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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百二十話 リヴァーナ対地下四階

 冒険者たちを激励して、リビングに帰ってきた。


「おかえり~」


「引き受けてくれて良かったよ」


「でもあれじゃただの指導だけじゃなくて、本当にパーティメンバーになる子を紹介されたって思ってるよ? 報酬の話とかも全く出てなかったし」


「……まぁそれはそれでいいだろ。短期間かもしれないけどパーティを組むことには違いないんだし。それにそのほうが本気で鍛えてやってくれるだろうし」


 気に入らなければすぐ解散してもいいとは言ってあるし。

 もしリヴァーナさんがミオを気に入ったらそのままずっとパーティを組んでもいいわけだしな。

 まぁミオとパーティを組むのはリヴァーナさんが地下四階をクリアしてからという条件を出されたからいつになるかはわからないが。


 さて、みんなの様子はどうだ?


「……お? 俺の激励が効いたようだな」


 見るからにやる気に満ち溢れてるじゃないか。

 これが闘争心ってやつに違いない。


「みんなもお兄ちゃんに褒めてもらいたいんじゃない? リヴァーナさんだけズルいって思ってそう」


「はははっ。褒めて魔物急襲エリアを突破できるようになるんならいくらでも褒めるけどな」


「……ユウナちゃんたち見てみなよ」


「ん?」


 ……シャルルは声を張り上げながら魔物を斬りまくってる。

 ユウナは火魔法を連発しまくってるようだ。


「あいつらもリヴァーナさん一人に負けてられないからな」


「この二人はたぶん怒ってるんだよ」


「は?」


「内緒話されたのが嫌だったんじゃないかな? ましてやリヴァーナさんとパーティ組むことを考えてるかもしれないんでしょ? それなのにお兄ちゃんが仲を取り持ってくれないから不満なんだよ」


「それ俺はなにも悪くないだろ……。あいつらも素直にリヴァーナさんを誘えばいいのに、ウジウジしてるからだよ」


「きっとパーティを組む仲間を誘うのって凄く勇気がいるんだよ。一生の付き合いになるかもしれないんだし。それにリヴァーナさんのほうが格上っぽいし、自分たちの実力と比べちゃうだろうしさ」


「でもヒューゴさんたちからは普通に誘われてたらしいぞ? 保留にしてる間にソロモンさんが入っちゃったけどな」


「ヒューゴさんたちは大人だからかもね。自分たちのほうが実力が下ってことを素直に認めることができるんだよ。だけどユウナちゃんとシャルルちゃんは張り合おうとするから、そのあたりのプライドが邪魔して頭を下げられないんだと思うよ」


「一言仲間になってって言えばいいだけなのにな」


「そのたった一言が難しいんだよ。自分たちが足手まといにならないかも心配するだろうし」


 そんなもんなのかな。

 弱い部分を補い合うための仲間でもあると思うんだが。


「あ、今話してたヒューゴパーティが戻ってきたよ」


 HPが赤になってということか。

 このパーティは放っておいても気合入ってるだろうな。

 もしソロモンさんがパラディン隊の試験を受けて合格するようなことがあれば、この四人でのパーティは今週が最後の可能性もある。

 そうなったら今度もまたリヴァーナさんを誘うのかもな。


「あ、ティアリスさんたちも」


 こっちのパーティはティアリスさんが抜けることが既定路線だろうからな。

 精神的支柱でもあるティアリスさんがいなくなればあっさり解散となるかもしれない。

 双子のお兄さん二人はこれからもいっしょに組むだろうけどな。


 ……ジョアンさんはユウナたちと組んでも面白いよな?


「ティアリスさんたちもリヴァーナさんと仲良いんだね」


「帝国で最初にリヴァーナさんと出会ったのはティアリスさんたちだからな。グリーンドラゴン相手にソロで戦ってたんだから相当衝撃的だっただろう」


 そうだ、リヴァーナさんはグリーンドラゴンでも相手にならないんだった。

 まさか地下四階を今日クリアされたりしないよな?

