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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百十六話 溢れる闘争心

「魔力暴走!?」


 その言葉を聞いてララは驚いているようだ。


「違うって! ミオちゃんから溢れ出てるのは闘争心だよ!」


「「闘争心?」」


「マリンちゃんの言うように補助魔法は使ってるけど、おそらく無意識で使ってるんだと思う」


「無意識で魔法なんか使えるのか?」


「自分にかける身体強化系の補助魔法に関してはあり得ることだと思うよ。あの荒さはまだ覚えたてって感じにしか見えないもん。もしかしたら昨日魔物たちに追いかけられたせいかもね」


「……必死に逃げようとしたことが補助魔法を目覚めさせたのって言うのか?」


「きっとピンチの場面だったから潜在能力が呼び起こされたんじゃない?」


 そういうこともあるのか。

 ならもっと冒険者たちには厳しい目に合ってもら……


「お兄? 厳しさにも限度ってものがあるからね? 恐怖でトラウマになったらどう責任取るの?」


 俺の考えは読まれているようだ……。


「でもマリンにはかなり不安定な魔力状態に見えたらしいぞ?」


「だからそれが闘争心なんだって。戦いたくてうずうずしてたんだよ。覚えたての身体強化魔法に加え、敵と早く戦闘がしたくてたまらないという気持ちがオーラとして出てたんだと思うよ」


「オーラか。そういや昨日もそれっぽいこと言ってたな」


「たぶんお兄もそれを感じ取ってたからミオちゃんのことが気になってたんだよ」


 魔力とオーラ、どう違うのかはわからないが、残念ながら俺の目にはどちらも見えないようだ。


「ん? マリン?」


 マリンはソファに深くもたれかかってグターっとしている。


「……なんだか気が抜けちゃった」


 そりゃさっきまであんな話をしてたのはなんだったんだって気にもなるよな。

 マリンからしたら勇気を振り絞って俺に話したんだろうし。

 まぁ腹を割って話せたいい機会だと思っておこう。

 これでマリンからの信頼も少しは厚くなっただろうからな、うん。


「お兄もマリンちゃんも心配しすぎだよ。ほら、当の本人は楽しそうにブルースライムと戦ってるじゃん」


 ……楽しそうというか遊んでるみたいに見えるな。

 もう一人の子は必死に戦ってるのに。


「でもそれならララはなんでミオのこと見張ってたんだ?」


「だって忍者がどうやって魔物と戦うか興味ない? それに闘争心溢れる魔力をどうやって制御していくかも見物だと思ったし」


 制御か。

 これくらいでは魔力暴走は起きないとララはわかってるんだな。


「ここで見るのではダメだったのか?」


「ついでに昨日の仕返しにね、こっそり見張り続けたらいつ気付くか試してみようと思って」


「……で、どうだったんだ?」


「全く気付く様子がないから私もボネもダイフクも飽きちゃった。だから休憩しようと思って帰ってきたの」


 ララに忍者の仕事は無理のようだな。

 タルの名前が出てきてないが、おそらくタルは自分だけでも残って見張りを続けようかとララに提案して、今も見張りを続けているに違いない。

 タルはこのパーティに入れられたことを後悔してるかも。


「でもさ、たぶんミオちゃん一人でもすぐ地下三階に行っちゃいそうだよ」


「強いのか?」


「初心者の子といっしょだからかまだ攻撃魔法は使ってないけど、素早い動きからの短剣での攻撃は地下二階程度の敵ではたぶん相手にならないよ。さすが小さいころから修行してただけの動きはしてるね」


 短剣使いなのか。

 カスミ丸が持ってた手裏剣とかいうやつで遠距離攻撃するんじゃないんだな。


「でも攻撃魔法使えるとは限らなくないか?」


「それはカスミ丸に確認済みだもん。火遁と水遁と風遁の術を使えるんだって」


「ややこしいからその呼び名はやめろ……」


「面白いからいいんじゃない? でも忍者が探知使えたらパーティとしてはかなり楽になるよね。あ、カスミ丸とアオイ丸とコタローにも早く習得させよ~っと。忍者ってみんな風系統の魔法は得意らしいからきっとすぐに習得してくれるはず」


