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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人
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第三百六十八話 シャルルと家族

 やっと部屋に戻ってこれたわね。

 ララたちが嵐のように去っていったことでみんな呆然としてしまい、会議が一時中断になってしまったからだけど。


「みなさま、お茶が入りました」


 お母様と兄様、そして私の三人がソファに座る。

 これも今日が最後になるのかしら。


「兄様、本当にいいの?」


「あぁ。いつ旅立つ? 僕もいっしょに出るから」


「明日の朝には出たいけど……お母様はどうするの?」


「私も行くわ」


「「えっ!?」」


「なに? 私がマルセールに住んだら邪魔なの?」


「そうじゃないけど、まさかお母様まで……」


「うん……母さんは城に残りたいのかと思ってたからさ……」


「あなたたちがいないのにここに残る理由もないわ」


「お父様がいるじゃない?」


「あの人は私だけのものではないし、今でも食事のときしか顔を合わせてないからね」


 国王の妃って大変よね……。

 勝手に外に出ることも許されないもの。


「じゃあ執事のカイルさんはどうするの?」


「契約は三月までだからルール上は残りの給料を払えばそれで終わりなんだけど、それでいいかな?」


「はい。たった半年だけでもお世話させていただけたことをとても嬉しく思います。どうかご武運をお祈りしております」


「急でごめんなさいね……。少しばかりボーナスも出すからお孫さんになにか武器でも買ってあげて」


「ありがとうございます。孫も喜びます」


「武器ってなによ? お孫さん、冒険者なの?」


「今は学校に通っておりますが次の春から冒険者になりたいと言っておりまして」


「へぇ~。なら大樹のダンジョンに来るように言っときなさいよ。時間があったら私が鍛えてあげるわ」


「機会がございましたらよろしくお願いいたします。失礼がないように言っておきますので」


「冒険者の世界では誰もが対等の関係だから細かいことは気にしなくていいのよ。あ、じゃあ私が冒険者に成りたてのころ使ってた銅の槍あげるわ。ちゃんとメンテナンスもしてるから新品同様よ。だから防具を買ってあげなさい。でも防具も大樹のダンジョンに行ってから買ったほうが安いし質もいいのよね。……あ、じゃあこのレア袋もサービスであげるわよ!」


「いやいや! そんな高価なもの頂くわけにはいきません!」


「大丈夫、失敗品だからたいしたものじゃないらしいのよ。だから兄様にあげようと思ってたんだけど、兄様は成功品を貰えるだろうしね。はいこれ、遠慮なく貰ってちょうだい。槍の取り扱いには注意するように言っておきなさいよ」


「……ありがとうございます。一生の宝物にさせていただきます」


「ダメよ。使ってなんぼなんだからどんどん使いなさい。じゃないと鍛冶師も錬金術師も泣くわよ?」


「そうでございますね。ありがたく使うように孫に言っておきます」


「……まぁいいわ」


 なんで執事ってみんなこう腰が低いのかしら。

 私が偉そうにしてるのがいけないのかもしれないけど。


「さて、マルセールで住むところはどうする? とりあえずセバスたちの家に住む? それとも大樹のダンジョンに来る?」


「シャルは大樹のダンジョンの宿屋にいるのか?」


「え? 私はロイスの家に住んでるわよ?」


「「えっ!?」」


 え?

 知らないの?

 ……って私が冒険者だってことも昨日知ったばかりなんだから知るはずないか。

 ジェマも言ってないようね。


「私とジェマは最初からずっとロイスの家に住んでるのよ。さっきのララとユウナもいっしょにね。ほかにも錬金術師が四人、そのうちの一人はスピカさんだけど。あ、ロイス以外全員女性だから安心して」


「ジェマが言ってたのはそういうことだったのか……」


「ちなみに、お父様は私が冒険者になったってことをずっと前から知ってるわよ」


「「えっ!?」」


「私も昨日ジェマから聞かされたばかりなんだけどね。さすがにロイスの家に住んでることまでは知らないようだわ」


 お父様も優しいわね。

 知ってて私を連れ戻さずにいてくれたんだもの。


「まぁ住む場所はどうにでもなりそうね。カスミ丸とアオイ丸はどうするのかしら?」


「それは僕たちがどうこうできる話じゃないからなぁ」


「なによそれ? セバスたちに恩を返すって言ってたじゃない? それにこれからも情報屋は必要でしょ? だからこれからは兄様が雇いなさいよ」


「え……そんなに給料あるのかな……」


「大丈夫よ。私の給料はほとんどセバスたちに渡してるからこの半年間はそれで雇ってたようなものだろうし」


「そうだったのか……悪いな……」


「でもだから私の給料はほぼないに等しかったけどね」


「え……それは困る……シャルみたいに冒険者として稼げるわけでもないし」


「もぉっ。じゃあカスミ丸は私が雇うからアオイ丸は兄様ね。仕事は今まで通りセバスたちに委ねましょ」


「あぁ、そうしてくれると助かる」


 これからは私も一日中ダンジョンに入れるんだからカスミ丸一人分の給料くらい稼げるわよね?

