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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百四話 忍者の里での話

 大樹の森の入り口にある冒険者村。

 実際に来たのは初めてだ。

 まだ大樹の森から出ることは許可されなかったが、ここまで来れただけでも良しとしよう。


「あっ!? ロイス君!」


 俺を見つけたリヴァーナさんが駆け寄ってくる。

 そしてそのままの勢いで、両手を広げ抱きついて……くるということはなく、直前で急ブレーキをかけた。


「……この封印魔法はララちゃん? それともユウナ? まさかエマちゃん?」


「リヴァーナさん、おかえりなさい。お兄は久しぶりの外出なんで色々と警戒中なんです」


「……違う意味の警戒だよね」


 そうだぞ。

 さすがにリヴァーナさんを警戒する必要はないだろ。

 どちらかというと守ってくれるほうだし。


 ……でも今ここには忍者がいっぱいいるんだからどこかに隠れてるってことも考えないといけないか。

 そこまでリスク管理をしているとはさすがララだ。

 まぁ忍者に敵がいるとは考えたくないが。


 俺の周りにはいつでも封印魔法を使えるようにララ、ユウナ、エマの三人が張り付いている。

 一応シャルルも付いてきた。

 ここまでやらなくてもいいとは思うが、ララも心配してくれてるんだろうからな。


 もしかしたらこの火事のあった場所にドリュが現れないとも限らない。

 ゲンさんから昔話は聞けたとはいえ、なぜドリュが俺たちまで攻撃してきたかについてはいまだわからずじまいだ。

 まぁ魔物になったんだから魔物の本能と言えばそれだけなんだが。


 それでも俺がこの場所に行くことをララが許可してくれたのは、ドリュの気持ちが少しはわかったからなんだと思う。

 それに俺たちは攻撃を受けたが、誰も死んではいないということもなにか思うところがあったんだろう。


「ミャ~? (私たちまで来る必要があったの?)」


「知らん」


 魔物たちは全員来ている。

 もちろんララが要請したんだが。


 でも家を設置するために木を移動したりするんならゲンさんがいないと困るからな。

 リスたちもいたほうが作業が捗っていいだろう。

 俺の護衛にはピピやシルバたちもいるし。


「……ねぇリヴァーナさん、あれって犬?」


 早速見つかってしまったようだ……。


「可愛いでしょ? あ、そうだ。ララちゃんにお土産……」


 リヴァーナさんの話も聞かずにララとユウナは犬に向かって走って行った……。

 エマも行きたいのだろうが、我慢して俺の傍にいるように見える。


「……私も行っていいかしら?」


「……いいぞ」


 シャルルも行ってしまった。

 はしゃぐのは大人げないと思って一瞬躊躇したんだろう。

 エマは羨ましそうにしている。


「ロイス君、これあげる」


「ん? ……魔石ですか? 小さいですね」


「ジャポングにいたマメシーバって魔物の魔石だよ。小さい犬の魔物」


「へぇ~。ジャポングにも魔物なんていたんですか」


「山奥にかすかだけど魔瘴があったからね。でもこのマメシーバしか見つからなかったの。しかも素手で倒せるくらい激弱。本当に魔物かどうか疑っちゃうくらい。平和すぎて魔物も弱体化しちゃったんだよ」


「じゃあコレクションとして遠慮なく貰っておきますね。でも見つからなかったということは探したってことですか?」


「うん。暇な時間もいっぱいあったし」


「暇なのにこんなに時間がかかってたんです?」


「忍者の中にね、絶対に避難しないっていう頑固な人たちがいたの。それにカスミ丸たちは近隣の山に住んでる人たちにも声かけに行ってたりしたからさ~」


 あの一般の人たちは町から離れたところに住んでた人たちってことか。

 マルセールとウチみたいな感じだな。

 忍者の里もそういうところにあったみたいだし、なんだか親近感が湧いてくるな。


「モ~! (ご主人様! みんな!)」


 ウェルダンが走ってきた。


「おかえり。体調は大丈夫か?」


「モ~(うん。魔瘴がないところだったから全然平気。でもやっぱりこの森の空気が一番美味しいね)」


「そうか。疲れてるだろうからもう帰って風呂入って寝てていいぞ」


「モ~(まだ大丈夫。サミュエルも眠そうだけど、家の設置が完了するまではここにいるって言ってたしね)」


「わかった。じゃあ最後までちゃんと見届けてやってくれ」


 ウェルダンはサミュエルのところに行ったようだ。


「サミュエルさ、ウェルダン君のことが相当気に入っちゃったみたいなんだよね」


「ペット感覚なんでしょう」


「修行の相手として持ってこいなんだよ」


「は?」


「サミュエルが本気で攻撃してもウェルダン君は死ぬことないし、ウェルダン君が攻撃してきても手加減してくれてるからサミュエルはそこまでダメージを受けることはないんだもん」


