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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人
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第三百八十一話 リーヌ封印結界組の報告

 十一時を過ぎたころ、リーヌに行ってたピピとメタリンが帰ってきた。


「先に帰って報告しろってエマに言われたのか?」


「チュリ(いえ、ほかのみんなはエゾとオーエドに向かいました)」


「エゾとオーエド? ジャポングに行ったってことか?」


「チュリ(はい。その前に少し休憩していいですか? 以前より速く飛べるようになったのはいいんですけど体力の消耗が激しくて)」


 ピピとメタリンの体が大きくなったことも関係ありそうだけど。


 それよりジャポングに行ったってことはエゾとオーエドには避難する間だけでも封印結界が必要と考えたんだな?

 それほどリーヌの魔瘴は酷かったんだろうか?


「みなさん無事ですか!?」


 ピピとメタリンが水を飲んでると、魔物たちが帰ってきた気配を感じ取ったカトレアが飛んできた。


「魔瘴で体調おかしくなってませんか?」


「チュリ(以前に比べて強くなったから平気です)」


「キュ(シルバ君も大丈夫そうでした)」


「なんともないってさ。シルバも」


「良かった。……あれ? ほかのみんなは?」


「今から話すからみんなをリビングに集めてくれ」


 そしてしばらくしてウチの住人が集まってきた。

 ミランダさんたちも来たようだ。


「ピピとメタリンだけ? どういうこと?」


「ピピたちがリーヌに着いたとき、海側から拡がってきてた魔瘴は町の中まで少し入り込んでたそうなんだ」


「じゃあ町の中に魔物も入ってきてたの?」


「あぁ。主に空からの魔物だったらしいが、幸いにも初級レベル程度だったそうだ。だから被害はそこまで出てない。元々リーヌを拠点にしてる冒険者が二百人ほどいたらしいし、ウチの冒険者も五十人以上帰ってたらしいからな」


「封印結界は?」


「魔瘴を気にすることなく予定通り海側からミニ大樹の柵を設置して、まずは海側だけに封印魔法で高い壁を作ってそれ以上魔瘴や魔物が町に入り込まないようにしたらしい。それから壁の内側の魔瘴をユウナや浄化魔法を使える魔道士たちでいっせいに浄化。並行してエマと魔物たちが封印結界の作業だな」


「エマちゃんやるじゃん。ねっ、カトレア姉」


「はい。エマちゃんにはもっと自信を持ってほしいです。ウチの封印魔法部門担当として恥じないどころか素晴らしい働きをしてるんですから」


 相変わらずだな……。

 ベルさんのことも変わらず気にしてるし。


「で、何時に終わったって?」


「二十三時だってさ」


「うわぁ~……大変だったろうな~」


「やっぱり相当広かったらしいぞ。ウチの冒険者たちに手伝ってもらってその時間だからな。大きな町だからか魔道柱一つ埋めるのにもいちいちその場所に埋めていいかの確認とか面倒だったらしいし」


「それ聞いたら王都の封印結界の仕事なんか絶対にしたくないよね~」


「「「……」」」


 ミランダさんたちが困ってるじゃないか……。

 ブルーノさんとキャロルさんは昨日からの錬金修行でお疲れのようだ。

 この二人はもっと喋る人たちだった気がするもんな。


「体調悪かったりします?」


 ブルーノさんに聞いてみた。


「いや、みんなの成長ぶりが凄すぎて言葉にならなくてな……」


「そうよ……浄化魔法を教えたはずの私たちよりも使いこなせるようになってそうだもんね……」


 そっちの心配か。

 あれからこの二人はどんな仕事をしてたんだろう。


「そういや魔道列車どうでした? 初めて乗ったんですよね?」


「どうもこうもあるはずないだろ……ヤバすぎの一言だよ……」


「聞いてた以上にショッキングだったわね……あそこまでいくとカトレアちゃんとマリンちゃんとモニカのことがこわくなるわ……」


「ちょっと? なんで私を外したの?」


「え、スピカさんは魔道列車にあまり絡んでなさそうだもの」


「キャロル? この子たちは私の弟子なのよ? 私が絡んでないわけないでしょ?」


「どうですかね~。ギルド内では弟子というか同格のようにみんな話してますからね~」


「……まぁいいわ。この子たちが凄いのは事実だからね。それより私の最新作の安らぎパウダー使ってみる? 量を間違えると二~三日は夢の中よ?」


「なにそれこわい……」


 危なすぎる……。

 絶対に量は間違えるなよ。


「師匠、まだ話は終わってませんのでそれくらいで」


 ナイスだカトレア。


「で、エマとユウナは当然のことながらかなりお疲れだったらしい。町が最高級の宿を用意してくれてたらしいんだが、宿に着くなりベッドに倒れこんで寝てしまうというもったいないことをしたそうだ」


