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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
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第三百三十三話 さらなる妄想

 階段に僅かだけ開けておいた隙間から村人たちが覗いている。

 どうやら村の入り口が派手に破壊されたようだ。


「なんだあれは……」


「見たことない魔物だが……でもよく見たらゴブリンに見えないか?」


 ゴブリンだと?

 あの速くなったバージョンのやつか?


「ロイス君、あの魔物見たことあるか?」


 後ろにいた俺に訊ねてくる。

 どれどれ…………ん?


「確かにゴブリンに似てますね。でもなんだか……機械っぽくありません?」


「だよな……差し詰めメカゴブリンってところか? あんな魔物もいるんだな……」


 メカゴブリン、いいネーミングセンスだ。


「でもメカとはいえゴブリンに入り口を破壊するほどの力があるんですかね? 数の暴力ってやつかもしれませんが」


「……いや、どうやらあいつのようだ」


 あいつ?


 ……え?

 あれはトロルか?

 いや、メカトロルと呼んだほうがいいか。

 通常のトロルより強いとしたらヤバいな。

 というか見るからに強そうだ……。


「全部の通路を塞いでおいて正解だったな……」


「行き止まりと思って帰ってくれたらいいんだが……」


 あんなのと戦うの無理だって……。

 剣で斬れるのかな……。


 ゲンさんやジジイはあのメカ系の魔物にも詳しいのだろうか?

 もし知らないとしたら、魔王が新種の魔物を開発してきたってことになるよな?

 メカだから開発って言葉がピッタリだ。


「戻りましょう。暴れる様子はなさそうですし」


 そして広場に戻ってきて、みんなに報告をした。

 早々と一階広場が占拠された状況にみんなは絶句している。

 それと同時に地下に避難していて正解だったと胸を撫でおろしていることだろう。


「う~む。新種のような気がするのう」


 やはりそうなのか。

 魔王はダンジョンだけじゃなく魔物生成にも力を入れるようになったのか。

 もしかして余裕なのか?

 それともダンジョン生成に飽きたのか?


 どちらにしても楽しんでることは間違いないだろうな。

 俺だって自由に魔物を作れるものなら作ってみたい。

 ……ドラシーに頼んだらできるかもしれないな。


「一匹倒してダンジョンに持ち帰りたいよな」


「チュリ(私には無理ですよ? なんだか最近力の限界を感じてきてますから)」


「もう強くなれないってことか?」


「チュリ(おそらくですけどね。その分シルバたちに強くなってもらいましょう)」


「俺が弱いせいかもな」


「チュリ(それは関係ないんじゃないですか? 私の身体的な問題だと思いますよ。ドラシーさんが言ってたのは、ダンジョンに配置できる魔物の強さに関係してるって話だったでしょう?)」


「そうだといいんだけど。って良くないのか。このままじゃCランク以上の魔物を配置できないかもしれない」


「チュリ(試してもないのにいつも不安がるのはやめてください。とりあえずメカトロルやメカゴブリンの魔石はシルバたちがゲットしてくれるでしょうから安心していいですよ)」


 試そうとする気はあるんだけど、自分の限界がわかると思うとこわくて試せないんだよ。

 地下五階に配置予定のDランク程度なら大丈夫だったんだけどな。

 この防具の素材に使われてるマグマドラゴンもDランクだし。


 まぁ地下五階は一年くらいは持つよな?

 そう考えたら少し楽になった気がする。

 地下四階すらまだまだ大丈夫そうだし。


「チュリ(あ、悪い顔してますね? 王国に帰るなり、リヴァちゃんにあっさり地下四階クリアされたらどうします?)」


「そうだ……今度はリヴァーナさんがいるんだな……」


 でもどのパーティに入る気なんだ?

