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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百十三話 週パス実装

「ではまず冒険者カードをお預かりしますね」


 マリンが冒険者からカードを受け取る。


「……アップデートを完了しました。Fランクですので週パスの場合ですと先払いで1800G頂くことになりますね」


「あぁ、構わないよ」


「では外にあるそちらの魔道具で手続きをおすませください」


「こちらへどうぞ!」


 魔道具の横にはララがいる。


 管理人室の外にある週パス受付魔道具に冒険者カードをタッチする。

 魔道具の画面にはランクと料金、そして週パスの有効期限が表示されているはずだ。

 その内容に間違いがなければ画面をタッチして次に進む。

 次の画面では現金払いかP払いかを選択。

 P払いの場合はここで手続き終了、現金払いの場合は現金を入れる。

 P払いでPが不足していた場合は追加で現金を入れるように促される。

 手続きが完了すると、冒険者カードには週パスの有効期限が表示されるようになる。


 そのあとは週パス受付魔道具の隣にある、週パス購入者専用の指輪発行魔道具の前へと移動する。

 そしてこの魔道具に冒険者カードをタッチすると、指輪と採集袋が排出される。


 週に一度は週パス受付魔道具での手続きが必要となるが、翌日からの六日間は指輪発行魔道具の操作だけでスムーズに指輪と採集袋の発行が可能というわけだ。

 当然ながら日曜日には採集袋は発行されない。


 宿屋に宿泊してる人向けに採集袋を発行する魔道具は今までもあったから、それに指輪を追加したバージョンアップ版というわけだ。


 こんな魔道具ができるなら週パス以外の受付も……と思わないでもないが、それをしてしまうと俺が受付にいる意味が新規冒険者への説明のためだけになってしまいそうだからな。

 あまり暇すぎるというのもやりがいを感じられないだろうし。


「管理人さん、週パスについて詳しくお聞きしたいんですけど……」


「どうぞそちらにお掛けください」


 俺は管理人室のすぐ外、エリア入り口側に座って週パス相談会を開いている。


 小屋にビラを貼ってた効果もあってか、ほとんどの人は事前によく仕組みを理解してくれてるから改めての説明は必要ないようだ。

 だから俺の前に座ることなく、マリンが待つ受付へと進んでいる人が多い。

 でも安い料金ではないだけに、色々と不安がある人もいるだろう。


「冒険者村に家を賃貸でお借りしたいと思ってるんですけど、それも今日から可能ということになるんでしょうか?」


「はい。冒険者村で家を借りられますと冒険者カードにその旨が記されます。なので週パスと賃貸を組み合わせての特典、つまり毎日100P付与の権利はその両方を満たした日から有効になります」


「なるほど。では今日の夜にでも行ってみます」


「そうしてみてください。あちらの管理室は二十時まで開いていますから」


 冒険者村にも新しく管理室というものができた。

 住宅や公園のことで相談がある人はそこに行ってもらうことになる。


 週パスと冒険者村の家は関連して考える人が多いのだろうが、俺はすっかりその冒険者村のことを忘れていた。

 昨日週パスの作業が夜までかかってたのは、冒険者村の情報管理のことがあったからだったようだ。


 なにやらマルセールの宿屋システムと同じように魔道ダンジョンの水晶玉に冒険者村用のデータベースを追加し、それを大樹のダンジョンのデータベースと紐付けしてるとかなんとか。

 相変わらず技術的なことは全くわからないが、カトレアたちがやってるんだから心配はしていない。


 ん?

