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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第二章 大樹のために
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第四十二話 ゲンさんとスライム

 俺とシルバは家に戻ってきていた。


「わぁ~! この方がゲンさんなの!? 大きいね!」


「……ララちゃん、こわくないのですか? ……私は無理かもしれないです」


 家の外には大きな岩のような魔物……ゲンさんが座っていた。

 座っていても地面から頭まで二メートル近くはある。

 立ち上がるとその高さは三メートルを優に超えるのだ。

 横は二メートルくらいだろうか、とにかくデカい。


 これが急に立ち上がったらそれはもう驚かずにはいられないぞ!


 ……はい、もちろん大きさにも驚いたのですが、俺が驚愕した理由、シルバが気絶した理由は別にあります。


 俺たち、この大きな岩がゲンさんだなんて思ってなかったんです!


 そりゃあヒントで岩を探せって言われたときは、その岩がゲンさんである可能性について考えてたよ!?

 だけどね、岩の上にスライムがいたでしょ!?

 それが急にこちらを振り向いてさ、その後に向こうから話しかけられたんだから、スライムがゲンさんだって誰でも思うでしょ!?

 ゲンさんですか? って聞いたら、そうだって答えたし。


 そりゃあさ、今考えるとずっとゴゴゴとしか言ってないからおかしいとは思うんだけどさ、あんな色のスライムの声なんか知らないしさ、石みたいなスライムだったから気付かなくても仕方ないよね!?


 そこであの事件だよ。


 シルバなんて小屋の前でいまだに気絶した振りをしてるんだからな!

 本当は起きてるの気付いてるんだぞコラッ!

 ゲンさんが気を悪くしないで運んでくれたから良かったものの。


「ゲンさん、早速頼みたいことがあるんですけどいいですか?」


「ゴ。ゴゴ(言ってみろ。それと普通に話せ)」


 普通にって言われても少し戸惑うな。


「……わかった。このエリアを少し広くしたいんだけど、そこの入り口付近の木をどうにかしてほしいんだ」


「ゴゴ? (抜いた木はどうするんだ? 作業自体はすぐ終わるぞ)」


「そこの小屋の拡張にそのまま使いたいんだ。今から頼んでもいい?」


「ゴ(わかった。離れて見てろ)」


 ゲンさんは立ち上がると、エリアから出て、道の左右にある木を抜きはじめた。

 そう、凄い力で軽く持ち上げるように抜いているのだ。

 まるで雑草を抜いているかのようだ。


 三十分もしないうちに頼んだ作業は終了した。

 地面の穴も丁寧に埋められていて、最初から木などなかったかのようだ。


「ありがとうゲンさん!」


「ゴ。ゴゴ(気にするな。これでマナが活性化するんなら森のためになる)」


「でも木は抜いちゃっても良かったの?」


「ゴ? ゴゴ(小屋に使うんだろ? なら木もなにも言わないさ。それに木はまた生えてくる)」


 そんなもんなんだ。

 木も生きてるんだな。


「……ねぇお兄? さっきから気になってるんだけど、あの肩に乗ってるのってスライムだよね?」


「……私もあのスライムが気になって……ゲンさんよりもそこにしか目がいきません」


「……俺もよくは知らん。セットなんじゃないかな」


「でも魔物なんだよね? なんでこのエリアに入ってこれてるの? ドラシーの結界はどうなってるのよ」


「そういやそうだな。ゲンさんがいるからじゃないか?」


「……なにも話してないのですか?」


「……やっぱりあのスライムが喋ってるのかも」


「「?」」


 確かになんであのスライムここに入ってこれてるんだ?

 このエリアはダンジョンコアの結界の力で魔物は入ってこれないと思ってたが。


「ゲンさん、その肩に乗ってるスライムなんだけど……なんでここに入ってこれてるの?」


「ゴゴ? (こいつか? いっしょに来てもいいんじゃなかったのか?)」


「え!?」


「「?」」


 どういうこと?

 ゲンさんの言葉がわからないララとカトレアは俺を見るが、俺は心当たりがなかったので首を振って否定する。


「ゴゴ? ゴゴ? (さっきこいつがお前に聞いたとき、お前がなにも言わないから俺がお前にいいんじゃないか? って聞いたらなにも言わずに歩き出したから肯定だと思ったじゃないか。ダメってことだったのか?)」


 そんな会話あったか?

 あの森の中でだよな。

 なにも言わずに歩き出したってことは、あの事件の直後か。

 ……うん、ビックリしすぎて記憶にないや!


「えっと、スライムさん、少しお話できますか?」


「キュキュ! (はい、よろしくお願いしますです!)」


「「「!?」」」


 本当に喋るんだ!

 しかも女の子のような高い声だ!

