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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第二章 大樹のために
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第三十四話 地下三階

「うぉっ、ここは……山か?」


「……山だな」


「てことは登るんだよな……」


「おい、あそこに看板があるぞ!」


 冒険者二人組は地下三階に入って少し進んだところで大きい看板を見つけた。

 どうやら山の案内図のようだ。


「ルートが三つあるのか」


「なになに、標高は五百メートル……休憩エリアは二か所あるみたいだな」


「BBQエリアも休憩エリアに近いとこにあるな。これも二か所か」


「この地図を見た感じだと、道はある程度整備されているように見えるが」


「この真ん中のルートが最短だろうけどその分傾斜もきつそうだな」


「そうだな。今日は経験値稼ぎもしたいし、この左の緩やかな森林ルートにして、敵の強さを見極めながら行かないか?」


「奇遇だな、俺もそう考えてたところだ」


「ホントかよ。しかし山登りは正直キツイよな」


「ここまで一時間ちょいで来れたとはいえ、走ってきたからな。でも次からはスタートがここになるってことだろ?」


「あぁ、でもランクと経験値の兼ね合いがわからないからな。最悪今週は地下一階からと思っておいたほうがいい」


「マジかよー。でも仕方ないか。だって50Gでここまでしてもらえてることがまずありえないもんな」


「逆に心配しちゃうよな。もっと取ってくれても誰も文句言わないのに」


 そんなことを呟きながら二人組は左ルートを選び進んでいった。



 そのころ、地上の管理人室前にはまだ人だかりができていた。


「説明をお聞きになった方はこちらにお並びください! 冒険者カードも同時に作成しておりますので少々時間がかかります! 冒険者カードを作られない方はそちらへ並んでください! 説明をもう一度聞きたい方、まだ聞いておられない方は私の前へ集まってください!」


 今日人多すぎない?

 説明に時間がかかりすぎてるのか?

 それとも説明が上手く伝わっておらず何回も聞くことにしてるのか?


 カトレアは大忙しだな。

 冒険者カードを作らないっていう人はまだいないみたいでララの前には誰も人が並んでいない。


 冒険者カードはカトレアが発明した魔道具、その名も冒険者カード発行魔道具で作成している。

 冒険者側はセーフティリングをはめた状態でその手のひらを魔道具の上に乗せ、カトレアはそこで魔道具に魔力を注ぎ込む。

 しばらくすると魔道具の側面から緑色のカードが発行される。


 カードには、冒険者の名前、最高到達階層、ランクが印字されている。

 カードの内部情報的には、最大体力値、最大魔力値、瀕死になった回数、ダンジョンへ来た回数、指紋情報、その他も何項目かあるらしい。

 これは水晶玉を通していつでも確認できるらしく、冒険者には決して言ってはいけない秘密情報として扱うことが決まっている。


 この仕組みと魔道具をカトレアとドラシーは一日で作ったのだ。

 錬金術師おそるべし……。

 魔力って偉大だな~。


 というようなことを考えながらも冒険者たちに地下三階の説明ができるくらいには定型文が固まりつつあった。


「では説明を聞かれた方はこちらにお並びください!」


 冒険者カード発行魔道具は一台しかなく、しかも魔力が必要なので実質カトレアしか受付ができない。

 カトレアはララもできるみたいなことを言ったが、ララは魔力をここで使いたくないから今日は無理とあっさり拒否した……。



 十時半になり、管理人室前からようやく人がいなくなった。


「お疲れ。大変だったんじゃないか?」


「……お疲れ様です。ふぅ、疲れましたね。眠気はどこかにいっちゃいました」


「全部で何人だ?」


「……六十三人ですね」


「六十三人か、最高記録じゃないか。ララのほうには来てないんだよな?」


「うん!」


「ということは全員カードを作ったってことか。とりあえず中に入って明日の打ち合わせを先にしよう」


 この場をピピとシルバに任せ、俺たちは家の中に入りリビングのソファに腰を下ろした。

 そして水晶玉をテーブルの上に置いてダンジョン内の様子も見れるようにする。


「ふぁ~、なんだか気を抜くと寝ちゃいそう」


「……そうですね。ララちゃんお昼はどうしますか?」


「え? 行こうよ! お肉食べに!」


「……ふふふ、ですよね。ロイス君も行きますよね?」


「行くってもしかしてBBQエリアか?」


「そうだよ! そのためにお肉も確保してあるんだからね!」


「……ふふふ、自然の中でのBBQ、しかも炭火焼き……よだれが出そうです」


「……」


 こいつら、BBQエリアなんて言いだしたのは自分たちがBBQしたいだけだったんじゃないだろうな?

