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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人

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第三百七十七話 ヤマさんの悩み

 リーヌ組、ラス組と続けて旅立っていった。


 ウェルダンはティアリスさんたちが乗ってきた馬車の馬も乗せて馬車を引くことになる。

 今朝アオイ丸の馬を乗せてきたときも思ったが、なんだか不思議だよな……。


「ジェラード様、ジュリア様、私たちは南マルセールに行って船の操縦士を集めてまいりますが、いっしょに行かれますか?」


「あぁ! 行ってみたい!」


「楽しみだわ!」


 操縦士のことはセバスさんたちに任せよう。

 きっと報酬は町から出すはずだし。


 さて、俺は船に乗ってもらう冒険者たちを集めないとな。


「お兄! 私がみんなを集めて説明しとくからお兄は休んでていいよ!」


「え? 疲れてるんじゃないのか?」


「大丈夫! 地下三階の海にアジジやサババを出現させて遊んでくるから気にしないで!」


「そうか。なら頼んだぞ」


 これはラッキーだ。

 なぜかララの機嫌がすこぶるいい。

 遠慮なく家でのんびりさせてもらおう。


 そしてボネとダイフクといっしょに家のリビングに戻り、お昼寝を……ん?


「なにしてるんだ?」


「見たらわかるでしょ。お昼寝よ」


 シャルルが先に戻っていたようだ。

 ジェマも南マルセールに行ったのか。


「いっしょに行かなくて良かったのか?」


「どこによ? 南マルセール? リーヌ? それともラス?」


 ……確かにどこに行ってたとしてもおかしくはないな。


「ミャ~(この子、生意気よね)」


 お前が言うか……。


「ニャ~(寝る)」


「きゃっ!? ……いっしょに寝てくれるの?」


「ニャ(うん)」


 ダイフクはシャルルのソファに乗り、シャルルの頭の横で丸まった。

 シャルルはダイフクを枕にして気持ちよさそうだ。


「暖かい」


「フワフワだろ? 毎日風呂に入ってるからきれいだぞ」


「相変わらずお風呂好きな魔物ばかりなのね。毛を乾かすの大変じゃないの?」


「それも魔物たち同士でやってくれるからなぁ。俺のところに来るのはボネくらいだな」


 シャルルが寝ているソファから斜めの位置にあるソファに座る。

 そしてボネ用のぬるめのミルクを注文した。

 それをボネお気に入りの器に移すと、ボネはテーブルの上で飲み始めた。


「ふぅ~、今日は疲れたな」


「ララなんかもっと疲れてるでしょ」


「そうだよな。それなのになぜか船に乗る冒険者たちを集めに行ってくれてるんだよ」


「え? ……きっと兄様よりロイスのほうが凄いことがわかって気分がいいのよ」


「ジェラードさんのことはまだよく知らないが、お前がそれを言ったら可哀想だろ」


「いいのよ。ロイスだって兄様が頼りないことくらいわかったでしょ? 兄としては大好きだけど、国王になるって言ったら絶対にとめるわよ」


「おい……第一王子はどんな人なんだ?」


「すっごく頼りがいがあって、みんなから好かれるような人よ。だからリアムお兄様が国王になれば…………ねぇ、ロイスは国王に興味ないの?」


「は? あるわけないだろ。俺からしたらそのリアムさんが可哀想で仕方ないよ」


「そうよね……。じゃあ寝るわ」


「あぁ、俺も寝る」


「ミャ~! (私より先に寝ないでよ! もう少しで飲み終わるから待ってってば!)」


 ボネを待っているつもりではあったが、すぐに眠気に襲われた。



◇◇◇



「お兄ちゃん、起きて」


「……ん? ……どうした?」


 眠い……。

 今何時だ?


「ヤマさんが話あるみたいだよ。ほら、目開けて。もう来てるから」


 ヤマさんか。


 ……あ。

 そういやヤマさんのご両親が来てたんだったな。


 パッと起き上がると、キッチンのほうのテーブルでヤマさんがなにかを飲んでいた。


「悪いな……起こさなくてもいいって言ったんだけど」


「いいんです。ララちゃんが働いてるのにお兄ちゃんだけ寝てるのはズルいですから」


「でも今日は来客続きでしかも魔瘴関連のことだったんだろ? ロイス君だって頭を使って疲れてるんだよ」


「そうですけど、お兄ちゃんの魔物たちだってみんな旅立っていったんですからね。今日帰ってこられるかもわからないんですよ?」


「そうだけどさ……マリンちゃんには敵わないな……」


 うん、みんなマリンにもララにも敵わない。


 シャルルはまだ寝てるのか。

 ボネは……ん?


