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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人
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第三百六十話 忍者参上

「忍者って本当ですか!?」


「女忍者なのです!?」


「本当に実在するんですか!?」


 ララ、ユウナ、マリンが興味津々にカスミさんに訊ねている。


 さっきカスミさんがジャジャ丸を連れて魔物用の風呂に行ってる間にララがリビングにやってきた。

 ここのところ午前中のララは厨房の手伝いや料理の試作で大忙しだ。

 公園での勝負で今度こそ本気で優勝を狙ってるらしい。

 2月の売り上げで勝負するそうだが、毎月勝負ってことになりそうなのがこわい……。


 って今はそれより忍者のことだ。


 ララにカスミさんのことを話したら、ララの目が急に輝いた。

 今朝は朝早くから帰省する冒険者たちの対応のためにいつもより早起きでかなり疲れてるはずなのに。


 ララはすぐにユウナとマリンを呼びに行った。

 そして二人もララと同じように目を輝かせてやってきた……。

 どうやらウチの図書館の本に忍者を題材にした面白い本があったらしい。

 俺が忍者という言葉を聞いたことがあった気がしたのは、本のタイトルを見た記憶が頭の片隅にあったからなんだろう。


「そうでござる。自分の家は先祖代々忍者なのでござる」


「ござる!?」


「ござるなのです!?」


「本当にござるって言うんですね!」


 うるさい……。


「自分が忍者なのは内緒にしてほしいのでござる。なにぶん自分は影の存在として生きているでござるからな」


「きゃーっ!」


「カッコいいでござるなのです!」


「影がある人って素敵です!」


 ララに話すんじゃなかった……。


「何歳なんですか!?」


「十八歳でござる」


「いつから忍者なのです!?」


「生を受けてからずっとでござる」


「どこ出身なんですか!?」


「ジャポングという国でござる」


 なんでも答えてくれるんだな……。

 内緒にしてほしいとはなんだったんだろうか……。


「ジャポングってヤマさんと同じ出身ってことよね!?」


「そうなのです! 本にもジャポングをにおわせてるような記述があったのです!」


「じゃあ忍者の里とかも本当にあったりするのかな!?」


 忍者の里だと?

 さっき言ってた里ってやつか?

 ヤマさんも忍者だったりしないよな?


「忍者の里もいくつかあるのでござる。ただし、昔と違って今はどの里もかなり小規模なものでござる。おそらくみんなが読んだと思われる本は数百年も前のことを題材にした実話に近い作り話でござるな」


「でも忍者だけの里があるんですね!?」


「行ってみたいのです!」


「魔瘴に覆われてないうちに行こうよ!?」


 そういやジャポングはまだ大丈夫なのか?

 北東の大陸……アソート大陸だっけ?

 そこからの魔瘴が迫ってきてるのではという俺の予想だったが。


「残念でござるが、里には忍者以外入れないのでござる」


「「「えぇ~……」」」


 三人は見るからにガッカリしている。


「む? 里といっても古い家があるだけでござるよ? だから行ってもなにも面白くないのでござる」


「色んな仕掛けがされてる忍者屋敷とかはないんですか?」


「ないでござるな……ほかの里の忍者と敵対してるわけじゃないでござるし、ジャポングでは魔物も滅多に見かけないでござるからな……」


「な~んだ」


「平和なのです」


「もうただの昔話なんだね~」


 途端に三人の興味が薄れたようにも見える。

 これだけ聞いといて勝手にガッカリしてなんて失礼なやつらだ。


「もういいだろ? あとはそっちで静かに聞いてろ」


「「「は~い」」」


 三人はお菓子を食べ始めた。

 ようやく静かになったな。


「で、忍者のカスミさんがウチにどういったご用件で来られたんでしょう? カトレアのお友達なんですか?」


「本当になにも聞いてないようでござるな。みんな口が堅いのでござる」


「そうでしょう? フランちゃんたちも魔物たちもみんな良い子ですから」


 フランたち?

 ホルンやアイリスたちとも面識があるってことか?


「自分は情報屋でござる」


「「「「情報屋!?」」」」


 ってあれか?

 よくセバスさんたちが利用してるというあの情報屋か?


「情報屋とは言っても専属でござるがな。自分はもうかれこれ八年同じ雇い主に雇われているのでござる」


「「「誰に!?」」」


 また三人が食いついてきた……。


 八年ってことは十歳のころからってことか?


「セバス殿でござる」


「「「セバスさん!?」」」


 まさにセバスさんだったか。

 でも専属で雇ってるとは知らなかった。


 シャルルを守るためにはそれだけのことが必要なんだろう。

 シャルルの母親や兄たちのためでもあるか。


「情報屋ってどんなお仕事するんですか!?」


「忍者が情報屋なんてするのです!?」


「スパイみたいなものですか!?」


 あ、そういや俺もさっきスパイみたいだなって思ったよな。


「その名の通り情報を仕入れてくるのでござる。例をあげると、大樹のダンジョンのフィールドや魔物構成はどうなってるのかとか、ダンジョンストアにはなにがどんな価格で売られていて品質はどうなのかとか、管理人の人柄はどうなのかとかでござるな」


 ……。


 この人がセバスさんにウチの情報を流してたのか。

 直接ウチに来てたわけではないだろうが、ウチの冒険者たちから情報を仕入れるだけでも立派な仕事になるもんな。


「ほかには、ある品物を手に入れたいと言われたらそれを探したり、より安いルートを探したりといった仕事も頻繁にするでござるな。交渉事も仕事のうちでござる」


 型落ち格安魔道具のルートもこの人が見つけてくるのか。

 なんでも屋って感じの仕事だな。

 専属とはいえ、かなり使い勝手が良さそうだ。


「あ、もしかして私がジェマさんに頼んでる魔石もカスミさんが仕入れてくれてるんですか?」


「いかにもでござる。ララ殿は値段にシビアなので少し大変なのでござる」


「……すみません」


 ジェマが苦労してたわけじゃなかったのか。

 カスミさんも仕事でやってるんだからそれならいい。


 というか交渉事もこの口調でやるのか?

