第三百六十五話 王族勢揃い
どうやらこのあと会議が始まるみたい。
ララたちは会議室の場所を知らないようだから、私とリアムお兄様が先導して歩かされてる。
リアムお兄様はあれからまだ一言も喋らないけど……。
「そういやマーロイ城と比べてどうなの?」
「こっちのほうがきれいで広いのです! 天井も高いのです!」
「そうなんだぁ! 私も行きたかったな~冒険者で二つの城に入ったことある人なんてユウナちゃんとシャルルちゃんくらいじゃない?」
「そうなのです! 自慢できるのです!」
「「「「……」」」」
楽しそうね……。
これだけ大勢の騎士に囲まれてるっていうのに。
……それよりさっきからなんなのよ騎士たちのこの表情は。
緊張感が半端ないわね。
私が牢屋に入れられたことがそんなに衝撃だったのかしら。
それとも可愛い少女二人の侵入者のことが気になって仕方ないの?
というかまさか城の入り口から堂々と入ってきたなんて思いもしなかったわよ。
それもただボネが城に間違って入っていっちゃったって設定だけでよく地下牢にまで辿り着けたものね……。
ウチの騎士たちのことが本当に心配になるわ。
実力不足の前に危機管理がなってなさすぎるのよね。
平和ボケってやつかしら。
冒険者たちから下に見られるのも納得がいくわよ。
いっそ騎士隊のこともロイスが面倒みてくれないかしらね。
「ねぇ、見張りしてたそこのあなたたち、地下牢の部屋の外はどんな状況だったの?」
「はっ! リアム王子様とシャルロット王女様を助け出そうと、どうにかしてドアを破壊しようとしてたであります!」
「そもそもこの二人が侵入者だとは疑わなかったの?」
「もちろん怪しいなとは思ったのですが、その……子猫を捕まえてくれと頼まれまして……子猫がちょろちょろ逃げ回るので二人がかりで捕まえようとほんの一瞬ドアを離れた隙に……」
「情けないわね。せめて二人と戦闘くらいしなさいよ」
「それは……まさかこんなお嬢さんたちが冒険者だとは思わなくて……武器も持ってなかったですし……」
「それが甘いのよ。もしこの二人が魔王の手先だったらこの城は全滅してたわよ。マーロイ城の話は聞いてない? 敵は土魔法を操って自在に壁を抜けられると考えなさい」
「はい……」
騎士隊は普段からほとんど戦闘なんてしないものね。
訓練で剣を打ち合うといっても真剣は使わないし。
要するにぬるいのよ。
まぁ私も半年前……いや、あれは確か三月だったかしら。
騎士隊や王都の冒険者が手を焼いてて死人も出た魔工ダンジョンに、仮面を被った小さな冒険者たちがたった二人で討伐したなんてことを聞かされるまではなんとも思ってなかったんだけどね。
「あの……シャルロット王女様」
「なによ?」
「もしかしてこのお二人は……王都近くの魔工ダンジョンを討伐してくれたお二人ではありませんか?」
「え?」
この騎士は気付いてるの?
ララとユウナは仮面を被ってたのよね?
「その……実はあのとき魔工ダンジョンのすぐ傍で魔物退治の勤務をしておりました。なので魔工ダンジョンがなくなった瞬間もその場にいたんです。お二人の声や話し方を聞いて、そのときの仮面の少女たちのことがパッと頭に浮かんだものですから……」
報告書にも二人が去り際に言った言葉が書いてあったものね。
私もそれを見てハッとさせられたことをよく覚えてるわ。
「騎士のお兄さん、謎は謎のままだから想像が膨らむんですよ?」
「仮面の少女たちなんて本当はこの世に実在していないのかもしれないのです」
「「「「……」」」」
ふふっ、この会話が面白いと思えるのはこの場では私だけなんでしょうね。
みんな二人を得体もしれないものを見たかのような目で見てるもの。
「着いたぞ」
あ、リアムお兄様も大丈夫そうじゃない。
牢屋を出てからは私の顔を一度も見てくれなかったけどね。
さて、中ではみんなどんな顔して待ってるのかしら。
リアムお兄様が会議室のドアをゆっくりと開ける。
……驚いてるわね。
さすがに地下牢への侵入者の話も伝わってるみたい。
でもまさかこんな少女たちが来るとは思ってなかったでしょう。
あ、ジェマは脇で立たされてるのね。
「リアム、お前は俺の隣に座れ。シャルロットはリアムの隣に座りなさい。そちらのお嬢さんたちは向かいに座ってくれるか。ジェマ、お前はシャルロットの隣がいいか。騎士たちは隊長と副隊長以外は出ていってくれ」
お父様はいつも通りね。
ララとユウナはお父様に会うの初めてなのよね?