 さっきは気付かなかったが、ヤマさんがいるテーブルの上に座り、ヤマさんをじっと見つめているようだ……。


「ボネ、どうした?」


「ミャ~(ヤマがウチに来たのなんて初めて見たもん。だから警戒中)」


 ララの言いつけをよく守っているようだ……。


「ボネちゃん、可愛いな」


「ですよね。ブラウンキャットは見ても特に可愛いとは思わなかったんですけど」


 ヤマさんの向かいの席に座る。

 マリンも隣に座ってきた。


「俺も子猫飼いたくなってきちゃいそうだ……」


「飼います?」


「え? いいのか?」


「ダンジョンの中だけで良ければですけど」


「ってことは魔物ってことか? ボネちゃんみたいな?」


「ボネとは色が違いますけど、同じマーロイフォールドの魔道士タイプがほかにも数種類いるんです。その中に子猫もいるので、ご希望であればすぐにでも用意できますよ?」


「それなら飼ってみたい! ……ってやっぱりそれはまた今度にしようかな」


 ボネはヤマさんを睨みつけている。

 自分の仲間がペット扱いされたことに怒っているのかもしれない。


「ミャ(戦士タイプも可愛いんだからね。ちょっと大きいってだけで敬遠しないでよ)」


 そっちに怒ってたのか……。

 ダイフクの可愛さももっとよく見ろって言いたいんだな。


「ボネちゃん、大丈夫だからこっちおいで」


 そしてボネはマリンの前に寝転んだ。


「それよりご両親は今どちらに?」


「マルセールの町を観光してるよ。あ、今日はここの宿屋に泊めてもらうことにしたけどいいんだよな?」


「えぇ、もちろんですよ。三人でゆっくりバイキングを楽しんでください」


「いや、俺は厨房に入る」


「え? 休みですよね? 従業員が少ないことなら気にしなくて大丈夫ですよ」


「そうじゃないんだ。俺の腕を見てもらうんだよ、親父に」


「お父さんに? ……もしかしてお父さんも寿司職人なんですか?」


「あぁ。ウチの実家は寿司屋なんだ。……もう過去形で言わないといけないか」


 実家を捨てて避難してきたって聞いたらツラいよな。

 これでヤマさんも完全に帰る場所がなくなってしまったわけだし。


「ご両親がここに来た理由の一つには住む場所の相談もあると聞きましたけど?」


「そのことなんだけどさ……あ、まず確認したいんだけど、ラスの町にも今後封印結界が張られることになるのか?」


「えぇ、向こうが提案してくれればすぐにでも。提案されなかったらもう少し先になりますけどね」


「そうか。ならジャポングの人間は国に近いラスに住みたがる人が多いかもな」


「かもしれないですね。でもマルセールに来る人だって多いと思いますよ? 住む場所がしばらく保障されてるのは安心でしょうから。ラスに住むのは少し落ち着いてからでもいいわけですし」


「それもそうか。いや、実は悩んでるんだよ。マルセールに住んだほうがいいって言うか、それともラスや王都を勧めるかさ。サウスモナだって住みやすそうだったしな。リーヌはちょっとごちゃごちゃしてて俺には合わなかった」


 ヤマさんも旅してきただけあってこの国のことに詳しいじゃないか。


「ヤマさん、俺はマルセールとこの近辺の三つの村、それとノースルアンしか知らないんですよ?」


「あ、そうだったっけ……なんかごめんな……」


「でもサウスモナ駅の開通式がある来週の5日には俺も初めて行く予定……5日? あ……その日は週パスの実装初日だ……」


「「……」」


 ララのやつ、わざと週パスの実装を5日にしたんじゃないだろうな?

 ……ってあれ?

 月曜だから5日にしようって俺が言ったんだっけ?


 サウスモナ駅のオープンも、馬車の御者さんの稼ぎ時でもある年末年始を避けるために5日にしようって俺が言った気がする……。

 ビール村とサウスモナ間の移動を仕事にしてた人たちに対して申し訳なかったからな。


 ……まぁサウスモナなんてもう目と鼻の先みたいなもんだからこれからはいつでも行けるか。


「とりあえずマルセールを勧めたらいいんじゃないですか? それに寿司屋やってたんならまた店やってくださいよ。南マルセール駅の外の一等地に店をいくつか作ってますから今なら優先して借りれますよ? それにどこに住まれても結局今住んでるところが一番馴染むんですから、どこだっていいと思いますよ~」


「投げやりにならないでくれよ……」


「そうだよ……ヤマさんの家族にとっては重大なことなんだからさ……」


 急に面倒になってきた。


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