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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第二章 大樹のために
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第四十話 小屋が狭い

「なぁ、多くないか?」


「この人たち疲れてないのかな」


「……もう入れてあげたほうがいいんじゃないですか」


 地下三階がオープンした次の日、八時半の時点で既に六十人以上の人が集まっていた。

 当然小屋の中は人がいっぱいで、小屋の外も受付前まで人が溢れていて受付がスムーズに進まなかった。


「そうだな、もう開けよう。これじゃあ説明の声が聞こえない」


 昨日来てない人には新しいシステムを説明する必要があるが、それすらままならない状態であった。


「すみません! 少し静かにしてもらえますか!?」


「「「「……」」」」


 俺の声をララが風魔法に乗せみんなに聞こえるようにすると、途端にあたりがシーンとなった。


「少し早いですが、今からダンジョンを開場します!」


「「「「おお!!」」」」


「入り口は左が地下一階、中央が地下二階、右が地下三階となっておりますのでお間違えないようにお願いします! ではどうぞ押さないでゆっくり順番に入場してください!」


 ダンジョン入り口のドアを開けると、みんなが早足で移動していく。

 ほとんどが地下二階へ行ってるようだ。


「では説明がまだの方はこちらへお集まりください。受付待ちの方はそちらの窓口にお並びください」


 ようやく説明が行える環境になった。

 それにしても今日も来場者数の記録更新は間違いないな。

 お? 自動販売魔道具も人気のようだな。


 カトレアの受付もすっかり慣れたもんだ、良かった。

 ララにはこのエリアの入り口付近で大樹のダンジョン新規の冒険者への説明をお願いしているが、今は一人の冒険者に対して説明をしているようだな。

 新規がどんどん来てくれることはありがたいことだ。


 と、色々考えながらも口は定型文を話していた。


「……以上になりますがご質問ございますか? ないようでしたらそちらの受付窓口へお並びください。冒険者カードも同時に発行いたしますので。もう一度説明をお聞きになられる方や質問がある方いらっしゃいましたらこちらへお残りください」


 十五人くらいの冒険者がカトレアの窓口前へ並ぶ。


 ララはまだ先ほどの冒険者へ説明を続けているようだ。

 今の新規の人には覚えることが多すぎるからな。

 機能を増やしすぎるのも問題かもしれない。

 俺だったら覚えられる自信は全くない。

 完全な初心者用になにか説明書みたいなものを作ったほうがいいのかも。

 地下三階の素材目当てに行かれると色々面倒なことになりそうだからな。


「だーかーら! 私は地下三階に行きたいの!」


「だから無理だってば!」


 ん? ララの声か?

 ララのほうを見ると、冒険者となにか言い争っているようであった。


 …………あの子はなにしに来たんだ。


「ララ」


「あっ、お兄ちょっと聞いてよ! じゃなくてこの子が聞いてくれないの!」


「あっ、ロイス君! この子が中に入れてくれないのよ!」


「……」


 肉屋の娘、ミーノさんだった。

 いつも店では白い帽子姿が当たり前だったからさっきチラッと見たときは全く気付かなかった。

 髪はピンク色で長さは肩くらいまである。

 髪の色さえ知らなかったな。


「ミーノさん、おはようございます。今日はどうされましたか?」


「え? お兄の知り合い!?」


「そうよ! 私とロイス君は八歳のころからの付き合いなんだからね!」


「えっ!? お兄どういうこと!? 付き合ってるの!?」


「……」


「最初からロイス君が対応してくれれば話は早かったのよ!」


「お兄! ちゃんと説明して!」


 ……なんだこの状況。

 というかなにしに来たんだミーノさんは。

 まさか本当に仕入れのために来たとか言わないよな?

 ララは勘違いしてるようだから早めに訂正しておくか。


「ララ、こちらはミーノさん。マルセールの肉屋さんの娘さん。つまり俺たちからしたら取引先みたいなもんだな」


「八歳からの付き合いってどういうことなの!?」


「それは八歳のころから店で顔は合わしてますよってことだろ」


「ちょっと! そういう他人行儀な言い方は酷くない!?」


「お兄! なんでただの取引先の人がこんなに馴れ馴れしいのよ!?」


 なんでこうなった。

 以前ドラシーとティアリスさんが似てるなと思ったことはあったが、そのときの比ではない。

 この二人似すぎてない?

