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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第三百九十三話 トンネルサンプル

 ダンジョンは今日もガラガラだ。

 でも明日からは帰省してる人たちが徐々に戻ってくるからな。


 ジャポングのほうはもう今日で三日目だ。

 狭い国だし、たった一万人しかいないのならそろそろ避難も落ち着くんじゃないか?


「おはよ~」


 マリンが起きてきたか。

 モニカちゃんは既にリビングのソファで二度寝に入っている。

 夜遅くまで作業してたんだろうから無理に起きてこなくてもいいのに。


「お兄ちゃんいないの~?」


「いるぞ」


 管理人室からリビングに移動する。


 マリンもソファに横になっているようだ。

 管理人室まで来ないで声だけで俺を呼ぶのが疲れてる証拠だよな。


「おはよう。あまり眠れてないんじゃないか?」


「うん。でもこんな感じ久しぶりだから少し楽しいかも」


「そうか」


 充実してるってことなんだろうが、俺だったらそこまでできないな。


「でね、トンネルのサンプルを作ったんだけど見てくれる?」


 マリンは起き上がり、レア袋からサンプルとやらを取り出した。


 ……なんだこれは?

 俺が想像してたものと違う……。


「…………まずデカくないか?」


「お兄ちゃんは魔道プレートの10センチ四方の塊を、それより少し大きいくらいの装甲で囲った物を想定してたんだよね?」


「あぁ。素材や封印魔法維持にかかる魔力はできるだけ節約したほうがいいと思ったからな。……でもこれ、もしかして魔道プレートも筒状にしたのか?」


「うん。このトンネルの内側部分は全部魔道プレート。外側の装甲はミスリルベースで、魔道線を這わせてあるからこれにララちゃんの中級雷魔法を付与してもらうの」


「でもこの大きさだと魔力もだいぶ使うんじゃないか? 封印魔法も雷魔法もさ」


「うん。でも雷魔法は普段は流さないし、やっぱりなにかあったときのために魔道プレートのメンテナンスや交換ができるようにしておきたいと思ってさ」


「……まさかこのトンネルの中を人が通れるようにこのサイズにしたのか?」


「そうだよ。だからもし魔道ダンジョンを維持する魔力がなくなっても最悪はここ通ればいいし」


 トンネルの大きさは直径80センチってところか?

 立っては通れないが、膝をついてなら……いや、魔道プレートなんだからトロッコが使えるか。

 そこまで考えてこの設計にしたんだな。

 さすが錬金術師だ。


「でもやっぱり封印結界が破壊されないかが心配なんだよね~。ただでさえ海の中ってめちゃくちゃ大きいあのタコみたいなやつもいるんだし、魔物も魔瘴によってより凶暴化しそうだし。そのときはトンネル外側の装甲の防御力や雷魔法に頼ることになるけど、もし装甲が壊されたら修復はさすがにできなさそうだからね……」


「トンネルの一部分だけを引き上げるのは無理そうか?」


「大きいから厳しいと思うよ。お兄ちゃんが言ってた設計だったらそれは簡単そうなんだけどさ」


 でも俺の設計だと中の魔道プレートに異常が発生した場合のメンテナンスやらができないんだよな?

 外側の装甲を外して中を見ないといけないし。


 海の中でそのまま装甲を修理できれば簡単なんだけどなぁ。


 ……海の中?


「ペンネにやってもらえばいいんじゃないか?」


「ペンネちゃん? ……海中でってこと? できるかな? その前に危なくない?」


「海の中はペンネの得意フィールドだろ? それにペンギンテイオーなんだからたぶんそれなりには強くなるから多少の魔物くらい大丈夫……なはず。あとは装甲の修復技術だが、あいつ掃除が好きだからなんとなくできそうじゃないか?」


「掃除って……」


 なんだかできる気がしてきたぞ。

 ペンネは向上心の塊だからな、うん。


 でも確かにマリンが言うように凶暴化した海の魔物相手では海中トンネルが耐えられる保障はどこにもない。

 マグロンが凶暴化したとしたら、さらに速くなったスピードで体当たりされただけでも封印魔法が破られそうな気も……。


 やはり海中はやめたほうがいいのか。

 昨日マリンが言ってたように橋みたいにしたほうがいいのかもしれない。

 だいぶ高いところにこのトンネルを設置すれば船の邪魔にもならないだろうし。

 でもどうやって上空に設置するかだよな。


「ミャ~(ミルクちょうだい)」


「あ、ボネ。もう帰ってきたのか?」


「ミャ~(だってあの子といっしょだと私が死んじゃいそうなんだもん。もう二度とパーティなんか組んでやらないわ)」


 ボネがダンジョンに入りたいって言うからシャルルに頼んだのに……。


 ……ん?

