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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第四百三話 忍者と避難者

 午後になり、南マルセール駅のメロディさんから連絡が入った。

 港に大型魔船が向かってきてるとのことだ。

 ようやく帰ってきたか。


 そして管理人室でジェマと二人、画面に映る駅入り口をじっと見つめる。

 すると人が続々と入ってきた。


「……普通だな」


「変装してるんだと思いますよ」


 変装か。

 忍者丸出しの姿で来てほしかったな。

 さすがにそんな簡単にバレるようなことはしないか。


 あ、リヴァーナさんとサミュエルだ。

 ……疲れているように見えなくもない。

 帰ってこれてホッとしてるのかも。


「カスミ丸です」


「どれが?」


「この緑のショートカットです」


「なんかカトレアみたいな髪型だな」


「カトレアさんをモデルに作ってもらった物ですから」


「……悪さには使うなよ」


「敬意を表してのものですからご安心を」


 ……よくわからないがまぁいいか。


 駅には馬も入ってきたようだ。

 大型魔船が来たと聞いたときはなぜ高速魔船じゃないんだろうと一瞬疑問に思ったが、すぐに馬でも連れてきたんだろうなと思い当たった。。


 ん?

 馬のあとに続いて、馬にしては小さい動物がいっぱい入ってきた。


「犬か?」


「そういえば忍者には任務を共にする忍犬がいると聞いたことがあります」


「忍犬? 普通の犬も戦ったりするのか?」


「訓練はするみたいですね。情報の伝達手段に使ったりもするそうです。でも魔物じゃない普通の犬ですのでロイス君の魔物と同じには考えないほうがいいですよ。ジャポングは魔物もあまり出現しませんし」


 忍犬か。

 やってることはウチの魔物たちと似たようなことだよな。


「カスミ丸たちは忍犬といっしょじゃなかったのか?」


「いませんでしたね~。犬は変装が難しいからかもしれません」


 情報屋という仕事上、犬が邪魔になることもあるのか。

 いくら忍犬が賢かったとしても、王都だと飼うのが難しいのかもしれないな。

 でも馬が飼えてるんなら犬の一匹や二匹くらいと思わないでもないが。


「ん? この小さくてフワフワな毛のやつも犬か?」


「はい。確かプードルとかいう犬種だった気がします」


「……ララには見せないほうがいいな」


「ララちゃん好きそうですもんね……」


 こんなのを見てしまったらウチで飼うと言って聞かなそうだ。

 言葉を話せない犬なんて飼うのが面倒に決まってる。

 ……可愛いことは可愛いんだけどな。


「でもやっぱりどの犬よりも地下二階のブラックドッグのほうが強そうだよな」


「だから魔物といっしょにしたらダメですって」


 なんだか少し勝った気がする。

 可愛さでは圧倒的に負けてるけど。


「というか人多くないか?」


「そういえばそうですね」


 もしかして馬とか犬のためじゃなく、高速魔船では乗りきらないほどの人がいたから大型魔船だったのか?


 すると通話魔道具が鳴った。

 南マルセール駅からだ。


「はいこちら大樹のダンジョン管理人」


「南マルセール駅のメロディです。ジャポングから来られた方で、一般の方も数十名おられるようでして」


「そうなんですか? じゃあその人たちは魔道ダンジョンに住むってことですね?」


「はい。ですので錬金術師の方にお越しいただきたいのですが」


「わかりました。すぐに向かわせますので、それまで説明をお願いします。では」


 乗ってたのは忍者の里の人だけじゃなかったんだな。

 まぁあとで詳しく聞こうか。


「聞こえたか? 一般の人たちもいるんだってさ。カトレアたちに伝えてきてくれ」


「はい」


 ジェマは走って錬金術エリアに向かった。


 駅の待合室ではどうやら二手に分かれているようだ。

 片方が魔道ダンジョンに住む人たち、もう片方が冒険者村に向かう人たちだろう。


 じゃあこっちの人たちは忍者確定ってことか?

 ……変装してるせいかもしれないが、忍者とわかって見ててもとても忍者とは思えない。

 それも忍者の才能の一つなのかもしれないけど。

 というか少なくないか?