 最奥の魔物たち、せめて一週間くらいは粘ってくれよ……。


「動き出したね」


「いよいよ魔物急襲エリアに向かうのか……」


「心配?」


「初見でクリアされたらさすがにへこむぞ……」


「そっちなのね……リヴァーナさんの体の心配してるかと思ったよ……」


「リヴァーナさんの上級雷魔法は凄いんだぞ……しかも広範囲攻撃もできるんだ」


「さすがにそれは使わないんじゃない? ほかの冒険者もいるんだよ?」


 だと思いたいが、間違って当たっても死ぬことはないからな。

 だからなにも気にせずに思いっきり使うかも……。

 でもあんな雷が当たったらただの怪我じゃすまないんじゃないかな……。

 みんなの防御力を信じるしかないか……。


「はい、じゃあここまでね」


「え? 見ないのか?」


「私たちも仕事しないと間に合わなくなるよ?」


「そうだけどさ……」


 どんな戦い方をするのか見たいが、マリンの機嫌を損ねるわけにもいかない。

 まぁあとで映像で確認すればいいか。



 それから一時中断していたパラディン隊の試験会場の設営に入った。


 そしてあっという間に夜になった。



◇◇◇



「なんだと……」


「ペンギンテイオーが出てくることも知ってたのです……」


「嘘ついてるようには思えなかったわ……」


 本当に地下四階をクリアしたというのか?

 魔物急襲エリアを突破しただけじゃなくて?


「マリン、リヴァーナさんの、地下四階最奥にある転移魔法陣の到達フラグはどうなってる?」


「…………立ってるね」


「マジか……」


 もう一つ魔物急襲エリアを作っておくべきだったか……。


「ねぇ、喜ぼうよ。こんなに強い人が近くにいるんだからユウナちゃんとシャルルちゃんも刺激になるでしょ?」


「……素直に喜べないのです……私、性格悪いのです……」


「悔しさしかないわね。でも見てなさいよ。私たちだってすぐにクリアしてやるんだから。ねぇユウナ」


「……はいなのです」


 二人とも相当ショックだったようだな。

 俺は別の意味でショックだが。


「みんなは魔物急襲エリアの先のことを聞いてる様子だったか?」


「聞いてないと思うのです。私たちはこっそり確認したのです」


「じゃあクリアしたってことは?」


「それは知ってるのです。リヴァーナちゃんが嘘つく理由もないのです。それに第二休憩エリアに戻ってこないことでちょっとした騒ぎになってたのです……」


 それで魔物急襲エリアを突破したとわかったんだな。

 地下三階の魔物急襲エリア前の休憩エリアでもそうだが、意外とみんなそういうところはしっかり見てるんだよな。

 見てるというか気にしてるというか。


「さっきなんて小屋の前でみんなでリヴァーナのことを待ち伏せしてたわよ。まぁ私たちもその中にいたんだけどね。今もバイキング会場ではみんなに囲まれてるわよ」


 じゃあもう第三休憩エリアのこととか最奥に出現する魔物たちのことも知られてそうだな。

 さすがにドロップ品までは入手できてないと思うが。


「ララには伝えたか?」


「ふ~ん。……って感じだったのです」


 興味ないのか?

 それともクリアして当然と思ってたってことか?


「で、そのララはどこ行った?」


「牧場に行くって言ってたのです」


 まさか犬に早く会いたかっただけってことはないよな……。


 まぁ今は魔物たちや自分のことで精一杯で他人のことなんか気にしてられないってことなんだろう。


「ちょっとバイキング行ってくる」


 どんな雰囲気か見ておきたいしな。


 バイキング会場に入ると、会場全体が盛り上がってるのが即座に伝わってきた。

 どこにいる?


 ……というか人多いな。

 ついこないだ千人収容可能に拡張したばかりなはずなんだが。

 宿泊者が九百五十人を超えるようだとまた拡張を考えないとな。


 ……あ、週パスを導入したから昼間はもう既に千人超えてるのか。

 食べる時間帯に多少ズレがあるとはいえ、早々に拡張しないと不満が出てきそうだ。


 あ、あそこにいた。

 Eランクが集まってるな。

 まるで祝勝会のような雰囲気だ。

 悔しさもあるだろうが喜んであげられるのはユウナやシャルルと違って大人だよな。

 いったいどんな話をしてるんだろう?


「リヴァね、明日から新人の子と二人パーティ組むんだよ」


「「「「えぇ~っ!?」」」」


「「「「なんで!?」」」」


「だってリヴァはずっとソロでやってきたから、ソロの子とのほうが組みやすそうだもん。それにロイス君が推薦してくれた子だからきっといい子だし、新人とはいえ素質がある子に違いないからね」


 …………やっぱり帰ろう。


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