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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人
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第三百六十一話 捕らわれの王女様

 もう朝になっててもおかしくないわよね?

 こんなことになるなら封印魔法の勉強もしておくべきだったかしら。

 ってもうしばらくの辛抱だから少しくらい我慢してやるわよ。


「シャルロット様、少し休まれてはいかがでしょうか……」


「ならあなたがこの封印結界解きなさいよ」


「そんな無茶言わないでください……僕は魔力を持ってないただの騎士ですよ……」


「騎士が牢屋の見張りなんてしてて楽しいの?」


「楽しいわけないでしょう……ましてや王女様の見張りなんて……」


 なによこの騎士。

 話してるだけでこっちがイライラしてくるわね。


 それにしてもこの城にまさか封印結界付きの牢屋があるなんて思ってもみなかったわ。

 普通の牢屋なら私の力を見せつけるために即行壊してやるのに。


「いつまでここにいればいいのよ?」


「僕にはわかりませんよ……」


「もう朝なんでしょ? とりあえずお父様呼んできなさい」


「無理ですって……どうかシャルロット様も少しは寝てお待ちください……」


 本当に使えないわねこの騎士。

 クビでいいんじゃないかしら。


「じゃああなたも入ってきなさいよ。剣は使えるんでしょ? 修行相手になりなさい」


「入ったら出られないじゃないですか……それに僕が人質に取られても困りますし……」


「なら早くジェマの様子を聞いてきなさいよ」


「わかりましたからおとなしくしててくださいよ……」


 ジェマになにかしてたら誰であろうが許さないんだからね。


 それよりカスミ丸とアオイ丸はなにしてるのよ?

 こういう局面をどうにかするのも忍びの仕事でしょ?


 ってあの二人のことだからとっくに動いてるわよね。

 まぁあとはジェマと二人に任せるしかないか。


 ……先は長そうね。

 少し寝ておこうかしら。



◇◇◇



「……シャル……シャル」


 ……ん……シャル?

 私をそうやって呼ぶのはお兄様たちだけ……。


「……あ、リアムお兄様」


「ずいぶん気持ちよさそうに寝てるじゃないか。もう昼過ぎだぞ。というかその布団一式どこから持ってきたんだよ……」


「冒険者たるもの常に備えはしておくものなのよ」


「いや、そうじゃなくて……協力者がいなければそんな物どうやってここに持ち込むんだよって意味だよ……ってまぁいい。話があるから座れ。見張りには席を外させてる」


 レア袋の存在は知らないのね。

 おかげで拘束されたときに取り上げられなくて助かったけど。


「なに? 私をこんなところに入れといてこれ以上なんの話があるの?」


「怒るなって。これ以上城内でトラブルを起こさせないための一時的な処置なんだから仕方ないだろ? それにここが一番安全だし」


「仕方なくないわよ。みんなが自分のことしか考えてないからああいうことになるんでしょ。私は関係ない」


「いやいやいやいや、お前が魔力持ちでしかもすでに冒険者として活動してて、大樹のダンジョン認定の中級者レベルの実力の持ち主で帝国崩壊の現場にまで駆けつけてたってことがどれだけの衝撃だったのかわかれよ……」


 そこまで理解しておきながらなんでわかってくれないのよ?

 私はただ早く帰りたかっただけなのに。


「どうせなら一生カミングアウトしないでほしかったよ……」


「お兄様たちがいけないのよ。マルセールの町長を辞めるって言っただけでなんで一か月以上も城にいなきゃいけなくなるのよ」


「それは今お前に辞められたら困るってこともあるし、辞めて城に戻ってくるならともかくマルセールに完全移住したいとか言うからだろ? 父さんがどれだけ悲しんでたのか知ってるのか?」


「知るわけないでしょそんなこと。それに魔道列車が繋がれば半日もかからずに来れるわよ」


「お前なぁ……はぁ~。その魔道列車がマッシュ村より先にサウスモナまで繋がったってことも問題なのはわかってるよな? 城ではな、お前やセバスたちがいるのになんでそっちを先にしたんだって怒ってる人がほとんどだ」


 またその話?

 リアムお兄様もくどくなってきたわね。

 兄様の二つ上だから今年二十二歳だったわよね?

 そういやまだ結婚しないのかしら。


「とにかく、昨日夕方の会議でお前が全てを話したからこういうことになってるのはわかるよな?」


「だってこれ以上ここにいても時間の無駄なんだからそれこそ仕方ないでしょ。ジェマには相談したし納得もしてくれたわよ」


「そのジェマも問題なんだよなぁ……」


「なに? ジェマがどうかしたの? というか無事なんでしょうね?」


「ジェマにはお前の部屋から出ないように言って外に見張りを付けてるだけだから安心しろ。それよりジェマのやつ、今朝の会議の場で堂々と脅してきたんだよ。父さんや大臣、王子王女や母親まで全員揃ってる場でだぞ? あのジェマがだぞ? 穏便にすませるつもりだったのが余計ピリピリした空気になった……」


 ふふっ。

 さすがジェマね。

 こうなることくらい全部ジェマの予想の範疇なんだから当然よ。


「そう。ジェマはなんて?」


「驚かないんだな……」


「ジェマも早く帰りたいのよ。で?」


「……ジェマはまずお前の母親と兄、つまりジュリアさんとジェラードに向けて条件を出した。シャルを王権のために利用するな、少しでも利用しようとする動きが見られた場合、シャルは縁を切ると言ってると」


「それのなにが問題なのよ? 一番の解決方法じゃないの?」


「もちろんそれを聞いて正直俺も安心したし、ほかの王子や王女はお前が出ていくならそれで構わないと思ってる。ただ、ジュリアさんが納得しなかった」


「え……」


 嘘でしょ?

