吸収はなくしてもいいんじゃないでしょうか?」


「そうですね。肉のドロップ率を考えても今はなくてもいいのかもしれませんね。お兄はどう思いますか?」


「そうだな。ダンジョン内で肉を消費してもらったほうがいいし、吸収はやめにしようか」


 これについては初めからいらなかったのかもしれないな。

 そもそもダンジョン内で食べてもらったほうが面倒がなくていいんだからな。


「ではこの件はそういうことで。ドロップ率についてもこのままでいいですか?」


 俺とカトレアは無言で頷いた。

 猪肉と鹿肉は少しずつではあるがドロップしてるようだし、これから増えることを考えたら今はこの確率で問題ないと思う。


「では地下三階については以上となります。続いて地下一階と地下二階についてです」


 新たに設けた冒険者カードのシステムにより、経験者はダンジョン入り口から地下二階や地下三階に転移できるようになった。

 一度の階層到達とある程度の経験値取得によるランクが必要となるが、初心者の冒険者にとっては地下一階がまだ経験の浅い自分たち専用のようになっていたため、どの冒険者たちにも比較的好評であった。


「ダンジョンの構成にはなにも問題はないと思います。不満の声が聞こえてくるようなこともありませんので。ただ、初心者の方含め初めてこのダンジョンを訪れる方にとってはシステムを理解するのに時間がかかるといった面もあります。そこでこのようなものを用意いたしました」


 ララがテーブルの上に一枚の見開きになった紙を置いた。

 表面、中面、裏面ともに文字と挿絵が書いてあるようだ。

 表面の一番上には、大樹のダンジョンの歩き方と書いてある。

 要するにマニュアルを作ったのであろう。


「このようにまずはダンジョンに入るために最低限理解が必要になるシステムの説明、そして地下二階からの魔物急襲エリアの説明、地下三階からの魔物の仕様変更、ダンジョンから出た後に行う備品の返却方法などについて、難しくならないようにまとめたつもりです」


 これはわかりやすいな。

 絵もあって見やすい。

 小屋外の回収箱の位置まで絵で書いてある。

 さりげなく自動販売魔道具で売ってる物についても書いてあるじゃないか。


「これはいいな。これを見てもらいながらだと説明するのが簡単になりそうだ」


「……いいですね。質問できない方もいらっしゃいますからね」


 なにがいいって俺が楽できることではないか。

 さすがララだ、冒険者にも俺にも嬉しい案を出してくれるとは。


「ではこれをコピーしますね。ドラシーが。ダンジョン内部については以上になります。続きまして、地上エリアについて話し合いましょう。まずは小屋からいきましょうか」


 新しくなった休憩小屋は非常に好評であった。

 前の倍以上のスペースに、増設されたテーブル、ベンチ、トイレ、水道、それに新たに設置されたシャワー室。

 ダンジョンから出た後はもちろんのこと、ダンジョン入場前にも、一息ついたり、装備を確認したり、パーティを組んだりする場としてよく利用されていた。


「シャワー室が思ったよりも利用されているらしく、特に男性側でもう少し増設してほしいとの要望がありました。女性はそこまで人数がいないので現状で特に問題はないようです」


「増設か……。確かに男性側は順番待ちが発生してるもんな。でもそれはみんなが同じ時間に出てくるからなんだよなぁ」


「……そうですね。増やしても結局は使われない時間が多すぎて……魔力とスペースの無駄遣いかと思われます」


「私もその通りだと思います。男がシャワーくらいでねちねちするなって感じです。たいして時間もかからないんだからね」


「……」


「というわけでシャワーの件は却下ということにします。で、次なんですがもう一つ要望をいただいております」


 というかいつ要望を聞いてるんだ?

 冒険者たちが帰りの準備をしているころ、ララは家で夕飯の準備をしているのに。

 朝も無理だから、となるとダンジョンの中でか?

 午後はいなくなることが多いからそのときかもな。


「荷物を預ける場所が欲しいとの意見が多数出ております」


「荷物を預ける場所?」


「はい、シャワー室ができたおかげで、シャワー後にはきれいな下着と服で帰りたいというお客さんがいまして。男女問わずにですね。要するに着替えの服をダンジョン内に持っていくのは邪魔だから預けておきたいということですね。これについてはどうしましょうか?」


 受付時に俺が預かれば解決するのか?

 荷物と引き換えに番号札でも渡してさ。

 いや、でもそれはこっちの管理責任も問われるようなこともあるかもしれないし、なにより面倒だな。

 荷物にも番号を振らないといけないしな。


「却下でいいんじゃないか?」


「……私としてはなにか設備があってもいいように思います。女性は携帯したい物が多いですし。いつも持っていたいけどダンジョンだから持っていけないような物もあると思いますし、魔道具でどうにかできないでしょうか? ……ロイス君」


「私もカトレア姉の意見に賛成です。女性の意見は取り入れるべきだと思います。お兄は今すぐ案を考えてください」


 くっ、一対二じゃ不利すぎる。

 なに?

 やはり俺に預かれっていうのか?

 嫌だよ面倒くさい。


「じゃあ小屋の中に鍵付きの箱みたいなのを縦と横にいっぱい並べてさ、冒険者が自分で勝手に入れられるようにするのはどう? 鍵は冒険者カードで開閉可能にして、一人一つまでね。あっ、どうせなら受付済みのカードでしか開閉できないようにしよう。もし、鍵を開けるよりも先に指輪を回収箱に入れてしまった場合は強制的に箱の中身を管理人室内のどこかにでも移動させて、その鍵付きの箱にはメッセージを出すようにしといてさ。これで忘れ物の心配もないし、数日間入れっぱなしにされる心配もない」


 これでお願いします。

 幸いにも小屋の中は広いんだ。

 魔道具を作るのはカトレアだから俺はなんの苦労もない。


「……ドラシーさん、丈夫な材料ありますか?」


「えぇ。多少のことじゃ壊れないもの用意するわ」


「なら壁際に縦四十センチ、横四十センチ、奥行き八十センチくらいの箱型の物を縦に四列横に十列並べるイメージでどうかな? 前面に鍵付きのドアをつけてさ」


 どうやら意見が通ったみたいだな。

 後は任せておけば明日にはできあがってるはずだ。

 それがいつものパターンだからな。


 これで今日の会議も終わりか?

 来週はそんなに新しいこともなく、のんびりできそうだ。


「では最後に、新しい商品についての検討会を行いたいと思います」


 まだ終わりじゃなかったのか……。


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