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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
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第二百七十三話 彼との再会?

 リヴァさんを連れて小屋の外にいるジジイの元に行く。

 そこにはジジイとソロモンさんしかいなかった。


 どうやらティアリスさんたちは食事だけすませて慌ただしく村を出たらしい。

 グリーンドラゴンは倒しておくのでリヴァさんは少し休んでくださいとの伝言を残していったそうだ。

 みんな優しすぎる。


 そしてリヴァさんはジジイに彼の名を伝え、この村にいるのかどうかを尋ねた。


「ほっほっほ、おるぞ」


「「「「いるの!?」」」」


 本当にいたんだ……。

 同じ名前なだけ……ってことはないか。


「じゃが、今はおらん。近くにできたダンジョンに行っておるんじゃ」


「それってジジイが昨日言ってた若い冒険者が何人か勝手に入っていったっていう初級魔工ダンジョンのやつ?」


「そうじゃ」


「……魔工ダンジョン……良かった。まだ冒険者続けてたんだ……」


 リヴァさんの目から涙がこぼれ落ちた。

 そして顔を手で覆ってしまった。


 嬉しいよね。

 一度は死んだかもしれないけど、またこうやって冒険者やってるんだもん。

 というか死んだって表現やめにしない?


 ジジイが怪訝そうに見てくるので、経緯を簡単に説明した。


「ふむ」


 なぜかジジイは考え込む。


 もうすぐ感動的な再会……にはならないかもしれないか。

 向こうがリヴァさんと会いたいって思ってるかはわからないもんね。


「そっとしておいてやってくれんかの……」


「え? ジジイ? どういうこと?」


 涙を拭いたリヴァさんもわけがわからないようでジジイをじっと見る。


「その……言いにくいんじゃが……」


 なに?

 彼からリヴァさんのこと聞いてたりする?

 もし会いに来たら追い返すように言われてるとか?


「あやつのう、ついこないだ結婚したんじゃよ」


「「「「結婚!?」」」」


 嘘でしょ!?

 まだ十六歳だよね!?

 あ、でも十六歳だと大人だから別に問題があるわけじゃないのか。


 ってそんなことよりリヴァさんはどうしたらいいのよ!?


「……リヴァさん? リヴァさん!? 大丈夫!?」


「……」


 ダメだ、完全に放心状態ってやつだ……。


「結婚ってこの村の人となの?」


「そうじゃ。十六歳になったから結婚するって言っての。嫁さんはこの村出身なんじゃが、あやつがここに来たときから親しくしておったからのう。年は四つ上じゃったかの」


「四つ上……」


 自分よりさらに年上の人と結婚なんてされたら余計ショックなのかな?


 でもこの村に来たってことは彼は単に自分に戦闘は向いてないって気付いてしまったに違いない。


 うん、そういうことでいいんじゃない?

 リヴァさんの愛が重いからとかではないよ、うん。


「もうすぐ子供も生まれるぞ。じゃから結婚を急いだんじゃろな」


「「「「……」」」」


 ジジイ、それはさすがにダメだと思う。

 はっきり言いまくりじゃん。


「リヴァさん、彼は一度死んで復活したんです。それも前以上に立派になって。だからリヴァさんが気に病むことはなにもないんですよ」


 なんで私がフォローしなきゃいけないのよ……。


 というかもう六時だよ?

 外もだいぶ明るくなってきたし村のみんなもそろそろ出てくるんじゃない?

 男性小屋からも声が聞こえてきてるからもうすぐ出航準備に入るかもね。


 リヴァさんは相変わらず放心状態のままだ。

 きっとまだ彼との結婚を諦めてはなかっただろうからね。


「でももうすぐ子供が生まれるっていうのに、なんで危険な魔工ダンジョンなんかに行ったの? 奥さんも心配するでしょ?」


「水晶玉をゲットして高く売るつもりなんじゃろ。一家の大黒柱にならんといかんからのう」


 そんなに家族の話を出すのはやめてあげてよ!

