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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱

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第二百八十二話 サウスモナ町長

 カトレアとメタリンといっしょにマルセールにやってきた。

 魔道列車で五分だからすぐだな。


 そして管理室に……ん?

 ドアの前に人が数人いる。

 この格好は冒険者か?


「おい! スライムだ!」


「なにっ!? ……あれってまさか」


「絶対そうだって! もうオーラが凄いもん!」


「後ろの女の子、魔力がヤバくないか?」


 オーラってメタリンのことか?

 それとも俺?

 もしくはカトレア?


 どうやら町長たちの護衛として来た冒険者パーティっぽいな。


「サウスモナからいらっしゃったんですか? ご苦労様です」


「「「「いえ、お疲れ様です!」」」」


 いや、そんなにかしこまらなくても……。

 見た感じ年齢は二十代半ばから三十といったところか。

 ベテランと呼ぶにはまだ早いな。


「ここはウサギが守ってくれてるので安全ですよ。みなさんも駅の外にでも出てご休憩なさっててください」


「いえ! 仕事中ですから!」


「そうですか。ではここでお待ちください。カトレア」


「はい」


 カトレアはレア袋からテーブル一式を取り出した。

 そして適当にドリンクと軽食を並べる。


「「「「……」」」」


「遠慮なくどうぞ。どれも大樹のダンジョンで出してるものです。ではこれで」


 管理室に入るとジェマが出迎えてくれた。


 どうやらメアリーさんがサウスモナ町長たちの相手をしているらしい。

 セバスさんは港町のほうの仕事でそこら中駆けまわってるからな。

 というかメアリーさんが副町長なんだからここにいないとマズいか。


 ソファには四十歳くらいの男性と五十半ばくらいの男性とベンジーさんがいる。

 どっちが町長だ?


「お待たせして申し訳ありません。大樹のダンジョンの管理人をしておりますロイスと申します。こっちは錬金術師のカトレアです」


「初めまして! サウスモナ町長のリッカルドです! お二人のお噂はこの半年間ずっと聞いていましたよ! お会いできて光栄です!」


 若いほうの男性が勢いよく立ち上がり俺たちに握手を求めてきた。

 あまりの勢いにカトレアも困惑しているようだ。

 流れでギルド長とも握手をする。


 ベンジーさんも立ち上がり、俺と握手……じゃなくて席を移動したようだ。

 俺がメアリーさんの隣に座れということか。


 カトレアはベンジーさんが座ったほうのテーブルの席に座る。

 ジェマは入り口で立ったままだ。

 メロさんはたくさんの画面がある仕事席に、こっちに背を向けて座ってる。

 まだ仕事中だからな。


「いやぁ~! 実際にお会いしてみると本当に若い! あ、ロイス君と呼ばせてもらってもいいかな!?」


「……はい」


「ここにマルセール町長がいないのは残念だが、なにやら事情がおありの様子。その前に、急にこんな夜にお伺いして申し訳ない! もちろん事情は全部ベンジー君から聞いて知ってるんだ! お忙しいときに本当にすまない!」


 町長さんは頭を下げる。

 ギルド長さんとベンジーさんもそれに合わせて下げてくる。


 なんとなく俺も頭を下げる。

 なんだこれ。


 忙しいってわかってるんならなぜ来たんだ?

 今すぐ魔道化をしてくれって言われても無理だぞ?

 それに町のみんなでやるって言ってたのはつい昨日のことじゃないか。

 どっちにしろゲンさんもメルもマドもいないんだからな。


「私はこの度の王都の対応には辟易してるんだ。いくら帝国とは関りが薄いからって、人の命がかかってる状況でそんなこと言ってる場合じゃないだろうに。それに帝国も帝国だ。王国からの助けがいらないなんて本気でそう思ってるのか?」


 うん?

 なにが言いたいんだ?

 俺たちと気持ちは同じだってことを伝えに来たのか?


