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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人
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第三百七十五話 本日二度目

 ヤマさんは南マルセール駅の魚屋でヨハンさんと話しこんでいたようだ。


 駅の管理室にいたモニカちゃんに、急用があるからすぐに戻ってくるように伝えてって言ったらそこからわずか十分ちょいで戻ってきたじゃないか。

 せっかくの休みなのに慌てさせてなんだか非常に申し訳ない……。

 おそらくバイキング会場の料理がなくなる寸前だとでも思ったんだろう。


「おふくろ!? それに親父!?」


 おふくろって初めて聞いた。

 そんな呼び方もあるんだな。


 ってそんなことより今朝に続いてまた感動の再会の場面を目撃することになった。

 今朝は画面越しにだけど。


 頑固そうな親父さんかと思ったら涙は流してくれるんじゃないか。

 良かったな、ヤマさん。


 そしてミーノがこれまでの経緯や手紙の件を説明した。

 ミーノが申し訳なさそうにしてるのは、勝手に手紙を送ったりしてヤマさんを不快にさせたかもしれないからだろう。


「いや、ありがとう。ミーノちゃんのおかげだよ」


 ミーノの目からもさらに涙が溢れる。


 じゃああとは家族で話し合ってくれ。

 ミーノには魔道ダンジョン内に住んでもらってもいいとは伝えてある。

 魔王のせいで避難してきたんだから帝国からの移住者たちと条件は同じだしな。


 俺とユウナはロビーをあとにし、会議スペースへ移動する。

 そこにはララやセバスさんたち、それにカスミ丸とアオイ丸が集まっていた。

 すぐにカトレアたちもやってきた。


「お兄! 早く説明! さっきの人たち誰だったの!?」


 ヤマさんのご両親だと説明すると、みんなから歓喜の声があがる。

 だが魔瘴の件を話すと、すぐに真剣モードに切り替わった。


「マルセールで受け入れましょう」


 セバスさんならそう言うと思った。


「ジャポングの国の人全員をですか?」


「はい。あの国全体の人口は一万人でございますから」


「「「「一万人!?」」」」


 少ないな……。

 みんなも俺と同じで少ないことに驚いたんだろう。


「嘘でしょ? 小さな国とはいえ、港町が三つもあるんだし、そんなに少ないわけないでしょ?」


「本当でござるよ。その地図を見てもらえばわかるように、非常に小さな大陸でござるし、端から端まで移動しても王都パルドからラスの町に移動するのとほとんど変わらない程度の距離しかないでござるから」


 半信半疑のララに対し、カスミ丸が答える。


 大陸北東部にあるエゾの町、そこから南南西の大陸ほぼ中央にあるオーエドの町、さらに西南西にいった大陸最西端にあるツクシの町。

 こんなことでもない限り知ることはなかっただろうな。


「それにツクシからはパルド王国のラスの町がすぐ近くにありますし、東にはアソート大陸のパール王国もありますからね。都会に住みたい方はすぐに流れていってしまうのです」


 セバスさんが続ける。


 パール王国ってあれか。

 パルド王国をマネして作られたって国だな。

 アソート大陸にあるほかの町や村も全部どこかの国を模倣して作られたらしい。

 しかも国が四つもあるんだってさ。

 非常に残念だけど、もう行く機会はないな。


「カスミ丸たちはどこ出身なの?」


「ツクシとオーエドの中間くらいでござる。地図で言うとこのあたりでござるな」


「ふ~ん。で、里に帰ってどうするつもり?」


「……家族をここに連れてきてもいいでござるか?」


「いいよ」


「早いでござるな……」


「うむ……少しくらい悩んでくれないと心配になるでござる」


 ということは忍者が増えると思っていいのか?

 スカウトに行く手間が省けたな。


「お兄、いいよね?」


「もちろんだ」


「ありがたいでござる。この恩は一生かけてでも返すのでござるよ」


「いや、そんな重そうな恩だとこっちまで重く感じるからやめてくれ。それに今後どうするかはとりあえず家族を無事に連れてきてから考えればいい」


「恩に着るでござる」


「それくらいでいいんだよ」


 これで完全にウチで働く気になってくれそうだな。


「妹よ……昨日会ったばかりなはずなのになぜそんなに親しくなってるんだ……」


「兄上、ここの人はみんな思ってた以上に容赦ないのでござるよ……」


 どういう意味だよ?

 俺たちのほうが年下なのにタメ口を使われてることを言ってるのか?

 単純に昨日は色々あって疲れてたからみんな気を遣うのが面倒になってタメ口になっただけだ。

 カスミ丸って呼ぶのもニックネームなんだし別にいいだろ。


「で、どうやって救うかだな。まず一つ目として、ラスを拠点に三つの町を船で往復してラスに運び、そこから馬車でマルセールまで運ぶ方法。二つ目、南マルセールの港から船で直接三つの町に行って、また南マルセールの港まで戻ってくる方法。どっちがいい?」


