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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
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第三百二十一話 ユウシャ村の村長

 ウェルダンが無事なことを確認したので、村の入り口に戻ってきた。

 そしてみんなに報告する。


「良かったね! じゃあすぐユウナたちを助けに行く!?」


「はい。でも俺はここに残ることにします。もしここを離れてウェルダンの症状が急変でもしたら困りますから」


「そうだね! じゃあ私とみんなで行ってくるね!」


「え、行ってくれるんですか?」


「もちろんだよ! 村の仲間の命がかかってるし!」


 どういう風の吹き回しだ?

 今まで村の人たちなんかどうでもいいって感じだったのに。


「みんな、休憩は終わり! ゲンさんも早く乗って!」


「ゴ(俺が行ったら帰りの馬車に人が乗れなくなるぞ)」


「……もし十人くらいの人が生きてたら馬車がかなりぎゅうぎゅう詰めになりますよ?」


「いいの! 生きてるだけでありがたいと思ってもらわなきゃ!」


「ゴ(どうする? 行ったほうがいいか?)」


「う~ん。どっちにしても中には入れないから行ってもらったほうがいいかも。ピピには残ってもらうから。もちろんペンギンたちも」


「ゴ(わかった。魔工ダンジョンを初体験してくる)」


 ……もしかして少し楽しみにしてたりするのか?


「じゃあ行ってくるね!」


 そしてリヴァーナさんと魔物たちは魔工ダンジョンに向かっていった。


「とりあえず中に入ろうかの。寒くなってきたわい」


 入ってすぐはちょっとした広場みたいになっている。

 さっきはウェルダンのことが心配で周りをよく見てる余裕はなかったが、天井もそれなりに高い。

 というか二階や三階部分が見えているじゃないか。

 吹き抜けってやつか?

 あの天井の上が屋上なのかな?

 すぐそこに二階に行ける階段もあるようだ。


「そこのテーブルで休もうかの。客人はここで待たされるのがこの村のしきたりなんじゃ」


 そしてテーブルに座る。

 すぐさまジジイがお茶を要求してきたが無視した。


「ジジイも客人扱いなんですか?」


「いや、ワシの家というか部屋は残ってるはずじゃ」


「何十年も帰ってなかったのに?」


「屍村に住むようになってからもちょくちょく帰ってきておったからの。さっきも言ったが最後に帰ってきたのは十年ちょい前じゃ」


 そういやさっきリヴァーナさんと競ってたな。


「じゃあジジイが屍村にいることはみんな知ってるんですか?」


「いや、おそらく帝都にでもおると思ってるはずじゃ。屍村に住むやつはもうここには帰ってこんからの」


 それがよくわからないんだよなぁ。

 別に戦いの世界から退こうが帰りたくなったら帰ればいいのに。

 戦闘民族ならではのプライドみたいなものなんだろうか。


「で、リヴァーナさんはなんでダンジョンにあんなに行く気満々だったんですか?」


「もちろん村の仲間のためじゃろ。……と言いたいが、本音はユウナちゃんとシャルルちゃんを助けに行きたかったんじゃろな」


「なるほど……カッコいいところを見せたかったんですかね?」


「それもあるじゃろうな。今後同じパーティになるかもしれんし、ならなかったとしてもロイス君に恩を売れるじゃろうからな」


 俺に恩を売ったところでなにが望みなんだよ……。


「……まさか本気で討伐しようとか考えてませんよね? ゲンさんも連れていったのが気になるんですが……」


「……わからん。自分がみんなの救世主になったのを誰かに話したいがために行ったのかもしれんし」


 それもありそうな気がしてきた……。

 そういう話が大好物そうだからな。


 ん?

 男性と女性が階段を勢いよく下りてきた。

 そしてこっちに向かって走ってくる。


「村長!」


 カーティスさんのことか?


 ……ん?

 どこにいる?


「久しぶりじゃの、元気じゃったか?」


「今までいったいどこでなにしてたんですか!?」


「ワシは自由になりたかったんじゃ。じゃから屍村にいた」


「「えぇっ!? 屍村!?」」


 ……は?

 村長?

 ……え?


「まぁ村長のことはどうでもいいです! それよりもリヴァーナが帰ってきたと聞きましたが!?」


「おや? もしかしてお主らの娘じゃったのか?」


「そうですよ! 会ったことあるでしょう!?」


「そんな前のことなんか忘れておるわい……」


 へぇ~、リヴァーナさんの両親か。

 二人とも見るからに魔道士だ。


 ってそれよりジジイだよ。

 ユウシャ村の村長なんて話は初耳だぞ……。


「で、リヴァーナは!?」


「ついさっき、近くにある中級魔工ダンジョンに向かいおった」


「「えぇっ!?」」


「大丈夫じゃ。死ぬことはない」


「なに無責任なこと言ってるんですか!? もう何人も死んでるの知ってるんですか!? それにおそらくそのダンジョンに入った者たちはもう……」


「大丈夫じゃって……ほら、ここにいるロイス君の魔物たちも大勢いっしょに行ったからのう」


「「……魔物?」」


 二人が俺を見てきたので簡単に自己紹介をする。


「「え……」」


 同じことばかり聞かれたり、驚かれたりして挨拶するのが面倒になってきた。

 さっさと家に帰りたい。

 二人も自己紹介をしてくれたがもう名前を覚える気にもならないし。

 おそらくこの村の人たちとはもう一生会うことはないだろうからな。

 適当に愛想笑いをしておこう。


「リヴァーナは本当に大樹のダンジョンに行くと?」


「そうじゃ。行かん理由がないじゃろ」


「そうかもしれませんけど……せっかく帰ってきたのに……」


 そりゃ親ならいっしょに居たいよな。

 三年半ぶりの再会なんだっけ?

