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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
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第三百二十九話 ローナ問題、解決

 結局三人には俺の口から大魔道士ローナ物語を話すことになった。


「……というわけです。信じなくても構いませんが、部屋の中に入れば教えてもらえますよ。人恋しそうにしてましたから喜ぶんじゃないでしょうか」


「「「……」」」


 あの部屋での会話を全て話した。

 俺が上級浄化魔法について知りたがっていたことも含めて。


 さて、大魔道士ローナ様ともあろう者が設定ミスで自滅したなんてことを信じられるのか?


「スッキリしたのう~」


「はい。なにもかも合点がいきましたね」


「誰にも迷惑かけなさそうだから村のみんなに公表してもいいかもな」


 少しは疑えよ……。


 ずっと秘密を抱えてきたことが重圧だったのかもしれないな。

 ジジイなんてそのために錬金術師になったり、屍村に住んだり、大樹のダンジョンまで行ったりしたんだから。


「ルーナさん、ローナさんは自分の娘がその後どうなったのかを聞きたがってます。子孫のあなたから話されてはいかがですか?」


「こら、ルーナはもう年なんじゃからなにかあったらどうするんじゃ?」


「そうだ。ロイス君が転移魔法陣に感じた違和感が本当なら使わせるわけにはいかない」


「二人とも……ありがとうございます」


 なんだよこのさっきまでと全然違う一体感は……。

 俺が悪者みたいじゃないか。


「じゃあユウナも入らせるのはやめといたほうがいいですよね?」


「いえ、ユウナちゃんなら大丈夫でしょう。封印魔法も覚えましたし、いざとなったら自分を守ることができますから。それに転移魔法陣にも慣れてるようですしね」


「そうだな。ローナ様に実際にお会いすることでなにか得られるものもあるかもしれないし、ぜひ行かせよう」


 可哀想なユウナ……。


 普通爺ちゃん婆ちゃんは孫が可愛くて仕方ないものだろ?

 俺の爺ちゃんなんか激甘だったぞ?

 特にララには。


「ふぅ~。とにかくこれでワシらが長年調査してきた案件も終わりじゃ。最初から大樹のダンジョンの誰かに話してみれば良かったのう」


「本当ですよ。グラネロさんならきっと親身になってお話を聞いてくれてたと思いますよ」


「自分たちだけで抱え込んでたのがいけなかったな。まぁ誰にも話すなって言われてたから仕方ない」


 なに和やか雰囲気になってるんだよ……。


「あの、ローナさんは閉じ込められてからずっとあの部屋で一人だったからそれはとてもツラかっただろうと思います。でも、必死に助けようとしてたパーティメンバーの三人も同じようにツラかったんじゃないですか? 助けだすことができずに後悔したまま死んでいったのかもしれませんし。もちろん娘さんも。あ、逃げだした勇者に同情はできませんけど」


「「「……」」」


「まぁだからといって今さらどうにもできないんですけどね。俺は俺のご先祖様の墓にこの件を報告します。ユウシャ村の人から恨まれたまま死んでいった可能性もありますからね。あ、こっちの話なんで気にしないでください」


「「「……」」」


 少しくらい嫌味を言わせてもらってもいいよな。

 さっきまであんなに疑われてたんだから。


 でもそんなんでよくユウナを大樹のダンジョンに行かせようと思ったな。

 もしかしてジジイのように偵察にでも行かせたつもりだったのかもしれない。


「じゃあ俺はこのあとウェルダンの様子を見てから、またあの部屋に行ってローナさんに娘さんの件を報告してきますね。ジジイ、本当に王国に行く気があるんなら早めに用事はすませておいてください。今ユウナたちが帰ってきたとしてももうすぐ日が暮れますし、今日は出発しないにしても明日朝一番には必ずこの村を出ますから」


「……わかった」


 三人は小屋を出ていった。


 開かずの部屋の件でジジイの用事はすんだのかもしれない。

 だからここに残る理由はもう完全になくなったかもしれないが、村のみんなが残るんならワシも残るって急に心変わりするかもしれない。

 まぁどういう決断をしようが俺には関係ないけどな。


 ウェルダンは無事だったし、あと俺が気にしてるのはユウナのことだけだ。

 できればいっしょに大樹のダンジョンに行くと言ってくれればいいが。


 でもユウナにローナさんのことを話したら余計にここに残るって言うかもしれないんだよなぁ。

 目標としている大魔道士がこんな身近にいるんなら聞きたいことだらけだろうからな。


「チュリ(本当にまたあの部屋に行くんですか? 大丈夫なんですか? 倒れたら嫌ですよ?)」


「大丈夫、な気がする」


「チュリ(気がするじゃないですよ……中で倒れたらどうするんですか……)」


 確かにそれはヤバいな。

 もしかしたら俺もローナさんと同じように……ってそう考えたら少しこわくなってきた。

 ルーナさんたちが入りたくないって言った気持ちがようやくわかった気がする。

 それにあの三人はずっとローナさんが閉じこめられたもんだと思ってたわけだから、中に入れば自分たちも出てこられないんじゃないかという恐怖心がどこかにあるのかもしれない。


「ピューー!」


「うぉっ! ……どうしたんだよ急に」


「ピュー! ピュー!」


「心配してくれてるのか? ……ん? なんだ?」


 なにやら外が騒がしい。

 異変を感じたピピはすぐに小屋の外に出ていった。

 俺も出てみようか。


 あれ?

 もうこんなに暗くなってたのか。


 ん?