 って今は私が聞いたのがいけなかったのか……。


「……彼の魔法の実力はどれくらい?」


 リヴァさんがようやく口を開いた。

 でもまずそのことなの?


「水や氷といった系統、特に水系の威力はなかなかだと思うぞ。それ以外の系統も使えるようなんじゃが、威力がいまいちなせいか全て囮に使ってるようじゃ。それに魔物の素材をきれいな形で売るには水魔法での攻撃が最適とか言ってたかのう」


「……そう」


 またリヴァさんが泣き始めた……。

 ジジイが彼の魔法の威力を褒めてくれたことが嬉しかったのかな?


「あのね、リヴァといたころの彼は全ての魔法を万遍なく修行してたの……。それとね、最後に話した日のことなんだけど、今後はまず水魔法だけに絞って修行してみたらどうってリヴァが提案したのよ……」


 つまり彼はリヴァさんのおかげで水魔法を強化することに成功したってこと?

 それならリヴァさんとしても嬉しいよね。

 彼がリヴァさんの提案を受け入れてくれたってことだし。


「そんなことを言ってしまったせいで出てっちゃったのかなって思ったこともあったけど、ちゃんと上達してるようで良かった……」


 そうだよね。

 リヴァさんからしたら上から目線で言っちゃったような申し訳ない気持ちになっちゃうもん。


 さて、問題はこれからどうするかなんだけど……ん?


 村の入り口にいる冒険者の人がこっちに向かってなにか言ってる。


 ……あっ!

 リスたちだ!

 ダンジョンから帰ってきたんだ!

 魔物だから封印魔法のせいで村に入れないのか!


「エマちゃん! ちょうどいいからリスたちだけを入れてあげて! ゆっくりやれば大丈夫だから!」


「はい! 行ってきます!」


 昨日エマちゃんに結界の部分制御の方法を伝授した。

 最初は難しいけど、経験を積まないと感覚が身につかないからね。


「リヴァさん、ダンジョンからみんな戻ってきますよ」


「えっ!? どうしよう!? どうしたらいい!? ララちゃん! リヴァはいないほうがいいよね!? いっそのこと死んだほうがいい!?」


 パニックになってるみたい……。

 死んだって表現はどっちの意味かわからないんだって……。

 本当に港から海に飛び込むのだけはやめてよね……。


 アグネスちゃんとアグノラちゃんはリヴァさんの手を握って落ち着かせてくれてる。


「とりあえず小屋に入って中から見てたらどうですか?」


「わかった! 二人もいっしょに来て!」


 アグネスちゃんたちも強引に連れて行かれた……。


「ジジイ、余計なこと言ったらダメだからね?」


「わかっとる。ワシじゃってあやつの嫁とのほうが長い付き合いなんじゃからな。面倒事はごめんじゃわい」


「「「ピィ!」」」


「おかえり。大丈夫だった?」


「「「ピィ!」」」


 ふふっ、可愛い。

 みんな私に撫でてほしくてたまらないって感じだ。

 この様子だと無事に水晶玉を持ち帰って来れたようね。


「シャワー浴びてきていいよ」


 リスたちは女性小屋の魔物専用入り口から中に入っていった。

 あ、リヴァさんが驚くかもしれないけどまぁいいか。


 数分後、ヒューゴさんが御者席に乗ったウチの馬車が帰ってきた。

 ヴィックさんとグラシアさんは馬車の後ろを歩いている。


「ただいま戻りました! 討伐してきましたよ!」


「お疲れ様です。中はどうでした?」


「なんてことない洞窟フィールドと草原エリアでしたからおそらくララちゃんが以前に入ったというダンジョンと似たものだったのでしょう。ベビードラゴンも大量にいましたし。ですが最下層にはグリーンドラゴンが三体いましたね」


