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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱

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第二百八十三話 雇用増進

 二十二時になったころ、ミーノとリョウカが港町駅の管理室にやってきた。


「待合室だっけ? まだまだ人たくさんいるんだね」


「もう住居は全員に割り振ってあるんだけどな。きっと不安なんだろう」


 管理室に入る前にそっちを見てきたのか。

 まだみんな情緒不安定だから危険がないとも限らない。

 まぁ従業員には魔道ダンジョンに入るときには一人最低一匹はウサギを護衛に付けるように義務付けてあるから大丈夫だとは思うが。


「はいこれ。こっちがヴァルトさんに渡す帝国用で、こっちがここで販売する用ね。それとこれには生の食材が入ってる」


「ありがとう。みんな体調崩したりしてないか?」


「うん。それとさ、子供たちはいつも通りの時間に帰らせるつもりだったんだけど、どうせ明日の朝も早いからダンジョンに泊まりたいって言ってきたの。だから三日間ほど泊まることになるけどいいよね?」


「あぁ。親には伝えたか?」


「さっきリョウカちゃんと手分けしてみんなの家に行ってきたから大丈夫」


「そうか。でも今だけだって言っとけよ。あいつら、そのまま住みつこうとしてるかもしれないからな」


「え……知ってたの?」


「メロさんから聞いた。一人暮らしなんていつでもできるんだから、せめて子供の間くらい家で家族と住んだほうがいい」


「そうだね。今日だってみんな同じ部屋に集まって寝るお泊り会みたいなものだし、すぐ家に帰りたくなるよ」


 だといいんだけどな。


「アグネスとアグノラも帰ってきてたか?」


「うん。あんなに疲れてる二人を見るのは初めてだったかも」


 やはり疲れてたのか。

 ここではそんな素振りいっさい見せなかったのに。

 昨日は船の中に長時間閉じ込められたりして大変だったろうからな。

 屍村でも色々あったようだし。

 それでもう今日にはこっちに帰ってきてるんだから疲れてないわけがない。


「でも女子組のお泊り会には参加するみたいだけどね」


 女子組……。

 モモ、ハナ、アンにアグネスとアグノラか。


「あ、言うの忘れてたけど、エルルちゃんとルッカちゃんも泊まってるから。仲間外れは可哀想だからね」


 ……まぁいいか。


「ねぇ、それって私だけ仲間外れじゃない?」


「「「……」」」


 少し離れたところにいるマリンが話に入ってきた……。


 機嫌があまりよろしくないようだ。

 仲間外れにされたからではなく、魔道カード改修、住居構築などの作業で錬金術師たちは手も頭も休める時間がない。

 住居構築はコピーでいいとしても魔道カードのシステム改修はそう簡単にはいかないようだ。

 あとは働いた給料をP付与する魔道具の作成だけのようなんだが……。


「冗談だよ。はい、完成。あとはウチに戻ってこれをいっぱい複製してくるだけ」


 もう終わったのか。

 明日朝までかかるかもしれないって言ってたのに。

 さすがに複製はドラシーに頼むんだな。


 無事に終わってホッとしたのか、錬金術師の五人はグッタリしている。

 ミランダさんも無理して手伝ってくれなくてもいいのに……。


「待合室に行こうか」


 ミーノとリョウカを連れ、待合室に……本当にまだ人がいっぱいだな。

 さすがにわいわい騒いでる人はいないようだ。

 というかここで寝てる人もいるじゃないか。

 家に帰ればいいのに……。


「ロイスさん!」


 ……メロディさんか。

 またなにか注文か?


「どうしました?」


「住居のことなんですけど……あんなに立派な部屋に住ませてもらってよろしいのでしょうか……みんな逆に不安がってまして」


「普通の部屋なので大丈夫ですよ。それに説明しましたように、給料から200P天引きさせてもらいますので実質は賃貸もしくは宿屋みたいなイメージですので」


「その200Pというのが安すぎなんじゃないかと思ってるんです。あの部屋のグレードでその料金というのが……」


「大樹のダンジョンでも同じ料金の部屋を提供してますよ。こっちの部屋はいっしょに住まれる人数の関係とかで部屋を広くしたり、設備を増やしたりはしてますけど」


「本当によろしいのでしょうか……」


 いい加減物価の違いに早く慣れてほしいもんだけどな。

 特にこのメロディさんは移住者への説明や案内役を買って出てくれたんだからさ。


「あ、ウチの従業員のミーノとリョウカです。特にミーノはウチの厨房の取りまとめ役ですのでしばらくは顔を合わす機会も多いかもしれません。あ、昼間来てた肉屋さんの娘でもあります。リョウカはウチの宿屋の総責任者でして、リョウカの父親はマルセールの宿屋協会という組織の会長をしてます」


「……お二人ともお若いのに凄いですね」


「ウチの従業員の8割方は俺に近い年齢の者ばかりですからね。この二人の妹もウチの従業員ですよ」


「……ロイスさん、やはり娘も働かせていただけないでしょうか?」


 またそれかよ……。


「あのあとマリンさんを見て、私も娘も自分たちの甘さに気付かされました」


 いやいや……屍村で暮らしてたんだから甘くはないと思うけど……。


「マリンさんは魔道カードを発行してる間もみんなに声をかけながらずっと笑顔で仕事をされてたんです」


 今は仏頂面してるけどな?

