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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱

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第三百二十二話 勇者の娘と息子

 落ち着け。

 よく考えろ。

 ユウナが勇者の娘だと?

 それだとユウトさんも勇者の息子ってことになるぞ?


 ……なんだかあり得そうな話な気もしてきた。


 ユウナの実力にはなんの疑いもないし、ユウトさんも威力は初級レベルながら攻撃魔法を全種類使えるとか言ってたし……。

 それにユウナは大魔道士を目指すって言ってウチに来た。

 一人でも戦える力が必要って言って必死に攻撃魔法も覚えようとしている。


 ……もしかしてリヴァーナさんはユウトさんが次代の勇者になると信じてたからパーティを継続しようとしてたのか?


 ってそれとはまた別の話か。

 あの人たち色々とややこしいんだよな。

 リヴァーナさんは俺の前ではユウトさんの話を全くしようとしないし。

 俺がなにも知らないと思ってるからだろうが、こっちはずっと気を遣って話してるんだぞ。


 って今はその話はいいや。


 勇者と言ってもジジイのあとには何人も勇者がいたんだろ?

 そうだとすると現役の勇者のことじゃないかもしれない。

 勝手に俺が現勇者を想像してしまっただけだ。

 たった一度でも勇者に選ばれたら元勇者って肩書きは付くもんな。


「いつの勇者なんですか?」


「今じゃよ。現勇者じゃ」


 俺の推測はあっさり覆されたようだ……。


「というかワシが辞めたあとは十年間勇者は選ばれておらん」


「え? なぜ?」


「毎年候補者は何人もいたんじゃが、いまいち飛びぬけたやつがおらんくてのう。まぁワシのあとじゃから仕方ないんじゃが」


「現勇者は二十年近く勇者やってるんですよね?」


「もう少しワシのこと聞いてくれてもいいんじゃぞ……」


「ジジイの次の勇者が現勇者ってことですか?」


「……そうじゃ。というかワシがこの村の村長だって聞いて驚かんのか?」


「そういやそうでしたね。一瞬驚きましたが別にどうでもいいかなって思いまして」


「おぉ……相変わらずこの兄妹は酷いのう、ピピちゃんや」


「チュリ(私に聞かないでください。むしろ隠さなくてもいいことをわざわざ隠してたジジイが嫌いです)」


 通訳するとへこみそうだからやめておこうか。


 でも十年も帰ってなかったのにまだ村長でいられるのか?

 ……元勇者が村長になるって決まりがあるのかもな。

 どうでもいいからこれ以上は掘り下げないけど。


「ということは現勇者はかなりの実力なんですね?」


「少なくともここ数十年のユウシャ村では最高の才能の持ち主じゃ。もちろんワシよりも強い。あ、今のワシじゃなくて全盛期のワシな?」


「戦闘タイプは?」


「攻撃魔道士じゃ。全ての系統の攻撃魔法を操りおる。しかも全てが中級レベル以上なんじゃ。それに魔法だけじゃなく身体能力も高い。短剣なども器用に扱うからパーティでは中衛的な立ち位置じゃろうか」


「なるほど。オールマイティーって言葉が似合いそうですね。……ユウナの母親も同じパーティにいるんですか?」


「うむ。回復魔道士なんじゃが、補助魔法も一流じゃ。帝国では聖女と呼ばれておる」


「聖女……年齢は?」


「年は関係ないじゃろう……。でも言われてみれば確かにあやつらはもう四十近いかもな……。冒険者としてやっていくのはそろそろ厳しい年齢かもしれんのう」


 どうなんだろう?

 ずっと身体を鍛え続けてきてるんならまだまだ現役でも大丈夫なんだろうか?

 ウチの地下三階の山を登ってみてほしいな。


「でもユウナが勇者と聖女の娘って聞いて、なんだか納得してしまいましたよ。まだ十四歳にしては回復魔法や補助魔法の効果が半端ないんです。聖女の血を濃く継いでたからだったんですね」