 ララが昨日も今朝も地下三階に行ってたのはもしかして……もしかしなくてもそうか。

 でも二人ともよくやってるから俺なんかが言えることはなにもないな。


「いや、誰もいなくなるのはマズいから俺はここにいるよ。二人で行って焼いた肉だけ持ってきてくれ」


「えぇお兄行かないの!? お肉いっぱいあるんだよ!?」


「……残念ですけど仕方ないですよね。お肉焼けたらすぐ持ってきますからね!」


 ドラシーの転移があればすぐに往復できるからな。


「ところでララ、ドロップ率は体感でどうだったんだ?」


「うーん、やっぱり5%だとそんなには出ないね。ただ敵が強くなってて一匹を倒すのに時間がかかるようになったからそう感じてるだけかもしれないけど。ブラックオークなんて五十匹は倒したけど通常のお肉は二回しか出なかったし。でもね! レアドロップの黒豚ヒレ肉が一回出たの! あれには興奮したなぁ! ピピとシルバも大喜びだったよ! あっそうだ、ピピとシルバも連れてくね!」


 そうか、やっぱりドロップ率は少し低く設定しすぎなのか?

 しばらくは様子見だが、でもこれ以上高くすると肉の持ち出しを禁止することになりかねないからな。

 通常ドロップの肉でさえ、おそらく普通の豚肉よりも数段美味いはずだ。それに加えレアドロップの黒豚ヒレ肉なんてのがたくさん出回ることになったら色々と注目されてダメな気がする。

 オークなのに豚なんて言っていいのかどうかは知らん。


 それに豚肉だけじゃなく他にも三種類の肉が取れるときてる。

 冒険者たちがそれらを全部自分の食事にしてくれるんならなにも問題は発生しないんだけどな。


「とにかく先に明日からのダンジョンの入り口をどうするか決めよう」


「うん! やっぱり三個洞窟を作ったらどうかな?」


「……そうですね。今の洞窟を大きくして、その中に三つ転移魔法陣を置くというのはどうでしょうか?」


 今日はみんな地下一階からのスタートだが、明日以降は地下二階からスタートする者が増えることになる。

 地下三階からももしかしたらいるかもしれないが、経験値的にその可能性は低い。


「どちらでもいい気がするな。まぁでも管理人室から見えやすいように洞窟の入り口を横に広げてその中に三つ作るか。看板を立てれば間違うこともないだろう。出口は共通でいいから少し小屋側に移動させるか」


「うん! お兄がいいならそれで! でもなんかこのエリアも狭く感じちゃうね。小屋も今日の人数だと全然入りきれてなかったし。おそらく帰りもいっぱいだと思うよ」


「そうなんだよなー。エリアを広げることも考えないと……お?」


 三人の視線が水晶玉に集まる。

 そこには二人の冒険者が魔物にやられてHPが赤になる瞬間が映し出されていた。


「あっ……あちゃー。まぁ仕方ないよね」


「……逃げればよかったんですけどね」


「まぁでもこれが普通だよな? この程度の敵にやられてるんじゃ旅なんかできないもんな」


 地下三階からは通常エリアでも敵が襲ってくるし、こちらのHPの色が変わっても手加減はしない。

 地下二階まではそれが魔物急襲エリアでしか起こらなかった。

 ただし、魔物急襲エリアに比べると魔物の数は少ないから十分に対応はできるはず。


 この仕様変更は素材ドロップを導入したことが関係している。

 こちらのHPの色が変わって敵が攻撃してこないとなると倒し放題となってしまうからだ。


 セーフティリングを取り入れた時点でダンジョン全体をこのようにすることも考えたのだが、いきなりそれでは初心者がこわがってしまうかもしれないという意見もあったため保留にしていた。

 もっと魔物と戦いたい人のためには魔物急襲エリアがあるからな。

 あそこの魔物の数は普通じゃないけどね。


 地下一階と地下二階の敵の行動は今までと変わらず、敵からの先制攻撃はしてこないし、こちらの色が変わったら攻撃してこないといった設定のままになっている。

 それに素材としてもあまりいい素材を持っていないため、現状と変わらずでいいということになった。


 この様子だと今日は休憩エリアまで行ける人すら少なそうだな。


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