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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱

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第三百三十六話 物語の結末

「チュリー! (あっ! 出てきました! ルーナさん早く!)」


 ヤバい、吐き気が……。

 倒れる前に倒れておこう。

 目も瞑っておいたほうがいいか。


「チュリー! (ロイス君! 死んだらダメですよ!?)」


 勝手に殺すなよ……。


「チュリ? (あ、意識ありますね?)」


「頭の中がグルグルしてて吐きそうだからじっとしてるだけだよ」


「チュリリ(驚かさないでくださいよ……。あと数分出てこなかったら大樹のダンジョンに戻ろうとしてたんですからね?)」


「さすがだな。危うくそうしてもらわないといけなくなるところだった」


「チュリ!? (えっ!? なにがあったんですか!? やっぱり中でも倒れたんですか!?)」


「……少しだけ静かにしてもらっていいか?」


「チュリ(あ、すみません……)」


 この転移魔法陣は二度と誰も使わないほうがいいと思う。

 まぁもう中に入る意味はなにもないから大丈夫か。


「ピピちゃん、こういうときは優しくそっと寄り添ってあげるのが一番なんですよ?」


「チュリ(はい。ピッタリくっ付くことにします)」


 ……確かに暖かくて落ち着くけど。


「あら? なんだか指輪の光が強くなってませんか?」


 え?


 ……本当だ。

 ここが薄暗いからそう思うんじゃなくて、明らかに光が増してる。


 考えられることとしたら……あれしかないよな。


「先に言っておきますね。ローナさんは成仏しました」


「「「「えっ!?」」」」


 ん?

 ジジイやコンラッドさんもいたのか。


「どういうことだ!? 本当にこの部屋に入ったのか!?」


 この声は誰だ?

 あ、カーティスさんか。


 ……もう全て終わったんだからいいのか。


 ゆっくりと体を起こす。

 うん、大丈夫そうだ。


「ルーナさん、ありがとうございます。場所を移しましょうか」


「はい。ほら、みなさんでロイス君を支えてあげてください」


 ジジイとコンラッドさんに支えられながら、広場に移動した。


 村人の多くがこの広場に集まっているようだ。

 きっと不安なんだろう。

 でもその不安はこれからずっと続くんだぞ?

 大人はまだしも、子供に耐えられるのか?


「あっ、お兄ちゃん! ペンギンさんと子猫さん良い子にしてたよ!」


「ん? あ~、面倒見てくれてたんだね、ありがとう」


 ピピもジジイも魔物のお世話をこんな少女に任せるなよ……。

 少女になにかあったらどうするんだよ。


「それと美味しいご飯をありがとう! お昼のも美味しかったけど、夜のもすっごく美味しかったよ!」


「……そっか、お菓子も食べる?」


「うん!」


 ジジイを睨みながら、お菓子を手渡す。

 だがジジイは我関せずといった様子で知らんぷりしてる。

 ちゃっかり夜の分も袋から取ってたんだな……。


「あ、ほかの子供たちも呼んでもらえるかな? 飲み物もあるからさ」


「わかった!」


 それから五分ほど、お菓子とドリンクの配布が行われた。


 子供とは呼べない人たちも来たがまぁいいだろう。

 俺だって大人になってもお菓子食べまくりだからな。

 俺とルーナさんが配ってるのを横目にジジイはもう食べてたし。

 ってコンラッドさんやカーティスさんまで……。

 あ、ルーナさんも食べるのか。


「このお菓子や料理はウチの料理人たちが冒険者や避難者のために必死で作ってくれたんですからね?」


「わかっとる。でも美味いんじゃから仕方ないじゃろ」


「というか美味すぎないか? ダンジョン産の食材とは聞いたが」


「料理のプロが作ったって感じだな。ウチの村でも毎日こんな料理が食べられたらいいんだが……」


「魔力が豊富に含まれているらしいですよ。ユウナちゃんの魔力の増え方は尋常じゃなかったですからね。背も伸びてましたし」


 へぇ~、ユウナの背は伸びてたのか。

 毎日いっしょにいると気付かないもんだな。


「でもこれで終わりですからね? 明日からは元の食生活に戻さないと今後が大変ですよ」


「そうじゃぞ。ワシは王国でしっかり働いて好きなもんを腹いっぱい食べるけどな! ほっほっほ!」


「「「「……」」」」


 みんなに聞こえるように言うなよ……。


「はぁ~、でも働くってなにする気なんですか? 錬金術師として働くんですか?」


「いや、錬金術師はもういいんじゃ。カトレアちゃんみたいな若くて優秀な錬金術師が大勢いると聞かされたらやる気にもならんわい」


「大勢はいませんよ。スピカさんも入れたら四人だけです。だから一人一人にかかる負担が半端ないことになってて、俺は毎日みんなから不満言われて結構大変なんですって」


「ほっほっほ! 色々なことをやりすぎなんじゃよ。魔道列車に魔道カードに、町の宿屋もなにかしとるんじゃっけ? そのうえ大樹のダンジョンというメインのダンジョンがあるんじゃからのう」


「詳しいですね……」


「暇じゃったからララちゃんとエマちゃんに聞きまくったんじゃ。そんな面白そうなことばかり聞かされたら興味しか湧いてこんじゃろう?」


「屍村でみんなが大変なときに……」


 でも王国に行きたい気持ちはそれくらい本物だってことか。

 まぁこの程度じゃジジイのことは信用しないけどな。


「ワシが今考えておる働き先はの、駅での魔道カード発行業務か、大樹のダンジョンでのパーティ酒場のマスターじゃ」


 そこまで考えてるのか。

 というかウチの仕事のことにまで詳しすぎるだろ……。

 ララとエマには厳重注意する必要があるな。


 ジジイ以外の三人は話の内容がわからなくてキョトンとしちゃってるじゃないか。


「王国にはの、町と町の間をダンジョンで繋いで、そのダンジョンの中を走る魔道列車という乗り物があるんじゃよ。例えばこのユウシャ村から帝都までの距離くらいだと……二時間もあれば行けるかの?」


「「「「二時間!?」」」」


「ロイス君が管理人のダンジョンじゃから安全じゃぞ? 馬車よりも快適じゃぞ? しかも安いんじゃ」


 この距離だと二時間もかからなくないか?

