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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百十五話 マリンと魔力暴走

 これ絶対に一番マリンに聞いてはいけないことだ……。


「たぶん私は捨てられたの」


「え……」


 おいおい……いきなり超ハードな展開じゃないか……。


「だって親からしたら魔力暴走を起こす危険がある子なんてこわすぎない? 自分たちも死んじゃうどころか、周りに住んでる人たちにまで危害がおよぶ可能性だってあるんだよ?」


「……まぁ確かに」


「施設に入ればその魔力を制御できるようになるとは言われてもさ、魔力に理解がない親だったら自分の子供を爆弾のように思ったとしても不思議じゃないもん」


「爆弾って……」


「無事に制御できるようになって帰ってきたとしても、一度感じたこわさは消えないかもしれないし」


「そんなことないだろ……自分の可愛い子供なんだぞ……」


「そんなことあるの。それにその制御だって何年かければ習得できるかなんてわからないし、一生習得できないかもしれないんだよ? しかも子供だから魔力の制御どころかまだ自分の心身も安定してないし、制御できてるつもりでもなにかのきっかけで爆発するかもしれないしさ」


 暴走じゃなくて爆発って言うのはやめろよ……。

 爆弾だから爆発なんだろうけどさ。


「だから小さな子供が施設に入ったら、出られるのは最低でも十歳とかになっちゃうはずだもん。そこまで詳しくは知らないから私の予想だけど」


 十歳か……。

 それまでいっしょに暮らせないのは親としてはツラすぎるよな。

 特にマリンの場合、確か一歳くらいのときから施設に入ってたはず。


 ……でも一歳で魔力暴走の危険がある子って逆に凄くないか?

 さっきのマリンの話だと魔力暴走は潜在能力の表れでもあるんだろ?

 そんな年齢のときに覚醒していれば将来有望……などとは言ってはいけないのか。

 死んでたかもしれないんだからな。


「で、なんで私が師匠に拾われたかだけど」


 捨てられたに対しての拾われたか……。


「たぶん私はそのときの三歳の時点で既に魔力制御は完璧に近かったと思うの」


 自分で言うか……。


「でも魔法は使えなかった」


「え? 魔法? あそこで魔法の練習もしてたのか?」


「そりゃするでしょ……。訓練で体内の魔力を制御することはできてるんだし、それならもう魔法が使えるかもってみんな思うもん。あそこにいた人たちは魔法の話をするときが一番盛り上がってたしね。魔法を使えるようになるのが楽しみで制御訓練を頑張ってた人もいるくらいだよ? ある程度制御できるようにまでは魔法を使うのはいっさい禁止だったけど」


「……俺は魔法の話なんて聞いたことなかったが」


「お兄ちゃんはお客さんだもん。お客さんが来てる間は絶対に魔法や魔力に関する話はするなって言われてたからね」


 知らなかった……。

 というか子供が多かったのにみんなよくその秘密を守れてたな……。

 ユウナなら絶対に無理だと思う。


「あの施設のことが外部に知られたら混乱が起きるのは想像つくでしょ?」


 確かにそれは色々なことが考えられるよな。


 単純に危険だと思われるかもしれない。

 はたまた将来有望な魔道士予備軍が大量に集まってると思われるかもしれない。

 マリンのように錬金術師として育てるために勧誘しに来る人もいるかもな。


 ……ん?


「もしかしてスピカさんはマリンを錬金術師として育てるために引き取ったのか?」


「う~ん、実はそこはまだ曖昧なままなんだよね。師匠はさ、私に初めて会ったときに私がなついてくれたのが嬉しかったから養子として迎え入れたとしか言わないし」


「それだけの理由なわけないのにな……しかもペットみたいに……」


「うん……。なついた覚えもないし……。まぁ誰かに知られるわけにもいかないからそう言うしかないんだろうけどね」


「でももし施設の人がさ、マリンが魔力を完璧に制御できてると感じたなら普通はまず親に連絡するよな? いきなりスピカさんが引き取るなんてことはあり得ないだろ。俺からしたらマリンは本当にある日急にいなくなったんだぞ?」


「……ならとっくに私は本当の両親から捨てられてたってことだよね」


 あ…………。

 そんなつもりで言ったわけじゃないんだ……。

 それに捨てられたって言うのはやめろよな。

 病気か事故で両親はもうこの世にいなかったのかもしれないし。

 あ、事故じゃなかった……マリンは魔力暴走を起こしてないからな、うん。


 なにか別の可能性はないか考えよう。


「じゃあやっぱりスピカさんがマリンの才能に惚れ込んでどうしても自分の弟子にしたかったから、それなら養子にしたほうが色々手っ取り早いと思って両親に多額のお金を払ったとか?」


「……それって人身売買ってやつじゃないの?」


 あ…………。


 でも人身売買なんてのが本当にこの世に実在してるんだろうか?

