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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十一章 マナの守り人
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第三百五十二話 パラディン隊の意義

 日曜日の朝にバイキング会場に来たのはいつぶりだろうか。

 少なくとも帝国から帰ってきてからは初めてだな。


「ロイス君!?」


「おはようございます」


 早速ティアリスさんに見つかったようだ。

 適当に料理を取って誰も周りにいない空いてる席に座る。

 当然のようにティアリスさんは俺の向かいの席に座ってきた。

 今何人かといっしょに食べてたはずなのにそっちはいいのかよ……。


 そして周りのテーブルにも続々と人が集まってくる。

 なんだか懐かしいな。


「ここまた広くしたんですけど気付きました?」


「もちろん! こないだ拡張したばかりなのに、また拡張しないといけないほどお客さん増えてるんだね!」


「千人超えましたから。でもパラディン隊に入る人たちもいると思いますのでまた少し減りますけどね」


「あ、パラディン隊のこと聞いてもいいの?」


「どうぞ。試験内容に関することはお答えできませんけど」


「給料はどれくらい?」


「「「「……」」」」


 周りの人たち全員が食べる手をとめたぞ……。

 やはりみんなが給料のことが気になってるのか。


「少ないですよ。今のウチの従業員に比べたら全然です」


「えっ!? そうなの!?」


「はい。基本給は町の役場で働いてる方と同じくらいらしいです。パラディンの仕事の多くは町中や隣村までの道の見回りになりますし、なにもなければ封印結界内の安全な仕事ですから」


「……強くなくてもいいってこと?」


「いえ、強い方が守ってくれてるからこそ町の人も安心できますし、治安も良くなります」


「でもそれじゃやる気が出ないんじゃない? いくら危険が少ないからってさ」


 ウチの従業員の給料の情報はある程度知れ渡ってるから、最低でもそのくらいを予想してたんだろうな。


「その代わり、パラディン隊専用の住居には格安で住めますし、パラディン隊本部にある食堂も激安です」


「う~ん。それは確かに嬉しいんだけど、このダンジョンに比べたら旨みが少なくないかな?」


「当然ですよ。魔物さえ襲ってこなければ戦闘なんかないに等しいんですから。それに仮にマルセールが襲われたときには冒険者のみなさんも戦いに行くでしょう? でもこの前の帝国のときと同じように報酬は出ないかもしれないですし、そうなると実収入は自分たちが魔物を倒して得た魔石や魔物素材だけになります。しかしパラディンはそんなときでも安定して給料を貰えますからね。危険な役割は冒険者に任せてですよ?」


「……パラディンって必要なのかな?」


 そうだ、みんなにはその疑問を感じてほしい。

 だがウチのパラディンを王国騎士とはいっしょにしないでほしい。


「必要です。マナを守ることが第一ですから、封印結界や周りに異変がないかを日頃から確認してほしいんです。魔工ダンジョンの出現にもいち早く気付いてもらわないといけませんし。非常時には町の人々を安全に非難させることも必要になります。それに勘違いしないでほしいんですが、パラディンもみなさんと同じように厳しい修行はしますから。ただみなさんより修行に使える時間が減る分、みなさんほどは強くなれる可能性が少ないってだけです」


「「「「……」」」」


 ……あ、つい早口で言ってしまったせいでみんなを委縮させてしまったようだ。

 まぁいい、このまま続けてみよう。


「パラディンは十二時間勤務の二交代制になります。毎週日勤と夜勤が入れ替わるイメージです。そしてみなさんに一番知っておいてほしいのは……」


「「「「……」」」」


「最低でも週に一回、大樹のダンジョンでみなさんと同じように修行します」


「「「「えぇっ!?」」」」


 おお?

