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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百三十話 ピリピリした空気

 疲れたので十分ほど休憩を入れることにした。

 俺たちが休憩してる間も受験者たちはそれぞれの部屋で緊張して待機してるんだろうな。


 受付後に入る説明会場。

 適性試験後から一次試験までの間の待機室。

 一次試験後から二次試験までの間の待機室。


 試験内容がバレないようにするために部屋をいっぱい作ることになってしまった。

 しかも体を動かせるようにそれなりに広い部屋だ。

 試験って大変だな。


「じゃあ一次試験が終了した人にバイキング会場を案内しますね!」


「あぁ、頼んだ。予定より人数が多くなるかもしれないからもし席が足りなさそうならすぐ言ってくれ」


「はい!」


 このあと不合格を告げられる人たちも、無料でバイキング料理が食べられたんだから許してやろうと思ってくれるかもしれない。


「それとルッカ、明日に試験受ける受験者はもう来てるか?」


「はい! 三十名ほどもう部屋に入ってます!」


「そんなにか……。今日の昼食はバイキングを利用させないようにしてくれよ」


「大丈夫です! 料理販売魔道具は待合室に設置したものを使うようにしてもらいますね!」


「あぁ、それでいい。待合室の人たちからなにか要望があるようなら聞いといてくれ」


「わかりました!」


 モモとルッカは審査室から出ていった。

 若いって元気あっていいよな。


「ふぅ~、やっと適性試験が終わったわい。ワシもう明日は無理じゃ」


 ジジイだからな。

 今日さえしっかり働いてくれればそれでいい。


「明日はダンジョン休みなので、誰か冒険者雇いますからジジイは休んでていいですよ」


「え、冗談じゃよ……」


「遠慮しなくていいですから。この一週間はダンジョン設営も手伝ってもらってお疲れでしょうし、明日はゆっくり見学でもしててください」


「嫌じゃよ……ワシだってまだまだやれるんじゃ……」


 頼りにされたいんなら最初からそう言えよ……。

 面倒なジジイだ。


「明日はどのみち二人だけでは無理そうですからね。とりあえず今は一次試験のほうの審査に加わってください。思ってたより大変なんですよ」


「任せるんじゃ。でもその前に少しだけ休憩じゃ。トイレ行ってくるぞい。シャルルちゃんも休んどくんじゃよ」


「そうね……」


 シャルルは完全に疲れきってるようだ。

 慣れないことはするもんじゃないぞ。

 たくさんの画面を見てるだけでも疲れるって人は多いからな。


「シャルルはもういいぞ。お疲れ」


「えっ!? まだやるわよ! 次が大事なんだからね!」


「その大事な審査をお前に任せるわけにはいかないだろ。適性試験とはわけが違うんだからな」


「大丈夫よ! やらせなさいよ!」


「ダメだ。お前は後ろで見てろ」


「嫌よ! 私がこの目でしっかり審査してやるのよ!」


 やけに食い下がるな。

 自分が冒険者になってまだ半年足らずということを理解してるのか?

 Eランクだからって調子に乗ってるのかもしれない。


「シャルルちゃんさ、誰かお気に入りの受験者でもいるんじゃない?」


「えっ!? そ、そ、そんなことないわよ!」


 マリンの指摘にシャルルは明らかに動揺してるようだ……。


「ダンジョンで知り合った冒険者とか?」


「違うわよ!」


「ふ~ん。シャルルちゃん好みのカッコいい人でもいた?」


「そんなわけないでしょ!」


「じゃあ王都の騎士とか?」


「……」


 なんてわかりやすいやつ……。

 マリンの追及になんて答えればいいかわからなくなって言葉が出なくなったようだ。


 でも騎士か。

 パラディン隊に入りたかったのだろうか?

 それとも潜入させてるのか?

 でも試験内容は今後ろで騎士たちも見てるからな。

 実際に試験のレベルを肌で感じさせてるのかもな。


「ロイス君、すまない」


 ん?

 リアムさんが俺に謝ってきた。


「実は騎士の中に、パラディン隊の試験を受けたいから騎士を辞めたいって言ってきた者が数名いたんだよ」


 ほう?

