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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百三十六話 強気な少年

 もう十七時か。

 面接試験もようやく半分が終わったらしい。

 まだあと半分残ってると考えると気が重くて仕方ないが。


「次行くね」


 マリンは記録もしながらだから大変だろうな。


「ろ、606番、バ、バーナードだ! 十五歳、王都出身だ!」


 ふふっ、緊張してるようだが元気があっていいぞ。


「どうぞお座りください」


「あ、あぁ! 失礼する! ……あっ!?」


 イスに座ろうとして転げ落ちた……。

 半分しか座れてなかったようだ。


「大丈夫ですか!?」


 すかさず騎士さんが駆け寄って手を差し伸べる。

 この人、優しくていい人だよな。


「では始めますね」


「う、うむ。よろしく頼むぞ」


 面接の場でどういう口調をすればいいかわからなくてこんな話し方になってるんだろうか?


「魔物と戦ったのは今日が初めてですか?」


「……よくわかったな。そうだ、今日が初めてだ」


「剣はどこかで習ってました?」


「そんなことまでわかるのか……。確かに訓練の一環で毎日数十分程度は振っているが」


 学校で剣の訓練があるのかな?

 王都には学校もいっぱいあるらしいから、学校ごとに教育方針が違ったりもするのかも。


「初めての魔物との戦闘はこわかったりしませんでしたか?」


「そりゃこわ……いや、こわいと思うからこわくなるんであって、今日のように絶対に死なないという安心感を信じて戦ってみたら意外になんとかなった。完全にこの指輪のシステムとやらのおかげだがな」


 素直じゃないか。

 自分が弱いということを認識できてるんだな。

 剣を振ることはできても、実際に魔物との戦闘となると全然変わってくるからな。


 ……でも剣の振りだけを見てるとCグループでも良さそうなもんだけど。

 適性試験のときはブルースライムがこわくてもっと動きが悪かったのかも。


「なぜパラディン隊を志望されるんですか?」


「……強くなるためだ」


「それならウチで冒険者になられてはいかがでしょう? パラディン隊に入ると任務で修行の時間が取れないことも多いですから」


「それではダメなんだ。確かに冒険者は自由でいいが、俺は町や人々を守ることを最優先に考えたい。だからといって王国騎士隊の訓練程度ではぬるすぎて強くなれるはずがない。そこでピッタリなのがパラディン隊というわけだ」


 ほう?

 まだ子供だと思ってたら、しっかり考えてるじゃないか。


 強くなるためという発言も、パラディン隊と王国騎士隊を比較しての発言だったんだな。

 はなから冒険者になる気はないってことか。


 でも騎士さんは痛いところをつかれたんじゃないか?

 って頷いてていいのかよ……。

 あとで怒られても知らないからな。


「では王国騎士隊には全く興味がないと?」


「いや、いずれは王国騎士隊に入り、引っ張っていけるような存在になりたいと思ってる」


 ん?


「つまりパラディン隊には単に修行のために入隊したいと?」


「少々聞こえが悪いが、その通りだ。王都を守ることがこの国を守ることにも繋がると俺は信じてる。だが今の俺の力では全く役に立たない」


 今朝リアムさんが似たようなこと言ってなかったか?

 パクリか?


「再度言いますが、強くなりたいのなら冒険者になったほうが早く強くなれますよ?」


「俺は冒険者にはならん。決して見下してるとかそういうわけではなくて、単純な強さだけを求めてるわけじゃないんだ」


 う~ん。

 なんとなくわかる気もするが、中途半端な気もする。


「それなら最初から王国騎士隊に入って、自ら厳しい訓練を課したほうがあなたの将来のためになると思いますが?」


「だからそれではダメだと言ってるだろ? パラディン隊の環境は王国騎士隊とは比べものにならないほど整うと聞いてるし、強い冒険者が近くに大勢いることで刺激にもなるんだよ」


 ……なんか少しイラっとしてしまったかもしれない。


 この人、俺より年下だよな?