 もしユウナがいっしょに行くって言うんならシャルルと三人パーティになりそうだが。

 ヒューゴさんたちのパーティに入られたらヤバいな。


 ……って強いパーティができることはいいことだよな。

 簡単にクリアされたら悔しいって思ってしまったじゃないか。


 ……いや、違うな。

 悔しいというより、次をすぐに考えないといけなくなるから俺がのんびりできなくなるって思ってしまった……。


「俺も限界かもしれない……」


「チュリ? (限界ってなにがですか?)」


「ダンジョン管理人がだよ」


「チュリリ(怒りましょうか?)」


「いや、いい」


 冗談に決まってるじゃないか。


「それはそうとウェルダンのやつ、いつ起きるんだろうな」


「……チュリ(もう起きなかったりして)」


「怒るぞ?」


「チュリ(冗談に決まってるじゃないですか。お腹も空いてるでしょうし、もうすぐ起きると思いますよ)」


 そういやなにも食べてなかったのか?

 大好物の牧草を置いたら起きるかもしれないな。


「のうロイス君、やっぱりユウナちゃんたちが帰ってきたらすぐに出発せんか?」


「え、もう外は真っ暗ですよ?」


「そうなんじゃが、少し寄りたいところができてのう」


「寄りたいところ? どこです?」


「……マーロイ城じゃ」


「え、またですか?」


「気になることがあるんじゃよ。屍村の魔法実験に関わることじゃ」


 う~ん、それを言われたら俺も気になっちゃうじゃないか。


 さっきルーナさんとの会話において、転移魔法陣の資料は屍村にある可能性は低いと判断した。

 もし屍村に隠し部屋があったとしても、勇者が死んだあとに俺の先祖たちが持っていってるはずだから、その場合は大樹のダンジョンにある可能性が高いと考えたんだ。

 大樹のダンジョンはそのあとにできてるはずだしな。


 一応ジジイにも魔法実験の痕跡や隠し部屋について確認したが、予想通りの答えだったし。


 大樹のダンジョンにあるとしたら俺が住んでる家の地下室にあるとしか思えない。

 でもその地下室にある本や資料ならカトレアもスピカさんも知ってるはずだから、その可能性は低いと思われる。


 となると一番濃厚な線は、勇者が死んでるのを発見した人間たちに痕跡を消され、資料は全て持ち去られたということだ。

 まぁ最初から資料なんてなにも残ってなかったということも考えられるだろうけどな。

 ウチでは転移魔法陣が普通に使われてるんだから資料なんてなくても大丈夫だったってことだし。


 でも皇帝が屍村には立ち入らないようにとお触れを出してることから、皇帝はなにかしらの情報は握っていたと思われる。

 単に勇者が魔法の修行をしてただけかもしれないのに、そこまでする必要はないだろうからな。

 ただでさえあんななにもない場所に誰も行かないだろうし。


 おそらく痕跡を消すのに少し時間がかかったんだと思う。

 帝国に伝わってる話では、勇者が地中に広い空間を作っていたということだけだ。

 俺とルーナさんは、この村の開かずの部屋を再現するために少なくとも大樹の森から木をたくさん持ってきてたはずと考えたのに、なにもないただの広い空間だったということは考えにくい。

