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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
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第二百九十六話 新作防具

「「「「えぇーっ!?」」」」


 会議スペースに集められた従業員たちが俺の話に驚く。


「大丈夫なの!?」


「死んだらどうするんですか!?」


「やめたほうがいいよ……」


「ウェルダン君が魔瘴に耐えられる可能性にかけてみては?」


 続けて、さっき判明したばかりの魔物使いの能力らしきことを説明する。


「……それなら行くしかないかも」


「いっしょに行くシルバ君たちの負担も減るってことだよね?」


「ウェルダン君も最速で治る可能性がありますね!」


「私たちも覚悟を決めてサポートしましょう」


 もう少し悩んでくれよ……。

 せめてララがこの場にいてくれたら……同じか。


 ユウナちゃんたちを助けてきてとか言われそうだ。

 メタリンがウェルダンのように倒れてしまってはどうしようもないしな。


 ……いや、やっぱりララだけは反対してくれるかも。


「というわけで武器防具職人のみなさん、今から早急にロイス君の装備品の準備をお願いします。それと厨房のみなさんはいつも通り食料の準備をお願いしますね。ユウシャ村の人たちの分も考えて多めにしてください。では会議は終了です」


 カトレアの締めの言葉で会議はお開きになった。


「ロイス、本当に大丈夫なの?」


「アイリスちゃん、武器の相談をしたいので鍛冶工房に行きましょう」


「……ん、わかった」


 せっかく俺を心配してくれたアイリスだったが、カトレアに強引に連れて行かれることになった。


 そして俺の元にはフラン、ホルン、エルルが寄ってくる。

 そういやクラリッサとメイナードは助っ人で朝から港町に来てたな。


「大丈夫だからね! 私たちの防具を信じて!」


「もう防具は出来上がってます!」


「最新作です! きっと気に入っていただけると思います!」


 いや、別に防具がどうこうというより、魔物がうじゃうじゃいる魔瘴の中に突っ込んでいくのがこわいんだよ……。

 だって俺、地下二階の魔物急襲エリアにすら入ったことないんだぞ?

 死ぬ気しかしない……。


「これ見て! ロイス君のために作ってたんだよ!?」


 フランが傍に置いてあった布を勢いよく剥ぎ取った。

 その布の下には上下の服を着せたマネキンが隠れていた。


 …………ん?

 見たことのない服、いや、防具だな。

 黒を基調として艶もある。


「素材はなに使ってるんだ?」


「カイッコの絹とダンジョン綿の合成素材の上にマグマドラゴンの皮を縫い付けたの! さらにその皮にはミスリルの糸を編み込んであるの! だから鎧ほど重くはないし、防御力もかなり高めと思ってもらっていいよ!」


 マグマドラゴン……それにミスリルの糸だと?

 なんだか面白そうな防具を作ってるじゃないか。


「じゃあこの光ってるのはミスリルで、黒く見えてるのがマグマドラゴンの皮ってわけか」


「うん。マグマドラゴンの元の赤でもきれいだと思ったんだけど、黒でお願いって言われたから染色したんだよ」


「ん? 誰に?」


「ララちゃんに決まってるでしょ。前からロイス君のために防具を作ってって言われてたの。外出するときの普段着用としてね。でも昨日港町駅行ってみて、人が多いからもしなにかあったら大変と思って急いで仕上げたところだからちょうど良かったかも」


 ララもフランたちも心配しすぎだろ……。


 それにドラゴンにミスリルだぞ?

 ただのダンジョン管理人なのに、常にこんな大層な防具を装備しておけってか……。


「でもなんで黒なんだ?」


「ララちゃんが言うには魔王は黒っぽいイメージだからなんだって」


「は? なんで魔王をイメージするんだよ……」


「ロイス君のほうが魔王より上だってことを見せつけるためじゃない? 同じ魔物を従えるものとしてさ」


「それじゃまるで俺も魔王みたいじゃないか……」


 そういや前にドラシーにも言われたな。

 俺と魔王は似たようなもんだと。


「ロイス君は戦闘タイプ的には前衛になるの?」


「う~ん、前衛は痛そうだから嫌だな。でも背後は誰かに守ってもらいたいから中衛か? 武器は片手用の剣しか扱ったことないし、盾は重いから嫌だ。魔法を使ってみたいから魔法杖を装備してもいいな。というか俺が戦闘をしたら邪魔になるだろうから馬車の中で隠れてるつもりだけど」


「「「……」」」


 わがままと思われても仕方ないが、俺はウチの冒険者たちみたいには戦えないからな。

 きっといまだに地下二階が精一杯のGランクだろう。


「とにかく着てみてよ! 最終調整するから!」


 すぐそこの試着室で着替える。


 ……悪くないな。

 軽いし、可動域も広い。

 それにかなり頑丈そうだ。

 これならブラックオークの槍が刺さっても……とまではいかないかもしれないが、ある程度の攻撃なら大丈夫な気がする。


 よく見るとドラゴンの皮を小さく加工した物を何枚もきれいに貼り合わせて柄みたいにして作ってるのか。

 フランたちの仕事の丁寧さがわかる一品だな。


 ……なんだかだんだんカッコよく思えてきた。

 特に艶があるのがいい。


 そして試着室を出る。


「「「おお!?」」」


 三人から歓声があがった。


「カッコいい!」


「似合ってます!」


「最強って感じです!」


 そうか?