 うるさいところとか、うるさいところとか?

 いや、やっぱり女性はみんな似てるんだ、そう思っておこう。


「ミーノさん、お急ぎでなければ少しお待ちいただいてもよろしいですか? あちらの小屋の中に休憩スペースがありますので、そちらでお待ちください」


「わかった! 忙しそうだしね! 九時からって聞いてたから早めに来たつもりなのにもうこんなに人いっぱいだなんて」


「お兄!」


 ララがなにか言いたそうだったが、構わず受付業務に戻る。

 まだ九時前であり、今が一番忙しい時間なんだ。


◇◇◇


「ララ、あとは任せていいか? 俺はミーノさんと話をするから」


「いいよ」


 九時半過ぎ、受付前が静かになったところで待たせていたミーノさんと話をすることにした。

 大人しく小屋の中で待っていてくれたようだ。


「すみません、お待たせしました」


「いいの! 私が急に来たんだから!」


「で、どういったお話でしたか?」


「昨日結局誰も来なかったからさ、ちょっと様子を見に来たの!」


「そうでしたか。あいにく昨日は誰も肉をドロップできなかったようでして」


「そんなにそのドロップ率だっけ? 低いの?」


「いえ、それ以前の問題といいますか、まだ冒険者のレベルがその魔物と戦うのがやっとというか、つまり倒せる者が想定してたよりも少ないんです」


「そんなに強いんだ?」


「魔物一匹だけと戦うわけじゃありませんからね。周囲の環境は魔物にとって有利な環境ですし、なによりまだまだ成長途中な冒険者ばかりですから」


「へぇ~。私でも倒せそうなら仕入れがてら持って帰ろうと思ってたけどやっぱりこわそうだからやめとくね。なんか冒険者の人たち見てたら自信なくなっちゃった」


 それまでは自信あったってことですか!?

 やっぱり仕入れって言いましたよね!?

 この子、こわい。


「そういうわけですから、買取のほうは気長に待っていただけるとありがたいです。どうしても肉が必要なら持っていってもらっても構いませんけど」


「そんなことしないよ。わかった、待つね」


「はい、お願いします」


 なんか急に潮らしくなった気がするな。

 大人しくしてれば可愛いのにな。


「じゃあ私帰るね。あっ、そこの変わった魔道具で売ってるサイダー美味しかったよ!」


 そう言うとミーノさんはあっさり帰っていった。

 一応心配だからピピに後をつけさせた。



「お兄、なに話してたの?」


「昨日結局誰も肉をドロップできなかっただろ? それについての説明だよ。待ってたらしいからさ」


「ふ~ん。ならいいけどね」


 心なしかララが冷たい。


「それよりさ、この小屋もう少し大きくしたほうがいいんじゃない? 二階建てにするとかさ」


「そうだよなぁ。明らかに今の人数は収まりきれてないもんな。中のトイレも足りないし、外の水道も二つだけじゃ足りてないし。かといって二階建てにすると目が届かないからあんまりそれはしたくないんだよなぁ」


「このエリアをもう少し広くできないのかな?」


「やっぱりそれしかないか。ドラシーに聞いてみるか」


 家に入り、リビングのソファに腰掛ける。


「ドラシー」


「なに? もう何人か地下三階行ってるわよ」


 ドラシーはテーブルの上の自分用のソファに座りコーヒーを飲んでいた。


「地下二階からだと早いな。それよりさ、この地上エリアをもう少し広くできないかなと思ってさ」


「そうねぇ。これだけ人が多いと朝と帰りの混雑する時間は窮屈だものね」


「うん。魔力でどうにかできないの?」


「う~ん、エリアを広げるだけならまだしも、地上に生えてる木を抜いたりするのはねぇ~」


「魔力で抜けないのか?」


「できるけどやりたくないっていうのと、仮に木をなくせたとしても小屋を改装できるほどの魔力は残らないわよ?」


「そうなのか。それじゃ今エリアを広げる意味があまりないか」


「木を抜くのを頼んでみる?」


「頼む? 誰に?」


「それはもちろんゲンさんよ」


「ゲンさん? 誰それ? 町の人?」


「そういえばアナタたちはゲンさんに会ったことないのかもね。魔物よ」


「魔物!?」


 魔物のゲンさん!?

 ゲンサンなのか?

 ダンジョンの魔物一覧にそんな名前あったかなー。


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