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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
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第三百十九話 対ユウシャ村

 一度整理をしてみよう。

 魔道具のスイッチを切り、馬車の中を向く。


「あの、どうしたらいいんでしょうか?」


「ぷぷぷっ……面白すぎる」


「ほっほっほ。まさか魔王と勘違いされるとはな」


 こいつら……完全に確信犯だな?


「このままじゃ攻撃されちゃいますよ?」


「いいんじゃない? どうせ負けるわけないし」


「そうじゃ。ロイス君の魔物の強さを見せつけて一度鼻っ柱をへし折ってやらんとのう」


 なんでそんなに好戦的なんだよ……。

 ってユウシャ村出身はみんなこうなのかもしれない。

 あっちもこっちもお互い様ってわけか。

 これだから戦闘民族は嫌なんだよ。


「わかりましたよ。強そうな人が出てきたら終わりにしますからね?」


「大丈夫だって。勇者パーティでもいない限り負けることはないよ」


「勇者がいなければお遊びにしかならんよ」


 意外だな。

 勇者ならウチの魔物たちと張り合えると思ってるってことか。

 どれほどの強さか見てみたくなるじゃないか。


「というかユウナたちはなにしてるんでしょう? 普通俺の声で気付いてくれますよね?」


「中にいたら聞こえないかも。部屋もいっぱいあるし」


「そうじゃのう。外の岩壁は分厚いし、何階にいるかもわからんしの」


 完全に要塞じゃないか……。


「じゃあとりあえず行きますからね?」


「うん! なにかあったら援護するから!」


「攻撃はだめですって……シルバ、一歩進んでみろ」


 そしてシルバがゆっくりと一歩踏み出してみた。


「あっ!? 進んだな!? いざ開戦!」


「「「「うぉーーーー!」」」」


 本当にこっちに向かって走ってくる……。

 要塞からは魔法がいっぱい飛んできてる。


「ピピ、あの封印結界の穴全部にパンでも詰めてこい」


「チュリ(嫌ですって……こわいですもん……)」


「仕方ない。じゃあ全員気絶させるとしよう。ゲンさんとシルバで対人戦をして、リスたちは魔法を相殺してくれ」


「ゴ(俺も行くのかよ……)」


 ゲンさんはかなり面倒そうにしながらも、馬車を降りてシルバと二匹で先陣をきっていった。



◇◇◇



 三分ってところか?


「どうします? まだやりますか?」


「「「「……」」」」


 反応がない。

 どうやら全員気絶しているようだ。


 要塞からはもう魔法さえも飛んでこない。

 今頃中で作戦会議や援軍を集めてるのかもしれない。


「じゃあシルバとリスのみんなは周りの魔物を倒しててくれ。数が多かったり少し強めの敵も出るから注意するように。ゲンさんは倒れている人たちを村の入り口前に集めて」


「わふぅ(中で休憩したいよ~)」


「ピィ(お腹減りました~)」


「ピィ(眠いです~)」


「「「ピィ(以下同文です~)」」」


「ゴ(リスたちが可哀想だから周辺の掃除はリヴァーナにしてもらってくれないか?)」


 みんな疲れてるせいで全くやる気がない。

 俺だって眠い。


「了解。リヴァーナさん、みんな眠くて動きたくないって言ってるんで、適当に魔物倒してもらってていいですか?」


「え~~~~。リヴァだって眠いもん」


「適当でいいんですって。今俺たちに危険がないようにしたいだけなんで、広範囲に雷魔法を落としてもらえばそれで」


「もぉ~わかったよ~。ジジイ、みんながすぐに入れるようにしておいてよね」


「……」


「ジジイ? 聞いてる?」


「…………あぁ、中のことは任せておけ。ここまで圧倒的な差があるとまでは思いもせんかったものでの……」


 ジジイはこの旅でなに見てきたんだよ……。

 まぁ今はシルバたちも面倒だから早く終わらせるために少し本気を出したってのもあるだろうけど。

 ゲンさんがいたのも大きいかもな。


「ピピちゃん、向こうに人いない?」


「チュリ(大丈夫ですよ)」


「じゃあ思いっきりいくね」


 そしてリヴァーナさんによる適当な大掃除が始まった。

 雷があちこちにばら撒かれている……。

 魔王がこれを見たら危機感を感じてまた魔工ダンジョンを増やしてくるんじゃないだろうか。


「ゴ(集めたぞ)」


「ありがとう。ジジイ、このドアから中入っていいんですか?」


「鍵もかかっとらんようじゃし、ええじゃろ」


「……開いた。誰でも入れるんですね。魔物は……さすがに無理か。ピピ、ユウナを呼んできてくれ」


「あ、ワシはちょっと馬車に隠れとくからの……」


 ピピは封印結界の小さな穴から中に入っていった。

 その間に気絶してる人たちをゲンさんに運んでもらおう。


「おい」


「え?」


 中から誰か出てきた。

 どうやら待ち構えていたようだ。


 ……おじさん、いや、お爺さんのようだ。

 その後ろには男性が何人かいる。

 このお爺さんはもしかして村長さんかな?


