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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人
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第三百五十五話 復活のゴーレム

 ……ん、朝か。


 物資階層にあるミニ大樹の傍で寝るようになってもう一か月半以上。

 マナ効果で癒されてるのか、毎日良く眠れてる気がする。


「あ、起きた?」


 ……ドラシーか。

 自然に起きたかと思ってたが、起こされたのかもしれない。




 ……え?

 ドラシー?


「なにかあったのか!?」


 慌てて飛び起きる。

 ドラシーが俺を起こすなんてよほどの事態じゃないのか?


「ふふふ、隣見て」


「隣?」


 ゆっくり右のベッドを見る。


 そこではゲンさんが寝てるはずだが…………あれ?

 ゲンさんがいない!?


「ゴ(こっちだ)」


「えっ!?」


 逆側から声をかけられた。


「……ゲンさん!?」


「ゴ(おう。迷惑かけたみたいだな)」


「体は!? 痛みは!?」


「ゴ(この通りなんともない)」


 ゲンさんは地面に座ってるが、そのゲンさんの上にはピピ、メタリン、ペンネ、リスたちが乗っている……。

 シルバとウェルダンはゲンさんにくっついて寝転んでいる。


「ミャ~(元気になって良かったわね)」


 ボネは俺の枕元にいたようだ。


「ゴ(二匹は話せるようになったのか。もう一匹はどうだったんだ? ここにいないってことはそういうことか?)」


「いや、ララと寝てるんだ。大きくなったから抱き枕にされてる」


「ゴ(なるほど。戦士タイプだったってわけか)」


 ダイフクはほぼ毎日ララといっしょに寝てる。

 ボネが気まぐれでララと寝てもいいと言ったときだけ、俺のベッドにダイフクが来るといった感じだ。


「それより、いつ目が覚めた?」


「ゴ(ついさっきだ。長い間意識不明だったって聞いて驚いたぞ)」


「急に? ずっと苦しかったりしたんじゃなくて?」


「ゴ(普通に寝てたって感じしかしないな。意識を失う直前までの記憶もある)」


 ということはあのときのことがやっと聞けるのか。

 ドラシーも心当たりがあるくせに、ゲンさんが起きてからじゃないと話さないって頑なだったし。


 一つだけ教えてくれたのは、あの敵があの場面で撤退したであろう理由だけだ。

 だがその理由も、一人では俺たち全員に勝つのは難しいと悟ったからという適当なものだった。

 いくらユウナの封印魔法があったとはいえ、あんな魔法を連発されてたら即行全滅してたと思うけどな。


「ゴ(詳しくはスピカに聞いたほうがいいぞ)」


「え? なんでスピカさん?」


「ゴ(夜中に俺になにかを飲ませたらしい)」


 あ、そっちの話か。


「って夜中にスピカさんがここに来たのか。全く気付かなかったな」


「そりゃそうでしょうね。アナタは眠らされてたんだから」


「は? ……眠らされてた?」


「寝る前にお茶飲んだでしょ?」


「お茶?」


 ……そういえばスピカさんが入れてくれたお茶を飲んだな。

 なんでもお茶は心がリラックスして良く眠れるからって言ってたっけ。

 最近よく入れてくれる気もしたからなにも思わなかったが。


 まさか眠り薬が混入されてたのか?

 それって犯罪じゃないんだろうか……。


「でもなんのために? 俺が起きてるとゲンさんの治療ができないなんてことがあるのか?」


「体が少しだるいとかない?」


「ん? ……いや、別に。薬のおかげかいつも以上に良く眠れた気がするし」


「そう、なら良かった」


「いやいや、理由になってないだろ」


「しつこいわねぇ。まぁゲンさんが目を覚ましたから言うけど、禁断のポーションを作るためだったみたいよ」


「禁断? ……のポーション?」


「アタシがそうしろって言ったんじゃないからね? あの子が考えたんだからね?」


 なぜそんなに自分は関わってないと念を押すように言うんだ?

