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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第二章 大樹のために
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第三十三話 素材ドロップ

 冒険者カード、採集袋改良に続き、新システムとなる素材ドロップの導入を発表した。


 案の定、冒険者たちはきょとんとしている。

 自由に素材を得ることができなくなることへの不満か、それともドロップという言葉にピンときていないのか。


「素材ドロップとは、魔物を倒した後に、一定の確率で魔物が素材を落とすといったシステムになっております。これまでは魔物を倒した後に欲しい素材を欲しいだけ取ることができていたと思いますが、今後は魔物を倒すと魔石だけを採集袋が収集し、残骸に関しては目の前から即座に消えることになります。この際、運が良ければ素材を落とす、つまりそれをドロップといいます」


「「「「……」」」」


 マズいかもしれない。

 おそらくほとんどついてこれてないな。


「例えば、これまでは地下一階のダークラビットを倒した後に毛皮をはぎ取っていた方も多いと思います。これができなくなる代わりに、一定の確率によってこの毛皮のみがきれいな状態でその場にドロップします。ただし、このドロップした素材に関してはご自身で拾っていただかなければなりません。ドロップしてから一定時間放置されますと、その場から消えますのでいらない場合以外はお早目にお取りください。そして、このドロップ素材は落ちたときにはタグによる魔力で状態保存がかかっております」


 ついに無反応になってしまった。

 みんな目が点になってるよ。


「ここで先ほど説明した採集袋が出てきます。そのドロップ素材は袋に入れることができ、その際にタグが外れます。タグが外れても当然袋の中では状態保存がかかります。そして袋から出すと状態保存がかからない状態となりますので、手に入れた素材はダンジョン内では袋の中に入れておいてください」


 ……これ以上進むのはやめたほうがいいな。


「ではここで、素材ドロップについてのみ質問を受けつけたいと思いますがいかがでしょうか?」


「「「「……」」」」


 どんな些細なことでもいいから質問してほしい……


「……いいかしら?」


「あっ、ではティアリスさんどうぞ!」


「一定確率というのはどのくらいなの?」


「通常アイテムのドロップ率は5%で設定しています。なので二十回戦って一回落ちればいいほうですね」


「5%? 低くない?」


「数字を聞くとそう思うかもしれませんが、慣れると意外にそうは感じなくなると思いますよ? それにダークラビットの毛皮の相場が下がっているのはご存じでしょう? 簡単に取れすぎるというのもどこかで弊害があるんです」


「それは確かにそうね。素材をきれいにはぎ取るにはきれいに倒さないといけないし、その後の処理も大変だもんね。その時間を使ってどんどん倒していったほうがレベル上げにもいいし、運が良ければきれいな状態の物が手に入るという解釈でいいのかな?」


「まさにその通りです。それに加えてなぜこのタイミングで導入したかを考えてもらえませんか?」


「……地下三階に取れすぎると相場を壊しかねない素材を持つ魔物がいるということね?」


「お見事です! その素材に比べればダークラビットの毛皮なんてお安いものですよ。それにいっぱい倒せばその分いっぱい魔石が手に入るから悪いことではないでしょう? 素材ドロップはおまけだと思っていただきたいのです」


「おまけか。そうね、私たちは強くなるためにここに来てるんだったわね」


「そうです。魔物が支配するダンジョンに行って素材を拾う余裕があると思いますか? 魔物はその隙をついてきますよ。ウチのダンジョンはぬるいんです。でもそれは悪いことではないんです」


「どういうこと?」


「みなさん強くなってる実感はありますよね? 例えその目的が毎日のお金のためであってもここでは敵と戦わずには稼げないですからね。だからこれからもドロップ素材を目的に戦っていただくことは大いにけっこうだと思います。強さに近道はありませんが、確実に強くなっていける道筋を用意することはできると思ってます。それがウチの、大樹のダンジョンなんです!」


 あれ?

 俺なに言ってるんだろ?

 途中から変な話にならなかったか?

 なんで俺はダンジョンについて語ってるんだ?

 これをみんなはどんな思いで聞いていたんだろう?

 かなり恥ずかしいやつではないか……。


 ……え?

 ちょっと待って、そこのジョアンさん、なんで泣いてるの?

 いやいや、もしかしてみんな俺の言葉を真剣に聞いてしまって、なぜか心に響いちゃった感じ?

 なに言ったか覚えてないくらい適当に思いついたことを言っただけだからね?


「えーっと、つまりですね、素材ドロップに関しましては、魔物をいっぱい倒すとそのうちいいアイテムを落としてくれるから、欲しい素材があればなにも考えずに倒しまくれってことです!」


「「「「うおぉぉぉ!!」」」」


 まるでおたけびだ。

 まぁ理解してくれたんなら良かった。


「どうしますか? ドロップ素材の一部をお教えしましょうか? それともご自身でお探しになられますか? ちなみに魔物によっては通常ドロップの素材に加えてレアドロップ素材という物を落とす魔物もご用意しております」


「レアドロップ素材だって!?」


「俺が一番にゲットしてやるぜ!」


「凄い!」


 ほら、やっぱりゲーム性があって楽しみになってきたでしょ?

