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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱

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第三百三十四話 ローナへの報告

 再び大魔道士ローナの作業部屋にやってきた。


 すぐにスピカポーションを飲む準備はしてたのだが、今度は特に眩暈などが起きることはなかった。

 一度目に入ったときもなにも感じた覚えはなかったから、もしかすると部屋に入る際に関しては転移魔法陣の影響はないのかもしれない。


 そして俺とルーナさん、少しだけジジイの、推測と妄想を話した。

 といっても勇者と娘さんのことを話しただけで、魔法実験のその後に関する話はほぼ省いたけど。


「うぅ……」


 今度はなんで泣いてるんだ?

 娘が立派な勇者になって嬉しかったのか?

 立派かどうかまではわからないけどな。


 それとも勇者の最期が悲しくて泣いてるのか?

 俺たちの現時点での推測では、疲労の果てに屍村で力尽きたんだろうということになったのでそれを伝えたが、本当にそうだったかどうかは誰にもわからない。

 言い伝え通り、人生に絶望して死んだのかもしれないしな。


 とりあえず俺はこの部屋にある本を全てレア袋に詰めることにした。

 もう俺がここに来ることはないからな。

 本の内容についてはルーナさんに確認してもらうことになってる。

 そのうえで俺が持っていってもいい本だけ貰うことになった。


 俺の作業が終わるころに、ローナさんも少し落ち着いたようだ。


「私の子孫が私のこと考えてくれたんですね……ぐすっ」


 現代に子孫がいたということが嬉しかったのか。


「ルーナさんもローナさんに会いたがっていたのですが、ご高齢ですから転移魔法陣の負担を考えるとみんなが許可してくれなかったんです」


「そうでしたか……でも私が失敗したせいですから仕方ありませんよね。なのにロイス君はまた来てくれて凄く嬉しいです。どうかお身体にはお気をつけてください……」


「部屋の外ではルーナさんが待機してくれてますから次は大丈夫だと思います。ほかになにか聞きたいことありませんか? この部屋に入るために必要な指輪はこの村に置いていきますから、俺以外にならまた聞くことはできるかもしれませんけどね」


「えぇっ!? ロイス君はもうここには来ないってことですか!? 村を出るんですか!?」


「はい。仲間が魔工ダンジョンから戻り次第、俺はこの村を出発することになります。実は結構もう外がヤバいんですよ。この村の一階……ここは地下ですけど、一階にも魔物が侵入してきてるんです。それも結構手ごわそうなのが」


「そんな……村の人たちは大丈夫なのですか?」


「地下は濃いマナが守ってくれてるみたいですからね。もしかしたらこの部屋からマナが溢れ出てるのかもしれません。ローナさんの旦那さんがここを地下にしてくれたことに感謝しないとですね」


「……あの人は不器用な人でした。でもどんなときでも仲間や村の人たちのことを最優先で考え行動してたんです。それこそ妻の私のことなんてほったらかしにしてもですよ。私はそんな夫のことが大好きでしたけどね」


 でもローナさんがここに閉じこめられたとわかったら、その後はローナさんのために奔走したんだよな。

 泣かせる話じゃないか。


「だからあの人が私のために身を粉にした挙句に無理がたたって死んでいったとの話ならある程度理解はできます。ただ先ほどのロイス君の話の中で一つだけ凄く気になることがあるんです」


「気になること? しかも凄くですか?」


「はい。夫が死んだ場所についてです」


「今の屍村がある場所ということですか?」


「そうです。私が知る限り、その場所は……帝国魔道士の魔法実験場でした」


「え……」


 帝国魔道士の魔法実験場だと?

 そんな話初めて聞いたぞ……。


「そこでは帝国魔道士による魔法の研究や魔法訓練が行われていました。私も行ったことがありますし、もちろん私の仲間たちも。でも先ほどのロイス君の話では、なにもない土地に夫や仲間たちが地下実験場を作ったと言いましたよね?」


「えぇ、本来の言い伝えだと勇者が一人で地下空間を作ったと言われてるらしいです。俺は地下に入ったことありませんが、仲間や屍村の住人から聞くに、普通の住居用の部屋がいっぱいあるらしいですよ。地上にはダミーの小さなテントがあるだけでしたから」


「私が行ったときには大きな建物がいくつかあったんですけどね。確か地下なんてのもなかったはずです。だから先ほどはその建物の地下に作ったんだと思い込んでしまいました。転移魔法陣の研究をしたんだと聞いても、研究設備があるあの場所なら一番適してるだろうなって思ってしまいましたし。でもそれなら夫が一人で死んでいたところを発見されたという伝わり方はなにかおかしいですよね」


 確かに……。

 仲間である俺の先祖たちはいなくても、帝国魔道士たちがいなきゃおかしいもんな。


「それにあの場所が魔法実験場だということは一般的には知られていませんでした。まぁ資料などが山ほどある以上、知られたら困るからでしょうけど。私は魔法の指導をしてほしいと言われたから行ったんです。勇者手当をもらっていたので断りづらい面もありましたしね」


 そんな場所がなにもない屍村になったりするのか?