 合格するかもわからないのに、試験を受けるためだけに騎士を辞める覚悟があったってことか。


 もしかしたら西部地方の出身者だったりするのかもな。

 故郷に騎士隊のような組織ができるのならそっちに移りたいって人もいるだろうし。


「俺は騎士隊長から相談されたんだが、もちろん引き留めるように言ったさ。今は一人でも辞められるのは痛いし、その数名はまだみんな若い騎士なんだ。今後の騎士隊を担っていってもらわないと困る人材なんだよ」


「ふふっ」


 カトレアが笑った……。

 どこに笑う要素があったんだ?


 ってあれか。

 まともな人なら騎士隊よりパラディン隊を選ぶに決まってます的な笑いか。


 でもまた険悪な空気になるから少し控えてほしい……。


「それでも意志が固いようだったから、特別にパラディン隊の採用試験を受けることを許可したんだ。不合格になっても今まで通り騎士隊の任務に就いてくれればいいという条件で」


 へぇ~?

 いい上司じゃないか。

 騎士にとってはリスクゼロだもんな。

 まぁ不合格になったことを同僚からいじられ続けることになるかもしれないが。

 この騎士隊長なんか特にネチネチ言いそうだ。


「でもだからといってシャルは贔屓なんかしていないと思う。でもシャル、これ以上誤解を生まないためにも一次試験の試験官はやめるように」


「……わかったわ」


 ん?

 どっちの意味で考えればいいんだ?


 合格してほしいのか?

 それとも不合格にさせたいのか?

 もしくはパラディン隊に合格したうえで、騎士隊としても合格を出して改めて口説きおとそうとしてるのか?


「あ、俺たちは騎士たちのことを応援してるよ。彼らの気持ちはパラディン隊に向いてるんだからそればかりはどうしようもない。それにパラディン隊に合格すれば騎士隊としても名誉なことだしな」


 応援してるのか。


 でも名誉ってなんだ?

 それはつまりパラディン隊のほうが上って言ってるようなもんじゃないのか?

 まだ発足もしてない組織なのに。


「名誉とか言ってたらダメでしょう。そんなんだから騎士の方々も騎士隊に愛想を尽かしたんじゃないですか? 王国騎士隊とパラディン隊はライバルとして切磋琢磨していくべき関係だと思います」


 おい?

 カトレアちゃん?


「お姉ちゃん、騎士の人たちにもきっと色々と事情があるんだよ。今まで国や町を守るためには王国騎士隊に入るしかなかったところに、いきなりパラディン隊ができたんだからさ。あ、騎士隊は国や町っていうか王都専属か」


 マリン?

 お前までどうした?


「ちょっとちょっと、なんか空気悪いわよ?」


 お~、いいところに。

 スピカさんたち魔道士職の試験官組が戻ってきたようだ。


「師匠、第一王子様たちがね、王国騎士の人を何人か試験に潜り込ませてるみたい」


「はぁ? なにがしたいのよ?」


「いや……潜り込ませてるわけじゃ……」


「それにさっきから騎士隊長と二人で色々とうるさくてね、お兄ちゃんは審査に集中できないし、お姉ちゃんもずっとイライラしてるしでみんな迷惑してるの。たぶん妨害しようとしてるんだよ」


「リアム? それに騎士隊長、どういうこと?」


「「いや……」」


 そこはなにか言い返さないと……。


 どうやらこの二人はスピカさんに頭が上がらないらしい。

 というかスピカさんと対等で話ができるのってミランダさんくらいじゃないか?

 王様も怪しいもんな。


「ねぇ、まだ再開しないの?」


 最悪だ……ララまで来てしまった……。


「あ、ララちゃん聞いてよ」


「マリン、それはまたあとにしような。ララ、すぐに再開するから準備を頼む。適性試験は全部終了したから、ここからはスタートの間隔をもう少し詰めても構わない」


「……わかった。モニカちゃんに伝えてくるね。……マリンちゃん、なにがあったかあとで詳しく聞かせてね」


「うん! とりあえず早く一次試験終わらせようね!」


「「「「……」」」」


 もしかして一番イライラしてるのはマリンなのか?

 まさか俺のせいじゃないだろうな……。


「どうしたんじゃ? お? お主らも戻ってきたか。じゃあギャビンとディーナとルーナはワシの手伝いを頼むぞ。審査のポイントは今から説明するから。ユウナちゃんはシャルルちゃんといっしょにロイス君の補助に入ってやってくれ。スピカちゃんはお偉いさんたちのお相手してくれるかの? 少しうるさくて困っておったのじゃ」


 なぜかジジイが仕切り出した……。


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