「だがなにもできない私たちは結局は王都や帝国と同じ。ただ傍観してるだけの第三者。私たちの町で変わったことと言えばナポリタンへの船が出なくなったことくらい。それ以外は本当にいつもと変わらぬ風景」


 よくわかってるじゃないか。

 俺でさえまだ半分はそんな気でいるんだからな。

 実際に動いてくれてる冒険者たちのことは本当に尊敬する。


 どうやら話がわかりそうな町長のようだ。


「だからなにか私たちのような者にでもできることはないか考えたんだ。まず船の操縦士なら数人は出せるし、なによりその数人は行きたいと言ってくれた」


 ほう?

 それはつまりそういうことだよな?


「サウスモナを拠点にしてる冒険者も行かせたいところではあるが、はっきり言って大樹のダンジョンの冒険者に比べたら……とベンジー君が言うので、無理はさせられない」


 うん、それでいい。

 自分の命を守れないようなら行くべきではない。


「だからあとは移住者たちに対してなにかできないかということになる。そこでもし移住者が希望してくれるのならサウスモナでも積極的に受け入れたい。もちろんしばらくの生活費の支援はさせてもらうし、職探しの支援などもできればいいと思ってる」


 おお?

 素晴らしいじゃないか。

 まさかそんなことを言ってくれる町がマルセール以外にも存在するとは。


「だけどそれはサウスモナの町が安全だという前提での話になるんだ」


 なに?

 ここできたか……。


「マルセールやここの隣にある三つの村は魔道列車が通ってるし、魔道化も半分は完了していると聞いた」


 魔道化という言葉まで知ってるのか。


 ベンジーさんを見ると申し訳なさそうに下を向いている。


 まぁいずれこうなることはわかってたんだけどな。

 そのうえで魔道柱や魔道線、ミニ大樹の柵を渡したようなもんだし。


 ん?

 まさかもう町の人たちで設置は終わったってことなのか?

 町の安全の話をしてきたということは、もしかしてあとは封印魔法をかけるだけの状態ってことか?


 な~んだ。

 てっきり魔道列車を延伸してくれって言いに来たのかと思ったじゃないか。


「どうだろう? 無理を承知でお願いしたいんだけど、魔道列車をサウスモナまで延伸してもらえないだろうか?」


「……は?」


 聞き間違いか?

 言ってることはマッシュ村の人たちと同じだぞ?

 それどころか王都といっしょだぞ?

 さっきあんなに批判してたのに。


「誤解しないでほしい。これは移住者たちに仕事を与えるという意味も込めてるんだ」


 移住者たちに仕事?


「……その延伸作業を移住者の方にやってもらうってことですか?」


「そう。その作業に関する給料はサウスモナが出させてもらうから」


「えっ!?」


 驚いたのはメアリーさんだ。


「もちろんロイス君たちがやったほうが作業は正確だろうし、大事な魔道プレートだっけ? それを他人に触らせないですむということもある。それにマッシュ村や王都から作業依頼が来てることも知ってる。だけど今はそんな暇ないと思うし、なにやら貴重な材料が必要ということも聞いた」


 そこまでわかってるんならなぜ?

 そんな簡単にできないことはわかってるってことじゃないか。


「だから魔道列車の延伸はむりやり仕事を作ろうとしたと考えていただけないだろうか? 移住者のためにできることと言ったら、やはり仕事をしてもらって給料をお支払いするという方法が一番いいんじゃないかと思うんだ」


 本当にそう思ってるのか?

 移住者を都合のいいように利用して魔道列車を開通させたいだけなんじゃないのか?


 なんだかやっぱり金儲けのためとしか思えなくなってきた。


「……やはり無理かな? 駅を作るための材料が簡単には手に入らないと聞いてるから、それなら封印魔法に備えて魔道プレートだけでも埋めてもらいたいところなんだけど……駅は別になくてもいいから封印魔法だけでも届くようにしてもらいたいんだ」


 封印魔法?

 駅はなくてもいいだと?

 魔道プレートを埋める作業が封印魔法のためだけになってもいいと言うのか?

