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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱

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第三百六話 残酷な……

 橋を渡り、帝都までの道をひたすら進む。

 道は整備されており、外灯も適度にあるため非常にスムーズだ。


 だが橋よりこちら側には人が全くいなくなった。

 ナイジェルさんによると、ここから先には帝都に向かったティアリスさんたち八人を除くとウチの冒険者は誰もいないらしい。

 ナイジェルさんたちも初日こそ帝都近くの初級魔工ダンジョンに行ったらしいが、そのあとはずっと橋付近で戦っているそうだ。


 そのせいか魔物の数が急に増えた。

 そしてたくさんの死体も……。

 今が夜で良かったかもしれない。


「酷いね~。こんなに死体見たの初めてかも」


 そりゃそうだろ……。


「この橋と帝都の間が一番悲惨じゃろうな。あまり見ないほうがいいぞ」


 もう遅い……今にも吐きそうだ……。


「なんで橋よりこっちには誰も来てないの?」


「……単純にパーティ数の関係ですよ。……あまり分散するとウチの冒険者たちにも危険がおよびますし」


 あ、もうダメ……。


「メタリン、ストップ!」


 急いで馬車を降りた。


 …………はぁ、はぁ。


「チュリ(ゆっくりでいいですよ。周りは警戒してますので。お水どうぞ)」


「……ふぅ、悪いな」


 少しはマシになったかも。


「チュリ(あ、向こうから敵いっぱい来ましたね)」


 よく見えるな……。

 どうやら危険な場所で降りてしまったようだ。


 まぁピピがいれば安全だし、すぐにシルバたちも来てくれる……と思ったそのとき、俺の前方に凄い雷が落ちた。


 ……天気が悪いわけじゃないよな?

 音はそこまでではなかったがかなり広範囲の雷だったぞ……。


「大丈夫? 背中さするね」


「……」


「チュリ(この子、ヤバいです……)」


 リヴァーナさんは笑顔で背中をさすってくれてる……。


 今のが上級雷魔法か……凄い破壊力だ。

 なにより杖から敵に向けて一直線の雷じゃなくて、敵の上方から広範囲に降らせるというのがえげつない……。

 かなりの精度が要求されるはずだぞ。


 ……焦げ臭いな。

 今雷が落ちたところにあったものは全て跡形もなくなってるんじゃないだろうか。


「……ありがとうございます。少し楽になりました」


「ほんと? 馬車で横になってたほうがいいよ」


 馬車に乗ると、先に進んでたシルバたちが戻ってきた。


「わふ? (なにかあったの?)」


「チュリ(ロイス君が少し体調を崩したんです)」


「ピィ!? (えっ!?)」


「チュリ(中で休みますから安心してください。もうここからはスピードを上げて一気に帝都周辺まで行っちゃいましょうか。横から来る敵は気にしなくていいですから前方の敵だけを殲滅してください。もし避難者の方がいたら巻き込まないようにお願いしますね)」


「わふ! (わかった! 水分補給したら全力で行く!)」


 シルバ、マカ、エク、タルは気合いを入れ直したようだ。

 俺はおとなしくペンギン、メル、マドといっしょに寝ておこう。


 ……もしかしたら睡眠不足もあって気持ち悪くなったのかもしれないな。


「ゴ(俺も寝たいから後ろを誰かに任せてもいいか? この馬車に攻撃してくる敵なんていないだろうけどな)」


「チュリ(じゃあリヴァちゃんにお願いしましょうか。ジジイさんと私とタルで御者席に座ります)」


「リヴァーナさん、ゲンさんも少し寝ますから後ろをお願いしてもいいですか?」


「うん! じゃあロイス君もこっちで寝て!」


「ゴ(寝るとは言ったがこの場所を離れるとは言ってない。だから俺の横から後ろを覗いてくれてれば十分だ)」


「……ゲンさんはそこで寝るみたいですから、リヴァーナさんはゲンさんの横から見張りをお願いします。万が一攻撃されてもゲンさんが盾になってくれますし」


「え……わかった……」


「ゴ(別に意地悪してるつもりはないぞ)」


 完全に後ろのドアを閉めちゃってもいいかもしれないが、後ろから襲撃されるってのは嫌だからな。


 そして出発の準備が整い、馬車は再び走り出した。

 というか俺のせいで無駄なタイムロスになってしまったな……。


「ようやく勘が戻ってきおったわい。ワシの土魔法はまだ中級レベル並みじゃぞ?」


 ジジイがなにか独り言を言ってるようだ。

 ピピとタルはなにも反応しない。


「ピュー?」


「起きたのか。俺は少し寝るから遊んでほしいならリヴァーナさんのところに行ってくれ」


「ピュー?」


「ん? 眠いだけだから大丈夫。寝たら少し元気になるから」


「ピュー!」


「ペンギンちゃん、おいで」


 ペンギンは俺を怪訝そうに見ながらもリヴァーナさんのところへゆっくり歩いていった。


 今なんだかペンギンの言いたいことがわかった気がする。

 俺の体調を心配してくれてたに違いない。

 会話ができるようになる日も近いのかもな。



◇◇◇



 ……ん。


 …………すっかり寝てしまってたようだ。

 今どこらへんだろう?


 ……あれ?

 馬車はとまってるのか?


 ん?

 俺の横に誰かが座っているようだ。

 頭というか髪を優しく撫でられてるような感覚もある。

 ってリヴァーナさんしかいないか。


「起きちゃったかな? 体調はどう?」


「たぶん大丈夫……な気がします」


「そっか、良かった。心配したんだからね」


 ……え?


