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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
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第三百三十九話 村人たちの決断

 地下が慌ただしくなった。

 広場にはおそらく全村人が集まってるだろう。

 

「静かにしろ!」


 カーティスさんの声でようやく静かになる。


「今から質問するから必ずどちらかに手をあげろ! 一人でもこの村に残りたいってやつがいたら俺も残るから安心しろ!」


 凄い覚悟だ……。

 俺にはそんな勇気はないな。


「じゃあまず王国に避難したほうがいいと思う者!?」


 ……全員あげてないか?


「……おろしてくれ。では次、この村に残ったほうがいいと思う者!?」


 あ、一人お爺さんが弱々しく手をあげた……。


「……よし、満場一致で王国に避難することでいいな!?」


「「「「はいっ!」」」」


 おい……。


「あの爺さんは耳が遠いんじゃ。じゃから時差じゃろう」


 本当かよ……。


 すかさず周りの人たちが説明をしている。

 ……みんなと同じ意見だったようだ。


 でも先が長くない人からしたら本当は慣れ親しんだ村で最期を迎えたいって思う人もいたりしないのだろうか。


「ではすぐに旅立ちの準備をしてくれ! 俺はその間にロイス君と打ち合わせをしておくから!」


 村人たちは部屋に戻っていったようだ。

 まだそこまで袋から荷物を出してないだろうからすぐに準備も整うだろう。


 そして俺が座ってたテーブルにカーティスさんやルーナさんたちも集まってきた。


「ロイス君、決断が遅くなってすまなかった。村人全員で避難させてくれ」


「いえ、全員でというところが素晴らしいと思います。これ以上誰も死なせることなく王国に行きましょう」


 さて、問題は移動方法についてだが……。


「ウェルダン、もう泣くな」


「……モ~(だって……僕が元気ならビスは……)」


 さっきからずっと俺の足元で泣いてるんだよな……。


「わかったから。泣くのはウチに帰ってからにしてくれ。この先はウェルダン次第では全滅だってあり得るんだぞ」


「モ~(ごめんなさい……)」


「ウェルダン君、リヴァがいっしょだから大丈夫だよ」


「モ~? (誰なのこの人?)」


 さっきからずっと撫でてくれてるのに……。

 それより馬車のことだ。


「村の人は何人います?」


「百四十人だな」


「モー!? (そんなにいるの!? 半分の七十人としても絶対動かないよ!?)」


 なんだ、ユウナからは二百人くらいって聞いてたのにたったそれだけなのか。

 それなら余裕そうだ。


「こういうこともあるかと思って、ウェルダンとメタリンの二匹で同時に馬車を引けるように考えてあるから。馬具も改造してきたから大丈夫だ。それにユウナの補助魔法があるからなんとかなる」


「モ~(なんとなるって……。馬車は縦に連結するの?)」


「いや、横に三台、縦に……五台でいけそうだな」


「「「「え……」」」」


「モ~? (横同士がぶつかったりしないの?)」


「大丈夫だ。カトレアが少し改造して、横にも連結できる馬車を持ってきた」


「モ~(ふ~ん。まぁご主人様とカトレアさんが言うんなら大丈夫か)」


 たぶんな。

 なんせぶっつけ本番だから。


「というわけで、馬車は十五台準備して、ウェルダンとメタリンの二匹で一気に引きます。一台の馬車には約十人ずつ乗ってください。トイレ用の馬車もありますが、移動中に行くのは危険ですので、一時間に一度小休憩を入れましょうか。そのときはユウナに封印結界を張ってもらいます。そして帝都で一度長い休憩を取ります。そこで食事をしましょうか」


「「「「……」」」」


「攻撃に自信がある人、特に魔道士の方は外側の馬車に乗ってください。横や上空から来る敵に御者席や馬車の中から攻撃をしてもらいます。そして最後方の三台の馬車の中からは後方から来る敵に対しても攻撃してもらいます。子供たちや、馬車での戦闘であまり力になれなさそうな人には中央の縦三台の馬車に乗ってもらってください」


 理解してくれてるよな?

 続けるぞ?