 俺が愚痴を言おうもんならその百倍は返ってくるぞ?


「屍村の住人はともかく、ほかの町から来た人たちはその笑顔に癒されたと思います。みなさん暗い話題しかないでしょうから」


「娘さんだってみんなを気にかけてたくさん声かけたりしてるじゃないですか」


「それはマリンさんを見たからです。落ち込んでる相手にあえて笑顔で接することで元気付けられると知ったからなんです」


 いや、マリンはそこまで考えてないと思うぞ……。

 基本的に明るいし、お客の前ではいつも笑顔だからそれが染みついてるだけだ。


「どうでしょうか? もう錬金術師にとは言いません。なにかあの子にでもできるようなことはないでしょうか?」


「ロイス君、それならここでお弁当作るってのはどう?」


「あ、それいいと思うよ。私たちの負担も減るし、みんなの仕事にもなるだろうし」


 確かにそれはありだな。

 移住者が増えたらその分雇う人も増やせばいいし。

 みんなが自炊できるわけでもないから弁当は絶対に必要になるし。


「じゃあまずは料理人でもいいですか?」


「はい! 喜ぶと思います! ありがとうございます!」


「ちょうど今あそこのスペースに弁当屋を開く準備をしようと思ってたところなんです。その裏に厨房スペースを作りましょうか。みなさんに軽食をお出しするのは最初だけなんで、そこらへんの規律も守るように言ってくださいね。じゃないとみんなタダの料理ばかり食べて経済が全く回らなくなります。それは結果的にみなさんの給料に直結することになりますから」


「え……はい……」


 まだもう少しなら拡張もできるって言ってたしな。


 この待合室は急ぎで作ってもらったから配置がほとんど適当だ。

 当初はマルセールでの買い物を想定してたからな。

 明日にでもこの待合室全体を考え直さないといけない。

 今はあくまで待合室のおまけで隅っこに店舗も並べてみたって感じだ。


「ミーノ、明日の早朝からしばらくここ勤務でいいか?」


「うん! 任せて! でもさすがにあと二人くらい誰か連れてきてもいい!?」


「あぁ。人選は任せる。しばらくはウチの支店みたいな感じになるだろうから品質はなるべく落とさないように頼むぞ。魔力は節約したいから弁当の個別状態保存は使いたくない」


「わかった!」


「というわけでメロディさん、調理要員を十人ほど探してください。経験は問いません。あと弁当販売要員もお願いします」


「わかりました!」


 ここならウサギも使えるんだが、それはやめておこう。


 ん?

 一人の女性がゆっくりと近付いてきた。


「あの……私お弁当屋さんの店員やりたいです」


 早い。

 その積極性は素晴らしいと思う。


「弁当屋の販売員ですか? それとも厨房に入っての調理員ですか?」


「販売員のほうです。接客業をやってみたかったので……」


「じゃあ今からお願いします」


「え……」


「やることはいっぱいありますから。まずウチのシステムを覚えてください。それに王国の物価事情も」


「はい……よろしくお願いします」


「ロイス君、急に言われたら混乱するよ。ここは私に任せて、ミーノと管理室に行って厨房設置のお願いしてきたらどう?」


「ん? そうか、じゃあ頼んだ」


 ここはリョウカに任せ、ミーノと管理室に戻ることにするか。


 そしてカトレアに事情を説明する。

 ……眠そうだな。


「そういうことならいいでしょう。でもこちらのダンジョンには厨房用の設備をなにも登録してませんので、一度大樹のダンジョンに帰らないといけません」


「ん、じゃあこのあとミーノたちが帰るときにいっしょに帰ってくれ。どうせさっき作った魔道具も複製しないといけないんだろ?」


「……わかりました」


 カトレアの目つきが少しこわいような気がしたので、目を合わせないように言った。


「チュリ(今は疲れてるからダメですって。せめてロイス君もいっしょに帰ったほうが良さそうですよ)」


 やはりそうか。

 俺は帰ってもなにもすることはないが、とりあえず機嫌取りのために付き添いで帰るとしよう。


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