「あ~あ。リーヌで最高級の宿ならこの国でも最高ランクなんじゃないの? もう一泊してこれば良かったのにぃ~」


 俺ならそんな高級宿、そわそわして眠れないかもな……。


「そして今朝は朝六時に港から魔物討伐の船が出たそうだ。エマたちはそれとは別に町長から、せめて港付近の海だけには封印結界を張ってくれないかと頼まれたらしい。だから仕方なく海の中に魔道柱を何本か突きさして、封印結界を拡げたんだってさ。そこまで深くはないそうだからどうにか海底まで結界が張れたようだ。ペンネとゲンさんとピピがいなければそんなことできなかっただろうな」


 普通の魚なら結界内に入ってこれるから多少の食料確保はできるかもしれない。

 外で魔物に食べられたら知らないけど。


「そんなサービスまでしちゃうなんてエマちゃんお人好しすぎない? あまり意味ないかもしれないのに、魔道柱や魔道線使っちゃってさ」


「いや、それが実はな……あ、ミランダさんたちは聞かないほうがいいかもしれません」

「え……なんとなくわかりますのでどうか私たちにもお聞かせください……」


「そうですか。昨日の作業終了後にな、今回の作業に町長や冒険者ギルド長をはじめ町の多くの人たちが感動したもんだから、気前よく報酬を払ってくれることになったそうだ」


「いくら?」


「……2000万G」


「「「「2000万!?」」」」


 俺とカトレアもさっきピピから聞いて二人で凄く驚いた。


 報酬を全く期待してなかったと言えば嘘になるが、今後も封印結界を定期的に上書きする必要があるだろうからそこで保守費用を頂けばいい程度に考えてたんだけどな。


「本当なの!? 本当に2000万G!?」


「本当だって……。この袋の中見てみろよ……」


「え……まさかもう現金で?」


 ピピが持ち帰ってきたレア袋をみんながおそるおそる覗き込む。


「「「「……」」」」


 人は驚きすぎると声が出ないようだ。

 俺もしばらく固まってしまったし。


「……なんで2000万Gもくれたの?」


「サウスモナは500万Gだっただろ? ボワールも同規模だから500万Gで話が進んでるし。それと王都には今3000万Gで提案してるって言ったらしいんだ。だから1000万Gくらいかなって言おうとしたら、町長のほうから2000万Gでどうかな? って言ってきたんだってさ。あ、話してたのはエマな。あくまで向こうから聞いてきたんであって催促したつもりはないそうだぞ」


「なにそれ……もしかして見栄ってやつ?」


「それもあるだろうな。でもそれ以上に単純に嬉しかったんじゃないか? もしエマたちが来てくれなかったら今頃町は魔瘴で覆われてたって思ったらさ。そのことを考えたら2000万でも安いと思ったのかもしれない。魔道柱や魔道線の原材料が高いことも理解してくれたんだろう。何気に浄化作業もしてるし」


「……その代わり今後エマちゃんかユウナちゃんをリーヌに永久に常駐させろとか言ってきてない?」


「いや、それはない。それどころかこちらの提案通り、一か月に一度の封印結界上書き保守サービスを契約してくれたそうだ。費用も毎月10万Gくれるって」


「優良のお得意先じゃない! 普段の結界維持は!?」


「しばらくは冒険者ギルドに依頼として出すらしいが、今後は維持専門の魔道士を雇うかもしれないって。結界が弱まってくるようなことがあれば追加で費用を払うからすぐに来てほしいってさ」


「話の理解が早くて助かるね! ボワールの次に魔道列車を延伸するとしたらリーヌで決定!」


「おい……それはさすがに時期尚早すぎるって……」


 まぁ俺もあちらさんはそういう狙いがあって2000万Gも支払ってきたんだと思ってるけど……。


「でもリーヌが2000万Gかぁ~」


「「「……」」」


 ララからミランダさんたちへのプレッシャーのかけ具合が半端ない……。


 王都の作業なんか大変なだけで絶対に得はないぞ……。

 お金は貰えても材料を生み出す魔力消費が膨大すぎて、魔石を買い占める程度では到底カバーできないだろうし。


 でもどうせやらないといけなくなるんだろうけど。


「で、帰ってきたのがピピとメタリンだけの理由だが、エマやユウナ、そしてほかの魔物たちはエゾとオーエドに向かったらしい」


「「「「えぇっ!?」」」」


「おそらく向こうはリーヌよりもっと危険な状態だと踏んだんだろう。だからリーヌにいたウチの冒険者たちの半分はいっしょに船に同行してるみたいだ。もう半分はリーヌ近海での魔物討伐の船に乗ってくれてる」


「それはいい判断かもしれないね。エマちゃんやユウナちゃんたちも自分で考えて行動してるなんて凄いと思う。ねっ、カトレア姉」


「はい。二人が立派に育ってくれて嬉しいです」


 なんか母親みたいなんだよな……。


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