「あの……俺たちは旦那さんが亡くなったあとのことも色々推測したんですけど聞いてもらえますか? なにもない土地で、三人でのみ実験してたという前提ですけど」


 それから全ての推測を話した。

 現マーロイ城には魔法研究施設があるということも含めて。


 そしてしばし無言の時間が流れた。

 俺もローナさんも考えることに集中できたと思う。


 そして俺の中ではある結論……推測が生まれた。


「どうします? 俺から言います?」


「私の推測を超えられますか? かなり過激なこと考えましたよ?」


「俺も負けてませんよ。というか今の王国と帝国の関係を知ってる分、俺のほうが有利じゃないですか?」


「なんですかそれ!? 王国と帝国は仲が悪いとでも言うのですか!?」


「あ、正解です。関係は最悪らしいです」


「えぇっ!? じゃあちょっと待ってください! あと五分くださいね!」


「ちなみに帝国がこんな状況になって、大樹のダンジョンの冒険者たちが助けにくると知ったときの皇帝の受け答えを知りたくないですか?」


「う~、ではそれだけ教えてください!」


「いいでしょう。……王国の助けなんかいらない。王国の冒険者は帝国内に立ち入ることを禁ずる。……みたいな感じでしたね。ベネットの港に着くなり騎士たちが寄ってきて、船から降りることすらできなかったんですよ」


「最低ですね……。昔は交易も盛んだったのに……」


「あ、そういえば帝国の物価って王国に比べて桁違いに高いらしいですよ。だから帝国内は貧富の差が極端に激しいらしいです」


「よくこんな酷い国に住んでますね……って少しお待ちくださいね! いい案が浮かびそうです! う~ん……」


 案じゃなくて推測な。

 ってやっぱり妄想という言葉のほうが当てはまる気がするな。

 おそらく俺とローナさんの妄想は似たようなものになるだろう。


「できました! 私から言わせてください!」


「いいですよ。ではどうぞ」


 少し緊張するな。


「ふふっ、その前にですね、私もロイス君に言ってなかったことがあるんですよ」


 あ、このタイミングでそれはズルい……。


「実はですね、転移魔法陣の資料はこの部屋にあります」


「……は?」


「私に転移魔法陣なんていう代物を思いつくことはできません。私は資料に書いてあることをマネしただけです。でも未熟な私が成功するはずなんてなかったんですよ……うぅ……」


「……つまり転移魔法陣の魔法を開発したのは俺の先祖ってことですか?」


「そうです。本当はこの部屋の転移魔法陣も彼女が設定してくれる予定でした。部屋を作ってくれたのも彼女ですし。でも彼女は完成間際になってまだなにかの素材が足りないと言ってしばらくこの村を離れました。ですが私は待ちきれなくなったんです……そして彼女が作成した資料を見ながら転移魔法陣を自ら設定して……うぅ……私が愚かでした……」


 同情の余地がないほど完全に自業自得じゃないか……。

 むしろ俺の先祖は被害者といっていいだろう。

 部屋を作ったせいで犯人扱いされることになったんだろうからな。


 もしかして勇者と言い争ってたっていうのは案外本当なんじゃないか?

 なんで私がいない間に勝手に転移魔法陣を使わせたのよ!?

 とか言ってたりしてな。


「だからもしロイス君がその転移魔法陣の資料目当てに帝都に行こうとしてるのなら行かなくていいです。大樹のダンジョンにも資料がないのなら、おそらく彼女は資料を残さなかったのでしょう。私のような被害者を出さないために」


 被害者面してるけど自業自得だからな?


「でもここにある資料が完全なものだとは限りませんので、ロイス君のお仲間の錬金術師さんに精査してもらってくださいね? あの子もまだちゃんと本にはしてなかったみたいですし」


「わかりました。それとずっと聞こうと思ってたんですけど、ローナさんのお仲間さんのお名前を教えてもらってもいいですか? 勇者とか先祖って言うのもなんだか変な気がして」


「……思い出せないんです」


「え?」


「仲間の顔も名前も気付いたら思い出せなくなってたんです。もちろん夫や娘のこともです。自分の顔すらどんな顔かも思い出せません……」


 ローナさんのこと初めて可哀想と思ったかも。


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