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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第二章 大樹のために
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第三十六話 物資エリア

「6400Gだって!?」


「……ポーション150本、解毒ポーション46本、エーテル33本、サイダー70本……在庫の数やウサちゃんたちにも確認済みですので間違いないですね。ふふふ」


「……」


 今日の来場客数は過去最高の六十三人。

 当然こちらも過去最高の3150Gの売り上げだ。

 それなのに、軽々とその倍を超えてくるとは……。


 ポーションおそるべし。

 いや、錬金術師おそるべし!


 ……というか最後笑ってたよね?

 悪いことしてる気分なんじゃないの?

 元はタダの薬草と水なんだよ?

 それが6400Gって……。

 ポーション150本ってなんですか?

 がぶ飲みにもほどがあるでしょうが。


 でも何気にサイダーが70本も売れてくれたのは嬉しい!

 やっぱりサイダーは正義!


 と、ダメだダメだ、調子に乗ったときが一番危険だ。

 どこの誰かもわからない輩に目をつけられるかもしれない


「まぁこんなもんだろうな。今日は販売のことを言ってなかったから知らずに持参してきた人が多かったはずだ。ウチのほうが安いのはわかっただろうから、明日からはもっと数が必要になるかもしれない」


「……冷静な分析ですね。私もそう思います。なのでご飯食べてから少しまた物資エリアに行ってきますね」


「ん、そうか……待った、俺も行こう。たまにはウサギたちを労わないとな」


「……ふふふ、ウサちゃんたちも喜びますよ」


 今は少し遅い夕飯の時間だったが、ララはまだ起きてこなかった。

 よほど疲れていたんだろう。

 まだ十歳だからな。


 ……あれ?

 ちょっと待て、十歳がブラックオークなんて倒せるのか?

 いや、きっとシルバとピピが倒したって意味だな。

 俺の聞き間違いか勘違いか。


 ララがいないので俺たちはカトレアが作った焼肉丼を食べていた。

 昼間のBBQで余った肉を焼いてオリジナルのたれで味付けをしたらしい。

 ニンニクの味が効いていて凄く美味しい。


「この焼肉丼すごく美味しいな! タレが絶妙だ!」


「……ふふ、秘伝のタレってやつですよ。ふふふ」


 カトレアは美味しいと言ってもらえたのがとても嬉しそうだ。

 でも秘伝のタレって少し前まで料理に全く興味なかった人が作れていいものなの?

 こわいから聞くのはよそう。



 夕食後、後片付けをしてから物資エリアに来た。

 少し前まで栽培エリアと呼んでいたのだが、薬草以外にも扱うものが増えたので物資エリアと改称した。


「順番に行こうか」


 まずは薬草園だ。

 ここでは薬草と毒消し草を栽培している。

 

「……ウサちゃん、薬草二百枚と毒消し草五十枚用意してくれますか?」


 ウサギ二匹は採集カゴに入れてある薬草と毒消し草をそれぞれ持ってくる。


「……ふふ、ありがとうございます」


「今から錬金するのか?」


「……いえ、後でまとめてします。次行きましょう」


 カトレアはカゴを持って歩き出した。



 次は果樹園だ。

 ここではリンゴとミカンを栽培している。

 残念ながら今日の出荷数は極僅かだったようだ。


「今日は残念だったな。でもそのうちいっぱい採ってくれるようになるからな」


「……そうですよウサちゃん、気を落とさずに美味しく育ててくださいね」


 ウサギは落ち込んでいたようだったが、俺とカトレアに声をかけられて少し元気になったようだ。


「ジュースでも作るか?」


「……あら、いいですね。ミカンジュースは私の得意飲み物の一つですよ」


 出た、得意飲み物。

 でもどうせ飲まないんだろ?

 ララはミカンジュース好きだから後で持っていってやろうか。


「……これも販売しますか?」


「え? さすがに売れないんじゃないか?」


「……そうですか」


 なんでそんな悲しそうなんだ?

 ……そこのウサギもそんな目で見るのやめてくれよ頼むから。

 

「次行こうか」


「……はい」



 次にやってきたのは魔物解体ゾーンだ。

 ここでは魔物を解体し、加工している。


 え? どういうことかって?

 そう、ドロップ品は全て手作業で用意されているのだ!

 じゃなけりゃ肉を一キログラムきれいな塊でしかも包装済みというのは不可能だ。


 さらに包装したものに状態保存の魔法をかけるための魔道具をカトレアが作ってくれたのだ。

 ただし、カトレアかララがこの魔道具にある程度魔力を注入してなければ足りない分はダンジョンの魔力が消費されることになる。

 だから肉の在庫をいっぱい抱えておくわけにはいかない。


 ここが本格的に稼働を始めたのは昨日からだ。

 もちろん事前に練習してるので作業はスムーズだ。

 だが、残念ながらここも今日の出番は少なかったようだ。


「今はまだ冒険者たちが弱いから仕方ないんだ。ダークラビットはそれなりに解体できたんじゃないか?」


「……明日からはきっともう少し出番が増えますからね。腕の見せどころですよウサちゃん」


 ここにもウサちゃん。

 そう、解体もウサギの手によって行われている。


 つまり、この物資エリアはアンゴララビットによって回っていると言っても過言ではないのだ。


 しかも解体に道具なんて使ってないからね?

