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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
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第二百九十九話 潜入者

「ピュー!」


「キュ! (可愛いのです!)」


 ペンギンとメタリンたちは仲良く遊んでいるようだ。

 メタリンが船や海をこわいって言ってたのはどこにいったんだよ……。


 まぁそれはもういい。

 今は新たな問題が発生した。


「で、なんで船に乗ってるんですか?」


「え……だってロイスさんが屍村に行くと聞いて、心配になってしまって……」


 ユウナのお兄さんであるユウトさんが先に客室に乗り込んでたんだ。

 船は俺たちが乗ってすぐに出航したから、降りてもらう時間もなかった。


「ロイス君、まぁいいじゃないですか。たった三時間ですが楽しい船旅と行きましょう。なにか飲みますか?」


 いやいやカトレアさん、そういうことじゃなくてだな……。

 この人がいると色々面倒なことになりそうな気がしてならないんだよ。


「……心配してくれるのはありがたいですが、なぜユウトさんまで来る必要があったんです? 長老からは王国で村のみんなを守るように言われたんですよね?」


「そうなんですけど、あのダンジョンならまず安心ですし。それに……」


「それに?」


「……もしかしてロイスさん、ユウシャ村に行かれるのでは?」


「え……なぜそう思ったんです?」


「やはりそうなんですね。ただ屍村に行くくらいならみなさんあそこまで心配しないでしょうし」


 なかなかよく観察してるようじゃないか。

 ユウナとはだいぶ性格が違うのかも。


「カトレア、カフェラテを頼む。ユウトさんにも」


「はい。お菓子も食べましょう」


 カトレアはどこか旅行気分なんだよな~。

 今から行く場所は悲惨なことになってるかもしれないのに。


 すぐにお茶菓子がテーブルに並んだ。

 カフェラテを一口飲み、リラックスした状態で話を再開する。


「まだたっぷり時間はありますからのんびりいきましょうか。で、俺から話を聞くためだけにこの船に乗ったんですか?」


「いえ、僕もユウシャ村まで護衛として連れてってください!」


「ダメです」


「え……」


「単純に足手まといだからです。ご自身でも強くないみたいなこと言ってたじゃないですか。俺の魔物と同等以上の強さじゃない限りは護衛される側です。帰りは徒歩ということも考えられますし、それにユウシャ村のみなさんはユウトさんより強いんですよね? それならユウトさんを連れて行く理由がなに一つありません」


「……」


「ロイス君、理由を聞かせろとも言われてないのに、一方的にそこまで言ったら失礼ですよ」


「そうか。すみません」


「いえ、その通りですので……」


 シルバもユウトさんを強そうには見えないって言ってたしな。


 というか話が一分で終わってしまったぞ……。


 ユウナのことでも話すか?

 大好きな妹の話ももっと聞きたいだろ?


 その前にリヴァーナさんのことを聞いておこうか。


「もし屍村にリヴァーナさんがいたらどうするんです?」


「え……それはもちろん久しぶりに挨拶でも」


「あんな別れ方をしたのに気まずくないんですか? 向こうはユウトさんに会いたくないかもしれませんよ? それにもし屍村の誰かからユウトさんのことを聞いて、結婚したこととかも知られてたらどうするんです? リヴァーナさんがもうユウトさんには全く関心がなくて、ただの幼馴染として会ってくれるのであればなにも問題ないんでしょうけどね。あ、彼女は今ソロの冒険者として名を馳せてるらしいですよ?」


「えっ!? ソロ!? もしかしてリヴァはあれからずっと……」


「たぶんそうなんでしょうね。誰かとパーティを組むのが面倒だからとかなんとか言ってたみたいです」


「そんな……」


 わかりやすく落ち込んだな……というか泣いてる?


「そのリヴァーナさんという方のこと、私にも詳しく聞かせてください」


 カトレアは興味津々のようだ。

 ユウトさんが落ち込んでるのをよそ目に、シモンさんやユウトさんから聞いたことを全て話した。


「なるほど……。彼女は強くなりたい以前にユウトさんとずっといっしょにいたかったのではないでしょうか。それにずっといっしょにいてくれるものだと思ってたんだと思います」


 これ以上落ち込ませるなよ……。


「いつか戻ってきてくれると信じてソロでいようと決めたんじゃないでしょうか。もしかしたらずっと探してくれてるかもしれません」


 追い討ちかのように続けるな……。


「もし私がそんな気持ちだとしたら、相手が結婚したなんて聞かされた日には……」


 ……どうするんだ?