「中に運べ」


「「「「はい!」」」」


 気絶した村人が順番に運ばれていく。

 その間は無言が続いた。

 俺を見ようともしない。

 そして最後の一人が運ばれたところで、ようやくお爺さんが口を開いた。


「戦いは見させてもらった。大樹のダンジョンの魔物たちと知っていながら戦いを挑ませてもらったんだ。今運ばれていった者たちは君のことを本気で魔王と思っていただろうがね」


「はぁ……」


「結果はご覧の通り。ウチの若い連中では全く歯が立たん。本当に情けない」


 なぜわざわざそんなことをする?

 敵はもっとほかにいっぱいいるのに。


「ところであそこで雷をぶっ放しまくってるやつはリヴァーナか? ようやく帰ってきおったのか。ここまで送り届けてくれたことに感謝する、ありがとう」


「いえ、一応俺の護衛も兼ねてもらってましたのでお礼を言うのはこちらのほうです」


「ほう? 護衛なんか魔物たちだけで十分に見えるんだがね」


「いえ、リヴァーナさんがいなければ厳しかったと思います。現にウチの魔物たちは今疲労がピークですので」


「ははっ、そりゃ疲れるだろう。シルバ君とマカちゃんだったかな? 昨日の朝出たばかりなのに一日ちょっとでもう戻ってきてるんだからな」


 名前まで覚えてくれてるのか。


 あ、中からピピが出てきた。


「チュリ(見当たらないです……ウェルダンもどこにいるかわかりませんでした……)」


「見当たらない? あ、すみません、ユウナいますか? ウチの魔物たちも中に入れてもらいたいのですが、封印結界で入れないようでして」


「あぁ、そうだったな。……だがユウナはおらん」


「えっ!? どこに行ったんですか!?」


「……魔工ダンジョンに入っていった」


「えっ!? なぜ!?」


「シルバ君から話は伝わってるか? まぁそれはどっちでもいい。ユウナたちがまだ入ってなかったもう一つの中級ダンジョンのほうに村人を助けに行ったんだ」


 なにしてるんだよ……。

 ウェルダンやメタリンがいないのに無謀すぎる……。


「中に入ってる村人の家族からどうしてもと頼まれてな。私だって行かせたくはなかったさ」


「とめるべきだったでしょう? どう考えても無理がありすぎます」


「ユウナたちが行くって言って聞かなかったんだ。シャルルちゃんもすぐに戻るって言って私たちがとめるのも聞く様子がなかったし。リスのビス君もいっしょに行ってしまったよ」


「ユウナとシャルルとビスではまだマグマドラゴンは倒せませんよ? 防戦一方になるんですよ?」


「……」


 黙るなよ……。


 片一方の中級ダンジョンで五人も死んで、残る五人は瀕死だったのに、それからさらに時間が経ったダンジョンで生きてる可能性はもっと低いことくらいわかるだろ?

 それに今度は馬車が使えない分時間もかかるし、馬車なしでどうやって連れて帰ってくるって言うんだよ。


 ……ってここでグダグダ言ってても仕方ない。


「いつここを出ました?」


「……昨日の昼過ぎだ」


「もうすぐ丸一日も経とうとしてるじゃないですか……」


「……」


 ユウナの封印魔法があれば死ぬことはないかもしれない。

 だが村人たちといっしょに出てくるというのは不可能に近いだろう。


「みんな、今すぐ準備しろ。スピカポーション飲んどけ」


「チュリ(私たちだけで行ってきます。ロイス君はまずウェルダン君を)」


「いや、俺も行く。でもウェルダンも連れてく。あの、牛の魔物がどこかで寝てませんか?」


 すぐには治らなくても俺の近くにいればなんとかなるだろ。


「……ユウナから言伝を頼まれた」


「言伝?」


「あぁ。ウェルダン君は魔瘴に侵されている。だから今は人間は出入りできるが魔物は決して出ることができない特別な封印結界の中で保護させてもらってるんだ。もしユウナがいない間に暴れたりでもしたらどうなるか想像がつかないからな。だがこの村には封印魔法を使える人間はほかにいないからユウナしか解除できない。つまり、もしウェルダン君が治っても封印結界はすぐには解けないんだ。しかし、ユウナはもう一人だけ解除できる可能性のある人物がいると言っていた」


「もう一人?」


「……ララちゃんだ。ララちゃんならきっと解除できると言っていた」


 確かにピピにユウナへ届けてもらった手紙の中にはララが屍村で封印魔法を使うことは書いたが……。

 さすがのララでもまだユウナほどの封印魔法は使えないと思う。

 エマにはもっと無理だろうからな。


 でもそれってララがいないと意味ないよな……。

 ユウナはララがいっしょに来ると思ったから、魔物たちもこの村の中へ普通に入れるだろうと考えたのか。

 でも俺の中ではララを行かせる発想は全くなかったな。

 ユウナ自身がララに迎えに来てほしかったのかもしれない。


「さぁ、案内しよう」


「え? …………もしかして俺のこと、ララだと思ってます?」


「…………違うのか?」


 ユウナからララのことをどう聞いてるんだよ……。

 まぁウェルダンを治しには行くけどさ……。


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