 確かにそれならサウスモナの安全は保障されるようなもんだとは思うんだが。


「あの、管理人さん、実はな……」


 ベンジーさんがようやく口を開いた。

 こうなった理由をきっちり説明してもらわないとな。


「昨日ララちゃんが出発前にギルドに来てくれたんだよ」


 ララが?

 あ、そういやサウスモナから出航したんだったな。


「急いでたはずなのに、帝国の状況を伝えに来てくれてさ。そしたらゲンさんとメルとマドもいるって言うじゃないか」


 ……だから?

 そんなに魔物たちと仲良かったっけ?


「そのメンバーと言ったら魔道化だろ?」


 まさか……。


「だからララちゃんに無理言ってお願いしてさ、サウスモナの町を半魔道化してもらったんだ」


「え……」


 おい……。

 そんなことしてる場合じゃないだろ……。


「でもそのおかげであとは封印魔法をかけてもらうだけで町は安全なんだ」


 だからどうしたんだ?

 封印魔法をかけようにも今は人がいないのはわかってるだろ?


「その恩に報いるためにも仕事を紹介させてほしいってことだと考えてくれないか? 別に魔道化の作業じゃなくてもいい。ですよね町長?」


「もちろんその通りだよ。町の中にだって仕事はたくさんあるし、町のみんなも事情を話せばきっと受け入れてくれる。魔道化の仕事をお願いしたのはそのほうが移住者の人たちも仕事がしやすいと思ったってこともあるんだ」


 それはまぁそうだな。

 移住者同士で仕事をするほうが気持ち的にも楽だろうし。


 でもそれとこれとは別の話だ。


「ロイス様、リッカルド町長は元冒険者らしいですよ」


「え? そうなんですか?」


「初級でヒィヒィ言ってるレベルだったけどね。二十歳過ぎまでやってたけど限界を感じて辞めることにしたんだ。大樹のダンジョンにも通ってたことがあるんだよ」


 へぇ~。

 なんだか急に親近感。


 ……でもだからといって簡単に魔道化なんてできないからな?


「帝国に行った冒険者たちの気持ちは痛いほどわかってるつもりなんだ。私だって助けに行けるもんならすぐにでも帝国に行きたい。町の冒険者たちにどうか助けて来てくれとお願いもしたい。でも死ぬのが目に見えてる。だってロイス君は中級者、初級でも中級に近い実力の冒険者しか行くことを許可しなかったというじゃないか。それだけのリスク管理をして、さらに移住者を受け入れようなんて決断はこんな短時間の間にとてもできることじゃない。大樹のダンジョンという組織は町という存在を越えてるんだよ。でも私たちにだってなにか少しでも力になれることはあるはずなんだ」


 さすがに少し買いかぶりすぎなような……。

 それにマルセールが移住者を受け入れるって言ってきたから、仕方なく俺たちも受け入れようってなったんだよな?

 話の前後関係がわからなくなってきた……。


「ロイス君、給料もお支払いしてくれるようですしいいじゃないですか。ぜひ移住者の方に魔道化の作業やってもらいましょう。そしたらビール村とサウスモナの間にも家を建てたりできるようになりますし。当分の間は仕事に困らないんじゃないですか?」


 結局そうなるのか……。

 カトレアは甘すぎるんだよ。


「ロイス様! ぜひマルセールの副町長としてもお願いしたいです! 雇用の悩みが一気に解消されるかもしれませんし!」


 メアリーさんはさっきから乗り気だったからな……。

 きっとセバスさんも同じ考えだろう。

 元々マルセールだけで受け入れるのはどう考えても荷が重すぎるし。


 というかみんな俺の気持ちを無視しすぎじゃないか?

 魔道列車を延伸するということは俺にかかるプレッシャーが増えるんだぞ?

 俺が死んだらなにもかも消えてなくなるのに……。

 期待されてるこっちの身にもなってくれよ。

 それか魔物使いがいなくてもいいシステムを誰か早く開発してくれ。


 ……あとでマリンに愚痴聞いてもらおう。


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