 これはきっとレア素材が落ちるまで延々と敵を倒しまくるパターンだな。

 地下三階にずっといてもらって魔物の循環も良くなればドラシーの魔力も溜まりやすくなるだろうしな。


「あっ、一つ言い忘れてましたが、地下三階からは通常エリアの魔物もあちらから攻撃してきますのでお気をつけください。もちろんHPの色が変わった後も攻撃してきます。ドロップ素材の関係があるのでそのあたりはご了承ください」


「「「「え……」」」」


 冒険者たちの顔が凍り付いた。

 そんなになにもかも甘いわけないでしょ?

 相場を崩しかねないって言ってるんだから多少のリスクはあるに決まってる。


「では素材ドロップについてはこれくらいにしまして、次に新エリアとなるBBQエリアについてご説明いたします」


「「「「BBQだって!?」」」」


「「「「なんだBBQって?」」」」


 ふふふ、BBQって言ってみたかったんだ。

 ダンジョン内では準備も簡単、誰でもお手軽に楽しめるんだ!

 さっきのことはもう忘れたようだな。


「BBQとはバーベキューの略称でございます。つまりその名の通りBBQが楽しめるエリアとなっております」


「「「「おお!?」」」」


「今日はそこで昼食にしようぜ!」


「凄い!」


 これで少し感のいい人ならドロップ素材についても検討がつくだろう。

 ただし、フィールドは行ってのお楽しみだけどね。


「このエリアにはBBQセットが設置されており、誰でもご利用が可能です。ただし、食材はございませんのでそれはご自身でご用意してくださいね。火をつける手段がない方は近くにアンゴララビットが待機しておりますのでそちらにお声がけください。食べ終わったあとはそのまま放置で構いません」


「なんの準備も片付けもいらず俺たちは焼いて食べるだけでいいってこと?」


「本当にいいのかな?」


「片付けくらいしないとアンゴララビットに悪くない?」


「凄い!」


 だがそんな甘いだけの話はないぞ?


「何点か注意がございます。このエリアは敵こそ出ませんが、体力の吸収は続いております。それに転移魔法陣はございません。大樹の水はありますのでそれはご自由にお飲みください」


「なるほど、休憩エリアのように長居はできないってことだな」


「緊張感があっていいね」


 まぁこのBBQエリアはただのおまけだから特に言うことはない。

 ドロップした食材をすぐ食べたくなる人もいるだろうと思って最後に付け足した程度のエリアだからな。


「さて、これで新要素についての説明は終了となりますが、ご質問はございますでしょうか? あとからでも構いませんので気軽にお声がけください」


「あのー、いいですか?」


「はい、なんでしょうか?」


「その小屋の前にあるのはなんですか?」


「あぁそちらですか。こちらはダンジョンのシステムとはいっさい関係ないので、興味ある方だけ聞いていただけますか」


 利益目的じゃないと念を押しとかないとな。

 別に買わなくても構わないんだからな。

 フリじゃないからな。


「こちら自動販売魔道具といいまして、ポーションなどを販売する魔道具となっております。このようにお金を入れて、光ったボタンを押すと……一瞬にしてポーションが出てきます。他にも多数商品はございまして、簡単にご紹介させていただきますが、ポーション20G、解毒ポーション30G、エーテル40G、大樹サイダーが10Gとなっておりますので必要な方はお気軽にご購入下さいませ。なお、この魔道具はここと、あと各階の休憩エリアに設置してますのでそちらもご利用ください」


 ……え?

 驚かないの?

 カトレアの力作だよ?

 驚いてくれないとカトレアちゃん泣いちゃうよ?


「「「「……」」」」


 ……もしかして驚きすぎて声が出ないってやつかな?


 あっ、誰か近づいてきたぞ……無言でお金入れたー、ポーションのボタン押したー、出てきたー、喜んだー!


「……おー! なんだこれ! すげぇ!」


「というかポーション20G!? 解毒ポーション30G!?」


「エーテルまで売ってるぞ!? 魔道士大助かりじゃね!? しかも40G!」


「なんだよこの大樹サイダーって!? 飲んでみてぇー、しかも10Gだって!?」


「凄い!」


 そうだろそうだろ?

 あっ、みんなの叫び声でカトレアが目を覚ました!

 しかし、状況が呑み込めてないようだ可哀想に。


「ではみなさん、この後受付を開始しますので、説明を聞かれた方はこちらにお並びください。説明の途中からいらっしゃった方や、もう一度聞きたい方などはこちらへ集まっていただけますか? ダンジョンは逃げませんので焦らないでも大丈夫ですよ」


 いよいよ地下三階のオープンだ。


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