 それに「しますです」ってのも可愛いじゃないか。


 スライムは地面の上に下りてきた。


「きゃー!! 可愛い!!」


「本当ですね!! あまり見ないきれいな色のスラちゃんですし、ウチで飼いましょう!」


 女性陣には好評のようだ。

 カトレアもテンションが上がってるようでなにより。


 ここに入れた理由は俺がいつの間にか仲間と認めていたからか。

 それに会話が通じるってことは悪いスライムではないんだろう。


「俺についてきたってことは仲間になりたいんだよね?」


「キュ! キュ? (そうなのです! ダメなのですか?)」


「ダメじゃないけど、初対面だよね?」


「キュキュ! (対面するのは初めてですけど私は知ってましたです! そこの狼さんと鳥さんが凄く楽しそうなので羨ましかったのです! それでどうしようかゲンさんに相談に乗ってもらっていたのです!)」


「そうか。悪いスライムじゃなければいいんだ。ここにいるみんなは家族と思って仲良くしてくれよ。あと冒険者たちに危害を加えたらダメだぞ」


「キュ! キュキュ! (やったーです! 人間は嫌いではないのです!)」


 なんかめちゃくちゃな語尾が気になるが、可愛いしいいだろう。

 スライムには性別なんてないだろうが、なんとなく女性のような気がするな。


 早速ララとカトレアに人形のように触られまくってる。


「そういや普通のスライムじゃないよな?」


「キュ! (種類で言うとメタリックスライムって呼ばれているです!)」


「メタリックスライム!?」


「「えっ!?」」


 凄いカッコいいじゃないか!

 この輝きも納得の名前だ!

 パッと見は石とか言ってごめんなさい。


「メタリックスライムってなんか凄そうね!」


「超レアモンスターじゃないですか! それにしても可愛すぎますね」


 超レアモンスターなの!?

 スライムの別色バージョンみたいなのに。

 

「そういやゲンさんはなんの魔物なの?」


「ゴ? ゴゴ(俺か? ロックゴーレムだ)」


「ロックゴーレム?」


「「?」」


 俺は聞いたことがない魔物だ。

 ダンジョンの魔物一覧にもないと思う。

 メタリックスライムも載ってたら気付いてるはずだ。


「ロックゴーレムか! ゲンさん強そうね!」


「……私も初めて聞く名前ですね。それなりに本は読んでるつもりなんですが」


 カトレアも知らないのか。

 錬金術師の腕の良さには知識の豊富さも含まれているらしい。

 そのカトレアが知らないんならメタリックスライムよりもよっぽどレアなんじゃないのか?


「ゲンさんもここにいてくれるんだよな?」


「ゴ。ゴゴ(そのつもりだ。岩だから誰も気にならないはずだ)」


「じゃあまたなにかお願いしてもいいのかな? ちなみに小屋作れたりする?」


「ゴ、ゴゴ(作れないこともないが、あいつの力を借りたほうが早いな)」


「あいつ?」


 誰のことだ? メタリックスライムのことか?


 すると、その言葉を待っていたかのようなタイミングで声がした。


「久しぶりね、ゲンさん」


「ゴゴ(あぁ、活性化してるようでなによりだ)」


「ふふ、面白いことになってるのよ」


「ゴゴ(そのようだな。じゃあさっさと作ってしまうか)」


「えぇ、そこのスライムちゃんも手伝ってくれるかな? ピピちゃんも。シルバ君はダメそうね」


 ドラシーとゲンさんは少しの会話をしただけで小屋作りを始めた。

 なんか昔からの親友って感じでいいな。


 ピピはゲンさんが抜いた木の枝部分や葉の部分を風魔法でスパッと切っていく。

 ゲンさんはその枝や葉がなくなった木を小屋の横へ並べていく。

 メタリックスライムは……どこでなにをしているのかよく見つけられなかった。


 名前を考えないとな。


「いい名前あるか?」


「スライムの!? じゃあメタちゃんかスラちゃんは? それかリックかライムとかは!?」


「……メタリンとかどうでしょうか?」


「う~ん、そうだな。じゃあメタリンにしようか? いいかララ?」


「うん! メタリン可愛いくていいね!」


「……ふふふ、メタリンちゃん」


 俺たちが名前を考えている間に小屋は完成していた。

 仕上げはドラシーの魔力でやったんだろうが、相変わらず早すぎるよな。


「ドラシー、終わったのか?」


「えぇ、このくらいの広さがあれば当分は大丈夫じゃない? それに木が余ってたからついでに全部作り直したわ。だからこの小屋は家と同じで本物同然よ。ゲンさんがいると組み立てるだけでいいから魔力も少なめで楽ね。当然エリアも少し拡げたからね! 施設と備品はみんなで考えてよ」


 サラッと言ってるがとんでもないことしてるんだよな。

 冒険者たちがダンジョンから出てきて今朝とは違う小屋を見たらどういう反応をするんだろうか。


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