「私は南マルセールに直接運ぶ方法かな~」


「「賛成!」」


 ララ、マリン、ユウナはいつもいっしょの意見だな。

 すぐに声をあげてくれることは会議がスムーズに進んでいいことだぞ。


「ラスやパルドに住みたい人も多いんじゃないの?」


 お、シャルルもまともな意見を言うじゃないか。


「ほかに意見ある人?」


「「「「……」」」」


 なさそうだな。


「じゃあマルセールに住みたいって希望の人は直接南マルセールに運んで、それ以外の人はラスまで運ぶってことでいいな?」


「「「異議なし!」」」


 うん、これ以上深く考える必要はないな。


「おそろしく早いね……」


「よくこんな簡単に決断できるわね……」


 ジェラードさんとジュリアさんがなにか言ってる。

 そりゃ王族のような責任感なんて俺にはないからな。

 それに最終的にどうしたいか決めるのは移住してくるジャポングの人だし。

 悩んだらとりあえずラスに行くだろうしな。


「ミャ~(ロイス)」


 気付いたらボネが足元にいた。


「帰ってきたか。どうした?」


「ミャ~(家の前にティアリスたちとゾーナたちが来てるわよ)」


「えっ? 本当か?」


「ミャ(なんで嘘つく必要があるのよ。早く行ってあげなさいよ)」


「お兄、ボネなんて?」


「上にティアリスさんたちとゾーナさんたちが来てるらしいんだ」


「ふ~ん。おそらく同じ用件じゃない?」


「やっぱりそう思うか。確かゾーナさんたちはジェイクさんたちが帰省するのに合わせて、アラナさんの墓参りするためにリーヌに行ったんだったよな? リーヌはベネットと近いからいよいよ魔瘴が迫ってきたのかもしれない。まぁ単純に帰ってきただけかもしれないが」


「リーヌからは魔瘴がずっと見えててもおかしくないはずだからね」


「ララとユウナで聞いてきてくれるか? もしそうならここに連れてきていい」


「わかった。ユウナちゃん、行こっ」


「はいなのです」


「シャルルは一応変装しとけ」


「わかったわ」


 年末なのに色々と重なるなぁ~。

 もしかして魔王はここまで計算してたんじゃないよな?

 ってさすがに魔瘴が自然に拡がる速度までは計算できないか。

 でもあの敵なら……。

 そういやあのことゲンさんに聞かないとな。


 そしてティアリスさんと双子のお兄さん、ゾーナさんとブレンダさんがやってきた。

 ということはやはりそういうことか。


「そちらに座ってください」


「「「「……」」」」


 五人は無言で座る。

 なぜか緊張しているようだ。

 初めて入るダンジョンストアのバックヤードが新鮮なのか?

 それとも今まさにその件に関する会議が行われてたことが意外だったのか?

 ティアリスさんにはシャルルがいることがバレてるのかもな。


「ではまずティアリスさん、ご用件はなんでしたか?」


「はい……私たち、昨日ラスの町に帰ったんです。それで冒険者ギルドに寄ってみたんですけど、どうやらジャポングの国から避難して来てる人がちょくちょくいるという話を聞きまして……。詳しく聞いてみると、どうやらジャポングのエゾやオーエドといった町に魔瘴が迫ってきてるという話だったんです。だからギルドの人に頼まれて、昨日の夜に町役場やギルドの職員向けに、魔瘴に関する説明会をすることになりました」


 ほう?

 ティアリスさんたちはそれなりに信用されてるようだな。


「話はもちろん帝国の件にもおよびました。そして魔工ダンジョンや魔瘴によって多くの命が失われたことも伝えました」


 もちろんラスの町の人たちも以前から話は聞いていたであろうが、現場に行った人間から聞いたのは初めてだろうな。


「そして私の話が終わり、少し検討を重ねた結果、明日の朝……つまり今日の朝一で、町長とギルド長たちがジャポングのツクシの町とオーエドの町にこの事態を伝えにいくということで決定したんです」


「「「「おお?」」」」


 素晴らしい行動力じゃないか。

 ジェラードさんはこれを聞いてどう思うんだ?


「ジャポングの中枢組織はオーエドにありますから、そこのお偉いさんがどう動くかで今後の動きは変わってくると思うんですけど」


 そういやヤマさんの両親たちはどこに住んでたんだ?

 流れ的にオーエドかエゾのどちらかだよな?


「私たちがここに来た理由は、まずそのことを伝えること。そして町で受け入れきれない数の避難者がいた場合にマルセールの町で受け入れてもらえないかをマルセールに相談すること。最後に、避難活動を支援してもらえないかを大樹のダンジョンに相談すること、の三点です。でもその……報酬は出せないそうですけど……」


 うん、しっかりしてるじゃないか。

 人の命がかかってるときに報酬なんかどうだっていい。

 あ、王都の封印結界の件は別だぞ?


 でもこれをラスの町長やギルド長に思いつけるとはとても考えにくい。


「全部ティアリスさんの提案ですか?」


「え……はい。すぐに助けに行くべきだと思いましたから……それに私だけ考えではなくて兄たちといっしょに考えました」


 あ、もしかして町長たちをジャポングに向かわせたのもティアリスさんってことか?

 想像してた以上に度胸が凄いな……。


「わかりました。こちらで考えていた案とほぼ同じです。船もできる限り多く向かわせましょう。ただ船の操縦士を手配するのは今からになりますので、動けるのは明日からになります」


「ありがとうございます! ロイス君ならきっと助けてくれると思ってました!」


 ティアリスさんにこんな口調で話されるのは最初ダンジョンに来たとき以来だな。

 あれからもうすぐ二年か。


「ティアリスさんはラスの町で、ウチの冒険者や船の管理をお願いできますか。夜に船を動かすのは危険になるかもしれませんから、夜間はラスの港に停泊できるような準備もお願いします。町からも仕事を頼まれると大変になるかもしれませんけどね。でも次こうやって冒険者として仕事するのも当分先になるかもしれませんから、精一杯やりきってください」


「え……ロイス君……」


 さて、次はゾーナさんたちだな。


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