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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第一章 管理人のお仕事
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第四話 ダンジョンコアさん

「シルバ、異常はないか?」


「わふっ(うん)」


 俺は周りを見渡しながらただ真っ直ぐ歩いている。

 シルバは周辺の森の中を縦横無尽に元気よく走り回り、魔物が発生していないかなどの確認をしている。

 八歳のときにここに来てから、毎朝の散歩という名の見回りは俺とシルバの日課となっていた。


「じゃあもう帰るか。今日の夕飯は買ってきた鶏肉を唐揚げにでもしてもらおう」


「わふ! (いいね!)」


 大樹のダンジョンの周辺は森林地帯となっており、東にある宿場町マルセールまでは徒歩で約一時間の一本道となっている。

 道は土だがある程度整備されていて、馬車がすれ違える程度の広さはあるため快適に歩くことができる。


 今日は週に一度のダンジョンの定休日で、町まで食料品の買い出しに行ってきたところだ。

 俺の両手にはズッシリとした荷物がそれぞれ抱えられていた。


 大樹の前は少し拓けたエリアとなっていて、そこには家が一軒と洞窟が一つのみ存在している。

 ここが大樹のダンジョンと呼ばれる所以は、この森林地帯の中でも一際大きな木……みんなが大樹と呼んでいる木の下にダンジョンがあるからだ。


 家の前ではララが素振りをしていた。


「ただいま」


「あっ、おかえり~早かったね」


「食料品だけだからな。そっちはどうだ?」


「掃除は終わったよ。あとはまぁ……」


 口を濁した様子のララといっしょに家の中へ入る。

 シルバはどこかへ走っていった。


「あら、おかえりなさい」


「……ただいまです」


 テーブルの上で小さな体で小さなパンをかじっているダンジョンコアの姿があった。

 ……食事とかするの?

 魔力でできてるって言ってたよね……とりあえずスルーだ。


「最近のパンはフワフワでバターの風味も効いてて随分美味しくなったわね」


「味とかわかるんですか?」


「もちろんよ。お腹が減るわけじゃないから食べなくても大丈夫なんだけどね」


「……」


 つい聞いてしまった。

 昨晩はあれからすぐ解散したのだが、ダンジョンコアはすぐソファで寝始めたのだ。

 普通消えると思うよね。

 精霊だか妖精だかコアだか知らないけど、今まで姿を現したことすらなかったのに普通に寝だして、朝になっても寝たままだったから起こさないように町に出かけたのだ。


「睡眠は必要なんですか?」


「ん? だって夜はダンジョン内に誰もいないし、アナタたちも寝るからアタシはなにもやることないじゃない。まぁ魔力を消費しすぎたとき以外は寝なくても全然平気なんだけどね。気分的なものよ」


「ですよね~」


 ダンジョン定休日でもここにいるってことは昨日の続きがまだまだあるってことか。

 こりゃ本気でダンジョンの今後について考えないといけなくなったな。

 ララにカッコつけようと妙なやる気を見せたのが失敗だった。


「コアさんは自由に動き回れるんですか?」


「ダンジョン内ならね」


「ダンジョン内? ここは外だと思うのですが?」


「ここもダンジョンの一部よ。ダンジョンは洞窟の中だけじゃなくて、この大樹前の木がない平地エリアも含んでいるわ」


「「!?」」


 ここもダンジョンの一部?

