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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人
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第三百八十八話 ボネの能力

 地下二階魔物急襲エリアの川で戦うララたちを見てたら、温泉のことを思い出したのでドラシーに相談してみた。


「え? もうあるのか?」


「ちゃんとリスト見なさいよ。一応それ貸して」


 ドラシーは俺から温泉の水が入った瓶を受け取ると、そのまま瓶ごと吸収した。


「……やっぱり同じね。ほら、リストのここ見なさい。マーロイの湯とミランニャの湯って書いてあるでしょ?」


「あ……これ温泉のことだったのか……」


「ただのお湯だと思ってたの?」


「うん……。大樹の水みたいに、地方によって水の成分が違うんだろうなぁ~としか思ってなかった。こっちにはマーロイの水ってのもあるし」


「ララちゃんに温泉のこと話したって言ったわよね? なにも言われなかった?」


「ララは風呂には全く興味がないんだと思う。お湯のことよりも、開放感がある広い大浴場だから気持ちいいって言うタイプだし」


「カトレアちゃんには?」


「まだ話してない。みんな忙しそうだし、温泉のために貴重な魔力使うのかとか言われそうだし、そんなこと考えてる暇あるならもっと考えることあるだろとか言われそうだし」


「誰もそんなこと言わないわよ……冒険者からの声なんだしさ……」


 そうだといいんだが。

 どちらかというとカトレアたちも風呂に長く入る時間があるなら錬金のこと考えてたいってタイプっぽいしな。

 でも風呂に入りながら考えてるかもしれないか。


「ん? じゃあこのなになにの湯って書いてあるのは全部温泉って認識でいいのか?」


「そうよ。いっぱいあるでしょ?」


「ありすぎだろ……聞いたことのない地名もある……」


「それはアナタが地理にうといだけよ」


「……でもなんでこんなにあるんだ? 集めてきたとしか思えないぞ?」


「集めてきたに決まってるでしょ。それも冷めた温泉じゃなくて、ちゃんと状態保存をかけた温泉よ」


「先祖の誰かが温泉マニアだったってことか?」


「マニアというか、魔物使いには収集癖がある子が多いのよね」


「収集癖?」


「今の温泉みたいに、アタシに吸収させておけばいつかなにかに使えるかもしれないでしょ? それにもし色んな種類があるんならほかのものと比べたくなったりしない? そうやってくうちにどうせなら集められるものは全部集めてしまおうと思っちゃうみたいよ」


 まさに俺じゃないか……。

 温泉に限らず、魔物の種類だってもっと増やしたいと思ってるし。

 フィールドの種類ももっと色んな候補があればいいのになって思ってるし。


 ……まぁ温泉のことは手間が省けてラッキーだったよな。


「でもアナタは違うみたいね。ここからあまり外に行きたがらないし」


 俺はまだセーフだったようだ……。

 今朝のララとの会話は聞かれてないようだな。


「アナタのお爺さんなんか休みの日は必ずどこかに行ってたわよ。それにアナタのお父さんは魔物使いではなかったけれど、お爺さんに頼まれた魔石や素材を求めて世界中を旅してたしね」


「へぇ~。冒険者だったことは知ってたけどそれは初めて聞いたな。じゃあこのリストに載ってる魔物には父さんが集めてきたやつも多くいるってことか?」


「多くはないわね。ある程度は元々揃ってたってこともあるけど、二人ともどちらかと言うとレアな魔物が好みだったから。魔物も時代とともに進化したり、新しい魔物が生み出されたりもするからそれを見つけたりするのも面白いのよ。マーロイフォールドだってまだ私が知らなかったってことは結構最近のことだと思うわよ?」


「この間のメカトロルやメカゴブリンもそうなんだよな?」


「あれには驚いたわね。それに魔瘴によって凶暴化した魔物たちにもね。そこまで魔瘴が濃くなったって話は聞いたことがないわ」


「じゃあ今の魔王は千年前とは別の魔王なんじゃないか? とにかくヤバいやつってことだろ?」


「う~ん。なにがなんだかもうわからなくなってきたわね……」


「……どっちでもいいか。でも冒険者は平和ボケして弱体化していったのに、魔王だけパワーアップして復活だなんてズルいよな」


「おかげで面白いものがたくさん見られてアタシは結構楽しいわよ?」


「俺は楽しくない。のんびり暮らせればそれで良かったのに」


「ふふっ。運命だと思って諦めなさい」


 なんで笑ってるんだよ……。


 もし俺たちが負けたら大樹のダンジョンどころか大樹だって生きてられないだろうから、そのときはドラシーだって死ぬってことだろうに。

 もう何千年も生きてきたからそれでも構わないとでも言うのか?

 みんなが死んでいく中で自分だけが死なないっていうのはツラいこともあるだろうけどさ。

 でも死ぬ恐怖に比べたら贅沢な悩みには違いないだろ?