 忍者だってことがバレたりしないのかな……。

 それにさっきは任務中は余計なこと話さないとか言ってたが、あれはなんだったんだ?


「なにか気になるでござるか?」


「え……なんでさっき俺がなに聞いても無言だったのかなって思いまして。任務中だからって、交渉のときは喋ったりしないと無理ですよね?」


「フードを被ってるときはクセで自然とそうなるでござる。ボネ殿とダイフク殿がいつ襲ってくるかわからなかったので集中してる必要があったのでござるよ」


「フードをすぐに脱がなかったということは襲ってくると思ってたんですか?」


「そうでござる。実は以前この付近に来たときにピピ殿に見つかったことがあるのでござる。すぐに逃げたでござるが、シルバ殿とメタリン殿にあっという間に挟み撃ちにされて観念したのでござる……」


「ミャ~? (ほら? やっぱり拘束で正解だったのよ)」


「それは外で怪しい行動してたからだろ? 今は家の中でしかもカトレアが招き入れてるんだから拘束なんかしなくていいんだよ」


「え? まさかボネとダイフクが拘束しようとしたの?」


「あぁ。ダイフクがソファを一つ壊したから、ボネの魔力を使わせて新しいの出したんだぞ」


「え……カスミさん、すみませんでした……」


「いいのでござるよ。元気があるのはいいことでござる」


 なかなか心が広いじゃないか。

 でも一つ気になることを言ってたな。


「シルバたちに捕まったことがあるんですか?」


「いかにもでござる。まさかあの距離で見つかるとは思ってなかったでござるし、それでもこの距離なら逃げ切れると思ってたのでござるよ……。そのあとグルグル巻きにされて、たまたま魔物部屋にいたカトレア殿の前に差し出されたのでござる」


「「「「……」」」」


 グルグル巻きにされたのか……。

 森の治安は守られてるようで少し安心したが。


「カトレアはそのときもうカスミさんのことを知ってたのか?」


「いえ、私は初対面でした。カスミちゃんは当然のように私のことを知ってましたけどね。あれは確かシャルルとジェマちゃんがここに住んですぐくらいのときだったと思います」


 それってかなり前のことじゃないか?

 かれこれ半年以上経ってるよな?


「そしてシャルルかジェマちゃんを呼んでほしいと言われたんですよ。すぐにジェマちゃんが飛んできて、カスミちゃんのことを聞かされました。ロイス君にも内緒にしてほしいということでしたので、ピピちゃんたちにも口止めをしました」


 なんで内緒にする必要があるんだ?

 まぁ情報屋としては顔や存在を知られるのはできるだけ避けたいことなのかもしれないが。

 というか俺なにしてたんだろ?

 ……昼寝とかしてそうだから聞かないでおこう。


「ジェマやシャルルとは仲良いんですか?」


「もちろんでござるよ。自分は雇われてる身ではござるが、もう八年も二人のことを見てきてるから二人は妹のようなものでござる。特にジェマとは同じ家に住んでたでござるからな」


「住み込みってことですか?」


「そうでござる。二つ上の兄といっしょにずっとセバス殿の家にお世話になってるでござる。兄は今もその王都の家に住んでるでござるよ」


 兄ということは忍者なんだよな?

 専属の情報屋は二人いるってわけか。


「カスミさんは今どちらに住んでるんです?」


「拠点という話ならマルセールのセバス殿の家でござる」


 そんな近くにいたのか……。


「家にいないこともあるんですよね?」


「月の半分以上はいないでござるな。王都に行ったり、ほかの町に行ったりすることも多いのでござる。ここ一か月以上はほとんど王都の家にいたでござるし」


 シャルルとジェマがいるからか。

 普段からこっそりと護衛もしてるのかな?


「最初に戻りますが、今日はここになにをしに? それになぜ今になって俺たちの前に姿を見せることにしたんですか?」


「自分は今朝方マルセールの家に戻ってきたのでござるが、セバス殿に王都でのことを報告したら、話を聞いたセバス殿が倒れたのでござる」


「「「「えっ!?」」」」


「メアリー殿によると、最近疲労が溜まってたせいだろうでござるから、少し寝たら大丈夫だろうとのことでござる。念のためすぐにスピカポーションも飲ませたでござる」


 ふぅ、驚かすなよ……。


 でも倒れたくなるほどの出来事が王都であったってことなのか?


「ではセバスさんの代わりにここに報告しに来たと?」


「そうでござる。だからまずカトレア殿に連絡を取ったのでござるよ。そして今からする報告に関連してお願いがあるのでござる」


「まずは報告から聞きましょうか。シャルルたちのことですよね?」


「……」


 ん?

 違うのか?


「……昨夜、シャルロット殿が拘束されたのでござる」


「「「「えっ!?」」」」


 拘束だと?

 怪しいことでもしてたのか?


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