 またグリーンドラゴンか。

 魔王はベビードラゴンの次はグリーンドラゴンにハマってるのかな。

 コスパがいいのかも。


 でもマズいよね。

 地下四階魔物急襲エリアくらいまで到達してるパーティなら問題ないだろうけど、それ以外のパーティは苦戦するかもしれない。

 無理そうならすぐに撤退してくれればいいんだけど……。


「心配しなくても大丈夫ですよ。みんな自分たちの実力は把握してますから無理しなくてもいいところで無理はしません」


「ヒューゴさん……そうですよね。私が信頼してあげなきゃダメですよね」


「はい。総司令官はドンと構えておけばいいんです」


「のう、ウチの村人はいたかの?」


 ジジイ……。

 よくこんなタイミングで話に割り込んでこれるね……。


「えぇ、第五階層入り口付近でお会いできましたよ。今はみなさん馬車で眠ってらっしゃいます。数日間ほとんど睡眠を取れていないようでしたので」


「そうかの。ありがとな。この村の長老として感謝する」


 そう言ってジジイは馬車に近付き、中を覗く。


「こらっ! さっさと起きんかい! 寝とる場合じゃないぞ」


 いきなり可哀想……。

 すぐに馬車の中から人が……ん?


 一、二、……八?


「八人もダンジョンに入ってたんですか!?」


「はい。帰りの馬車の中は窮屈でしたよ、ははっ」


 いやいや、この馬車少し小さめに作ってあるのに……。

 みんな縮こまって肩寄せ合ってやっと乗れたんじゃない?

 よくそんな体勢で寝れたね……。


「ん? おお!? 村だ!」


「本当だ! 帰ってこれたんだ!」


 歓喜に沸いているようだ。


 というかみんな装備品がボロボロ。

 心なしか臭いも少し……。


「どんな状況で発見したんですか?」


「第五階層の入り口で、ベビードラゴンが大量にいるその先に進むか進まないかで揉めてました。みんな怪我も酷く、満身創痍でしたね。回復アイテムも尽きてたようですし、戻るのも大変だったと思います」


「回復魔道士はいなかったんでしょうか?」


「回復魔道士は貴重ですからね。それに回復魔法が使えたらこの村に来ることはまずないと思いますし」


 あ、そっか。

 回復魔法が使えるってだけでどこのパーティも欲しがるし、ユウシャ村でも重宝されるに決まってるもんね。


「そっちの四人は今すぐ荷物をまとめてくるのじゃ。しばらくは村人たちの護衛を頼みたい。詳しくは下に行けばわかる。こっちの四人はワシが今から説明する」


 へぇ~、ジジイもみんなのまとめ役っぽいことするんだ。

 下に行くように指示された四人もそれ以上なにも聞かずに走っていったし。

 結構信頼されてるんだね。

 干渉しないっていう掟が誰にも守られてないのが気になるけど。


 それより例の人はどの人かな。

 魔道士は二人しかいないっぽいからどちらかなんだろうけど。


「ジジイ?」


「あやつじゃ」


 ジジイは今走っていった四人の一番左の人を顎で指した。

 でもすぐに地下への階段がある家に入ったので姿は見えなくなった。


 ……あの人か。


 普通の人だったね。

 でも思ってたより魔力は少なくないじゃない。

 お世辞にも多いとは言えないけど。


「すぐに王国に行かせるの?」


「そうじゃ。村人たちも身内で戦える人間が何人かいてくれたほうが安心じゃろうしな。それに子供が生まれてくるんじゃから守る役割を与えるのは当然じゃろ」


「リヴァさんのことはどうするの?」


「それは王国に行ってからでもいいじゃろ」


 う~ん、まぁそれもそうか。

 リヴァさんも小屋から出てこなかったしね。


「ジジイが文句言われても知らないからね? それより船が出るまで時間なさそうだからこの人たちに早く状況を説明してあげてよ」


 そしてシモンさんたちも小屋から出てきた。

 いよいよ最初の移住者たちが出発するんだね。


 というかピピはどうしたんだろう?

 無事だよね?

 ユウナちゃんたちに会えたかな?


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