 いい驚き具合じゃないか。


「ただし、その修行も給料を貰っての仕事になりますので、採集した物や魔石を換金することはできません。ダンジョン内での行動にもノルマを設定させていただくことになります」


「なるほど。仕事って感じだね。給料を貰ってるからとはいえモチベーションを保つのが難しそう」


「はい、その通りです。やはりやる気というのは大事になってきますからね。だからドロップ品だけは自分の収入にできるようにします」


「「「「おおっ!?」」」」


「かと言ってドロップ品ばかり狙われても困りますので、ノルマを達成できなければせっかくゲットしたドロップ品も回収させていただくことになります」


「「「「なるほど!」」」」


 別に意地悪でノルマを設定するんじゃない。

 一番の目的がドロップ品になってほしくないだけだ。


「パラディン隊は普段からポーション類は使い放題ですし、武器や防具だって支給されます。ここに来た日はバイキング会場にだって入れます。つまりここでは無駄なものを買わない限りお金を使う必要がほぼないんです。給料を貰って修行できて、さらにドロップ品というお小遣いまで貰えるなんて最高じゃないですか?」


「「「「最高!」」」」


 そうだろ?

 給料が少しばかり少ないことくらい気にならなくなってきただろ?

 宿代や食費のことを考えながら戦わなくていいっていうのは気分的に相当楽だと思う。


「ロイス君……そんな良いことばかり言ったらみんなパラディンになりたいって思うよ?」


「採用試験に参加していただく分には大歓迎ですからいいんですよ。受験者が多いと話題にもなりますし。ただその分狭き門になるのは間違いないでしょうね」


「何人募集するの?」


「……秘密です。少なくはないとだけ言っておきましょうか」


「「「「おお~!?」」」」


 今周りにいる人たちのほとんどがEランクだが、強ければ合格できるってわけでもないからな。

 まぁどうせこの人たちは新しい情報に飢えているだけだから、実際には試験を受けたりしないだろうけど。


「王国騎士みたいに戦士タイプじゃないとダメってわけでもないんだよね?」


「えぇ。前衛中衛後衛関係なく募集しますし、もちろん装備品もそれぞれに合った物を支給します」


「回復魔道士でもいいってこと?」


「はい。むしろ一番求めてる職ですね」


「……新作の魔法杖も支給するの?」


 なぜそのことを知ってる?

 木工職人のことはまだ公表してないんだぞ?

 ……またユウナか。


「……その予定です。あ、でも回復魔道士はほかのみんなよりも見回りの仕事が少なくなるかもしれません。回復魔法や浄化魔法の修行はもちろん、医療のことも詳しく勉強してもらおうかとも考えてますので」


「……そっか」


 回復魔道士は貴重だからな。

 こないだの屍村でのグラシアさんの働きぶりにはあのララが絶賛してたほどだ。


 それに元々マルセールに医者は少ないし、回復魔道士が本格的に医療を学ぶことができれば鬼に金棒ってやつに違いない。

 どうやって学ぶかは知らん。

 だからそこは完全にスピカさん任せになるけど。


「え? ティアリスまさか試験受けたりしないよね?」


「……」


「嘘でしょ!? 冒険者じゃなくなるってことなんだよ!?」


「そうだよ! パーティも抜けるんだよ!?」


「まさかお兄さんたちがパラディンになりたいって言ってるとか!?」


「違うから! ちょっと想像してみただけだから!」


 仲のいい魔道士たちが騒ぎだしたようだ。

 もう俺の話が終わったと思ったのか、ほかの人たちも口々に話し始めた。


 ……帰ろうか。

 席を立ち、バイキング会場を出た。


「あ、ロイス君おはよ~」


「あぁ、リヴァーナさんおはようございます」


「おはようございます!」


「お? 日曜まで姉弟揃って朝食とは仲がいいな」


「むりやり連れてこないと姉ちゃんずっと寝てますから!」


「ははっ。あ、そうだ、リヴァーナさんあとでウチに来てくれませんか? 九時以降ならいつでもいいので」


「うん、わかった~」


 まだ半分寝てるな……。


「僕も行っていいですか!?」


「ダメだ」


「え……」


 サミュエルはマリンに会いたいだけだろうが、マリンからは絶対に連れて来るなって言われてるし。

 同い年なんだから仲良くしてやればいいのに。


 そしてテンションの低い二人と別れ、のんびり歩いて家に戻る。


「お兄、少し喋りすぎじゃない? ほとんど言っちゃってるじゃん。そのせいでサプライズはもうなにもないからね?」


 見られてたのか……。

 俺にはまだまだ自由は存在しないようだ。


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