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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人
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第三百五十三話 杖職人誕生

 リヴァーナさんが家に来てから十分ほど経ったころ、ユウトさんがやってきた。

 なぜかジジイも付いてきたようだが。


 リビングにはほかにララ、ユウナ、カトレア、マリンが集まっている。


「あ、もしかして杖作ってくれたの?」


 察するのが早い……。

 サプライズでプレゼントしたかったユウトさんは少し焦っている。

 ジジイが付いてきたせいで杖のことだってバレたに違いないな。


 というかリヴァーナさんはユウトさんに対して普通すぎるんだよな。

 港で再会したときだって、「あ、ユウト元気~?」って感じだったし。


 後日改めてユウトさんがリヴァーナさんに結婚したっていう話をしたときの様子を聞いたが、「おめでと~お幸せにね。リヴァはもっと強くなるからそのためにもいい杖作ってね~」で終わったらしいし。


 既に知ってたからということもあるんだろうけど、想像してたよりもドライすぎるんだよな……。

 だからこそユウトさんはリヴァーナさんが無理してないか余計に心配になってるようだが。


「これなんだけど……」


 ユウトさんはレア袋からおそるおそる杖を取り出し、テーブルの上に置いた。


「「「「おおっ!?」」」」


 思わずこの場にいたみんなが驚く。

 ジジイとカトレア以外は初見だ。


「いいじゃん! 触っていい!?」


「うん」


 というかなんだこの杖……。

 杖じゃなくて槍じゃないのか?


 先端部分にあるこの少し大き目の鉱石の形はもしかして雷をイメージしてるのか?

 その雷のような形の鉱石の周りにはさらに二本の鉱石がグルグルと渦を巻くようにしてあり、雷の鉱石と合わせると杖の先端が三本あるようだ。


 リヴァーナさんの望みは魔法を二つ同時に出せることだったが、これだと三つ同時に出せそうだな。


 ……いや、渦になってる二本を使うことで魔法を合成するイメージが湧きやすいようにしたのか。

 単純に雷魔法をぶっ放すときは真ん中の雷の鉱石を使えってことなのかもしれない。


「……どうかな? 杖の中に魔力プレートの芯が三本入ってるんだ。リヴァが使える雷、風、土をイメージして作ってみたんだけど……」


「……うん! ちょっと図書館行ってくるね! ありがと!」


「え……」


 感想を言わずに家から出ていってしまった……。

 あ、最初にいいじゃんって言ってたか。


「……リヴァ、なんだか僕といっしょにいたころより楽しそうなんですよ」


「今は周りに友達や仲間がいっぱいいるからじゃないですか? だからもうリヴァーナさんのことは気にしなくて大丈夫ですって」


「はい……。あ、それとユウナにも」


「私にも作ってくれたのです?」


「うん。これなんだけど」


「「「「おお~」」」」


 これはこれでいいじゃないか。


 丸い鉱石が三日月のような形の鉱石に乗っかっている。

 三日月と満月、いや、月と太陽をイメージしたのか?


「……リヴァーナちゃんのに比べると少し手抜きじゃないのです?」


「う……ユウナが好きそうなのにしたのに……そりゃリヴァのと比べると手抜きに見えるかもしれないけどさ……。でもこっちはララちゃんの火魔法を最大限に活かせるように工夫したんだ。前にカトレアさんが作った杖より強力な火魔法を放てるはずだよ」


「……まぁいいのです。お兄ちゃんにしては良くやったって褒めてやるのです。じゃあ私も図書館行ってくるのです」


「……」


 ユウナは小走りで転移魔法陣部屋に向かっていった。

 言葉とは裏腹に嬉しそうだな。


「ユウナは少し冷たくなったんですよ……」


「照れ隠しもあると思いますが、ユウナが旅に出る前に一度もユウシャ村に帰らなかったことをまだ怒ってるんじゃないですか? 両親に加えてお兄ちゃんまで帰ってこなくなったと思ったんでしょうね」


「それは……」


 この人落ち込んでばかりだな。


「ほっほっほ。杖の出来はワシが保証するぞ」


「ジジイはいつもあんな変わったデザインをした杖を作ってたんですか?」


「いや、あれはユウトのオリジナルじゃ。リヴァちゃんとユウナちゃんに渡す杖じゃからというのもあるじゃろうけどな」


 カトレアが王都から大量に仕入れてた杖なんか、木の棒の先に魔石乗せましたって感じで味気なかったもんな。


「先端の鉱石はアイリスが加工を?」


「いえ、あれは僕が……」


「「「「えっ!?」」」」


 嘘だろ!?