 言葉遣いは置いといて、なんでこんなに偉そうなんだろう。

 まぁそれくらいで怒るほど俺は子供じゃないけどな、うん。


 でも少し気になることを言ったな。


「王国騎士隊の環境にお詳しいんですか?」


「む? ……少し見学する機会があってな」


 前にマリンが言ってた学校の社会見学とかいうやつで行ったのか?


「ではパラディン隊の環境の話はどこからお聞きになったんですか? まだ整備中なので情報はあまり知られてないはずですが?」


「そ、それはだな、大樹のダンジョンが主導なんだから当然凄いものが出来上がるんじゃないかという期待や想像も込みの話だ」


 ふ~ん。

 ウチのことを知ってる冒険者ならそう思ってくれるんだろうけどさ。


「ねぇ騎士さん」


 ん?

 マリンが急に騎士さんに話しかけた。


「な、なんでしょうか?」


「なにか心配事でもあるんですか? さっきからずっとソワソワしてますよね? トイレですか?」


「いえ……そういうわけではないんですが……」


 どういうことだ?


 あ、もしかしてそういうことか?


「マリンもなにか質問してやってくれ」


「うん。バーナードさん?」


「な、なんだ?」


「なんでそんなに偉そうなんですか?」


 え……。


「べ、別に偉そうになんかしてるつもりはない! 普段からこういう話し方なだけだ!」


「ふ~ん。ねぇバーナード、あなたが戦ってる映像見る? ほら、色んな方向から襲ってくるブルースライムたち相手にめちゃくちゃこわがってるよ?」


 マリンちゃん?


「そんなわけ……本当だな。でも最後らへんはしっかり戦ってるはずだからよく見てくれ!」


 マリンの失礼な口調には怒らないのか……。


「それでもウチのダンジョンで言うと初心者~初級者ってやつね。なのになんであなたが一次試験を通過できたかわかる?」


「そりゃ俺の闘志を評価してくれたとか、今後の成長を期待してくれたとかだろ?」


「違うよ。私たちはどの組からも最低でも二人は通過させるようにしてるの。例え二人選ぶのが難しいような組でもむりやりポジティブな要素を見つけるようにしてね」


「……つまりそれが俺のいた組だったと?」


「あ、それはすぐわかるんだ」


「マリン……少し失礼だぞ……」


「お兄ちゃんは黙って聞いてて」


 まさかまたマリンはお怒りモードなのか?

 いくらこの人が騎士隊のスパイだからってさ。

 バーゼルさんも黙って見てないでなにか言ってくれたらいいのに。


「で、ポジティブ要素はほかにも似たような人がいたのに、なんであなたが通過したかわかる?」


「……誰かが俺を推してくれたとかか?」


「えっ!? 凄いじゃん! そう、まさにその通り! 私たちが悩んでたら、まだ若いからこの子にしたらどう? みたいな意見があったの」


 確かにそういうやり取りは何度かあったな。

 後ろからちょくちょく口を出してきてたからそのときは特になにも思わなかったが。


「私、去年まで王都に住んでたんだよね」


 どうしたいきなり?


「だからそれなりに王都のことには詳しいの。私の師匠はお城にもよく出入りしてたしね」


「……」


「あっ!? そういうことかぁ~。だから第二王女様が来てたんだぁ~」


 だからどういうことだよ?


「……お姉様は関係ない」


「え? なんて?」


 お姉様?


「ここには俺の意思で来てるんだ。リアムお兄様もダイアナお姉様も、ジェラードお兄様もシャルロットお姉様も関係ない。俺がパラディンになりたいだけなんだよ」


 えっと……。


「じゃあさっき言ってたことは全部本音ってこと?」


「あぁ。パラディン隊を踏み台にするようで申し訳ない気持ちはあるが、俺は将来騎士隊に入って王都を守りたい。それになにより国王を支えたい。そのために今はパラディン隊で色々勉強する必要があると思ったんだ。もちろんジェラードお兄様とシャルロットお姉様が近くにいることが心強いというのもある」


「ふ~ん。言うことだけは一丁前だね。どうするお兄ちゃん? ……あ、この人第四王子だよ?」


 第四王子……。


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