 小屋から続々と人が出てきた。

 もう八時か。


「じゃあオープンします! 今日が新年一発目のダンジョンというみなさん! 今年もよろしくお願いします! ではどうぞ!」


「「「「うぉぉぉ!」」」」


 ララの掛け声に冒険者たちは威勢の良い声で呼応した。

 そしてダンジョンになだれ込むようにして……とはさすがにならないな。

 みんな列を乱さず順番を守ってゆっくりと入っていく。

 譲り合いの精神は大事だぞ、うん。


 さて、さっきの列車分の人はもういなくなったか。


「マリン、次の列車状況は?」


「ちょっと待ってね。……今は運行してないし、マルセール駅にも待ちはいないっぽいよ。ウサギも暇そうにしてる」


「そうか。今日はみんな早く来たのかもな。じゃあララはもういいぞ」


「まだ。今から新規の人への説明するんでしょ? それが終わるまではいるからね?」


 もういいのに……。

 おそらく俺がミオのことをどうするか見ようとしてるんだろう。



 小屋に入ると新規の冒険者たちが静かに座って待っていた。

 ララは冒険者たちの後方で待機するようだ。


 約二十人ってところか。

 パーティで来ている人たちもいたよな。

 あまり見ないデザインの防具を身につけてる人もいる。

 よその国から来た人かもしれない。


 あ、ミオの隣にはミオと同じくらいの年齢の女の子がいる。

 この子は装備品からしても明らかに初心者だ。

 というか武器として銅の槍を持ってるくらいで、防具は普通の服だよな。

 でもさっき少し話した感じ、なかなか芯の強い子のようにも感じた。


「では新規の方への説明を始めさせていただきますね。お手元の冊子をご覧ください」


 そしていつものように説明を終えた。

 冒険者たちはマリンの前に列を作り、わいわい言いながら冒険者カード作成の順番を待つ。

 なにもかも新鮮な今が一番楽しいときかもな。


 そしてカードを作った人たちは指輪を受け取り、宿屋に入っていく。

 近いうちに宿泊者だけでも千人を超えそうだ。


「すみません! 管理人さん!」


「はい?」


 ……あぁ、この子か。

 隣にはミオもいる。


 ララが後ろから相変わらず厳しい視線を送ってきてるのが気になるが……。


「この週パスってやつなんですけど、これに近いHランク版みたいなものはないんですか?」


「すみません、ないんですよ」


「じゃあ昼のバイキングを食べようと思ったら別途100Gを払って入るしかないんですか?」


「申し訳ないですけど、そうなりますね」


「えぇ~~~~。ショックです……」


「すみません……」


 まさかバイキングを食べるためだけに来たわけじゃないよな?

 ……でもそれなら週パスのことを聞いてきたりしないか。


「大丈夫。ダンジョンで稼ごうよ」


「……うん。ミオちゃん、頑張ろうね」


 二人でパーティを組むのか。

 もう友達ができたようで良かった。


 ミオのほうが実力が上なのは間違いないだろうが、それがきっかけで仲が悪くなったりしなければいいんだが。

 まぁ今日だけのお試しパーティってところか。


「じゃあミオは宿屋の部屋取ってくるから」


「うん! ここで待ってるね!」


 ん?

 この子は宿泊しないのか?

 ってだから週パスのことを聞いてきたのか。

 なら魔道ダンジョンに住んでる避難者かもしれないな。


 ララはもう満足したようで、小屋から出ていった。

 ミオのことの前に、こういう同じ説明を聞いてるとイライラしてくるタイプだからな。

 早くダンジョンに入りたくてうずうずしてたんだと思う。


 それを見て俺とマリンは宿屋に入った。


 宿屋フロント前にはどうやらもうミオしかいないようだ。

 ほかの冒険者たちは部屋に入ったんだろう。


 ロビーで冒険者カードのアップデート作業をしていたカトレアの姿も見当たらない。

 もう休憩に入ったか。


「ミオ、今日はあの子とパーティを組むのか?」


「組まないよ。入るところまではいっしょに行こうって約束しただけ」


「そうなのか。ミオは一人で大丈夫なのか?」


「さっき待ってるときに感じたんだけど、みんなミオと同じように期待と不安が入り混じってるんだなって。だからミオも頑張ってみようと思う」


「そうか」


 不安そうではあるが、なにかを決心したようないい表情をしてる。

 こうやって人は成長していくんだな。


「あ、こっちはマリンだ。ミオより二つ年下だぞ」


「ミオちゃん! よろしくね! いつでもウチに遊びに来てくれていいよ!?」


「……うん。よろしく。でもミオはもう冒険者だから、カスミちゃんたちと同じようにしてたらダメだと思う。だからマリンちゃんもミオを特別扱いしなくていいよ」


 ほう?

 ウチとの線引きについてカスミ丸たちからしっかり言われてるようだな。


「……でも冒険者以外の友達も欲しい」


 ふふっ。

 素直でいい子だ。


「うん! じゃあこっそり遊びに来てね! それより宿屋に宿泊するんならカスミ丸といっしょの部屋に住めばいいんじゃない? 親戚なんでしょ? そのほうがお金もかからないし、同じ部屋が嫌なら設定でそれぞれの個室だってできるよ? あ、でもそれだと普通に宿取るのと同じか」


「……」


 どうやらミオは一人で泊まるのも少し不安のようだ。

 ウチに来るのは大人になったばかりの人たちが多いから、そういう人はほかにもいっぱいいる。

 それに冒険者になったんだから甘えてはいけないという気持ちもあるんだろう。


「お兄ちゃん、どうかな?」


「え? お兄ちゃん? マリンちゃんもロイス君の妹なの?」


「違うよ。従兄妹ではあるけど、血は全く繋がってないしね。でもこうやって縁あっていっしょの家に住んでるから、ミオちゃんがカスミ丸といっしょの宿にいるのも縁なんだよ」


「縁……」


「いっしょの部屋に住んでても絶対に誰にもバレないよ? 部屋の中への入り口はみんなそこの同じ転移魔法陣からだし。パーティを組んでパーティ部屋を借りたらそういうわけにはいかなくなるけどね。だから最初だけでもいっしょに住んでみたらどう? お金もあまりないでしょ?」


「……うん、カスミちゃんに話してみる」


「それがいいよ! じゃあ指輪は変更ね! 従業員用の指輪にするから!」


「え……いいの?」


 ミオは俺に聞いてくる。

 う~ん、一人で冒険者生活を始めてみるというミオの決心を早々と砕くのはどうかとは思うが、マリンがこう言うんなら仕方ないよな。


 だからララは俺じゃなくてマリンを怒れよ?


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