 素手だよ素手!

 こう見えてこのウサギ、中級者レベルだからね?

 ランクで言うとDランク! 中の中だ!


 さて、ドロップの仕組みをもう少し詳しく知るために次に行こうか。



 次は、転移ゾーンだ。

 ここには大きく分けて三つのエリアがある。


 まずはウサギたちが薬草や果物を設置しに行くための転移魔法陣が数多く設置されているエリアだ。

 階層が増えるごとに転移魔法陣の数も増えていくので、これは今後少し考えなければいけないことでもある。


 そして、自動販売魔道具用転送エリアだ。


 ここには現在五個の小さな転移魔法陣が並んで設置されている。

 それらの前にはウサギが五匹、転移魔法陣とウサギの間にはポーション、解毒ポーション、エーテルが一つずつある。

 転移魔法陣の奥には看板のような魔道具、ウサギの後ろのほうにはポーションなどが数多く並べられ置いてありここにも一匹ウサギが待機している。

 さらに少し離れたところの水の中にはサイダーがあり、その前にはウサギが一匹。


 自動販売魔道具にお金が投入され商品のボタンが押されると、それと連動している看板のような魔道具に商品名が表示される。

 それを見たウサギが即座に商品をここの転移魔法陣の上に置き、自動販売魔道具の商品取り出し口に転送される仕組みとなっているのだ。

 そして、後ろに待機しているウサギは今売れた商品を前のウサギの手元に補充する。

 サイダーの注文が入ったときだけは、サイダー担当のウサギが走ってセットしにいくため少し時間がかかってしまう。

 だが、キンキンに冷えたサイダーを提供するためにはそれくらいは仕方ない。


 つまり、実際には自動販売などではなくウサギが販売しているのだ。



 三つ目はドロップ品転送エリアだ。

 そう、ドロップも全て転送で行っているのだ。


 ここにはドロップ品が存在する魔物ごとに転移魔法陣が設置されている。

 そのため、一匹の魔物に対して三個の魔法陣が設置されている場合もある。

 レアドロップの魔法陣は少し黄金色に輝くようにした。

 それぞれの魔法陣の上にはドロップ品が置かれている。


 そしてこの魔法陣の傍には先ほどのゾーンでもみた看板のような魔道具がこちらは魔法陣ごとではなく魔物ごとに一つ設置されている。

 この魔道具は抽選魔道具とでも呼ぼうか。

 

 対象の魔物が倒されるごとに抽選魔道具の内部にて抽選が行われる。

 見事当選すると看板が光り、魔法陣の上に置かれていたドロップ品が、倒された魔物の魔石が持つ位置情報を元に魔物が倒された位置にドロップされることになる。

 これらの処理は一瞬で行われており、あたかも魔物が倒された瞬間にドロップしたと思ってしまうはずだ。

 このゾーンにもウサギが数匹待機しており、ウサギたちには転送されたドロップ品を予備から素早く補充することが要求される。


 魔物解体ゾーンのウサギへ予備品がなくなったことを伝えるのもこのウサギたちの仕事だ。

 魔物解体ゾーンのウサギたちはこの報告を聞くと、見回り巡回しているウサギに連絡し、対象の魔物を送ってもらう。

 ちなみに、アンゴララビットが魔物を倒した場合は以前のままの素材収集可能な状態にしてある。



 以上が物資エリアの現状だ。

 当初は栽培だけのつもりだったが、短い間にずいぶんと様変わりしてしまったものだ。


 そんなことを思いながら、自動販売魔道具用転送エリアに向かう。


「じゃあ少し多めに頼む」


「……はい、そこで見ていてくださいね」


 カトレアはいつものように小さいほうの錬金釜を取り出す。


「なぁ、大きいほうの錬金釜とはどう使い分けてるんだ?」


「……この小さい釜は飲食物専用です。大きい釜はそれ以外のものです。魔道具とかですね」


「へぇー、衛生面的なことでか」


「……まぁそういうことにしておきますね」


 釜錬金の内部は魔力なんだからあまり気にする必要もなさそうだけどな。

 飲食物専用か、ポーションもサイダーもいつもあれで作ってくれてるもんな。

 飲食物……パンも作れるのか?


「なぁそれってパンも作れたりするの?」


「……はい……作れますけど……それが、どうかしたんですか」


 なんか端切れが悪いぞ?

 質問自体は普通のはずだが。

 ということはやはり……


「得意パンはなに?」


「……」


 ごめんなさい、少し意地悪したくなっちゃって。


「ごめん。今度ララにチーズケーキ作ってもらおうな」


「……はい」


 カトレアは泣きそうになるのを必死にこらえながらポーションの錬金を始めた。

 ここへ住むようになってからは以前食べてたパンは一度も食べてないはずだ。


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