 あの三人のことをまるで自分の部下みたいに扱ってるな……。

 って部下で間違いないか。


「ララはミオとパーティ組みたくはならないのか?」


「言ったでしょ。人間と組むのはまだ先。だからこれっぽっちもそんな気にはならないから。まぁ今は魔物の育成が楽しいっていうのもあるけど。じゃあ今度こそ地下三階に行ってくるね。あ、タルも見張りから引き上げさせないと」


 可哀想なタル……。

 結局気付かれずに見張り終了か。


「無理だけはするなよ。ボネの魔力量にも気をつけてやってくれ」


「は~い」


 そしてララと三匹の魔物たちはダンジョンに入っていった。


 マリンは相変わらずソファにもたれかかったままだ。


「ねぇ、本当にミオちゃん強いかも」


「そんなに速いのか?」


「そこじゃなくてね。身体強化魔法の魔力の流れがさっきよりきれいになってる」


「きれいって言われても俺にはわからん」


「おそらく自分でもその魔法のこと認識し始めたんだよ。もう一人の子の戦いを見守ってのが暇だからかも」


 暇なら解散すればいいのに。


「あ、どうやら別れるっぽいよ」


 俺の心の声が聞こえたんじゃないだろうな……。


「あ……っという間に移動しちゃった……」


 早く解散したかったんだろうな……。


「……ミオちゃんヤバい」


 ヤバい?


 ……あ、次々にブルースライムやオレンジスライムを倒してる。

 それも凄く楽しそうに。

 さっきまでも楽しんでたはずだが、それよりもさらに楽しいといった表情に見える。

 まるでなにかから解放されたようだ。


 そしてミオは新規の冒険者の誰よりも早く休憩エリアに到達。

 追い抜かれたことに気付いてない冒険者も多いんじゃないだろうか。

 それくらい速く、静かに、隙を窺って抜かしていった。

 まさに忍者の習性なんだろうな。


「これでもし土魔法が使えたらもっと凄かったんだろうな」


「土魔法? あ、カスミ丸が天井に張り付いてたってやつ?」


 カスミ丸が初めてウチの家に来たとき、ダイフクからの攻撃を避けるために瞬時に天井へ手や足を引っかける場所を土魔法で作り出し飛び移ってた。

 あれができれば洞窟型のダンジョンでは水を得た魚のように動き回れるんじゃないか?

 って仮定の話をしても仕方ないが。


 ……いや待てよ。


「短剣に土魔法を仕込んだら天井にも張り付けそうか?」


「短剣に? でも魔法付与した武器で天井に向かって魔法を放ったら破壊しちゃうだけじゃないの? ウチのダンジョンの天井はそう簡単に破壊されないけど」


「魔法を放つんじゃなくて、短剣の先に土魔法を常時少しだけ発生させておいて天井にくっ付かせるみたいなことできないかな? 天井には短剣を突き刺してそこにぶら下がるようなイメージになるけどさ」


「う~ん。そのくらいならできるかもしれないけど、それって普通の攻撃としては全く使えないよね? 短剣に杖のような魔力プレート軸を何本も仕込むのは無理があるし、需要ないんじゃない?」


 確かに……。

 魔法付与された武器を使う一番の目的は攻撃のためだもんな……。


 でも今ララは俺の剣を使ってるけど、その剣に付与されてる火魔法は自分のものだからか全く使ってないよな?

 剣の中の魔力プレートを上手く利用して、風魔法による刃のようなものを繰り出しての攻撃が多いし。


 って今の土魔法の場合とは少し状況が違うか。

 ララの武器には魔力プレートがあればいいだけで、魔法付与は必要ないんだもんな。


 一番いいのは、短剣の中に付与された土魔法を自在に操れることなんだが……。


「どうにかして魔法付与された魔法を上手く制御できないもんか?」


「無理だと思うよ。それならユウトさんもわざわざ初級用と中級用の火力に分けた軸を仕込んだりしないでしょ?」


 まぁそうなんだが……。


「だからどうしても天井に張り付かせたいんなら、お兄ちゃんが言ったように短剣の先だけに土魔法をとどめておけるような仕組みにしてもらうしかないんじゃない? 完全にお姉ちゃん頼りになるけど」


 結局そうなるのか。

 またカトレアに負担をかけてしまうな。


「え、まさか本気で考えてる? せっかく魔法付与された武器を使うのに、誰がそんな効果しかない武器を使いたいなんて思うの……」


 世の中には変わり者もいるんだよ……たぶん……。


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