 となるとやはり一番怪しいのは皇帝周りということになる。


 皇帝周りじゃないとすると、転移魔法陣という魔法の凄さに気付いた魔道士や錬金術師ってことも考えられるか。

 その人たちが皇帝に、あの場所では危険な魔法実験が行われてましたので近付かないようにって伝えたら皇帝も納得してしまうかもしれない。

 その場合、皇帝はただのいい人になるけどな。


 ……そっちのほうが濃厚な気もしてきたな。


 もしくは転移魔法陣の存在を誰も全く理解できてなくて、とりあえず危険そうだから痕跡を消しておこうってだけだったとか。


 現在の帝国で転移魔法陣が多く使われているのならともかく、使われてる様子は全くなさそうだから、結局真相は闇の中なんだよな。


 まぁこうやって考えるだけでも楽しかったからいいんだけどさ。


「続きいいかの?」


 俺が考えてる間待っててくれたのか。

 ジジイにしては気が利くじゃないか。


「帝都やこの国を防衛するために働いておるのは騎士だけじゃないんじゃよ」


「え? ほかにいるとなると……冒険者ってことですか?」


「いや、魔道士じゃよ」


「魔道士!?」


「そうじゃ。帝国騎士と同格で帝国魔道士という職があるんじゃ」


「えっ!? 同格!? 騎士がいっぱいいたように、魔道士もいっぱいいるってことですか!? 冒険者の魔道士じゃなくて!?」


「そうじゃ。ってどうしたんじゃそんなに興奮して……王国には王国魔道士みたいなのがいないんじゃっけ?」


 えっと、つまりどういうことだ?

 今俺が考えてた推測を繋げることができるような気もするんだけど……。


「でもなぜ今その帝国魔道士の話になったんですっけ?」


「今朝方、騎士たちはたくさん集まってきたじゃろ? でも今思えば魔道士たちはほんの一部しか来んかったんじゃ」


「え? ……城に残ったってことですか?」


「騎士たちのように揃った装備を着てるわけじゃないから確かではないんじゃがの。あ、騎士隊長の息子も帝国魔道士なんじゃよ。しかも屍村の守りに参加してくれておるんじゃ」


「へぇ~」


「帝国魔道士には2タイプおっての、一つは騎士と同じように町や人々の護衛、もう一つは……魔法の研究開発じゃ」


「え…………どんな魔法を研究してるんですか?」


「それはわからん。ワシも勇者を辞めるときに帝国魔道士に誘われたんじゃが、たいした魅力を感じんかったからすぐ断ったんじゃ。でもマーロイ城には帝国魔道士専用の研究施設があるんじゃよ」


「……まさか転移魔法陣を研究してたりしませんよね?」


「そこじゃよ。その誘われたときに一度だけ研究施設に入って色々紹介されたんじゃが、とある一室が不思議な魔力で溢れておった。もしあれがマナじゃったとすると……」


「屍村の地下にあった環境を持ってきたかもしれないってことですよね?」


「そうじゃ。あのときのワシはまだ開かずの部屋のことを聞いておらんかったから特になにも思ったりはせんかった。まぁ話を聞いたあとでもなにも思わんかった可能性のほうが高いんじゃがの」


 俺の推測に出てきた皇帝と魔道士がグルだった可能性があるってことか。


「でもジジイの話は三十年も前の話ってことですよね? それならいまだに成果が全く出てないことになりますけど。というか三百年もの間って考えたほうがいいですよね……」


「おそらく転移魔法陣は諦めたんじゃなかろうか。でも資料がある可能性は高いじゃろ?」


 確かにその可能性は高い。

 もしあるのなら欲しい。

 是が非でも欲しい。

 例えなかったとしても、確認せずにはいられない。

 あ、でも非人道的なことをしてまで欲しいとは思わないからな?


「……行くしかないですね」


「じゃろ? じゃがワシはそれとは別にも気になることがあっての」


「別?」


「さっき話に出てきた騎士隊長スタンリーの息子の魔道士のことなんじゃがの、どうやらかなりの本を読んでおったらしくての。ララちゃんの封印結界を見て、上級の封印魔法だとか言いおったし。ということはじゃの、少なくとも研究施設には封印魔法に関する本はあるということじゃ」


「あれ上級魔法なんですか……ってそれは置いといて、それなら帝国魔道士の中には封印魔法が使える人がいてもおかしくないってことですよね?」


「そういうことじゃ。じゃからこそ、なぜ帝都やこの国をその魔法で守ろうとせんかが疑問なんじゃ」


 単純に実力不足で少しの範囲しか守れないってところじゃないのか?

 あ、でもそれならマナが溢れた部屋で封印魔法を使えば皇帝だけは確実に守ることができるって考え方もできるか。


 ……なんかヤバいことに首を突っ込むようなことにはならないでくれよ。


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