 どうやらシャルルも帰ってきたようだ。


「ロイス……ボネが怒ってるみたいなの……」


「いや、気にしなくていい。ボネはダイフクといっしょじゃないと本領が発揮できないんだよ」


「ミャ~! (そんなことないわよ! この子が肩に乗せてくれればいいだけなのに、私が肩に乗ってると槍で攻撃できないって言うんだもん!)」


「無茶言うなよ……シャルルは槍を両手で扱ってるんだぞ? 昨日のララは左手でダイフク、右手に剣だったからボネが左肩に前足を乗せてようがしがみ付いてようが大丈夫だったけどさ……」


「……ミャ~(じゃあ私は足手まといって言うの?)」


「そうじゃなくて、戦闘タイプの相性の問題だよ。ララから聞いたんだけど、本来マーロイフォールドの魔道士タイプだけで戦う場合、防御力が低いことを自覚してるから、人間から離れるようにしながら魔法を使うんだ。戦士タイプといっしょに行動する場合は、戦士タイプの行動に合わせてピッタリくっ付くように行動したり、もしくは戦士タイプが魔道士タイプを守りながら戦うらしい」


「……ミャ~(なにが言いたいのよ?)」


 頭いいんだからそれくらいわかるだろ?


「……信頼の問題ってことよね。私がもっとボネの傍で戦えば良かったんだわ……」


 別にシャルルに言ったつもりはなかったんだが……まぁいいか。


「ごめんね、ボネ」


「ミャ、ミャ~(な、なによ急に……私のほうこそ悪かったわよ)」


「ボネのほうこそごめんなさいってさ」


「うん……少し休憩したらまた地下三階行きましょ」


「ミャ~(仕方ないわね)」


 仲直りしたようだな。


「あ、寝ちゃってた…………あ、トンネルだ」


 モニカちゃんが目を覚ましたようだ。

 こんな騒がしいのに眠れてしまうということはよほど疲れてるんだろう。


「モニカちゃん、どうしよっかぁ~」


「え、なんの話?」


 マリンは話の経緯を説明する。


「ミャ~(それならわざと攻撃させる場所を作ればいいのよ)」


 ミルクを飲み終わったボネが話に入ってきた。


「どういうことだ?」


「ミャ~(こないだ話してたあれでいいんじゃないの? ララとジェマと話してたやつ)」


 こないだ話してたあれ?


 ……あのことか?


「ダンジョンをもう一つ作るってやつか?」


「「「え?」」」


「ミャ~(そうよ。ダンジョンに誘い込むのよ)」


「トンネル外側に転移魔法陣を設定するってことだよな?」


「「「え……」」」


「ミャ~(大部分は封印魔法だけど、ところどころ一部を転移魔法陣にするの。しかもその転移魔法陣の部分はわかりやすくボロボロに見せたり、人間の絵を書いたりして魔物から向かって来させるのよ。魔物だってバカじゃないから弱点を狙ってくるもの。あ、でも転移魔法陣って遠距離から魔法攻撃された場合はどうなるのかしら? そこのところはテストしてみてよね)」


 天才かよこの子猫……。


 転移してきた魔物を倒して得る魔石によって、魔力問題も同時に解決できるな。

 もう少し先のことになると思ってたが、この際だから実験がてらやってしまおう。


 でも転移魔法陣のことについては俺のほうが少しだけ詳しく知っているようだな。


 転移魔法陣にも色々設定がある。

 例えばウチのダンジョンにある転移魔法陣は完全に指輪で管理してるから、指輪を装備していない者は入ることができない。

 それ以外は魔法であろうが全て遮断されるようにできてる。

 ある意味封印魔法よりも強固な防衛手段と言ってもいい。

 その分設定時に大量の魔力を使うらしいけど。


 ほかには大魔道士ローナの部屋のような、一定量以上のマナの力を持ってないと入れないといった設定もあるな。


 ボネが言ったような魔法攻撃を防ぐ場合には、一定量以下の魔力は通さない設定にすれば問題なく対処できるだろう。

 だがそれでは魔石を体内に持った魔物も通れない。

 だからここはシンプルに最も簡単な設定でいこう。

 駅に設置してある魔道ダンジョンへ入るための転移魔法陣と同じだな。

 まぁ複雑な設定はまだカトレアには無理かもといった懸念もあるし。


「お兄ちゃん? まとまりそう?」


 俺の考えがまとまるのを待っててくれるとはさすがマリン。

 声をかけてくるタイミングもばっちりだ。


「ボネ、少し俺なりにアレンジさせてもらうけどいいよな?」


「ミャ~(当然でしょ。ロイスの参考になればいいと思って言ってるだけだからね)」


 なんて可愛いやつ……。

 とりあえずたっぷり撫でておこう。


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