 この声はリヴァーナさんじゃない!


 完全に目が覚め、勢いよく上半身を起こす。


「きゃっ!」


 誰だ?


 …………え?


「ティアリスさん?」


「ビックリしたぁ~」


「ビックリしたのはこっちですよ……。ここはどこですか?」


「帝都近くにある大きな公園。帝都の中には入れてもらえないから、ここで最後の避難者たちを待ってるの」


「なるほど。俺が寝てる間にもう帝都付近まで来てたんですね」


「うん。今ほかのみんなには公園付近の魔物を倒してもらってる。帝都の冒険者たちもいるからかなりの戦場になってるよ」


 そういやゲンさんもいないな。

 外で馬車を守ってくれてるのか?


 ペンギンはティアリスさんの膝の上で寝てるようだ。

 どんどん人懐っこくなってくな。


「今何時ですか?」


「二時くらいかな」


「二時……」


 結構寝てしまってたんだな……。


 ユウシャ村には朝までに着きたかったが、それはもう無理そうだ。

 もしかしたら俺の指示待ちでこの場所にとまることになったのかもしれない。


「ティアリスさんたちは睡眠とれてますか?」


「少しはね。ほとんど寝た気がしないけどさ。でもあと少しだから大丈夫。帰ったらしばらく部屋から出ない勢いで寝まくるつもりだし」


 必死に笑顔をつくってはいるが顔に出てる疲労感までは隠せてない。

 本当なら今のこの時間は寝るための時間だったんだろうし。


「みんなも王国に戻ったらしばらく休みたいですよね? 宿代はしばらく無料にしますのでウチの冒険者に会ったらそうお伝えください」


「ふふっ。もうララちゃんにはそう言ってもらってるから大丈夫だよ。ここに来るまでに会ったみんなにも伝えたら喜んでた」


「そうでしたか」


 さすがララだ。

 俺とは違って気配りまで完璧だな。


「ところで、俺がここにいる理由聞きました?」


「うん。リヴァーナさんと長老さんからね。ピピちゃんの反応見てる感じ間違ったことは言ってなさそうだった。ウェルダン君を助けにユウシャ村に行くんだよね?」


「はい。でも倒れてもうすぐ一日経ちますからね。正直最悪のケースも考えてます」


「……無事だといいね。……でもね、帝都より東はさらに危険地帯になってるんだよ? ミランニャから避難してこれた人なんて本当に一番最初に逃げた人だけだし、帝都の冒険者たちも東方面にはほとんど行ってないから魔物も凄いことになってると思う。こんなこと言ったら嫌われるかもしれないけど、できればロイス君には行ってほしくない」


「いえ、そう思うのが普通だと思います。ララやマリンにもかなり引きとめられました。唯一カトレアだけはすぐにでも行ってこいみたいな感じでしたけどね」


「そっか、カトレアさんは行けって言ったんだね……」


 じゃなければ今頃俺は港町駅の管理室で寝てただろうからな。


「まぁここまで来たことですし、魔物たちを信じて行ってきますよ。シャルルも無事に連れて帰ってこないといけないですしね」


「……シャルルさんだけ? ユウナちゃんは?」


「ユウシャ村から避難してきたって人が一人でもいましたか?」


「……会ってないだけかもしれないけど、たぶんゼロだね。逆にユウシャ村に帰るっていう冒険者になら何人か会ったけど。リヴァーナさんも長老さんも今から帰るわけだしね」


「きっとそういう村なんですよ。ユウナも村に家族がいますし、説得しきれずに残るって言う可能性もあると考えてます。それに今から歩いて避難するんじゃいくらユウシャ村の人たちでも危険でしょうからね。だからシャルルだけでもって意味です」


「なるほど。……ねぇロイス君、一つ聞いていい?」


「え? なんですか?」


 ティアリスさんの質問はなぜかこわいんだよな……。


「なんでシャルルさんのことをシャルルって呼び捨てにしてるの?」


「……あ」


 マズい……。


 俺がウチのお客の冒険者を呼び捨てで呼ぶことなんてまずないからな。

 シャルルがウチに住んでることは誰にも知られてないはずだし。


「……もしかして付き合ってる?」


「え……」


 そのとき、馬車の後ろのドアが勢いよく開いた。


「ロイス君! 本当なの!?」


 リヴァーナさんが入ってきた……。

 ピピもいっしょのようだ。


 揃って盗み聞きしてたのか?


「あ、たまたま今帰ってきたところだからね!? 別に聞くつもりはなかったんだけど、なにか話してたから話が終わってから入ろうと思ってただけなんだからね!?」


 からが多いな……。


「チュリ(リヴァちゃんの言ってることは本当ですよ、ふふっ)」


 その笑いはなんなんだよ……。


「で、どうなの!? そのシャルルって子と付き合ってるの!?」


「いえ、付き合ってませんよ……」


「だよね! 良かったぁ~。ティアリスちゃん、変に疑ったりする女は嫌われるから注意したほうがいいよ?」


 自分の体験談か?

 それにティアリスさんがこんなんで納得してくれるわけないだろ……。


「リヴァーナさん、ペンギンちゃんが起きるから少し静かにしててくださいね」


「あ、ごめん……」


「さてロイス君、それならシャルルさんとはどんな関係なのかな?」


 ほら、追及が始まったぞ……。


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