 なにやってるのよお母様……。


「自分の娘や元執事たちが実権を握ってる町は帝国からの移住者で大賑わい。それに大樹のダンジョンとの関係も強固ときてる。そのうえ娘は魔力持ちでしかもかなりの実力者だと判明した。だから次の国王には自分の息子が一番相応しいと考えるのは当然だろ? 俺が母親でも当然そう考えるし、おそらく今誰もがそう考えてるはずだ」


 なんでよ?

 母親なら私のことを第一に考えてくれるんじゃないの?

 私の意見はどうでもいいの?


「兄様はなんて?」


「あいつは一度も口を開かなかった。ジュリアさんが話を振ってもまるで聞こえてないようにな」


「当然よ! 兄様は国王になんて興味ないんだからね!」


「どうだろうか。今まではそうだったかもしれないが、昨日までとは状況が一変してる。これからこの国が魔王と戦っていくうえで、お前を実の妹に持つということは非常に大きい。このことを国民に公表すれば民意は第二王子に傾くに違いないからな」


 兄様が国王になりたいなんて聞いたことないわよ?

 それも第一王子のリアムお兄様がいる限り、なにか切り札でもないと無理だって考えてたからって言うの?


 でも私はお母様のことだって想像できなかったものね……。

 ジェマはこうなることをわかってたのかしら……。

 というか兄様がハッキリ言わないからお母様がそういうこと言い出したんじゃないの?


「で、話は戻るが、ジェマはそんなジュリアさんに対し、それなら今日限りで親子の縁は切るということですねって言い放ったんだ」


「え……」


「俺はジュリアさんが取り乱すかと思ったんだが、ジェマの冷たい言い方がおそろしかったのか、それきり黙ってしまった」


「なんだ、なら良かったじゃない。リアムお兄様も話を少し飛躍させすぎなのよ」


「……ジェマは次に父さんに向かって話し始めた。三日以内にシャルを解放、そしてマルセールへの即座の帰還、さらにシャルの今後の自由を認めなかった場合、マルセールおよび大樹のダンジョンは今後王都パルドとの関係を全て遮断すると」


「三日? まだ三日もここにいないといけない可能性があるの?」


「そこじゃないだろ……」


 今日は29日よね?

 下手したら新年をここで迎えるってこと?

 そんなの絶対に嫌よ?


「まぁでもその条件自体はそこまで問題じゃないんだよ。シャルを解放して自由にさせてやればいいだけだからな。問題だったのはジェマの言い方に対して、俺の母さんやレイラさんの母親二人、それにスカーレットとダイアナといった王女たちが騒ぎ出したことだ」


 またあの人たちなの……。


 私がマルセールで上手くやってるのが気に入らないのか、帰ってきてから嫌味ばかり言われるのよね。

 お姉様たちも昔はあんなんじゃなかったのに。


「執事のくせに生意気なのよ、何様のつもりよ、なんであなたがマルセールや大樹のダンジョンを代表する権利があるのよ、あなたも牢屋にぶち込むわよ、とか。それはもう醜いこと。自分の母親であろうが可愛い可愛い実の妹であろうが嫌いになってしまいそうなくらいだ」


 リアムお兄様がスカーレットお姉様のことを可愛がってるところなんて見たことないけどね。

 気を遣ってか別腹の私たちやダイアナお姉様たちとばかり遊んでくれてたもの。


「まぁそう言いたくなる気持ちも少しはわかるんだけどな。なんせ今はみんなマルセールという言葉に敏感になってるだろ? この国が帝国色に染まっていかないか不安なんだよ」


「帝国色ってなによ? 移住者の人たちはマルセールの雰囲気に馴染んでくれてるはずよ。だからそれを言うなら帝国色じゃなくてマルセール色でしょ」


「それは現場で見てるお前にしかわからないからな。マルセールが力を付けてるのは誰の目から見ても明らかだし、そのトップであるお前に取り入ろうとしたり、妨害しようとしたりする奴らが出てくるんだよ。あ、俺は別になにもしてないからな? いや、本当だぞ? ……そんな目で見るなって」


 怪しいわね。

 昨夜私をここに入れたのはリアムお兄様なんだから、その時点で妨害になるんじゃないの?


 でもそうじゃないと信じてるからこそ私もすんなり受け入れたんだけどね。


「おい、信じろって……」


「しつこいわね、わかってるわよ。暗殺されるおそれもあるってジェマからもしつこく言われてるからね」


「それならいい。ただそれはお前が魔力持ちじゃなかったとしてもあり得たことだからな? それほどお前のマルセールでの功績は大きいんだ」


「マルセールの人たちも魔道列車を利用する人たちも帝国からの移住者もみ~んな喜んでくれてるはずなのにね。どうして一番身近なはずのこの城の人間に恨まれなきゃいけないのよ」


「王族に生まれた以上それは諦めろ。一番影響を受けてるはずの俺が暗殺者を雇ってないだけまだマシだろ?」


「それもそうね。ってリアムお兄様の側近の誰かが暗殺者を雇ってる可能性はあるわよね? 私が死んで私の怨念に呪われたくないから気付かないフリしてるだけじゃないの?」


「おい……」


 ジェラード兄様が国王になることには反対っぽいものね。

 リアムお兄様も国王という権力に魅了されてる一人には違いないもの。


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