 あ、ヨハンさんが駅に入ってきた。

 二日間くらいの旅だったつもりがもう五日間も経ってる。

 少しばかり多めに報酬を渡さないとな。


 ……ってずいぶん元気そうじゃないか。

 みんなと別れてから早速魚屋に顔出してるし。

 そういやいまだに漁港の件は進んでないよな。

 漁師だった人たちも町の建築の仕事に回ってもらってるから仕方ないと言えば仕方ないが。

 でも漁師の人たちって力があって手先も器用で、建築の仕事もそつなくこなしてくれるから非常に助かるってセバスさんも棟梁さんも言ってた。


「ロイス君! 行ってくるね!」


 モニカちゃんが行ってくれるのか。

 それとキャロルさんもいっしょのようだ。


「私も行ってきますね」


 ジェマは町側の人間としてか。

 せっかくゆっくり休めるはずだったのにな。


 というかキャロルさんやブルーノさんはいつまでいるんだろう?

 ミランダさんなんかギルド長なのにいつまでもこんなところにいていいのか?

 ギルド職員たちはもう年末年始の休みも終わって出勤してるんじゃないんだろうか。


 あ、三人には南マルセールでの受け入れを手伝ってくれたお礼の報酬を渡しておかないとな。

 ……いや、ウチからじゃなくて町から出してもらうべきなのか?

 ……面倒だからウチからでいいか。


「お兄! キャラメル食べてみて!」


 ララが走ってやってきた。

 ずっと厨房にいたのか。


 どれ、キャラメルキャメルのミルクから作ったキャラメルとやらの味がどんなもんか確かめてみよう。


 …………甘っ。

 でも嫌な甘さじゃないな。

 それよりこの食感が気になる。


「どう!?」


「味はまぁいいと思うが、食感はあまり好きじゃないな。なんか歯にくっつくし」


「え……最低の評価じゃん……」


「俺の感想だからみんなはそうは思わないかもしれない」


「こんなのみんなに食べてもらうわけにはいかないじゃん……」


 そんなこと言われても知らん。

 俺は正直に感想を言っただけだ。

 でもララの落ち込む姿は見たくない。


「作り方は合ってるのか?」


「うん。食感も似たような感じになってるんだけどね。サハでは普通のラクダのミルクを使ったキャラメルが売ってて、それを食べながらやってるんだけど。食べてみて」


 ララはポケットからキャラメルを取り出し、俺に渡してくる。


 ……うん、食感は確かに似てるな。


「なら俺の口に合わないだけなんだろう。ララは悪くない」


「うん。でもこれはボツにするね」


 まぁそうなるか。

 ララは俺が食べない物をバイキングに出したり商品にしたりはしないからな。


「素材を活かしたシンプルな物がいいんじゃないか?」


「例えば?」


「う~ん、コーヒーに混ぜるとか? それかアイスにするとか」


「なるほど! 単純にカウカウ牛のミルクと同じように考えればいいってことだよね!?」


「ミルクなんだからそれが一番簡単だと思うぞ」


「わかった! 色々試してみる!」


 ララは再び厨房エリアに戻っていったようだ。


「あ、ちょっと待て!」


「なに!?」


 ララは再度管理人室に戻ってきた。


「ついさっき南マルセールにカスミ丸たちが帰ってきたぞ」


「えっ!? そうなの!?」


「あぁ。もうすぐ冒険者村に移動を開始すると思う」


「私も行ってきたほうがいいかな!?」


「そうだな。一応大樹の森の管轄になるし……ってやっぱり行かなくていいや」


「えっ!? なんで!?」


 犬を連れ帰ってきそうだからな……。


 それよりララにはあのことを話しておかないと。

 今冒険者村を作ってる場所、これから忍者たちが家を設置する場所にも関係があることだ。


「ちょっとそっちに座れ」


「え……うん」


 リビングに移動し、ソファに座る。

 ララもなにか大事な話があると悟ったようだ。


「ゲンさんと話をした」


「……うん」


「今朝みんなが集まってたときに話そうとも思ったんだが、まずはララだけに話そうと思ってな」


「うん」


 そして森の精霊ドリュアスについて話をした。

 ララは相槌すら打たずに最後まで黙って聞いていた。

 おそらくどこかでドラシーも聞いてたはずだ。


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