 でも家からは追い出されちゃうかも……。

 まぁそのときはユウナといっしょに宿屋に移ればいいだけか。


「ジェラード、そういう話はまず自分で稼げるようになってからにしなさい」


「あ、そうだよね……」


「お金を稼ぐって大変なのよ。だから私もなにかするわ」


「お母様は家でのんびりしてなさいよ」


「それじゃ暇でしょ? せっかく新しい土地に行けるんだから私だってなにかしたいわよ」


「でも母さんのことがバレると色々面倒なことになるからさ……」


「そうよ。誘拐でもされたら……ってさっきの兄様の誘拐の話、お母様も知ってたの?」


「もちろんよ。でも魔力がどうこうって話は知らなかったわ……。あなたが一か月いなかったときも、怪我をしてるからスピカさんが付きっきりで看病するために家に連れていくとしか聞かされなかったし。私はジェラードのケアをしてあげるようにって言われてたしね」


 スピカさんが?

 じゃあこの指輪を作ってくれたのはスピカさんってこと?

 でも封印魔法は使えないわよね?


 となると……今のカトレア並みの凄い腕を持った錬金術師がどこかにいたってことかしら?


「まぁいいわ。帰ってからスピカさんに聞いてみる。で、本当にお母様がなにか仕事したいのなら、せめてダンジョンの中で働いてよね。それなら常にウサギが護衛してくれるもの」


「ウサギってあの白いウサちゃん? 楽しそうね! とにかく早いうちにロイス君に挨拶に行きましょう! シャルロットがお世話になってることもお礼言わないといけないし、さっきのララちゃんのこともあるものね!」


「なんでそんなに嬉しそうなのよ……それよりお爺様とお婆様に言ってきたほうがいいんじゃないの?」


「あ、そうだわ! 今から行ってくるからこのあとの会議は欠席って伝えて! カイルさん、実家まで出かけるからご同行お願いね!」


「「……」」


 あんなに楽しそうなお母様は初めて見たかもしれないわね。

 ロイスがいつも言ってるように、みんな新しいものが大好きなんだわ。


「兄様、明日マルセールに着くころにはもう兄様が町長で決定してるかもしれないわよ」


「いやいや、そんな簡単に……ってそうなのか?」


「あの町の人、行動が早いのよ。まぁ筆頭はセバスなんだけどね。ロイスの許可も出てるっぽいからなんの支障もないだろうしね」


「……僕はロイス君と上手くやれるかな?」


「う~ん、というより実は上手くやれない人のほうが珍しいのよね」


「え? どういうことだ?」


「ロイスが相手に合わせるからよ。だからよほどロイスの機嫌を損ねることをしない限り、まず嫌われることはあり得ないの」


「……ロイス君は気苦労が多そうだな」


「ダンジョン経営も客商売だもの。お客が来てくれないと収入がないわけでしょ? だからお客である冒険者が毎日いい気分でいられるように心がけてるの。朝なんて毎日受付で、おはようございます、お気をつけて、って笑顔で何百回も言ってるのよ? そんなの私には絶対できないわ」


「なるほど、挨拶は大事だよな。僕も職員や町の人と接するときには気をつけるよ」


「日曜の朝なんて冒険者のみんなといっしょに食事したりしてるのよ? ダンジョンになにか不満がないか聞いたり、要望とかも聞いたりしてるわ。ロイスの周りにはいつも人だかりができてるもの」


「距離が近いんだね。でも役場では難しそうだな……」


「マネするのもいいけど兄様もなにか新しいこと考えなさい。帝国の第二皇子もいるんだから素直に意見を聞いてみればいいのよ」


「うん……なんだか凄く大変な気がしてきた……」


「どんな仕事も大変なの。ここにいるのが一番楽よ?」


「いや、楽しみのほうがだいぶ上回ってるから大丈夫」


「そう。なら良かったわ」


 あの町の人が兄様を歓迎しないわけないものね。


「それにシャルよりはちゃんと仕事できる自信はあるし」


「……」


 カスミ丸ね?

 私がサボってることまで報告しなくていいのよ!


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