 あんなのどうやったらユウトさんが作れるんだよ……。

 そんな加工ができたら木工職人だけじゃなくて鍛冶職人もできてしまうじゃないか。


「ふふっ、ユウト君は錬金術の才能もあるんですよ」


「「「「錬金術!?」」」」


「そうです。でもまだ加工だけですけどね。鉱石や魔力プレート、それにミニ大樹の木を器用に織り交ぜていくんですよ。ユウナちゃんと同じで魔力のコントロールが素晴らしいんだと思います」


「いえ、カトレアさんの教え方が上手だっただけで……素材も全てカトレアさんが準備してくれた物ですし……」


「謙遜しなくてもいいんです。このまま修行すればあれくらいユウト君もできますし、錬金術師にだってなれると思います」


「僕が錬金術師だなんておそれ多いですよ……」


 とんでもない才能を持ってるじゃないか……。

 さすがに魔法付与はできないだろうが、魔法杖や魔法剣の作成をユウトさんがやってくれるんならカトレアの負担がだいぶ減ることになる。

 カトレアだけじゃなくてアイリスたちもか。


「どうやらワシの教えはいらんかったようじゃ」


「そんなことないです! 長老が杖作成を一から教えてくれたおかげで杖を作れるようになりましたし、カトレアさんが錬金術を教えてくれたおかげであの杖たちが出来上がったんですから!」


「そうか。それならワシは心おきなく引退できるってわけじゃな」


「えぇ~っ!? これからもいっしょに杖作りましょうよ!」


「いいんじゃ。ワシの役目はもう終わった。これからは杖のメンテナンス業をメインに仕事することに決めたんじゃ」


「「「「……」」」」


 まだここで働くつもりだったのかよ……。

 流れ的にここも辞めて隠居生活を送るんだと誰もが思ったじゃないか。


「ジジイはニーニャちゃんといっしょに南マルセール駅でパン作っとけばいいんじゃない?」


「公園の管理でもしてたらどうかな? 散歩しながらさ」


「……杖のメンテナンスはどこでもできますからね」


 こいつら酷いな……。

 特に最後のカトレアなんか、ララとマリンの流れに乗らないとマズいと思ったのか、むりやり言葉をひねり出した感じだった。


 いくらジジイでもこの一斉攻撃にはさすがに落ち込むぞ……。


「泣きそうじゃ……ロイス君はどう思うんじゃ?」


 俺に聞くなよ……。

 杖のメンテナンスはユウナとカトレアがいれば問題ないし、おそらくユウトさんだってできるだろう。

 それにメンテナンスだけだと普段やることなさすぎで給料泥棒って言われても仕方ないからなぁ。

 日曜日だけ来てもらうのが一番いいんだろうけど。


「帝国でいっしょに旅した仲じゃろ? 大変な旅じゃったよなぁ」


「ジジイ! お兄の情に訴えるなんて卑怯!」


「冒険者村ならのんびり働きながらのんびり過ごせるよ」


「……」


 カトレアは参戦するのをやめたようだ。

 そのせいでマリンの適当な発言が一番酷いように思えてきた……。

 しかも一人だけソファに寝転んでるし……あ、ボネもいっしょか。

 ボネはマリンに懐いてるからな。


 ってそれよりジジイのことだ。

 まだ隠居生活は送りたくないようだからな。


「ユウトさんの補助と杖のメンテナンス、ほかにはパーティ酒場の夜担当や、土魔法を活かした家作りや公園造りなど色々選択肢はありますが、どうしたいですか?」


「うむ、選びたい放題じゃの。数日考えさせておくれ」


「ジジイ! 決めるんならすぐ決めなさいよ!」


「一瞬の判断の遅れが命取りになるのです!」


「……」


 ララとユウナも追い出したいわけじゃないんだよな。

 ってユウナはもう戻ってきたのか。


 二人とも単純にジジイをいじるのが楽しいんだろう。

 マリンは本当にどうでもいいと思ってるのか寝たようだ。


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