「そして前方中央の馬車にはリヴァーナさん、左と右にはユウナとシャルルにそれぞれ乗ってもらいます」


「え、私も攻撃するのです?」


「あぁ、これを使え」


「……新作の魔法杖なのです?」


「ララの火魔法が打てるぞ」


「「えっ!?」」


 ユウナとシャルルは驚いている。


「ララとカトレアの共作だ。しかも今までの魔法杖と違って壊れることもないと思う。本当はユウナがこの村に残ると言ったときに最後にこれをプレゼントしようと思って持ってきたんだけどな。出し惜しんでる余裕もなさそうだから使ってくれ」


「……ありがとうなのです。大事にするのです」


「これからも改良する予定だから大事にするんじゃなくてテストも兼ねてガンガン使え。……でも帰ったらローブは新しいの買ったほうがいいかもな」


「……このローブもロイスさんがくれた物なのに……ごめんなさいなのです」


「大事に着るのはいいが、消耗品なんだから仕方ない」


「見てユウナ! リヴァもこれロイス君に貰ったんだよ?」


「……私のやつのほうがいい素材使ってるのです」


「えっ!? そうなの!? いいなぁ~。というか見ただけでわかるの!?」


「私これでも一応従業員なのです。だからダンジョンストアの商品チェックは欠かさないのです。でもウチに来てる女性魔道士ならみんな詳しいかもなのです」


「出たダンジョンストア! リヴァも早く行きたい~!」


 それだけ期待が大きいとがっかりされそうでこわい……。


「で、話の続きですけど、リヴァーナさんは前方の敵を殲滅してください。さすがにもう人間が歩いてるなんてこともないでしょうし。魔物たちにも馬車に乗ってもらいますから」


「うん! みんなで魔法で攻撃って楽しそうだね!」


 ポジティブすぎるな……。

 まぁこれがリヴァーナさんのいいところか。

 おかげでユウナも元気になってきてるし。


「こんなところでしょうかね。なにか質問ありますか? いい作戦などがありましたらぜひ言ってほしいんですが」


「いや……勝手がわからなさすぎてな……」


「じゃあいつでもいいですからなにか気付いたら言ってくださいね。ではカーティスさんたちはみなさんに準備ができ次第一階に来るように言ってきてください」


「わかった」


「ユウナとルーナさんはシャルルたちの様子を確認してきてもらえますか? ジジイとリヴァーナさんとコンラッドさんは上で馬車の準備を手伝ってください」


 そして俺たちは一階へと移動した。

 ……壁もまだ大丈夫そうだな。


 まずは馬車を十五台出すか。

 横に三台、縦に五台、ピッタリくっ付けてと。


 ……なんだか魔道列車みたいになったな。


 馬車の横は隣と三か所連結して、馬車の後ろは御者席と連結して、と。


 ……うん、しっかり固定されたんじゃないか?

 これだけ横が近いと横にも入り口をつけたら走行中でも隣の馬車へ移動できそうだな。


「もうこれ馬車じゃないよね……」


「じゃがこれに人が乗るんじゃぞ? 本当に引けるのかのう……」


「これ全部ミスリルなのか……」


 ……確かに無理な気がしてきた。

 馬も連れてくるべきだったかも。


「モー! (カッコいい! なんかやる気出てきた!)」


「おっ? そうか? メタリンと力を合わせて頑張ってくれよ」


「モー! (うん! 休んでた分もしっかり働かないとね!)」


 ウェルダンがやる気になってるようだし、大丈夫な気がする。


「そうだ、リヴァーナさん、なんでユウナに助けに行ったのは自分だってこと言わなかったんですか?」


「……リヴァたちが着いたときね、ユウナたちは小さな封印結界の中にいたの。ユウナもシャルルちゃんも、ほかの村人たちもみんな泣きながらね。ビス君や村の人たちのことを悲しんでたんだと思う。それに結界の周りには敵がたくさんいたからね。まぁそれはすぐに倒したんだけど、シルバ君や馬車が来たのを見て安心したのか、ユウナはビス君を抱いたまま気を失っちゃったんだ。そんなユウナを見たら、楽しみ半分で助けに行ってた自分が嫌になっちゃった」


 そういうことか。


「本当は水晶玉を手に入れてこようと思ってたんだけどね」


 やはり討伐目的だったか……。

 ビスのことがあったとはいえ、ゲンさんもどこか物足りなさそうに帰ってきたもんな。


 でもリヴァーナさんのこの様子だと、シャルルともあまり話せてないっぽいな。


「シャルルも本当はもっとうるさいんですよ。黙ってるときがないってくらいずっと喋ってます」


「でもずっとユウナに寄り添ってたよ。お姉ちゃんみたいだったもん」


「同じパーティの仲間ですからね。家族よりもいっしょにいる時間が長くなる分、ある意味家族以上の存在になりますから」


「……リヴァでもなれるかな?」


「それはリヴァーナさん次第でしょう。自分を受け入れてもらう前に、まずはリヴァーナさんがみんなのことを受け入れることが大事だと思いますよ」


「……リヴァ、相手のことをあまり考えられないっぽいんだよね」


 それはまさかユウトさんとの件があったからそう言ってるのか?

 あれはユウトさんのほうが悪いと思う。

 って言えないのがもどかしい。

 王国に戻ったらさっさと片付けてほしいな……。


「む? 準備を終えた村人がやってきたようじゃのう」


 出発の時間は刻々と迫っている。


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