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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱

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第三百十八話 ユウシャ村目前

 敵多すぎだろ……。

 いったいこの周辺に魔工ダンジョンいくつあるんだよ?

 魔瘴はなんだか気にならなくなってしまった。

 慣れってこわいな……。

 リヴァーナさんもこの馬車の速度に慣れてしまったようだし。


「ユウシャ村にはまだ着かないんですか?」


「もうすぐだよ。ロイス君も命中率よくなってきたね!」


「慣れですよ。それより魔法って楽でいいですよね。座ってても敵を倒せるんですから」


「でも前衛職ほど爽快感はないよ? 剣で斬ってるの見るとたまに羨ましくなるもん。まぁリヴァは魔物に触るの嫌だから魔道士で良かったけどね」


「いきなり敵が襲ってきたときとかどうしてるんです? 一人だと守ってくれる仲間がいない分こわくないですか?」


「リヴァはね、微弱の風魔法で常にリヴァの周りを探知できるようにしてるの」


「探知?」


「うん。リヴァの周りに風魔法をグルグルさせてる感じ? 微弱だからたぶん気付かないよ? その風の流れに少しでも乱れがあったらその乱れた方向から敵が来たって感じ取ることができるの」


 え……それって凄くないか?

 その風魔法の範囲を拡げていけば敵の居場所までわかったりするんじゃないか?


「それって風魔法が使えれば誰でもできるようになります?」


「できると思うよ? ねぇジジイ?」


「いや……ワシには……」


「ジジイだから色々と感覚が鈍ってるのかもね。ララちゃんなら間違いなくできるようになると思うよ?」


「酷くない? いくらワシがジジイだからって酷くない?」


 いや、別に……。


 それよりその探知が使えれば絶対便利だよな?

 こんな魔瘴の中でもリヴァーナさんが一人で平気だったのはその魔法のおかげかもしれないし。

 魔物急襲エリアみたいなところでは全く意味をなさないかもしれないけど。

 魔工ダンジョンみたいな未知の場所ではめちゃくちゃ有効に違いない。


「ウチの冒険者たちにも教えてくれませんか? 風魔法が使えなくてもほかの魔法で応用できるかもしれませんし。ぜひ魔法の講師として指導お願いします」


「……」


 あれ?

 すぐにうんと言ってくれるかと思ったんだけどな。

 自分の技をそんな簡単には教えたくないのかもしれない。


「週に一回数時間程度で大丈夫ですよ? ウチのダンジョンは日曜が休みですし、普段ダンジョンの営業終了時間は十九時ですのでそのあととかでもいいですし。だから疲れてパーティへ支障が出るおそれも少ないはずです。あ、もちろん講師としての報酬はしっかりお支払いしますので」


「……ぷぷ」


 ん?

 笑うところあったか?


「ロイス君って、ダンジョンなのになんだかいつもお店みたいに言うよね」


「店ですよ。50Gでダンジョン内を自由に探索できる権利を売ってるんですから」


「その50Gさ~、もっと値上げしたほうがいいんじゃない? 薬草とかドロップ品とかいうのいっぱい持って帰れるんでしょ? 冒険者側に有利すぎない?」


「50Gでも今ウチに来てる冒険者は約五百人ですから計算すると2万5000Gにもなるんですよ? それに体力と魔力は吸収させてもらってますから……ってみんなに聞かれる度にこの説明してるんです。とにかく経営は順調ですのでご安心を」


「ロイス君とララちゃん凄いよね……」


「うむ……みんなが得しかしてないんじゃもんな」


 だからやっかみがこわいんだよ……。

 市場とのバランスが重要なんだが、それはこの二人には言ってもわからないだろう。


 というか魔法の指導の件はどうなった?


「あっ、見えてきたよ! もうこんなところまで来てたんだ!」


「え? …………あれが村なんですか?」


「うん! 本当に封印結界が張ってある! ユウナ凄いね!」


 あれがユウシャ村……。

 ようやく着いたか、と思いたいところだが、想像してたのと違いすぎるんですけど……。


「あれは門ですか?」


「門というか村の壁? というより家の壁? ユウシャ村はあの岩の壁に四方囲まれてるの!」


 魔瘴による見えづらさとか関係なく、ここからでも大きな建物があるのがわかる。

 というかお城じゃないのか?

 お城は言いすぎにしても、要塞という名前がふさわしいかもしれない。

 あの中にみんな住んでるのか……そりゃ強気にもなるわけだ。


「屍村はユウシャ村を意識して地中に作ったそうなんじゃ」


 そういや地中の家を見てくるのを忘れてたな。


「すっごい久しぶり! もう三年半以上も帰ってなかったんだもん!」


「ワシなんてたぶん十年は帰ってないぞ? ワシの勝ちじゃ」


 そんな争いはいいから。


 でもピピは上空から入ろうとしたら村の中から魔法を放たれたり、村の中を武装した人が歩いてたって言ってたよな?