 禁断なんて聞かされたら不安しかないぞ……。


 ……でもゲンさんは良くなってるしな。


「その禁断のポーションについてもっと詳しく」


「……仕方ないわね」


 だからなぜそんなに言いにくそうなんだ?


 ……ん?

 魔物たちのこの反応、こいつら、なにか知ってるな?


「……血よ」


「ちよ?」


「血。アナタの血」


「血? 俺の血?」


「えぇ。アナタの血とスピカポーションを錬金したものをゲンさんに飲ませたの」


「え……」


「しばらくしたらゲンさんからハッキリと寝息が聞こえるようになったわ。それを見て安心したスピカちゃんは倒れるように眠ってしまったけどね。今頃自分のベッドで久しぶりに気持ちよく眠れてるはずよ」


「……」


 えっと、どういうことだ?


 俺の血を採取するために眠らされてたってことでいいんだよな?

 それなのに俺は気付かずに寝てたってわけか。

 ……どこから血を取られたんだろう。


「チュリ(左腕ですよ。痕跡は残っていませんが、かなりの量を抜かれてました)」


「なんだと……」


「わふ(カフェラテ二杯分くらいじゃない?)」


「二杯……多すぎだろ……というか誰もとめなかったのか?」


「チュリ(スピカさんはちゃんと説明してくれましたし、ゲンさんの治療のためだと言われたらとめる理由がないですし、私たちもそのポーションならもしかしてとも思ってましたからね)」


 確かに……。

 ウチの魔物たちにとっては一番効果が期待できるポーションかもしれない。


 って俺のことはどうでもいいのかよ……。


 なんだか眩暈がしてきた気がする。

 まだ早朝だからもう少し横になろう。


「ミャ~(また寝るの? 仕方ないから私もいっしょに寝てあげる)」


 ボネが左腕にピッタリくっ付いてきた。

 俺のことを心配してくれるなんて優しいじゃないか。


「ゴ(じゃあ俺は森の様子が知りたいし、地上に行ってくる。約二か月ぶりになるのか)」


 ボネを除く魔物たち全員がゲンさんといっしょに地上へ転移していった。


 ゲンさんは俺の血を飲まされたと知って気持ち悪くなったりしないんだろうか。

 俺は魔物の血を飲みたくないもんな……。


 ……でも普段は魔物の肉を食べてるんだよな。

 そう考えたら血くらい平気なのかもしれない。

 血だとわからないようにポーションに混ぜてくれるんだし。

 かといってすすんで飲む気にはならないけど。


「今日月曜日よ? 寝てていいの?」


「少しだけだよ。受付までには起きる」


「そうじゃなくて、今日29日よ? もう宿屋フロントで手続きしてる子たちいるわよ?」


 宿屋フロント?

 もう冒険者が来たっていうのか?

 まだ七時にもなってないぞ?

 というか受付はどうした?


「ミャ? (帰省準備じゃない?)」


「あ……」


 そうだ、もう今日からみんな帰省しだすんだった。


 血を抜かれたせいで今日はもうこのまま休んでもいいかなってちょっとだけ思ってしまってたが、管理人としてお見送りはせねば。

 俺にできる仕事なんてそれくらいしかないからな。


「ロビー行くぞ」


「ミャ~(ヤダ。ご飯がいい)」


 ボネのことが全然わからない……。

 ダイフクなら無言で付いてきてくれるのに。



 そして魔物部屋に魔物たち全員のご飯を準備し、ボネを残して一人で宿屋ロビーにやってきた。


 ……フロントは忙しそうだな。

 ロビーのソファやダンジョン酒場内も人でいっぱいだ。


 宿屋では今日から、帰省する人やなにかの理由で一時的に大樹のダンジョンを離れる人のために新しい仕様を取り入れることにした。

 宿屋の設定や宿泊残日数をそのままにウチを離れられるというものだ。

 まぁ要するに今まで魔工ダンジョンや帝国に行ってもらってたときの仕様をそのままシステムとして取り入れただけだ。


 ただし、期限は一週間。

 他国出身者の場合のみ、二週間までとした。


 今はその設定のために端末が取り合いになっているようだ。

 出発する日は九時まで、戻ってきた日は十五時以降の場合のみ、その日の宿泊日数が加算されないことになってるからみんな急いでるんだろう。


 朝食は食べていくのかな?