「あ、地下三階に行くみたいよ」


「え、もう? 大丈夫なのか……」


「心配性ね。ララちゃんと猫ちゃんたちのどっちが心配なの?」


「ララだよ。また魔物と戦えなくなるくらいならまだいいけど、今度は日常生活に支障が出たりするかもしれない。だから万が一に備えて、ララが装備してる指輪のダメージカットの能力を常に100%にしてくれ」


「……アナタに対してのララちゃん以上に過保護ね」


「なんとでも言え。ララが無事ならなんでもいい」


「もぉ~。ララちゃんに異変を感じたらすぐに転移させるからそれでいいでしょ?」


「ん~、仕方ない。絶対に目を離さないでくれよ」


「はいはい。新年早々疲れるわね」


 でもララは楽しそうにダイフクに乗ってるな。

 ……速くて気持ち良さそうだ。


「あ、ワイルドボアだぞ。確か屍村で遭遇したときには……あ、瞬殺したな……」


「ほら、大丈夫なのよ」


「……いや、まだ安心はできない。あっ! 背後上空からハニービーが数匹来てるぞ! さすがにダイフクでも追いつかれる! ……ん? なんだ今の? 横からなにか飛んできてハニービーに当たってダメージを与えた? 森の中に誰か冒険者がいたのか? ハニービーたちは痛がって一瞬とまったよな」


「ボネちゃんね」


「ボネ? ボネが攻撃魔法を使ったのか?」


 ボネはララの肩に前足を乗せて前から後方を覗いている格好だ。


「攻撃魔法ではないかも。よく見てて」


 なにをしたって言うんだ?


 ……あ、まただ。

 これは……木か?

 木の枝が飛んできてるのか?


 これをボネがやってるってことか?


「風魔法で木の枝を操ってるのか?」


「いいえ、念力よ」


「念力?」


「サイコキネシスとも言うわね」


「サイコキネシス……なんだか凄そうな名前だけど、なんだそれ?」


「ボネちゃんの意思で物を操れる能力って言えばわかるかしら? もちろん魔力を使ってだけどね」


 ボネの意思で物を操る?

 なんでも操れるのか?


「じゃあさっきのはそのへんに落ちてた枝に向かって魔力を飛ばしてたのか? それでそのままハニービーに飛んでいけって念じたってこと?」


「イメージ的にはそんな感じね。でも今のは脇に生えてる木から枝を折ってたけどね。地上でもそんなことされたら困るからアナタからよく注意しておきなさいよ」


 もし大樹の枝でも折ったら怒られるからな……。


 とまぁそれはさておき、なんだか凄い能力っぽいぞ。


「ララは知ってるのか?」


「もちろんよ。トレーニングエリアの氷山や火山の中ではボネちゃん使いまくってるもの」


「え……氷を飛ばしたり溶岩を飛ばしたりしてるってことか?」


「えぇ。中でジッとしてるのが暇だからできるようになったみたいだし。だからララちゃんからしたら余計に氷魔法や火魔法とかを覚えてほしくなるんでしょうね」


 そうだったのか。

 確かに氷を自分で出せるようになれば攻撃手段の幅が格段に広がるもんな。

 攻撃だけじゃなくて防御にも使えそうだし。


 ん?

 火魔法とも言ったか?


「一度放った火魔法を途中で自在に曲げたりもできるってことか?」


「そうよ。なんだったら戻ってこさせることもできるみたい」


「え……じゃあ百発百中じゃないか……」


「凄いでしょ? でもまだ小さくて軽い物しか操れないみたいなの。火も同じで小さい火しか無理みたいだし。それに魔力消費も多いし。そこはまだまだ修行が必要ってことね」


「それは仕方ないとしても、凄いじゃないか。念力を使える魔物はほかにもいるのか?」


「いるわよ。なんだったらGランクにも」


「Gランク? そんなのいたかなぁ~」


「持ってる小石を飛ばすだけだけどね」


「あぁっ! あいつか~ってあれ、投げてるんじゃなくて念力だったんだな……弱すぎて話にならないけど。あ、弱いのは念力に魔力を使ってる魔道士タイプだったからなのか」


 しかも小石のスピードもたいして速くないから当たってもそんなに痛くないし。

 だからダンジョンに出現させることなんて考えもしなかった。

 言われてみれば、投げてるにしては軌道とスピードが合ってなかった気もするな。


「マーロイフォールドの魔道士タイプはみんな念力を使えるんだろうか?」


「この前ララちゃんが調べてたけど、どの子も使えなかったわ。というかマーロイフォールドって一括りにするのもどうなのかしら。体の色や模様や使える魔法が違うように、微妙に魔石が持ってる情報も違うのよね。なんなら耳が折れ曲がってない子もいるのよ?」


「あ、ボネが木を折ったりするのも耳が折れ曲がってるマーロイフォー……冗談だよ」


 睨むなよな……。

 木をもっと大事にするように伝えておけと念を押されているようだ。


「でもなんでボネは俺に念力のことを言わなかったんだろう」


「いたずらができなくなるからじゃない?」


「いたずら? ……例えば?」


「アナタがそこのコップを手に取ろうとしたときにコップの位置を少し移動させてみたり? お皿の食べ物をほかの人のお皿に移してみたりとか?」


 地味だな……。

 俺に気付かれないいたずらなんかいたずらでもなんでもないだろう……。


「ん? もしかして俺が新規への説明をしてるときにレア袋からランチプレートを盗んでたのも念力でか?」


「そうね。重そうだったから見てるこっちはヒヤヒヤしたわよ」


 人が焦ってたときになに一人で楽しんでるんだよ……。


 でも念力はなにかと使えそうだ。

 例えばソファから微動だにせずともテーブルに置いてあるコップを取れたりできるんだろ?


 ほかには……ってダメだ。

 どうしても俺の生活をだらけさせるための想像しか浮かばない……。


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