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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人
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第三百八十二話 ララと子猫たち

 ピピとメタリンは少し休憩したあと、ヤマさんのご両親が書いた手紙を持ってラスに飛び立っていった。


 そろそろ今朝出航した船が着いたころだろう。

 ジャポングは今どんな状況なんだろうか。

 俺たちは待つことしかできない。

 南マルセールに船が帰ってくるのは早くても十八時過ぎだからな。


 今日はダンジョンの営業こそ通常通りしているが、従業員は全員休み。

 明日も同じく。

 ジャポングに行った冒険者たちに五日分の料理を持たせたので、バイキング用に保存してある料理の数が少し減ったが、それも全く問題ないとのこと。


 カトレアたち錬金術師組は、夜はジャポングからの避難者の受け入れで忙しくなることを想定して、それまで各自部屋で休息を取るようだ。

 ミランダさんたちも手伝ってくれるとのことで、三人も宿屋で休憩中。

 マリンだけはこのリビングのソファで寝ている。


「ガラガラだね~」


「不安になるよな」


「うん。ダンジョン食堂始めたときくらいの人の数だもん」


「ダンジョン食堂ってなによ?」


「バイキング会場ができる前までの食堂施設だ。それよりいつまで休憩してるんだ?」


「だって一人じゃやる気が出ないんだから仕方ないじゃない……シルバはいないし……ビスも」


 その組み合わせでよく修行してたもんな。

 それだけにビスが亡くなったことにはまだ責任を感じてそうだ。


「もぉ~。なら私といっしょに来る?」


「え? ララと?」


「トレーニングエリアだけどね。毎日午後はダイフクとボネと修行の時間にしてるから」


「行くわ! そうと決まれば早く行くわよ!」


「ミャ~(私は行きたくないわよ。従業員みんな休んでるんだから私も休みでいいじゃない)」


「俺に言うなよ……」


「ミャ~? (私だけずっと火山か氷山に入れられるのよ? 熱さや寒さで死んだらどうするのよ? ダイフクみたいに木や岩に登ってるほうが楽しそうなのに)」


「それはボネが魔道士タイプだからで……」


「お兄、ボネなんて?」


「……身体面を鍛えるために、たまにはアスレチックエリアや岩壁エリアでの修行もしたほうがいいんじゃないかって」


「ボネには魔法さえあればいいの。火山と氷山に入るのは火魔法や氷魔法のためじゃなくて、ボネの精神力と魔力を向上させるためだからね」


「ミャ! (ヤダ! 今日は休むの!)」


「あっ! ボネ!」


 ボネは走ってどこかに逃げていった。

 どうせすぐに捕まるのに。


「もぉっ! シャルルちゃんのせいだからね!」


「え、なんで私のせいになるのよ!?」


「喧嘩するなって……」


 やっぱりシャルルがいるとうるさくなるな。


「暑さや寒さのような劣悪な環境からも守れるような補助魔法を身につけるためでもあるのに。封印魔法が使えるボネならできるはずなんだけどなぁ」


「そもそもボネがこっそり封印魔法を身につけたのだって、ララに修行に連れて行かれるのが嫌で自分の周りを封印結界で囲うためだろ? ララに解除されることは想定してなかったみたいだが。まだ子猫なんだし、しばらくは放っておいたほうがいいんじゃないか?」