 万が一にでも外部に知られたらそれこそ大問題になりそうだな。


 ……スピカさんがいれば今すぐ聞いて終わりなのに。


「今の話は忘れろ。きっと俺の母さんがスピカさんを信用してマリンを預けたんだ。母さんならマリンの魔力制御が完璧なことや錬金術の才能があることもわかってたに違いない。あ、俺の母さんのことも覚えてるよな? それに養子にするんならまだ小さいうちのほうがいいに決まってる。…………ん? そういや今言ったような話をカトレアかスピカさんから聞いた気がするな」


「え? それ本当?」


「……カトレアからか。カトレアとスピカさんが引っ越してきた次の日くらいに聞いた覚えがある。でも確かそのときにカトレアが言ってたのは、施設にいたマリンが偶然にも魔力持ちだから、俺の母さんに頼まれてスピカさんが面倒を見ることになったみたいなことだけだったと思う。だからそれ聞いたときは、スピカさん凄いな~程度にしか思ってなかった。カトレアも妹ができて嬉しかったって言ってたし」


「それだけかぁ~」


「俺もカトレアもその時点ではあの施設にそういう子が集まってきてるなんて知らなかったしさ。あ、俺たちが知ったのはシャルルをウチに住ませるってなったときなんだよ」


 それ以来、俺はマリンが魔力暴走を起こして両親を失ったから施設に来ることになったと思ってたからな。


 でもよく考えたら魔力暴走のことはあまり世間に知られてないようだから、そういう事態が起きる前に保護してるというのは納得できる話だ。


「まぁ結局私が捨てられたかどうかとか両親が今どうしてるかなんてことはわかんないってことだよ。師匠も知らないかも。まぁ今以上に幸せだった保障なんてどこにもないから今が一番と思うしかないんだけどね」


 実際マリンは養子になってるんだから親に捨てられたと思っても不思議じゃないのかもしれない。

 というかそうとしか思えなくなってきた……。


 なんて言葉をかければいいんだろう。

 そもそもなんでこんな話になったんだっけ?


 ……あ、そうだ、ミオが魔力暴走を起こすようなら今すぐにとめないとって話からだ。


「お兄ちゃんはさ、あの施設が魔力制御の訓練施設だって聞いてから施設のことどう思ってるの?」


「え……そうだな……正直に言っていいか?」


「これ以上気を遣う必要なんてないでしょ? 私も初めて人に話せて楽になったもん。しかもそれがお兄ちゃんで良かった。師匠に話していいかもわからなかったんだからね? もしまた施設に入ることになったらと思うとこわかったんだもん……もちろん師匠とお姉ちゃんと暮らせなくなるのも嫌だったし……」


 外部に話してはならないという施設の決まり事なんだろうが、スピカさんやカトレアにもずっと言わなかったのは凄いよな。

 というかスピカさんは俺たちに話しちゃってるけどな……。


「で、施設についてはどうなの?」


「……あの施設は、今の時代を見据えての施設だったのかもしれないと思った」


「今の時代? 魔王が復活した時代ってこと?」


「あぁ。おそらく以前ノースルアンやラス周辺に出現した魔工ダンジョンを討伐したのはあの施設の人間だと思ってる」


「だよね。私もずっとそう思ってた」


「情報が全く表に出てこなかったのもそれなら納得できるしな。カスミ丸たちですら情報をつかめないんだからよほど徹底してるんだと思う」


「みんな外部に知られたらどう思われるか不安なんだと思うよ。普通はこわいと思うはずだもん」


 ノースルアンの町の人たちからしたら、そんな危険な施設が近くにあってほしくないと思ってもおかしくないからな。


「でもお兄ちゃんの感情としてはどうなのかってことが聞きたいんだけど?」


「……俺はさ、マリンたちからしたらお客さんだったのかもしれないが、俺のほうはみんなのことを友達のように思ってたんだ」


「うん。みんなもそうだと思う」


「そうか、それは良かった。でもみんなは俺が施設に遊び感覚で行ってたときも、裏ではずっと魔力制御のための厳しい訓練をしてたってことだろ? そう思うと素直に凄いなって思ってさ」


「うん。で?」


「でって……つまり今後あの施設の人たちがどう対応するか興味深いって思ってるんだよ」


「対応って魔瘴が溢れる世界に対してってこと?」


「あぁ。いまだにウチになんのコンタクトも取ってこないのは、なにか向こうは向こうで考えてるんじゃないかと思ってさ」


「確かに。魔道士や錬金術師が溢れてたとしても不思議じゃないもんね」


「そうなんだよ。魔道士ならウチに修行に来ててもおかしくないんだけどな」


「仲間意識が強いだろうから簡単に施設や町から離れたりはしないんじゃない? それにそもそもの人数も少数なわけだし」


 そんなに少なかったっけ?

 ……はっきりと覚えてるわけではないが、子供だけで十人くらいはいたよな?

 でも年下はあまりいなかったか。


「そういや魔力暴走を起こす確率ってどれくらいなんだ?」


「とんでもなく低いよ。そうじゃなきゃ今ウチのダンジョンは凄いことになってるでしょ?」


 それもそうだ……。

 これだけの数の魔道士が集まってるのに魔力暴走を起こしたなんて話聞いたことないもんな。


「レアなのか?」


「メタリンちゃんくらいレアじゃない? キャラメルキャメル程度のレア度とはいっしょにはできないよね」


 それは相当なレア度に違いない。

 メタリックスライムの出現情報が耳に入ることなんてまずないからな。


「じゃあ今のミオのケースに立ち会ってる俺たちもかなりレアな体験してるんだな」


「あっ! そうだよ! ミオちゃんは!?」


「見てなかったのかよ……。俺はずっと見ながら話してるぞ」


 今のところ問題はなさそうだ。

 ダンジョンに入ってからは一人で進むと言っていたが、今もまだ二人でいるようだし。


「……思い過ごしかなぁ?」


「……あれ? そういやララの姿が」


「なに? 私を見てたの?」


「「え……」」


 いつの間にか横にララが立っていた……。


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