 畑仕事をしていたであろう人たちが、明らかに慌てた様子で悲鳴をあげながら、下の階へ繋がっていると思われる階段がある方向に走っている。


「チュリ! (空見てください!)」


「空? …………えっ!? 鳥の大群か!?」


「チュリ! (魔物ですよ! 全部!)」


「は?」


 これが全部魔物だと……。


 こちらを襲ってこようとしているようだが、封印結界でそれ以上は進めないのであろう。

 もしこれで封印結界がなかったらとんでもないことになってたんじゃないのか?


 ……あ、魔物がいっぱいいるせいで影になって暗く感じたんだな。

 まだ夜って時間じゃないし。


「急にこんなに襲ってきたとなると、また魔工ダンジョンが増えたのかな?」


「チュリ(よくそんな冷静でいられますね……空でこれってことは地上はもっと凄いことに)」


「大変じゃ! はぁ、はぁ……大変じゃ! はぁ、はぁ、はぁ」


 ジジイが息を切らしながらやってきた。


「みたいですね。でも封印結界があるから大丈夫でしょう」


「違うんじゃ! その封印結界が消えかかっとるんじゃ!」


「はぁっ!? なぜ!?」


「ユウナちゃんから言われてたにも関わらず、封印結界を維持しようとするやつが誰もおらんかったようじゃ……みんな外の魔物にばかり目が向いておったようでの……」


 嘘だろ……。


 誰かがやるだろうと思ってみんながみんな人任せにしてたのか?

 それとも戦闘民族は守りの重要さを認識してないのか?

 攻撃こそ最大の防御っていうタイプか?


「今は全員で維持に徹しておるがそれも時間の問題かもしれん。建物全体の結界となるとそれなりに魔力も使うし、結界が魔物に攻撃されて綻びが出始めておる。ユウナちゃんに上書きしてもらわんと無理じゃよ。これじゃただの薄い板同然の防御結界じゃ……」


「チュリ(上空の結界にもヒビみたいなものが入ってきてますよ……)」


「えっ!? それを早く言えよ! 下に逃げるぞ! お前たち、俺のコートの内ポケットに入れ!」


「ピュー!」


「ミャ~」


「ニャ~」


 急いで三匹を抱え、左右の内ポケットにしまう。

 そして小屋をレア袋にしまい、下の階段へと急ぐ。


「誰か! 助けてくれ!」


「えっ!?」


 ……あっ!?

 あんなところにまだお爺さんとお婆さんが……。

 怪我でもしてるのか?


「無理じゃ! 遠すぎる! もう魔物が入ってくるぞ!?」


「見捨てるわけにはいかないでしょう! ピピ、行くぞ!」


「チュリ(ジジイにも援護してもらいましょうよ!)」


「……じゃあジジイは階段付近から援護をお願いします。ユウナに渡す予定だった杖を貸しますので」


「杖? ……まさか魔法杖かの?」


「えぇ、ララの魔法が錬金されていますので魔力を流すだけで使えます。じゃあ頼みましたよ」


 そして俺が走りだしたのと同時に、上空から魔物が一匹、二匹と入ってきはじめた。


「なんだよあの鳥!? デカくないか!?」


「チュリ(見てる余裕があるんなら早く魔法を放ってくださいよ! ほら、突撃してきますよ!?)」


 俺が剣から魔法を放とうとしたそのとき、後ろから大きな炎が俺を追い越して飛んでいき、そのまま敵に命中した。


「ほっほっほ! こりゃ凄いわい! 火魔法って気持ちいいのう! それに簡単でいいわい!」


 ジジイ……間違っても俺に当てるなよ。

 そして俺は二人の元へと辿り着いた。


「大丈夫ですか!?」


「あぁ……来てくれてありがとう。妻が腰を抜かしてしまったようでの……」


「俺がおんぶしますのでお爺さんは早く階段へ逃げてください!」


「すまんの。だが私も援護させてもらうよ」


 そう言うとお爺さんは剣を持ち、俺の背後へと回った。

 本当に畑仕事してる人たちも戦えるんだな……。


 お婆さんを背中におんぶし、歩き出す。

 ……意外に重いな。


「ありがとうね。これなら私も戦えるよ」


 なんとお婆さんは杖で魔法を放ち始めた……。

 戦闘民族恐るべし……。


「チュリ! (ヤバいですヤバいです! 早く!)」


 ピピが俺をあせらせてくるので上を見る……見なけりゃ良かった……。


「走りますよ!?」


「ピュー!」


 あ、そういやペンギンたちが内ポケットにいたんだった。

 苦しくないよな?


「早く来るんじゃ! いくらワシの火魔法でもこれ以上は手に負えん!」


 ジジイのじゃないからな!?

 ララのだからな!?


 ってお爺さん!?

 俺を追い越したら背中にいるお婆さんが狙われますよ!?


 こうなったら後ろは完全にピピ任せだ。

 俺は階段へ向かってただ全力で走る。


「来たらすぐに扉を閉めるからの!」


 扉なんてあったのか。


 というか魔法が飛び交いまくってる……。

 完全に戦場だな。


 やけに魔法が多いと思ったら、ジジイのほかにも何人かいるじゃないか。

 村人全員が戦闘民族ってのは助かるな。


 そして俺が階段への入り口に入ると同時に、村人たちが扉を閉めた。

 念のためかジジイは扉を土魔法でガッチガチに固めた。


 ……魔物が扉を攻撃する音が響いている。


 お婆さんをゆっくり下ろし、俺も階段に腰を下ろす。

 ほかの人たちも安心したようで、その場に座り込む。

 誰もなにも話す気力がないようだ。


「ミャ~」


「ニャ~」


 ペンギンはこの状況にいち早く気付いてたようだが、子猫たちにはまだなにが起きているのかわからないよな。

 ……まぁ可愛いから許す。


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