 

 地図を取り出し、ユウシャ村と帝都の位置を確認する。


 う~ん、マルセールとビール村間よりは距離があるな。

 乗合馬車だと六~七時間くらい、いやもっとかかるかもしれないから二時間でも驚くのか。


「この距離なら五十分ってところじゃないでしょうか」


「「「「五十分」」」」


 ふふっ、凄いだろ?

 って別に驚いてほしくて言ったわけじゃないからな?

 ジジイが適当な情報を流すから訂正しただけだ。


 ふと気付けば広場にいた村のみんなが近くに集まってきてる……。

 でもあまり聞かないほうがいいぞ。

 この村の現実とは少しかけ離れすぎてるかもしれないからな。


「ロイス君、そろそろあのお話を」


「え、さすがに人多すぎません?」


「いいんですよ。もう隠し事は終わりです」


「……わかりました」


 魔道列車の話をしたあとに大魔道士ローナ物語は少しギャップがありすぎるんじゃないかな……。


「先にルーナさんたちだけに伝えられてきた話をしてもらえませんか?」


「……その言い伝えの伝わり方にも関係があるということですね? わかりました。ではまず私から……」


 そしてルーナさんたち子孫に伝承されている、開かずの扉と部屋に関しての話がされた。

 ジジイがその話を知っていたのは、おそらく子孫だけじゃなく村長にも伝えるという方針があったからだろうな。

 もっと子孫が大勢いてもよさそうなものだけど、子孫全員に伝えるという話でもないのかもしれない。

 現勇者もまだ知らないみたいだし。


 みんなのこの驚きようを見ていると、本当になにも知らなかったように思える。

 なんやかんや実は全員知ってるけど知らないフリしてるだけかと思ったりもしたんだが、どうやら違うようだな。


「……そして三百年のときを経て、ここにいるロイス君がこのユウシャ村にやってきました。しかもなんと、開かずの扉の転移魔法陣を通り、奥の部屋に入ることに成功したんです」


「「「「……」」」」


 どういう感情で俺を見てるんだろう?

 コイツいい人だと思っていたのに、実は悪人の子孫だったのかって感じか?


 ……なにも反応がないな。

 さっきよりさらに人が増えてるのに。

 というか村人全員集まってきてないか?


「ではここからはロイス君、お願いします」


 ……小型拡声魔道具で話すか。

 音量を最小にすれば一階の魔物に気付かれることもないだろう。


「はい。まず最初に断っておきますけど、俺は今のルーナさんの話に出てきた王国出身の大魔道士と魔物使いの子孫なんだと思います。思いますというのは、俺もここに来て初めて知ったことなので、誰にも確認ができていないからです。ですがみなさんは俺をその二人の子孫だと確信付けて話を聞いてください。今からする話の八割方は俺の推測が混じってますので、嘘をついてると思われても仕方ないですから。では始めます」


 そして大魔道士ローナ物語を、序章から最終章まで一気に話し終えた。


 時間にして約三十分ほどだっただろうか。

 みんな真剣に聞いてくれていたように思う。

 意外にも子供たちも黙って最後まで聞いてくれた。

 勇者が死んだあたりからは涙を流す人もいた。

 最高潮は最後にローナさんが成仏したあたりだろうか。

 みんなは俺の指輪にも注目している。


「推測というか妄想ですからね? 今となってはあの部屋の中にローナさんが火の玉の姿でいたことも俺しか知りませんしね。虚言癖があるヤバいやつと思ってくれてもいいんですよ?」


 今の話が真実として後世に伝わっていってもいいものだろうか。

 誰か一人くらい異論を唱えてくれないと不安になるな。


「ロイス君、私は信じますよ。大魔道士ローナの子孫として、お礼を言わせてください。真相を見つけていただき、ありがとうございました」


 ルーナさんの目からは涙が流れているものの、とても穏やかな表情をしている。


「それとロイス君、ユウシャ村では全員が知っている言い伝えがもう一つあるんですよ


「話の内容を覆すようなことじゃないでしょうね?」


「ふふっ、その言い伝えはですね……仲間は大樹にいる、というものです」


 え、それって…………そうか、そういうことだったのか。


 単に大樹のダンジョンに行けばパーティメンバーが見つかるっていうものかと思ってたら、もっと深い意味があったんだな。

 当時の村長が裏メッセージとして伝えたんだろうか?


 ……いや、娘だな。


 娘はきっと大樹に行って真相を聞いたんだろう。

 そのうち大樹のダンジョンができて、二つの意味を込めてユウシャ村の人々に伝えたんだろうな。

 ローナさんたちからすれば、それをどう受け取ったらいいのかずっと困惑してたんじゃないのか?


「はぁ、一番のオチをローナさんに伝えられなかったじゃないですか」


「ふふっ、いいんですよ。みんなにはしっかりと伝わりましたから」


 ……確かに。

 きれいにまとまったおかげか、さっきより涙してる人が増えた気がする……。


 でも何回も言うけど、これ全部俺の妄想だからな?


 ……まぁいいか。

 それより本を確認してみるとしよう。


 ん?

 なんだ今の音?

 それに振動も感じなかったか?


 ……いよいよこの地下も安泰ではなくなってきたのかもしれない。


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