 それにもしかすると今後一生会えない可能性だってあるんだ。

 お母さんのほうはまだ会ってもないのに涙を流してる。


「村長はどうするんですか?」


「ワシも王国に行く。もうワシの家族は行っておるからの」


「そんな……この村はどうなるんですか……」


「村がどうなるとかじゃなくて、魔王とどう戦うかを考えるんじゃ。この村が今までやってきたやり方は間違っておらん。リヴァちゃんもワシやこのロイス君が認めるくらい立派な魔道士に育っておる」


「リヴァーナはそんなに成長してるんですか? 確かに噂はよく聞きますけど、ソロで女だから甘めにみてもらってるんだろうと思ってましたが……」


 親にも心配されてるじゃないか……。


「とにかくリヴァちゃんの心配はいらん。魔工ダンジョンからもすぐ帰ってくるし、王国に行ってもさらに成長するじゃろう。いい仲間にもきっと巡り合える」


「そうだといいんですが……でもやっぱりいっしょに暮らしたいですよ」


「それならお主らも王国へ行くんじゃ。大樹のダンジョンにはこの村の人口よりも遥かに多い冒険者たちが集まっておるし、正直実力も比べものにならん」


「……少し考えさせてください」


「リヴァちゃんが戻ってくるまでに決めとくんじゃぞ。ロイス君がここに来た一番の目的はもう達成されておるから、みんなが戻り次第すぐに帰ると思っておけ」


「わかりました……息子にも話してきます」


 リヴァーナさんには兄弟がいるのか。


 二人は元気なく去っていった。

 せっかくもうすぐ娘に会えるというのに、その娘と永遠の別れになるか、村を出るかという選択を迫られてるんだから無理もない。


「というか誰一人村を出る気配がないですよね。ここにも誰も来ませんし」


「魔王討伐という新たな目標ができたからここを離れるという選択肢はないんじゃろうな。ここ数年、大樹のダンジョンの評判が悪かったことも関係しておるかもしれん」


 それは確かにジジイの言う通りだ。

 ウチのせいで、ここ以上に成長できる環境はないと思ってる人も多いだろう。

 ユウナも人助けに行かないといけなくなったせいであまりみんなとは話せてないみたいだし。


「どうする気じゃ? 帝都と同じようにやはりここのみんなも王国に連れてく気か?」


「う~ん。ユウナがみんなを助けたがってたせいで、王国にいるときは俺もそのほうがいいと思ってましたよ。でもそれからすぐにここの人たちはやっぱり避難する気はなさそうだって聞いて、そういう道もあるのかな~って思いました。俺はユウナも残るって言うと思ってます」


「ミイラ取りがミイラになるということかの? もっと信じてやらんでどうする?」


「もしユウナがそう決めたとしたらその決断を尊重してやりたいだけですよ。それに封印結界をずっと張り続けるにはユウナがいないと無理ですし。シャルルが残るって言おうもんならグルグル巻きにしてでも連れて帰りますけどね」


「すごい差じゃのう……まぁワシらだってさすがに王国の王女様をこんなところに置いておけんから助かるが……」


 シャルルは俺が迎えに来たと知ったら喜んで帰りそうだけどな……。


「そうじゃ、ユウナちゃんの家族に会っておくか? カーティスに言えばすぐ連れてきてくれると思うぞ」


「さっきユウナのお婆さんには会ってきましたよ。ウェルダンの看病をしてくれてたんです」


「ほう、誰じゃろうか? 名前はわかるかの?」


「ルーナさんです。少し話した程度ですけど、ユウナが成長して帰ってきたのを喜んでましたね」


「……」


 お爺さんにも会っておいたほうがいいか。

 というかユウナがダンジョンから戻ってきて、ユウナが王国に戻ることになってもすぐに出発とはいかないかもな。

 お爺さんやお婆さんと色々話もしたいだろうし。


「のう、ロイス君」


「はい?」


「ユウナちゃんの両親のことは聞いておるのか?」


「両親? よく旅に出る冒険者だからここ数年は会ってないと聞いてますけど? ユウシャ村にはそういう人いっぱいいるんですよね? 最初両親はもういないものだと思って話を聞いてましたからそれ聞いて少し安心したんですよ。…………え? もしかして屍村にいたとか言わないですよね?」


 ジジイが聞いてきたってことはその可能性はあるよな……。


 ……ってあるわけないじゃないか。

 それならユウトさんと同じ村で生活してたことになるんだし。


「……勇者じゃよ」


「勇者? なにがですか?」


「ユウナちゃんの父親じゃ」


「…………え?」


 勇者だと?

 ユウナの父親が?


 ……ということはユウナは……勇者の娘?


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