 ララと顔を見合わせると同時に首を傾げる。


「今俺たちは魔力で作られた場所にいるってことですか?」


「いえ、ここは現実に存在してる場所よ。ダンジョンの一部といってもただこのエリアのマナの力を通常よりも強くして魔物を近づけさせなかったり、この家からダンジョン内を見れるようにしたかったのが最初の目的ね」


「なるほど。家の周りで魔物を見ない理由がわかりました。管理人としてもここからダンジョン内部を見れるほうが都合いいですしね」


 色々わかってきたな。

 この人工ダンジョンの一番のメリットが安全だというわけだ。

 毎朝の日課や買い物のためにエリア外に行く俺にはシルバをお供につけとけば問題ないってことか。


「つまりお爺ちゃんは私たちの安全を第一に考えていたってことか。このダンジョンを初心者向けだけにしたのもまだ小さかった私たちのことを考えてのことかもね。……となると、なるほど。私をサブにしたのは万が一にもダンジョン内の魔物に襲われないようにするためか」


「ふふっ、ララちゃん、おそらくアナタの考えてることで合ってると思うわよ。優秀で助かるわ」


 ダンジョンコアは満足そうに微笑んでいる。

 ララは全て納得したのかスッキリした表情だ。


 ……ちょっと待って、妹よ。

 俺たちのためにダンジョンの難易度を初心者向けにした?

 魔物に襲われないためにサブにした?


 よし、整理してみよう。


 ダンジョン内の魔物は十二歳のころの俺でも一人で倒せるようにはなってたし、ララも現在十歳だが既に倒せない魔物はいない。

 二人とも順調に強くなれているはずだ。

 それに初心者や初級者しか来ないダンジョンにすることで、力を持った冒険者と弱い俺たちとのトラブルを避けるためって考えもあるのか?


 次だが、よく考えると確かにダンジョン内で魔物に襲われたりしたことはないな。

 敵に気付かれずにに先制攻撃できていて追撃も相手より早いんだと思っていたが、サブは襲われないように設定されていると考えたら納得だな。

 なんせダメージを受けた記憶が全くない。

 これはこれで問題な気もするが……。

 サブでも訓練用に普通の設定にできたりしそうだな。


 ……でも一般の冒険者たちも魔物に後ろから襲われたりはしてないよな?

 もしかしてこれは初心者向けの設定なのか?


 こんな感じだよね? といった表情でララを見ると、頷いてくれた。


 ララをサブにしたのは安全のためだけじゃなくて俺が管理人になったときにフォローさせるための意味合いもある気がするな。

 うん、フォローどころか実権を持つのはララになりそうだ。

 それはそれで俺が楽できていいな。

 むしろそっちのほうがダンジョンのため俺のためだ。


「お兄、しっかりしてよ? やることいっぱいなんだよ? わかってる?」


「……はい」


 ジト目で睨まれた。

 俺の考えてることなんてララにはお見通しか。

 ダンジョンコアはニヤニヤ笑っている。

 ……俺ってそんなわかりやすいのか?


「そうね、ロイス君、ララちゃん、アタシとも普通に話して。変に気遣ったり敬語っぽいのはいっさいなしでいいから」


「……わかりました。じゃあコアさんじゃなくてコアちゃんとかのほうがいいですか? ……あ、いいかな?」


「う~ん、アタシにも名前があればね……そうだ! 二人が名前を付けてよ!?」


「えぇー、そんな無茶な。ララどうする?」


「ダンジョンコアだから、ダンコとかは? それかジョンコ?」


 コアさんは露骨に嫌そうな顔をしている。

 お気に召さなかったようだ。

 それでもララは続ける。


「じゃあココアは? 響き可愛くない? ココアでいいよね?」


「さっきのよりかはマシね。ロイス君はなにかいい案ないのかしら?」


 う~ん、ダンジョンコアからはこれ以上浮かばないな。

 確かここの大樹の名前はユグドラシルとかいったか?

 というか誰に教えてもらったんだっけ?

 まぁいいや、ユグドラシルだから……


「ドラシーは?」


「あら、それいいじゃない」


「えーココアのほうが可愛いよ。美味しそうだし」


「ララちゃんには悪いけどドラシーのほうがピンときたわ」


 ふぅ、気に入ってくれたようだ。

 これから長い付き合いになるかもしれないしな。


「では改めてよろしく、ドラシー」


「よろしくねドラシー! 色々教えてね!」


「ふふ、名前っていいものね。では今後のことを話し合いましょうか」


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