 魔道列車や馬車の時間を考えると今すぐ出発したいっていう人のほうが多いのかもしれない。


 ……あ、そういや今日からの一週間はバイキング会場のオープンを六時にしたんだっけ。

 ということは朝食をもう食べたあとって人が多いのかも。


「お兄! 大丈夫なの!?」


 ララも起きてたのか。

 まぁ総支配人としてお見送りしないわけにはいかないよな。


「大丈夫ってなにがだよ?」


「え? ……あ、なんでもない」


「ん? なんだよ? ……あ、お前もしかして知ってたのか?」


「え……うん」


 スピカさんは独断でやったわけじゃなかったのか。

 ララのこの様子だと、俺が血を抜かれてしばらくは動けないとでも思ってたに違いない。

 そう考えるとカフェラテ二杯分じゃなくてもっと凄い量の血を抜かれたんじゃないかと思えてくるな……。


 でもスピカさんもなんで俺に相談しなかったんだよ?

 ゲンさんのためだったら協力しないわけないだろ?


 もしゲンさんがまだ寝たきりの状態だったら、きっと俺には知らせないでいたんだろうな。

 血を抜かれて知らないままなんてこわすぎる……。


 というか今までも何回か試してたんじゃないだろうな?

 あ、その線が濃厚じゃないか?

 何回も失敗してようやく禁断のポーションが完成したとか?

 そりゃ毎回毎回血を抜いといて錬金に失敗してたんなら俺には言えないよな……。


 今思えばさっきの魔物たちの様子は俺が血を抜かれることに少し慣れすぎてた気もする。

 シルバなんか、今日はいつもより少し多かったねくらいな感じだったし。

 それにピピも、俺の血を錬金したポーションに前から望みをかけてたみたいな言い方だった気もする。

 でもララは今日までなにも知らなかった感じだしなぁ~。


 となると昨日までは少量の血でこっそり実験を重ね、上手くいきそうだから今日は本番として大量の血を抜いたってことか?


 ……まぁ結果的にゲンさんは無事だったんだからなんでもいいか。


「安心しろ。ゲンさんは目を覚ました」


「えっ!? ホント!? さっき見に行ったときはまだ寝てたよ!?」


「じゃあついさっき起きたんだろうな。すぐに魔物たちみんなで仲良く散歩に行ったよ」


「良かったぁ~。スピカさんもこれで無理ならもう打つ手はないかもって言ってたもん。あ、カトレア姉たちにも早く教えてあげないと! お兄はここ見ててね!」


 ララはフロント横で寝てるダイフクへなにか耳打ちしてから家へ転移していったようだ。

 ダイフクは冒険者たちに囲まれているのに全く気にすることなく寝ている。

 あんなに触られまくってるのによく寝れるな……。


 ん?

 ダイフクが急に起き上がった。

 周りにいた冒険者たちからは可愛いとの歓声があがっている……。


 そして俺の元へと歩いてきた。


「ニャ(散歩行きたい)」


「ん? ゲンさんたちなら森に行ったぞ」


「ニャ(うん)」


「ちゃんと挨拶できるか? ボネが魔物部屋でご飯食べてるから声かけてやってくれ」


「ニャ(うん)」


 そしてダイフクもまた転移していった。


 ダイフクもボネも帝国で保護されたときには俺に会うより先にゲンさんに会ってるんだもんな。

 もちろん二匹ともそのことは覚えてないだろうが。


 でもダイフクがこんな嬉しそうにしてるのは初めて見たかも。

 ボネとは違った意味でわかりづらいからな。


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