「そこまでなのか? 早く会ってみたいのう」


「俺は勇者と聖女に会ってみたいですよ。興味しかありません」


「能力さえ気にしなければ、この村で生まれた普通の男と女じゃよ。聖女のほうは少し気が強いがの」


 やはり女が強いのはどこの国でも同じなのか。


 それとユウナが攻撃魔法を覚えようとするのは父親の血を継いでるからってのも大きいんだろうな。

 単純に考えたら攻撃魔法、回復魔法、補助魔法、全て使えてもおかしくない。

 大魔道士を目指してるっていうのもそんな両親の影響だったのかも。


「あ、でもそれならユウトさんはまだまだ諦めるには早すぎますよね」


「ユウト? ユウトってあのユウトか? なぜ今ユウトの話になるんじゃ?」


「え? ……あれ? 言いませんでしたっけ?」


「ほえ? なにがじゃ?」


「ボケてるんじゃないでしょうね? ……言わなかったかな、俺」


 言ったような気がしたんだけど、言ってないような気がしなくもない。


 ……あ、やっぱり言ってないかも。

 リヴァーナさんがいたからユウトさんの話題は完全に避けてたし。

 でもリヴァーナさんもユウナが勇者と聖女の娘って知ってたんなら教えてくれたら良かったのに。


「ワシ、ボケてるのかのう……」


「いや、言ってませんでした、すみません」


「そうじゃろ? じゃろ? ワシ、ボケてないじゃろ?」


「……」


「無言はダメじゃって……ワシがボケてるのを言ってしまったらいけないような空気に思ってしまうじゃろ……」


 そこまで考えられるならまだボケてはなさそうだな。


「リヴァーナさんがいたからなるべくユウナとユウトさんの話に繋がらないようにしてたんでした」


「へ? …………もしかしてユウトは?」


「はい。ユウナのお兄さんです」


「ほぇぇぇぇーーーー!?」


 変な声出すなよ……。

 やっぱりボケてるんじゃないのか?


「あ、村長!?」


「村長だ!」


 ほら、今の大声でみんなが集まってきそうじゃないか。

 というかみんなどこにいたんだよ?


「みんな村長と話したいでしょうし、俺は村の中見てきてもいいですか?」


「……え? あ、あぁ。ドアが閉まってるところには入らんようにな」


「はい。少しは村長らしいことしててください」


「うむ。それにしてもユウトがのう……」


 俺が席を立つのと入れ替わりで人がどんどんやってきた。

 カーティスさんがみんなに声をかけてるのかもしれない。

 あ、さっき気絶してた人もいる。

 って俺にビビらなくてもいいからさ……。


 まずは一階をぐるっと回ってみようか。


 ペンギンと子猫は俺の左腕に抱えられている。

 逃げだしたりするようなこともなくおとなしい。

 いくら小さいとはいえ、三匹ともなると少し重いが。


「チュリ(指輪光ってませんね)」


「ん? ……本当だな。ドラシーがウェルダンを助けるためになにかしてたんじゃないか?」


「チュリ(そんな遠隔操作みたいなことできるわけないですって……。もしかしたら地下の空間は多少マナが濃くなってたりするのかもしれませんね)」


「ふ~ん。でも地下行くのは最後な」


 ウェルダンの看病の前にまず村見学をしたいからな。


「おいお前! さっきはよくもやってくれたな!」


「そうだそうだ! 魔物使いかダンジョン管理人かなんだか知らないが魔物に戦わせるなんて卑怯だぞ!」


 また変なのに絡まれてしまったようだ……。

 こういうのはあまり関わるとろくなことにならない。

 というかユウシャ村にもこんなのいるんだな。


「それより村長が帰ってきてますよ。ではこれで」


「待て! 村長なんかどうでもいいんだよ!」


「そうだそうだ! いてもいなくてもなんの影響もない村長なんかどうでもいいんだ!」


 村長に聞こえてるぞ?

 ……というかみんなに注目されてしまってるじゃないか。


「今度はお前が勝負しろ!」


「そうだそうだ! 魔物じゃなくてお前が戦え!」


 なんなんだよ……。


 一人は剣、もう一人は杖を構えている。

 村の中で戦闘なんかして大丈夫なのか?

 って村の修行してるみたいだからこれくらい日常茶飯事なのかもしれない。


「チュリ(面倒だからもう一度気絶させてしまいましょう。ロイス君は戦うフリだけしててください。私が風魔法で壁まで吹っ飛ばしますので)」


 それならピピに任せよう。


 そして右手で剣を構える。

 一応炎も見せてみるか。


「「え……」」


 これだけでビビってるじゃないか。

 みんなに情けないところを見られてるぞ?

 ほら早くかかってこい。

 じゃないと俺の剣の魔力がどんどん無駄遣いされて……


「あ……」


「「え?」」


 俺の剣から炎が壁に向かって飛んでいった……。


「チュリ(あ~あ)」


「「……」」


 しかも二人の間を通ってそのまま壁にぶち当たる。

 凄い音がしたけど、壁大丈夫かな?

 岩だから炎くらいじゃびくともしないよな?


「「……」」


 二人は無言のまま目を大きく見開いて立ち尽くしている。


「チュリ(こっちのほうが効果あったみたいですね。でも怒られても知らないですよ)」


「俺じゃないからな? この黒猫が剣を触ったせいだぞ?」


「チュリ(え? ……まぁ子供のいたずらだから仕方ないですね。ロイス君が子猫の手が届く位置に剣を構えるからいけないんです)」


 ……なんとも言えない。


「何事だ!? 敵襲か!?」


 向こうからカーティスさんが走ってきた……。


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