 まぁ確かにこの防具を着てるだけでも強く見えるだろうし、俺自身少し強くなった気もしてることは確かだ。


「頭はどうする? 同じ素材で作成中の物があるけど」


「頭装備は大事だからな。見せてくれ」


「うん! ……はいこれ!」


「おお!? 兜みたいなのを想像したが、オシャレな帽子じゃないか!」


「そうなんです! ロイスさんは兜を嫌がると思ったので、普段使いでもおかしくないようなデザインにしてみました!」


 これはエルルが考えたのか。


 服と同じ素材を使ってるだけあってかなり丈夫だ。

 軽いから首が疲れることもなさそうだし、少し激しい程度の動きなら脱げることもなさそうだな。

 なによりデザインがいい。

 一見シンプルな黒のハットに見えるが、服と同じで何枚もの皮が貼りあわされてるし、ミスリルの糸による艶も出てる。

 つばがそこまで広くないのもいいな。

 まさに全身セット装備って感じだ。


「どう?」


「最高だ。ありがたく使わせてもらうよ」


「本当!? もっと激しい動きをするんだったらバンダナバージョンも作ってあるから! これなんだけど」


 ……ほう、いいじゃないか。

 こっちのデザインもいい。

 ヒューゴさんやジョアンさんみたいなレンジャータイプの人にお勧めしたくなるな。


 でもハットタイプも捨てがたい。


「バンダナの上にハットを付けるってのはどうだ? それなら落ちにくくなったりしないか?」


「やっぱりそれがいいですよね!? フランちゃん、早く出して!」


「うん……これは私の負けみたいだね」


 なにを競ってるんだよ……。

 しっかり作ってあるところはさすがだけど。


 というかエルルは鎧装備以外の防具のデザインやアイデアも出し始めたのか。


 もしかするとこの服もエルルが考えたのか?

 今までのフランのデザインとは違いすぎるもんな。

 エルルがアイデアを出してくれるんならフランたちも助かってることだろう。


「これはここで販売しないのか?」


「作業時間を考えると今の人手では難しいですね。ほかの装備品が作れなくなります」


 それは困る。


 でもホルンも悩ましいところなんだろうな。

 フランとエルルは作りたい物を作ってたい気持ちのほうが強いだろうし。

 ホルンの立場からしたら多く売れる物を作ってもらわないと経営問題になるし。

 もちろんホルンもフランたちの意志はできるだけ尊重したいはずだからな。


 でもほかにもフレヤさん、カミラさん、クラリッサ、メイナードもいるのに人が足りなくなるのか。


 まぁ冒険者たちは毎日激しい戦闘をしてるから防具もすぐボロボロになって買い替えの頻度が増えるのも当然か。

 そのことも考えて初級者向けの装備はだいぶ安くしてるんだもんな。

 高いものは丈夫だからそっちを買えとはさすがに言えないし。


 それに加え下着やトレーニングウェアや水着も作ってる。

 カミラさんたちには美容院もやってもらってるわけだし。

 あ、タオルとか生活用品も作ってもらってるな。


 ……あれ?

 防具職人の人足りてなさすぎじゃないか?

 何気に厨房よりもヤバくない?

 というか防具職人とは呼べないような仕事までしてもらってるな……。


「利益は出てたよな?」


「はい、原価は魔石換算で計算してますが、かなり好調です」


「ララとは従業員を増やすとかいう話はしてないのか?」


「たまにしますけど、職人はなかなかいませんし、今まではなんとかなってましたからね」


「そうか。でも今後帝国の冒険者たちも来るんだから増員は絶対に必要だ。今なら移住してきた人たちの中に防具職人や鍛冶師だっているかもしれないし」


「あ、確かに」


「早速募集してみるか。駅の24ストアでは武器防具類は売ってないから、まさかウチで武器防具を生産してるなんてまず思わないだろう。もしかしたら働き口を求めてマルセールに来るかもしれないし、別の町に行ってしまうかもしれない。冒険者たちと同じように仕事を全うして最後に移動してくるんなら明日か明後日に来る人もいるかもしれないな。とりあえず駅にビラでも貼ってみようか。メロディさんには言っとくからさ」


「はい! 最低でも防具職人二人に鍛冶職人一人は欲しいです!」


「そうだな。じゃああとは頼んでいいか? 息抜きがてら港町に行ってみるといい」


 ホルンとの話が終わるのを待っていたのか、そのあとはフランとエルルにさらに防具を色々着せられた。

 そして二人は最後の仕上げに入った。


 夜は寒くなるからと、新作のコートまで用意してくれてたようだ。

 さっきの黒とは違い、上から下に徐々に濃くなっていくきれいな緑のグラデーションだ。

 背中部分に大樹の刺繍がされているのもいい。

 しかもこの大樹エリアに入る少し手前の道から見た大樹だ。

 みんな毎日この大樹を見ながらこの道を歩いてきてたんだよな。


 もちろんこれも防具だから、暖かいだけじゃなくかなり丈夫に作られている。 多少動きづらくはなるだろうが、これを着たまま戦っても良さそうだ。


 ここまでしてもらってるんだから絶対に死ねないな。


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