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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百十九話 地下四階第二休憩エリア

「あっ!? 管理人さん!?」


「えっ!? ……本当だ!」


「どうしてこんなところに!? なにかあったのか!?」


 地下四階第二休憩エリア。

 俺もここに来るのは久しぶりだ。


 このエリアから少し先に進んだところには魔物急襲エリアがある。

 海中だけあって、地下三階までの魔物急襲エリアとは全くの別物と考えたほうがいい。

 そのせいでまだ誰も突破できてないくらいだから。


 ……休憩してるパーティが多いな。

 作戦会議中か?

 まぁHPが赤になって強制転移させられたあとじゃ再度すぐに向かう気にならなくて当然だろうが。


「ロイスさんなのです!」


「えっ!? ロイス!?」


 ユウナとシャルルもここにいたか。

 ここまで来たのは初めてじゃないのか?

 やはりユウナがララの火魔法を使えるようになったことが大きいみたいだ。


 ……でもかなりダメージを受けてるようだな。

 この様子だともう魔物急襲エリアにも行ってきたんだろう。

 あそこでの戦いは防具や武器の消耗も激しそうだ。


 それよりみんなが集まってきてしまった。


「みなさん、お疲れ様です。そろそろ魔物急襲エリアを突破してもらいたいと思いまして発破をかけにきました」


「「「「え……」」」」


「無茶言うなよ……」


「さっきなんて後ろからマグロンにズドーンされたんですよ?」


「逆にミズダッコみたいな大きいやつのほうが戦いやすいわね」


「私はアサーリの大群が苦手だわ……あの魔法に気を取られた瞬間にほかの魔物が突っ込んでくるんだもん」


「ヤリイッカの足の槍がこわいんだよな~。単体だとそうでもないのに」


 楽しんでもらえてるようだな。

 でも弱気な発言ばかり目立つのはいただけない。


「美味しい食材が目の前に大量に転がってると思ってくださいよ。今ウチのダンジョンで一番効率良く稼げるのは間違いなくそこのエリアですよ? まぁPに気を取られて本来の目的を見失ってもらうのは困りますが」


「「「「……」」」」


 どっちなんだよって言いたいだろ?

 適当に言ってるだけだから気にしなくていい。


「これ差し入れです。新作のキャラメルミルクというものになります。そのうちバイキング会場でもお出しすることになるとは思いますが、まずはこのエリアに到達してるみなさんにだけのサービスです」


「「「「おお!?」」」」


「ここに転送魔道具を設置しますのでご自由にお好きなだけどうぞ」


 こういうサプライズ的なものは大好きだろ?