 そんなのウチのダンジョン内でやれよ……。

 万が一ってことがあるんだからな。

 まぁ外で暇だったから仕方なかったんだろうが。


「でもその修行をしてたおかげでさ、さっき言った頑固な人たちが避難する気になってくれたんだよね」


「どういうことです?」


「子供と魔物の激しい戦闘風景なんてジャポングじゃまず見ないから興味を持ったんだってさ。しかもその魔物はさっきまで馬車を引く変わった牛と思ってたんだからね。それが魔物使いの魔物って聞いたらもうわけがわからなくなったみたいでさ。おまけに家までレア袋とかいう魔法の袋に収納して持っていけるわけでしょ? なにが起きてるのかさっぱりわからないから、こうなったら息子や娘の言葉を信じて行ってみるしかないって思ったみたい」


「息子や娘ということは、その頑固な人たちというのはカスミ丸たちの親ってことですか?」


「うん、一人はカスミ丸のお父さんのこと。おじさんに当たる人たちも相当頑固。あ、おじさんっていうのはカスミ丸のお父さんの兄弟のことね。兄と弟の三人兄弟。兄弟の仲が悪いと思いきや、避難しないっていう意見だけは一致して仲良くなってるんだもん」


 忍者三兄弟か。

 その三兄弟の子供たちも当然忍者なんだよな?


「でね、いざカスミ丸の家族がパルド王国に避難するって言ったら、兄と弟の二人は行くなって言って引き留めるの。あれじゃただ離れたくないだけの仲良し兄弟だよ」


「面倒ですね……」


「でしょ。だから仕方なく私が帝国が崩壊したことを説明して、魔瘴のこわさを教えることにしたんだよ。カスミ丸から一度は聞いてたみたいだけど、私が言ったほうがリアリティがあるからね。話の終わりに雷魔法を一発放ったらみんなすぐに避難する気になってくれたんだよ?」


 それって脅しじゃないのか……。

 まぁ上級雷魔法を使える人が避難しろって言ってるんだから本当に危険なんだと思ったってことにしておこう。


「きっとなにかきっかけが欲しかったんだろうね。すぐに逃げるって言うのは忍者として恥ずかしいと思ったのかも。そもそもセバスさんが来てくれてたらもっと早く帰ってこれたのに」


「カスミ丸のお父さんと知り合いだからですか?」


「うん。なんかね、昔二人は冒険者で、同じパーティの仲間だったらしいよ」


「お~? それは初耳です」


「カスミ丸たちもジェマちゃんには言わないようにしてるみたい。やんちゃしてたことを知られるのが恥ずかしいんだってさ、セバスさん」


 執事のイメージが崩れそうだからな。

 でも冒険者から執事に転身っていったいなにがあったんだ?

 ただ引退しただけかもしれないが。


 お?

 ちょうどそのセバスさんがやってきたようだ。


「セバス!」


「ジロウ!」


 あれがカスミ丸とアオイ丸のお父さんか。


 そして二人は抱き合った。

 セバスさんのこんな笑顔もめったに見ないよな。


「久しぶりでござるな!」


 あ、やっぱりござるなんだ。


「あぁ! ちゃんと避難してきてくれて良かったよ!」


「「「「ん?」」」」


 俺だけじゃなく、犬と遊んでいたララたちもみんなセバスさんの言葉に違和感を感じたようだ。


「……あ、とにかくみなさま無事に避難してこれたようでなによりでございます。では暗くならないうちに家の設置といきましょうか……」


「「「「……」」」」


 みんな動きをとめてセバスさんをじーっと見る。

 セバスさんは少し焦っているようだ。

 別に隠さなくてもいいのに。


 そしてセバスさんは俺のほうを見てきた。


「ロイス様……これからの指示を仰ぎたいのですが……」


「はははっ! セバス! こんな若い青年にまで様を付けないといけないなんて執事とは大変でござるな! ここはお城じゃないでござるよ、ははっ!」


 確かにそれはやめてほしい。

 壁がある気もするしな。


「父上、この方がロイス殿でござる。例の大樹のダンジョンの管理人でござるよ」


「む? 管理人? ……え? じゃあもしかして魔物使いの……」


「そうでござるよ。この大樹の森の長でござる。今後の自分と兄上の雇い主でもあるのでござる。ちなみに周りにいるのはみんな魔物でござるよ? くれぐれも失礼のないようにでござる」


「……」


 ただのダンジョン管理人であって、別に森の長ってわけじゃないけどな。

 でも二人は正式にウチで働いてくれそうで良かった。


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