さすがに緊張するんじゃない?
……ってするはずなかったわね。
「さて、なにから始めようか。ジェマ、お前の言う通りみんなに集まってもらったが、お前も内容は知らないということであったな?」
「はい……ララ様とユウナ様の使いの者から至急みなさんに集まってもらうように言伝を預かっただけでして……」
「ふむ。ではララちゃんとユウナちゃんから話を聞こうか」
まさか本当にジェマも聞いてないの?
じゃあララとユウナが独断でみんなを集めさせたってわけ?
「みなさま初めまして、急でありながらこのような場を設けていただき感謝しております。私はマルセールの町の西にある大樹のダンジョンにて総支配人をしておりますララと申します。ダンジョン管理人の妹です。それとこちらは冒険者兼従業員のユウナです」
「ユウナなのです。よろしくなのです。シャルロット王女様とはパーティを組んでおりますなのです」
「「「「……」」」」
大樹のダンジョン総支配人の登場に驚いてるのかしら?
ジェマとただならぬ関係があると噂の総支配人よ?
「今回お集まりいただきましたのは、王都パルドにおける封印結界実装の件についてです」
「「「「え?」」」」
「ユウナちゃん、準備を」
「はいなのです」
封印結界実装の件ですって?
私を迎えに来てくれたわけじゃないの?
てっきり継承争いについてもなにか言うのかと思ってたけど……。
あ、ホワイトボードを持ってきてたのね。
パルド王国全体の地図と王都全体の地図も貼ってあるじゃない。
みんなの目はレア袋に釘付けのようだけど。
「マルセールの町および近隣の三つの村、そしてサウスモナの町に関しては既に封印結界が実装され、無事に魔力供給も行われております。ちなみにサウスモナまでの魔道列車は1月5日に運行開始予定です。そして実はボワールの町につきましても魔道列車の延伸計画および封印結界実装計画、即ち魔道計画が着々と進んでおります」
「あぁ、ボワールについては今朝聞いた」
「そうでしたか。ではそれを聞いてどう思われました?」
「……移住者たちの住居や雇用支援、マルセールとの連携状況などから考えて妥当だと思う」
「はい。マルセールの町長であるシャルロット王女様もそう考えられてます」
私が知らない間に勝手に話が進んでたわよ……。
「そしてこの魔道計画は、ボワールの町の作業完了を持ちまして終了となります」
「「「「え……」」」」
終了?
それ以上魔道列車が延伸することはないってこと?
王都へはどうなるのよ?
「そのため、今から提案させていただきます王都パルド封印結界実装計画については、魔道計画とは全くの別物とお考え下さい」
「ちょっと待ってくれ。魔道列車を繋げるための作業が大変なことは重々承知してるつもりだ。だから時間がかかるのは仕方ないと思ってるが、繋げられないとなるとなにかほかに理由があるのか?」
「国王様、本当にわかっていらっしゃいますか? 時間と手間さえかければ確かに魔道列車の環境を整えることはできます。ですが運用が無理なんです。魔道列車の運行はもちろん、魔道ダンジョンの範囲を拡げてそのダンジョンを維持するだけでも魔力を消費し続けるんです。そんな魔力、とてもウチのダンジョンだけでは補いきれません」
そうよね。
ただでさえ移住者が住むための階層も作ってるんですもの。
後々は地上に移り住むとしても、階層は畑とかのために残しておかないといけないものね。
「ふんっ、黙って聞いておれば偉そうに。結局は金が目当てなんだろ? 金額を釣り上げようとしているようにしか聞こえん」
「タイロン大臣!」
あ~あ。
本当どうしようもないわね。
ララが怒らなければいいけど。
元々印象は最悪なはずだからね……。
「さすが大臣、よくおわかりで」
「「「「え……」」」」
「と言いたいところですけど、魔力不足に陥るという計算は本当なんです。それにこれ以上魔道ダンジョンを拡げるということは守らなければいけない範囲も拡がるということです。ウチみたいに小規模なダンジョン経営をする身としては、身の丈にあった規模で運営していかないと自らの身を滅ぼしかねないと思うんですよ」
「「「「……」」」」
増々ロイスの話し方に似てきたわね……。
大臣も面食らってるじゃない。
「だから魔道列車はこれ以上延伸することはできません。ということで封印結界の話に進んでもよろしいでしょうか?」
「……あぁ、頼む」
お父様もたじたじね。
リアムお兄様はしっかり目を開いて聞いてるじゃない。
地下牢でのことで多少は免疫がついたのかもしれないわね。
そういやジェラード兄様は……腕を組んで目を瞑ってる。
なに考えてるのかしら。