 みんなは順番を譲り合ってきれいに並び始めた。

 さすがEランク冒険者だ。


「なにが目的なのです?」


「私たちがこのエリアに到達したことをお祝いしに来てくれたの?」


 こいつらは並ばないのか。


「そんなわけないだろ。でも二人パーティでここまで来たことは素直に褒めてやるよ」


 二人は喜ぶことなく、怪訝そうな表情を浮かべている。


「……まだ怒ってるのです?」


「わ、悪かったわよ……」


「俺は一晩寝たら昨日のことはどうでも良くなるタイプだから気にしなくていいぞ」


「そうなの? なら良かったわ!」


「……嘘なのです」


「えっ!? 嘘なの!?」


「それよりみんなが見てるからここではあまり話しかけるな。俺は別の目的があって……あ~、来た来た」


 リヴァーナさんがこの休憩エリアに到着した。


「えっ!? リヴァーナちゃんなのです!?」


「本当に一人でここまで来たの!?」


「「「「えっ!?」」」」


 ユウナとシャルルのせいでみんなの注目がリヴァーナさんに集まった。

 せっかくキャラメルミルクがあるのに。


「あれ~? ロイス君こんなところでなにしてるの?」


「ソロでここまで来たのはリヴァーナさんが初めてですからね。ぜひ感想をお聞かせもらえないかと思いまして。休憩がてら少しあちらのベンチでお話できませんか?」


「うん、いいけど。でも正直かなり疲れたよ~。ここまでいつも来てるみんなは本当に強いんだね」


「「「「……」」」」


 リヴァーナさんは本音で話してるみたいだけど、みんなからしたら皮肉を言われてるように聞こえるかもな。

 というかソロで来たことにビックリしすぎてそんなこと思うような感じでもないか。


 そして近くのテーブルに移動した。


「おい……お前らは座らなくていいんだよ……」


「リヴァーナちゃん、凄いのです!」


「そうね! 私たちが二人で来たことも凄いけど、それよりもっと凄いわね!」


「おい、邪魔だから隣行け」


 ユウナとシャルルは渋々と立ち上がり、隣のテーブルに移った。


「マリン」


 これでマリンがドラシーに頼んで、このテーブルの周りには外部に声が聞こえない結界が張られたはず。


「まずはお疲れ様でした。第一休憩エリアから先に進んだのは初めてですよね? どうでした?」


「どの魔物も速いのが厄介だね。リヴァのテリトリーに入ってきたと思ったらもう目の前まで来られてるってことが何度もあったもん」


「でもダメージはあまり受けてないみたいですね」


「だってせっかくロイス君がくれたローブが破けちゃったら嫌だもん。だから間近に来た敵には全力で攻撃することにしてるの」


「ははっ、大事にしてもらってるようでなによりです」


 それ以外の敵には全力じゃないってことがおそろしい……。


「この先には魔物急襲エリアがあります」


「うん、知ってる」


「行かれるんですか?」


「疲れたけど、せっかくここまで来たんだし、時間もまだあるから行くしかないよね。明日もここから始められるんならもっと気持ち的にも余裕が出るんだろうけどさ」


「う~ん。さすがにそれはこの階層をクリアしてもらわないと」


「だよね~。じゃあ今日無理してでも最後まで行くね」


「いやいや、それは……って自信あるんですか?」


「行ったほうが面白いでしょ? ソロで行ったとなるとみんなも黙っちゃいないと思うし」


「ふふっ、さすがですね。でも魔物急襲エリアの先にはまた休憩エリアがあるんですよ」


「え? まだ先が続くってこと?」


「はい。あ、すみません……まだ誰も知らない情報ですし、聞きたくなかったですよね……」


「そんなことないよ。どうせすぐにわかることだもん。それに……ってねぇ、もしかしてこの会話周りに聞こえてないとか?」


「えぇ、このテーブル周りを特殊な結界で囲ってあります。この様子だと聞こえないだけじゃなく入ってもこれないようですが」


「ユウナたち怒ってるよ……」


「お気になさらずに」


 それより、魔物急襲エリア突破に相当自信があるようだな……。

 疲れたなんてのも嘘じゃないのか?


「あ、これ今みんながあそこで並んでるキャラメルミルクっていう新商品なんです。良かったらどうぞ」


「その列だったんだ~。じゃあいただくね。……ん!? 美味しい!」


「疲れてるときにはいいと思いますよ」


「そうだね! 少し元気出てきたかも!」


 マリンが言ってたように、さっきまでとは別人のような表情だな。

 ソロという孤独な旅から解放されたら、もっとこの表情が見られるのだろうか。


「ねぇ、みんな集まって来ちゃってるけど……」


「ユウナたちが騒いでるからでしょう。お気になさらずに」


「さすがに気になるよ……」


「みんなソロでここまで来たことに驚いてるだけですから」


「変に思われてたりしないよね?」


「尊敬の眼差しに決まってるでしょう。みんな四人パーティでやっと辿り着けるんですから。ユウナとシャルルは例外ですけど」


「二人で来れたのも凄いよね。たぶんリヴァは誰かといっしょじゃ無理だったかも」


 自虐的ってやつか?

 でも誰かといっしょだとリヴァーナさんの使う攻撃魔法の邪魔になる可能性も考えられるのか。


「第三休憩エリアからこの階層の終わりの地点まではそんなに距離はありませんし、魔物急襲エリアがあるわけでもありません」


「じゃあ普通に敵がいるだけ?」


「はい。でもEランクの中では最強クラスの敵が数種類います。簡単には通してくれないですよ」


「やっぱり最後はそうじゃないとね、ふふふ」


 やる気が出てきたようだな。

 でも本当に今日最後まで行かれてしまいそうでこわい……。

 どうせなら地下四階ができて一年となる四月までクリア者が現れないでほしかったという気持ちもあるが、強い人が現れたということを喜ばねば。


「でもソロでクリアするより、誰かといっしょにクリアしたほうが喜びも分かち合えるんじゃないですか?」


「え? せっかくソロでやってやろうって気になってたのにそんなこと言う?」


「いえ、まずはソロでクリアしてください。そのあとパーティでクリアしたら、仲間のありがたさがよりわかるかと」


「……なにが言いたいのかな?」


「俺から直接仲間を紹介させてもらいたいと思いまして」


「……ユウナとシャルルちゃん?」


「いえ、今のこいつらだとリヴァーナさんに甘えてしまうのでダメです。ですからぜひともリヴァーナさんにはソロでこの階層をクリアしてもらって、こいつらにはいかに自分たちが未熟かを知らしめてやってほしいですね」


「厳しいんだね……。でもじゃあ誰? パラディン隊の関係で解散するパーティがあるの?」


「いえ、新人の女の子です」


「え……」


 さすがのリヴァーナさんも唖然としてしまったようだ。


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