「でも今くらいの時期の修行次第で今後の成長具合が変わるかもしれないし……リスたちだってそうだったじゃん」


「それはリスたちに強くなりたいっていう向上心があったからだよ。ボネもそう思うようになるまで待ってやってくれよ」


「……わかった」


 最初はただ子猫が家で飼えるようになったって喜んでただけだったのにな。


 まぁ死なせたくないからこそ鍛えてあげたいという気持ちもわかるにはわかるんだが。

 それにマーロイフォールドが魔瘴により凶暴化したときの強さをリヴァーナさんやジジイから聞いてるからこそ、この二匹には期待してしまう部分もあるんだろう。


「ほら、シャルルとダイフクとトレーニングエリアに行ってきたらどうだ?」


「うん……」


「ニャ~(ダンジョンに行きたい)」


「え?」


「なに? もしかしてダイフクも? 反抗期なのかな~じゃあもう今日は休みでいいよ……」


「いや、そうじゃなくて、ダンジョンに行きたいってさ」


「えっ!? なにしに!?」


「ニャ? (戦いに?)」


「……どうやら魔物と戦ってみたいらしいぞ」


「えっ!? ホントなの!?」


「ニャ~(うん)」


「やる気じゃない! シャルルちゃん! お願いしていい!?」


「任せなさい! 私が立派なダイフクに育ててあげるわ!」


 立派な猫な。

 それじゃ美味しいダイフクになるぞ。


「ニャ~(ララも)」


「……ララもいっしょに行こうってさ」


「え……ごめんねダイフク。戦闘がしたいんなら私はいっしょには行けないから……探索なら行けるけど」


 図書館の敵みたいに襲ってこないってわかってるんなら大丈夫なんだけどな。

 ララが襲われない設定にしていっしょに行けば敵が寄ってこないから、ダイフクが敵と戦えなくなるし。


「ニャ~(背中に乗っていいよ)」


「え? 大丈夫なのか?」


「ニャ~(うん)」


「う~ん、でも重いし、痛くないか?」


「ニャ~(重さは平気。引っ張られても多少は大丈夫)」


「ねぇ、なに? 防具の話?」


「ララはダイフクの背中に乗ってていいって」


「「「えっ!?」」」


 あ、マリンを起こしちゃったか。

 そりゃこんなうるさくされたら寝られるわけないよな。


「私を乗せて走れるの!?」


「ニャ~(いつも修行中は重いし)」


「……いつもトレーニングエリアでは負荷をかけて修行してるから、ララを乗せるくらいたぶん大丈夫ってことだと思う」


「あ、そうね……でも落ちないかな?」


「ミャ~(背中の毛ならいいよ)」


「……頭の毛は引っ張らないでほしいけど、背中の毛なら全然平気だって」


「そうなの? ちょっと乗ってみていい?」


 そしてララはダイフクの背中に乗った。


 ダイフク、デカいな……。

 これがまだ倍くらいになるのか。


 ダイフクとララはそのまま外に出ていき、家の前を走り始めたようだ。

 俺たちも外に出て、それを見守る。


「問題なく動けてるわね」


「でもどうやって戦うのかな?」


「ダイフクが飛びかかって前足で攻撃するんだろう」


「そのときに振り落とされないかしら?」


「毛が抜けちゃいそう……」


「ダイフク、可哀想だよな……」


 絶対に痛いぞ……。


「ちょっとマルセールに行ってくるね!」


「「「え……」」」


 ララはダイフクに乗ったまま駅の中に転移していった。


「町の人に見せにいったのかしら……」


「魔道列車とスピード勝負するのかも……」


「管理人室に戻るぞ」


 そして画面で様子を確認する。


 ……四人用の列車に乗って移動するようだ。

 ダイフクから降りて普通に座ってるな。


「シャルル、もうトレーニングに行ってこい」


「そうね……」


 ララが何考えてるか全くわからない……。


 そしてマリンと二人、マルセール駅の様子をじーっと見る。


「人多いね」


「乗り換えの駅でもあるからな。列車の本数も増やしてるみたいだぞ」


「メロさんは今日も働いてるんだね」


「休んでいいって言ったのに、大晦日だしなにかあるといけないからとりあえず管理室にはいるって言って聞かないんだよ。結局じっとしてられずに管理室の中にはほとんどいないようだけど」


「あっ! ララちゃんとダイフク!」


「なにっ!? ……フラン?」


「アイリスさんもいる!」


「もしかしてわざわざ二人を呼びにいったのか?」


「……武器と防具を作ってもらうつもりなんじゃない?」


「やっぱり毛を引っ張るのは気が引けるもんな……」


「うん……。それに今日は住み込みの防具職人の人もみんな外出しちゃってるみたいだし、フランさんしか頼る人いなかったんだろうね」


 フランとアイリスもせっかくの休みの日に可哀想に……。


「ミャ~? (ねぇ、ララ怒ってる?)」


 やっと戻ってきたか。

 どうせ俺のベッドの中にでも隠れてたんだろう。


「怒ってないぞ。それよりボネも今から防具作ってもらったらどうだ?」


「ミャ? (防具? 危ないところに連れて行かれるの? お仕置きってこと?)」


「違う違う。ダイフクがダンジョンに入りたいって言い出したんだよ。だからこのあとララといっしょに入るんだって」


「ミャ~!? (えっ!? じゃあ私も入っていいってこと!?)」


「ボネも入りたかったのか……」


「え……」


 やっぱり戦闘が魔物の本能なのかな……。


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