「これ以上は悲しくなるので言えません。彼女がユウトさんのような男性というか人間に嫌気がさして、パーティを組むこと自体面倒になったことを願いましょう」


 それを願っていいのかよ……。

 ユウトさんだけじゃなく人間に嫌気がさすってのは問題だと思うぞ……。


「でもアグネスたちとは仲良くやってたみたいだし、ララやエマにも好意的に接してたって言ってたぞ?」


「ふむ、女性と接するのは問題なしということですか。なら男性不信になったか、ユウトさんを想い続けてるかのどちらかでしょうね」


 なんでその二択……。


「パーティを組もうと思える仲間が見つかってないだけかもしれないだろ? それならいつかいいパーティに巡り合えるまでソロでいたほうが気楽だろうし」


 俺はいったい誰のフォローをしてるんだろうか……。


「ロイス君、パーティを組んでしまったらなにもかも終わりなんですよ?」


 終わりって……。

 確かにユウトさんとパーティを組むことは難しくなるけど。


「というかもう終わってるんですけどね」


「おい……」


 さらに落ち込ませるようなこと言うなよ……。

 本人が一番身にしみて感じてるんだからさ。


「じゃあカトレアはリヴァーナさんが魔道士としてレベルアップしなくても良かったと思ってるのか?」


「別にそうは言ってません。パーティを解散し、別のパーティで魔道士を続けながらも、ユウトさんとリヴァーナさんがいい関係を築ける方法があったんじゃないかと言ってるだけです」


 まぁそれが理想だよな。

 ……理想だった、か。


「で、再度お聞きしますけど、屍村にリヴァーナさんがいたらどうするおつもりですか?」


 いや、さっきそれを聞いたのは俺なんだけど……。


「……今は会わないでおこうと思います。もしリヴァが王国に来たらそのとき改めて昔の謝罪をしたいです」


「まぁいいでしょう。リヴァーナさんの前では結婚したことやお子さんができたことを嬉しそうに話すのはやめてくださいね?」


「はい……。お二人に相談できて良かったです。ありがとうございます」


 良かったのかよ……。

 たぶんカトレアは他人事だと思って楽しんでるだけなのに。


「ロイス君」


「……なんだ?」


「ユウト君にウチの従業員になってもらうのはどうですか?」


「えっ!? 僕がですか!?」


 もう君付けかよ……それにウチの従業員って。

 ユウトさんはいきなりの話にビックリしてしまってるじゃないか。


「あのなぁ、ユウトさんは冒険者を続けるか辞めるかを悩んでる最中なんだよ。だからそういうことはせめて辞めるって決めてから話すもんだろ」


「別に冒険者を辞めろと言ってるわけじゃありません。修行も兼ねてウチで働かないかと言ってるんです」


 なんだかさっきも同じようなフレーズを聞いたような……。


「例えば魔道カード発行業務は魔力持ちだと助かりますし、魔道プレート設置作業でしたら土魔法が大活躍です。風魔法も使えるんでしたらメルちゃんとマド君並みの仕事量を期待できるかもしれません」


「……確かに。おまけに開通確認もできるな」


「はい。それに従業員にならロイス君も安心して魔道プレートを任せられるでしょう?」


「まぁそれはそうだけどさ……」


 初級とはいえ全系統の攻撃魔法を使えるんだもんな。

 魔道プレート設置作業以外にも建築現場でも大活躍しそうだ。

 水魔法があるとどこでも手を洗えたりして便利だし。


「魔法や魔力の使い道って魔物を倒す以外にもいっぱいあるんですね……」


「そうですよ。まだお若いんですから錬金術師にだってなれたりもするかもしれませんからね」


「錬金術師……僕が錬金術師……」


「それに王国では冒険者として活動し始めるのはほとんどの方が十六歳になる年齢からです。つまり今のユウト君の年齢ですよ。一番伸び盛りのころなんですから自分の限界を勝手に決めるのはやめたほうがいいと思います」


「……はい」


「だから悩むのなら全部やってしまえばいいんです。その中で自分がしたいことや自分に合ってることを見つけていくんです」


「全部やってしまえばいい……」


「そうです。ロイス君なんかやりたくないことだらけですけど結局全部やってしまうんです。やらないよりやったほうがいいに決まってますから」


 それは少し例えが違うんじゃないか……。


「……さすがです」


 さすがなんだ……。


「私がユウト君に言いたいのは、可能性は無限大ってことです。もしウチで働きたくなったらいつでも声をかけてください。魔力持ちは大歓迎ですし、魔力を使わない仕事だってたくさんあります。一度大樹のダンジョンを見学に来られるといいですよ」


「はい! ありがとうございます! よろしくお願いします!」


 なんか洗脳してるみたいだな……。


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