 それはあの建物の屋上部分ってことか?

 だとすると常に見張ってたりするんだよな?

 今もあの屋上からこっちを……


「あっ! 火魔法が飛んできたよ! シルバ君! ストップ!」


「えっ!? この距離で!? 屋上からですか!?」


「屋上というか壁の間からというか、とにかく敵と認識されてるっぽい! あっ! リスちゃんたちにも雷が!」


「いやいや! シルバとマカは一度行ってますし、今もウチのリスが一匹中にいるんですよ!? 普通敵じゃないってことくらいわかるでしょ!?」


「リヴァに言われても知らないよ! あの中には結構人が住んでるからそのことを知らないだけかもしれないし! それに魔瘴のせいでどんな魔物かまで見えてないんじゃない!?」


 怪しい魔物がいたらとりあえず攻撃ってわけか……。

 そりゃピピたちも攻撃されるわけだ。


 とにかくこのままでは面倒なことになりそうだ。


「戻ってこい!」


 一旦撤収させ、少し引き返した場所で馬車をストップさせた。


 こういうときは作戦会議に限る。

 ピピとタルだけを馬車内に戻して、ほかは馬車を守りながら休憩だ。


「リヴァーナさんとジジイが行って説明してきてくださいよ」


「え、ロイス君が行ったほうが面白そうなのに?」


「そうじゃ。それにワシは気まずいからこっそり行きたいんじゃ」


 なんなんだよ……。

 こんな状況でよく面白そうなんて言えたな……。


「……でも向こうからしたら今の勢いで村に近付いてこられると、魔物が攻めてきたと思って当然かもしれませんよね。今度はゆっくり行きましょう」


「そうだね。リヴァとジジイがいるの見たら普通に帰ってきたとしか思わないからロイス君が御者席ね」


「でもワシが魔物を従えて帰ってきたと知ったらどんな顔するのかも見てみたい気がするな」


「あ、それ私もやってみたい! ……でも魔物に魂を売ったのかとか思われても面倒だから、今回はロイス君に譲るね」


 譲らなくていいんだよ……。

 ってもう中に引っ込んだし。


「楽しみだね! 早く行こうよ!」


「みんな生きとるかのう~」


 こいつら……ペンギンと子猫と遊びながらまるで他人事のように……。

 俺が狙われたらどうするんだよ?


「みんな集合」


 魔物たちが集まってきた。


「わふ(このへん前より敵増えてるよ)」


「ピィ(あそこにあるの魔工ダンジョンじゃないですか? また増えたんですね)」


 確かにあの入り口は魔工ダンジョンっぽい……。

 また中級なんだろうな。

 もう誰も中級を討伐しようなんて思わないだろうからここまでしなくてもいいのに。

 魔王はよっぽど不安なんだな。


「いいか? 今度はゆっくりと近付いていくからな? 向こうから攻撃が飛んできても絶対に攻撃はするなよ? 魔法で相殺する程度だからな?」


「わふ(わかってるって。疲れたから早く中で休みたい)」


 俺でも疲れてるんだからシルバたちの疲労はよっぽどだよな。


「じゃあ行こうか。旅人を装えよ」


「わふ(魔物だから無理だよ)」


 そして馬車は進み始めた。


 ……魔法は飛んでこないようだな。

 どんどん村が近付いてくる。


 ……ん?

 壁の前に人がいるようだ……ん?

 多くないか?


「とまれぇーー!」


 思わず魔物たち全員の足がとまる。


 村から大きな声が飛んできたが、俺たちに言ってるんだよな?


「一歩でも進むと開戦の合図と見なす! なにか話したいことがあるならその場で言え!」


 開戦?

 え?

 俺たちをどういう目で見てるんだ?

 まさかそこにいる村人……三十人くらい?

 俺たちと戦う気でいるのか?


 えっと、小型拡声魔道具はもう一つあったよな。

 ……あった。


「え~、ユウシャ村のみなさん、私は……えっ!?」


「わふ! (マカ!)」


「ピィ! (お任せを!)」


 いきなり壁から火魔法のようなものが飛んできた。

 それをマカが火魔法で相殺する。


 壁の上からではなく確かに壁の間から飛んできた。

 ……よく見たらあそこに窓みたいなのがあるな。


「わふ(封印結界の中からも攻撃できるように、小さな穴を開けてるんだ。みんなの注文の多さにユウナが苦労してた)」


 完全に要塞じゃないか……。


 まぁそれはいい。

 今は話の途中だ。


「えっと、今なぜ攻撃されたんでしょうか?」


「黙って話を聞くバカがどこにいる!? 先制攻撃が戦いの基本だろ!?」


 そうなの?

 でも今のは反則じゃないか?

 というか動いてないから開戦もしてないはずだろ?


「つまり私たちの話を聞くつもりはないと?」


「当たり前だ! 魔王の話を聞くやつなんかいるわけないだろう!」


 魔王?

 ……もしかして俺のこと?


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